http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=838
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府に対し、刑場の公開にとどまらず、死刑確定者の処遇、死刑執行に至る過程などを含む死刑制度の現実について、徹底した情報公開を行うよう要請する。
本日、日本政府は、東京拘置所の刑場についてマスメディアに公開した。しかし報道によれば、公開の際、死刑執行に使用されるロープは外された状態で、踏み板が開く様子は公開されず、死刑確定者の死亡を確認する執行室の下の部屋も非公開とされた。アムネスティ日本は、今回の公開が死刑執行の残虐さを隠そうとする、不十分な公開であったと考える。そもそも日本の死刑制度は、依然として秘密主義のベールで隠されており、今回の公開だけでは日本の死刑の現実がどのようなものであるかを知ることはできない。
例えば、法務大臣が死刑執行命令を出すに至る一連の手続きは、執行の順番がどのように決められるのかなど、詳細がまったく明らかにされていない。再審請求中の死刑執行や再審請求準備中の死刑執行についても、政府は、「法務大臣が再審や恩赦などに関する事由の有無を慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に執行する」と答弁しているが、実際にどのような検討が行われているのかは不明である。また、死刑執行に関わる刑務官や医務官には、きわめて強い精神的負荷がかかると考えられるが、彼らの心身の健康に対する何らかのケアがなされているのか、という点も明らかになっていない。
さらに、死刑確定者は外部との面会が厳しく制限されているため、実際にどのような処遇に置かれているのか、非常に限られた情報しかない。死刑確定者の健康状態についても、死刑確定者が自らの診察記録の開示を申請しても認められず、独立した医療専門家による調査も認められない。日本の刑事訴訟法479条1項には、「心神喪失」の場合には死刑の執行を停止するとされているが、死刑執行に際して死刑確定者の精神状態を審査する手続きも不明である。
2007年、国連の拷問禁止委員会は日本政府に対し、「精神障がいの可能性のある死刑確定者を識別するための審査の仕組みが存在しない」と指摘し、「死刑確定者とその家族のプライバシー尊重のためと主張されている、不必要な秘密主義と処刑の時期に関する恣意性」について、深刻な懸念を表明している。
国連の「超法規的、即決あるいは恣意的処刑に関する特別報告者」は、2006年の報告書の中で、次のように指摘している。「十分な情報を持った上での死刑についての公の議論は、その運用についての透明性が確保されなければ不可能である。ある国が一方で世論に従うといいながら、一般社会に対して死刑の運用についての情報の提供を意図的に拒んでいるというようなことは、筋が通っていない。一般社会の人びとは、ほとんど何も知らないに等しい状態で、どうして死刑制度に賛成だなどということができるだろうか。もしも世論というものが国にとって重要な考慮事項なのだとしたら、政府は関係する情報を入手できるようにし、できるだけの情報を得たうえで意見が出せるようにしなければならない。」*1
アムネスティ日本は、日本政府に対し、ただちに死刑の執行を停止し、その上で、死刑制度に関する秘密主義を止め死刑制度の現実を明らかにし、死刑廃止に向けた公の議論を行うよう要請する。特に、以下の点について情報を公開するよう、日本政府に強く要請する。
•法務大臣が死刑執行命令を出す際の命令書の起案・決済の手続きの詳細と、執行の順番に関する基準とその決定担当官あるいは部署
•死刑確定者が再審や恩赦を請求中あるいは請求準備中である場合の検討手続きと、そうした場合に死刑執行命令を出すか否かの判断基準
•精神障がいや拘禁反応が出ている死刑確定者の人数と治療状況の詳細。また、死刑執行に際して、死刑確定者の精神状態を審査する手続きの詳細
さらに、日本政府に対し、早急に死刑確定者やその弁護人が診察記録を入手できるようにし、外部医療機関の専門家による診察の機会を保障するよう、アムネスティ日本は要請する。
*1 Alston, Philip, Transparency and the Imposition of the Death Penalty, Report of the Special Rapporteur on extrajudicial, summary or arbitrary executions, UN Doc. E/CN.4/2006/53/Add.3, 24 March 2006,
アムネスティ日本支部声明
2010年8月27日
http://www.asyura2.com/10/senkyo93/msg/532.html