FD改竄と捜査報告書の謎解き -女性検事の告発と前田恒彦の失脚(世に倦む日々)
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FD改竄の謎解き_1
前田恒彦が「FDに時限爆弾を仕掛けた」と同僚検事に話した時期について、新聞記事では今年1月と説明している。だが、昨夜(9/23)の報ステでは、昨年7月に部下の検事に電話で話していたと報道していた。FDが返却されたのは7/16である。押収から2か月も経ってない時点で、裁判も始まっていない。押収したFDを公判前に被告人側に返送する行為はいかにも不自然で、返却の理由について前田恒彦が特捜内部で何も説明していなかったとは考えにくく、「時限爆弾」の行為と意味について、早くから組織内部で認識が共有されていたと考えるのが自然だろう。「時限爆弾」のFDの問題が、今年1月に初めて前田恒彦の口を通じて判明したとする検察の説明(新聞社へのリーク)は嘘だ。検察とマスコミは、この事件についてFDのデータ改竄の問題としてクローズアップし、主任検事の不始末という構図で国民に説明をしている。
FD改竄の事実の詳細に国民の関心を釘づけにし、情報を小出しにして、国民一般の「事件認識」を少しずつ練り固めている。検察権力による巨大な政治謀略を些末なFD改竄問題にスリ替え、巧妙に事件を矮小化し、検察組織の犯罪ではなく検事個人の犯罪に仕立てている。今、検察とマスコミが説明している中身こそが、まさに検察によるストーリーそのものなのだ。検察の組織犯罪を隠蔽する虚構の情報系なのである。以下、時系列を追って細かく検証しよう。
FD改竄の謎解き_2
事実経過は次のとおり。5/26、上村勉を逮捕、家宅捜索でFDを押収。6/14、村木厚子逮捕、これは特捜が事情聴取と偽って東京から村木厚子を中之島の大阪地検に誘き出し、そのまま身柄を逮捕したもので、最高検から指示が出ていた。本省の局長の逮捕だから、当然、最高検の判断と許可が要る。おそらく、最高検だけでなく官邸(漆間巌と麻生太郎)の了解も。5/26から6/14の間、テレビ報道は村木厚子の「疑惑」を流し続け、国会に出席した村木厚子の映像を毎日のように放送していた。この間、村木厚子の周辺の厚労官僚は何人も特捜の聴取を受けていたが、「ホンボシ」の村木厚子は聴取対象から外され、最初の聴取が同時に逮捕となった。6/29、捜査報告書が作成される。文責は主任検事の前田恒彦。
この捜査報告書の中に、FDの日付情報(6月1日)が印刷されていた。7/4、容疑否認のまま虚偽有印公文書作成・同行使罪で村木厚子を大阪地裁に起訴。7/13午後、前田恒彦がFDを改竄。フリーウェアを使ってプロパティ情報を改変。7/16、上村被告の母親宛に改竄したFDを郵送返却。10月、公判前整理手続きが始まる。10/13、地裁決定で村木厚子を保釈。この公判前整理手続きの過程で、拘留中の村木厚子が捜査報告書の存在を知り、弁護団が開示を請求。開示された結果、偽造証明書の文書(一太郎)の更新日時が2004年の6月1日である事実をつき止める。6月1日が文書作成の最終日であれば、検察が主張する「6月上旬に村木が上村に証明書発行を指示」の容疑事実が崩れる。破綻する。
FD改竄の謎解き_3
公判前整理手続きは、検察の杜撰な捜査と冤罪が暴かれる場となり、村木厚子の無実は確定的となった。マスコミも無罪を前提にした報道をするようになる。だが、この時点でFDの問題は表に出ていない。矛盾が表面に露呈したのは、捜査報告書におけるFD情報の印刷(6月1日)と検察の起訴状に書かれた起訴事由(6月上旬)である。それでは、FDを受け取った上村勉側はどうだったのか。この点について、マスコミ報道は詳しい説明をしていないが、朝日の9/21の紙面記事によれば、上村勉の弁護士の話として、返却されたFDの日付が6月8日であることを確認し、この証拠が明らかになれば、単独犯行を主張する上村勉の立場が不利になるので、敢えて法廷には提出しなかったのだと言う。つまり、昨年7月の時点では、上村勉の弁護士はFDの改竄に気づいておらず、前田恒彦が仕掛けた「時限爆弾」の罠に混乱させられているのである。重要証拠が検察から素早く返却された点は不審に思いつつ。
