http://mainichi.jp/select/opinion/ushioda/news/20110713ddm003070067000c.html
水説:世界に冠たるドイツ=潮田道夫
<sui−setsu>
アジアでひとり勝ちは中国だが、欧州ではドイツのひとり勝ちがはっきりしてきた。もちろん経済競争である。
日本は貿易収支が赤字になったりし始めたが、ドイツの黒字構造は揺らぎもせず、むしろ強化されている。英エコノミスト誌が「ドイツは少しギリシャのまねをして国内消費を増やしてくれないと」とこぼす有り様だ。
理由ははっきりしている。英BBC放送は「ドイツ成功の秘密」という番組で「もの作りが報われ始めた」と述べているが、まさにそういうことだ。日本は大震災の影響もあって自動車産業が落ち込んだが、ドイツのフォルクスワーゲン、メルセデス、BMWの今年上半期の生産台数は史上最高となった。
米国の前財務長官顧問のスティーブン・ラトナー氏がフォーリン・アフェアーズ7月号に「ドイツ経済モデルの成功、他の先進国が見習うべき強さの秘密とは」という論文を寄稿している。
「成功」の例としてここでは失業率の低下(92年以降で初めて失業者数が300万人を割った)、中国に次ぐ世界第2の輸出大国の地位、1人当たり国内総生産(GDP)の伸び率が先進国で1番などをあげている。
こうした成果はひとえに輸出の増大によって達成されたと考えてよい。そして、輸出拡大の決め手は製造業の競争力強化であり、ドイツはそれに成功した。
米国も英国ももの作りから金融に経済の中心軸を移したが、ドイツはもの作りにこだわった。それがよかった、というわけだ。
英エコノミスト誌のホームページで「製造業かサービス産業か」という討論を読むことができる。
製造業派のハジュン・チャン・ケンブリッジ大教授によれば、スイスやシンガポールは代表的サービス産業国家と思われているが、実は製造業の1人当たり付加価値額で日本と首位を争う強い製造業国家である。豊かさは製造業の基盤あればこそなのだ。
なるほど、説得力がある。反対論も面白いが割愛。読者の投票結果では76対24で「製造業が大事」派が圧勝した。
日本はことごとに自信を失い、近ごろは「もの作り立国」への懐疑論も台頭している。もの作りだとコスト面で韓国や中国に対抗できない。製造技術はまねされる。早くサービス産業に切り替えないと日本は衰退する、と。
一理あるとは思うが、ドイツの頑固さは学ぶべきだ。ライン型経済モデルはアングロサクソン型に敗退した、などと言われたが、再逆転した。エライ。(専門編集委員)
英訳
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