現在地 HOME > 掲示板 > IT3 > 149.html ★阿修羅♪ |
|
エキスパートの視点:ハイテク中毒の恐怖【CNET Japan記事 この記事はなかなか読み応えがあります。】
http://japan.cnet.com/news/pers/story/0,2000047682,20061278,00.htm
Richard Forno
2003年10月8日(水) 10時00分
ドストエフスキーの小説の中に、次のような文句がある。「結局最後に
は、彼らはわれわれの足元に跪き、自分たちの自由を差し出して“あなた
の奴隷になるので食料を与えてください”と言うだろう」。Bruce
SterlingやGeorge Lucas、Ridley Scott、William Gibsonといった芸術家
たちは、企業に支配された暗い社会の到来を予言したが、この暗く支配さ
れた現代の情報化社会とドストエフスキーの言葉には、深い関連がある。
われわれは情報化社会の一員であることを嬉しく思い、新しい機器やサ
ービス、デジタル接続手段が登場する度に生活環境が向上したような気分
になる。パケットやポケベル、無線、有線など、情報化時代には新しいサ
ービスが次々と登場し、人々は常に何らかの形で情報分野の世界基盤と接
続された状態にある。これは一種の中毒であり、次から次へと押し寄せる
電気業界の刺激にどっぷり浸っている状態だ。
ユーザーは、最新で最高の機器やハイテクサービスを受け入れ、自らの
ハイテク欲を満たす。しかし同時に、製品や製品メーカーへの依存度が高
まっていく。この中毒症状が進むと、機器やサービスに支障や故障が生じ
たり、機器が攻撃にあった場合、ユーザー自身の機能や能力にも支障が生
じることになる。このように技術的な問題や法的な問題が頻繁に起こるな
ら、世間で言われているほど人間の自由や能力は向上していないのではな
いかと疑いたくなる。
技術とは、ギャンブルやヘロインと同じで中毒性のあるものだ。われわ
れユーザーは最新機器を売りつけられ、継続的にその技術をアップグレー
ドしている。アップグレードの理由は、実際にその技術が必要となる場合
や、必要であるような気分にさせられる場合などさまざまだ。そして、最
新のハイテク“ヘロイン”がないと不安に陥る。ユーザーがある企業の製
品やサービスを認め、使いはじめると、ユーザーはその企業に依存するこ
とになる。この状況に企業は笑いが止まらない状態だ。このような企業は、
基本的にユーザーの情報を所有しており、ひいては社会とユーザーそのも
のを支配しているのだ。そうなれば、われわれがヘロインに支払う値段は
上昇し続ける。
産業革命時代の多くの企業と違い、ハイテク企業はユニークな立場にあ
るといえる。ハイテク企業は、ユーザーを獲得してお金を巻き上げ、さら
には欠陥製品の損傷償還を求める権利を放棄させてしまうことさえできる
のだ。ユーザーが不具合の多い技術を使用しつつ、どんな痛みに耐えなけ
ればならなかったとしてもだ。
このような状況は、特に主流のOS、ソフトウェア、インターネットベー
スのサービスによく見られることで、場合によっては恐喝同然のようなも
のさえある。現代版ラッダイト運動(産業革命時に起こった機械打ち壊し
運動)が興れば成功するかもしれないが、われわれはそう簡単に麻薬を絶
つことはできないはずだ。
事態をさらに悪化させているのは、政府が技術表現やコミュニティ交流
に関する監督や定義を、利益を追求する企業と、MPAA(全米映画協会)や
BSA(Business Software Alliance)のような秘密主義の業界カルテルに
事実上アウトソースしてしまっていることだ。このような企業や団体は、
われわれユーザーのことなど考えてはいない。この情報化社会を利用して
自分たちの利益につながるよう、必死でルールを書き換えようとしている
のだ。
この“ハイテクヘロイン”企業連合は、自社製品を宣伝して利益を得る
のみならず、製品の利用法を管理、調整する原理や方法も開発して、ネガ
ティブな副作用から自分たちを守り、収益構造を維持しているのだ。
各産業やベンダーは、自分たちの製品やサービスを誰がいつ、どこで、
どうやって、どんな条件下で利用するかに関して、独自の技術権威や法的
権威を主張しようとしている。たとえ、利益をむさぼろうという彼らの欲
望と法を守ろうとするわれわれの欲望とが矛盾していてもだ。そして、自
分たちの領土において法と秩序を守ろうとする技術的、法的努力がかなわ
なければ、いつでも都合よく連邦政府に引渡すことができるのだ。
情報化時代は、このような利益倒錯者と、われわれ自身が選出した、気
まぐれで時に無知な議員の集まりだ。そこでは個人の権利と能力など重要
ではない。また、集団の得となるよう技術力を最大限に活用し、社会の進
化を促進することも重要ではない。ここで重要なのは、企業が収益を生む
ために作られた情報領土という場所で生活するにあたって、奴隷であるユ
ーザーはご主人様である企業にいくら支払う気があるのか、あるいは支払
わされるのか、またどの程度の犠牲を払わなくてはならないのか、という
ことだ。
情報化時代は、楽しくて野心があり、パワフルで充足感のあったドット
コム時代とは違う(ドットコム企業が開発した技術の搾取が進んでいるに
も関わらず、ドットコム時代は人々の心にこのようないい時代として残っ
ている)。むしろ情報化時代は、次のような時代として語り継がれること
だろう。
・ニューヨークのスラム街の12歳の少女や老人、さらには前途ある大学生
までが、将来の顧客を脅して服従させようとする欲深い企業団体からい
やがらせを受ける。
・ハイテク企業の売上目標が、顧客の事業に影響を与え、人間がどのよう
に組織化され交流するのかを決定する。
・業界が定義した厳しい判断基準により、無実が証明されない限り誰もが
潜在的な犯罪者となる。
・世界的なコミュニケーション革命としてかつて誉めたたえられたものが、
ジャンクメールや攻撃的なマーケティングメールの掃き溜めと化す。
・違法行為を行う方法を知っているだけでも、それを実際に行った場合と
同じく違法となる。
・言論の自由を守る法的保護はねつ造され、企業が自社の秘密や市場シェ
アを非公開とするだけでなく、公衆を危険に陥れかねない脆弱性さえ隠
ぺいする。
・われわれの生活は、モノを売るのに最善の方法を探しているマーケティ
ング会社が監視し、分析する。しかも、われわれはそのようなモノを必
要としておらず、欲しいとも思っていない。
・技術が約束するものや心をそそられるような機能は、情報化時代の社会
のメンバーに真の力を与えるどころか、メンバーをわなにかけ、さらに
は監禁する手段として用いられる。
ドストエフスキーは、かなり時代の先をいっていたようだ。
筆者略歴
Richard Forno
米Network Solutionsの元最高セキュリティ責任者(CSO)で、現在はセキュリティ技術家。著書に「Weapons of Mass Delusion: America's Real National Emergency」(集団妄想という武器:米国の真の非常事態)がある。
原文へ