無理もない。検事が証拠品に手をつけて返却するなど、誰も想像もしないからだ。改竄が判明した時期は、朝日は独自にFDを調べたとしているが、上村勉の弁護士と村木厚子の弁護団は、朝日にFDを渡す前に独自に調査を済ませていたか、検察内部で公然化していた情報でFD改竄を承知していたことだろう。つまり、この問題のカギは、実はFDではなくて捜査報告書なのだ。逆なのである。重要なのは、なぜ前田恒彦がFDを改竄したかではなくて、逆であり、なぜ(真実の情報を印刷している)捜査報告書が地検の公判部に渡り、弁護団に開示請求される事態に至ったかである。
FD改竄の謎解き_4
6 月8日とFDを改竄して上村勉の弁護士に返却し、同時に6月1日と捜査報告書に正確なFDの日時を印刷していた前田恒彦は、絶対に捜査報告書を弁護団に見せてはならず、その存在を被告人側に知らせてはならず、それを秘匿するか隠滅しなければならなかった。捜査報告書が開示されれば、返却した「時限爆弾」のFDとの間で齟齬をきたす。FDに改竄工作した事実がバレてしまう。すなわち、捜査報告書が検察の公判部に渡った時点で、前田恒彦はすでに内部で失脚していて、事実上もはや公判を担当する主任検事でも何でもなくなっていたのである。つまり、検察内部で、「時限爆弾」の改竄FDの問題は、昨年9月頃にはすでに問題になっていて、法廷戦略はギブアップの状態になり、弁護団側によって捜査報告書の開示請求がされたなら、それに応じるしかない態勢になっていたのだ。
FD改竄という前田恒彦の謀計は、検察内部では公然の事実だったのであり、どこかで発覚して言い訳を試みざるを得ない逆の「時限爆弾」になっていたのである。逆の「時限爆弾」が破裂する時刻は、裁判で村木厚子の無罪判決が出る今年9月だった。それが真相だろう。であるとすれば、前田恒彦はなぜ捜査報告書に、6月1日と正確なFDの日付情報を印刷してしまったのか。真相は不明だ。報告書作成日が6/29で、起訴が7/4であることを考えると、起訴状には「6月上旬の指示」と容疑事実を特定して明記しているのだから、起訴状の稟議時間を考えたとき、報告書の印刷の放置が命取りのミスであったとしか思えない。
FD改竄の謎解き_5
そしてまた、捜査報告書が公判に出ることはないと、前田恒彦と検察側が想定していたとしか考えられない。現時点での情報では、幾通りかの推測が可能だが、一つ気になる情報として、公判担当検事という者の存在が報道の行間に見え隠れしていて、どうやら女性検事であり、この事件の捜査について早い段階から内部批判をしていた経緯が覗われる。捜査報告書を隠匿させず、それを公判部の手に移し、前田恒彦や上層部から守ったのは、その者の正義感ではなかったか。それと、もう一つ、今後の報道で出て来るだろうが、前田恒彦は全くのIT音痴で、プロパテイを書き換えるフリーツールの入手も、また実際のFD改竄処理の操作も、どうやら共犯の同僚検事が手伝った疑いが強い。前田恒彦の単独犯行ではないのである。現在までの朝日等新聞情報では、FD改竄は前田恒彦の独断専行で、その告白をしたのは今年1月となっている。だが、それは違う。
「時限爆弾」の謀略も、FDの改竄返却も、特捜部が組織ぐるみでやっていて、上層部(大坪部長・佐賀副部長)もその計画を裁可している。無実の村木厚子を犯人に仕立てること、「犯行指示」の時期を「6月上旬」とすることは、検察全体が最初から仕組んだ「事件構図」で、検察の上層部を含んだ思惑だったのだ。前田恒彦は、単にその計画を実行した現場責任者であるに過ぎない。政府本省の局長の逮捕には検事総長の同意が要る。局長逮捕(官界)という大捕物が一つの眼目だったのであり、石井一(政界)を網にかける事がもう一つの獲物だった。村木有罪のストーリーは、最高首脳を含めた検察全体が描いたもので、「6月上旬指示」が「事実」でなければならなかった。
