毎日新聞が28、29日実施した全国世論調査の結果は、民主党の小沢一郎前幹事長が「政治とカネ」問題を抱えたまま党代表選(9月1日告示、14日投開票)に出馬することに批判の声が強いことを示した。菅直人首相の陣営は、続投を望む声が圧倒的多数を占めた「世論」を最大の武器に首相支持を訴えるとともに、小沢氏の「古い政治体質」との違いをアピールしていく構え。小沢陣営は小沢氏の「秘書軍団」が各地で地方議員票や党員・サポーター票の積み上げを図るなど「組織戦」を強化している。
「国民の世論と党内があまりにも乖離(かいり)した形で終わるのは民主党らしくない。ちゃんと(世論に)近づいていく」。菅首相の側近、寺田学首相補佐官は29日のNHK番組で、国会議員票の「劣勢」を指摘され、首相支持の世論に沿って情勢が変わることに期待感を示した。
党内最大勢力の小沢グループ(約150人)は代表選に向け、09年衆院選の初当選組143人やほかのグループの取り込み工作を本格化。菅陣営の若手が「地上戦、組織戦では小沢グループが圧倒的」と舌を巻く状況だ。
菅陣営は国会議員412人の支持状況について、大まかに「菅150人、小沢170人」と見積もる。それだけに世論調査結果を受け、「様子見」の議員や、党員・サポーター票の支持獲得に追い風になると期待。中堅議員は「党員・サポーターは民意に近く、6対4ぐらいで首相支持が上回る」と見込む。
仙谷由人官房長官は29日、毎日新聞の世論調査結果について「菅内閣に対する国民の期待が残っている」と歓迎の意向を示した。ただ、菅首相続投の方がいいと答えた人に理由を聞いたところ「首相をたびたび代えるべきではないから」が83%を占め、消極的支持の弱さは否めない。
「今度うちの親方が選挙に出ることになりまして」
29日、大阪市で開かれた民主党大阪府連定期大会。小沢氏の秘書が出入りする地方議員らに声をかけ、萩原仁衆院議員(大阪2区)と小沢氏支持を働きかけていた。秘書は近畿地方担当として28日に大阪入りしている。
代表選では全国2382人の地方議員も投票資格を持つ。党員・サポーター34万2493人については「国会議員の後援会と地方議員の後援会、労組が3分の1ずつ」というのが小沢陣営の分析だ。地方議員が独自に開拓した党員・サポーター票も少なくなく、萩原氏は「(その地域の)国会議員が首相支持でも、地方議員票を取りにいく」と意気込む。
参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」に対応できるのは小沢氏であり、菅首相のままなら来年3月に追い込まれ解散−−というのが小沢陣営の主張。29日のフジテレビの番組では、小沢陣営の山岡賢次副代表が「野党とは(連携に向けた)話をしている」と述べ、すでに野党との連立工作を始めていることをにおわせた。
ただ、自民党の出席者が反発。山本一太参院政審会長が「小沢さんは負けても勝っても自民党に手を突っ込んでくるかもしれない」と、小沢氏が自民党の分裂を仕掛けてくる可能性に言及した。【野口武則、野原大輔、笈田直樹】
◇小沢氏「テレビと新聞の支持率は必ずしも正確ではない」
「政治とカネ」問題を抱える小沢氏に対し「再び影響力が強くなることは好ましくない」との回答が8割強に上るなど、世論調査は依然、小沢氏に厳しい結果となった。小沢氏も代表選出馬を受けて、批判的な反応が出ることは織り込み済みとみられる。それでも出馬に踏み切ったのは「テレビと新聞の支持率は必ずしも正確ではない」という小沢氏独特の世論観がある。
小沢氏は国政選挙で自ら全国行脚し、直接、有権者に接してきた。選挙区回りにせよ、組織・団体対策にせよ、自らの皮膚感覚を重視する。今回の代表選でも最大支持基盤の連合など各団体回りを優先。あいまいな「世論」よりも、自力による確実な集票を目指す現実路線をとっている。
今回の党代表選は、国会議員票、地方議員票、党員・サポーター票の合計票で決まる。小沢氏からみれば、国会議員はもちろん、地方議員や党員・サポーターも、世論よりはるかに自らの指示や働きかけが効く。小沢氏に近い国会議員が、自分の影響下にある党員・サポーターに働きかけて支持を固めていけば、世論の影響は限定的になるとの見立てだ。
だが、「どちらが首相にふさわしいか」という設問で、菅直人首相と小沢氏には大差がついた。小沢氏支持を訴える議員は支持者への釈明に追われるのが現状だ。小沢氏に近い議員は「小沢氏は世論をいくつかの問題の一つとはとらえていても、最大のハードルという認識はないのでは」と懸念した。【須藤孝】
◇民主党代表選の仕組み
民主党代表選は2年の任期満了時に行われる場合、地方議員や党員・サポーターも投票して「ポイント」を争う。412人の国会議員には1人2ポイントを配分。地方議員には全国の党所属議員全体に100ポイントが割り当てられ、得票割合に応じドント式で各候補に振り分ける。党員・サポーター票は300ポイントで、衆院300小選挙区ごとに投票し最多得票の候補が1ポイントを得る。今回は計1224ポイント。
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