FD改竄の謎解き_6
FD改竄を上層部は最初から知っている。村木厚子の無実を証明する捜査報告書が隠滅や改竄を免れたのは、それを大阪地検内部で防衛した者がいたからで、昨年 10月には、検察内部で「クーデター」が起きて成功していたのだ。なぜ正義派(女性検事)のクーデター(内部告発)が成功したのか。それは、最も大きな要因は、8月末の衆院選による政権交代である。もともと、西松事件に続く郵便不正事件は、検察による民主党の政権交代を妨害するための政治謀略であり、政治警察たる特捜が野党潰しの政治目的で動いたものだった。だから、選挙で政権交代を許してしまえば、この捜査は何の意味もないのであり、検察(特捜)の敗北で終わりなのである。公判は後始末だ。選挙で自民党を勝たせるための捜査であり、司法権を濫用した政治謀略である。
検察にとって緊急事案であり、普通の犯罪捜査の範疇ではなかった。そのため、捜査は全く杜撰そのもので、証拠の裏づけは何もされておらず、自民党が政権を防衛できなかった場合は、公判維持の無理が予め前提されていた捜査だったと言えるだろう。本件の捜査については、起訴当初から不審の声が上がり、大物弁護士の広中惇一郎の出番となった。早い段階で石井一のゴルフ場のアリバイ情報が出て、検察の一審敗訴が確実視される状況になっていた。だから、女性検事の内部批判もクーデターも、さほどの障壁や困難はなかったのだろう。これは、西松事件や陸山会事件と同じく、完全な検察の政治暴走で、自滅した失敗プロジェクトである。目論見どおり政権交代を阻止できていれば、捜査報告書は闇から闇に葬られ、一審敗訴でも検察は控訴して裁判を長引かせていたに違いない。
FD改竄の謎解き_7
前回の記事で、私は、朝日の報道はスプープではなくリークだと書いた。リークという表現を適用するのは、あるいは当を得てないかもしれないが、これは語の正確な意味でのスクープでは決してない。朝日と検察は裏で示し合わせていて、検察による謀略事件の失敗の始末を共同作業でやっている。検察の嘘だらけの言い訳を報道して、国民を納得させようとしている。朝日の紙面記事を読むと、「検察の関係者への取材では」という記述が頻出する。これは、西松事件や陸山会事件で何度も問題になった「検察リーク」と全く同じものだ。FD改竄の問題にどう始末をつけるか、村木逮捕の蹉跌をどう揉み消すか、窮地に立った検察が仙谷由人に泣きつき、仙谷由人が一計を案じて、朝日を使った尻拭いプロジェクトを周旋したのだろう。プロジェクトは今年8月から始動している。
スクープと朝日が言うのなら、FD改竄を技術的に検証した8月の時点で、即座に報道すればよかった。それを判決の後まで溜め、代表選後の発表に控えたのは、明らかに政治的意図があったからで、FDと前田恒彦にフォーカスした検察と報道のプロジェクトが錬られ、発動(公表)が待機されていたからである。ゴーサインを出したのは仙谷由人で、中国漁船問題を国民の関心の前面から遠ざけるために、扇情的な「検察批判」の情報にして演出し、「FD改竄の謎」というミステリーに仕立て、小出しにして報道を続けているのである。朝日の紙面報道を見ていれば、普通の人間は異常に気づく。9/21の報道では、前田恒彦は「遊んでいて書き換えた」話になっていた。9/23の報道では、それは「時限爆弾」という話になった。なぜ、最初から「時限爆弾」の証言が記事に出ないのか。順番に小出しにしているからだ。
「謎解き」の報道にしているからであり、つまり、最初から最後まで組み立てられているからだ。準備した上で、検察幹部の責任を不問にする結論に落とし込むべく、朝日(黒幕は仙谷由人)は順番に報道するのであり、世間一般の事件認識と反応世論を固めて行くのである。
http://www.asyura2.com/10/senkyo95/msg/810.html