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グローバリゼーションの本質 ビル・トッテン
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投稿者 エンセン 日時 2003 年 10 月 10 日 01:28:46:ieVyGVASbNhvI

 
グローバリゼーションの本質
H15/10/09

 九月にメキシコ・カンクンで行われたWTO閣僚会議に対して、世界各地で反グローバリゼーションを訴える抗議運動が行われた。日本でも東京や大阪で「農業を守れ」と訴える人々がデモ行進を行った。一九九四年のウルグアイ・ラウンド以降、政府が自国の農業を保護するために農業へ補助金を出したり輸入制限をすることは自由貿易を阻害することだとみなされたため、今回のカンクンでも市民団体や農業団体が会場の周りで貿易自由化に抗議するデモで大荒れとなったのである。韓国の前韓農連会長が「WTOは農民を殺す」と書かれたプラカードを振り、その後刃物を自分の胸に突き刺して自害するという事件も起きている。
高まる米への依存
 自由貿易を推進して先進国が国内農産物市場を途上国に開放すれば経済格差が縮まるかといえば、そうはならないことはこれまでの歴史をみれば明らかである。日本がコメ市場を開放すれば入ってくるのはアメリカのコメであり、これではますますアメリカへの食料依存を高めるだけであろう。ここにグローバリゼーションの本質がある。

 市民運動のリーダーであるスーザン・ジョージは、“グローバリゼーションとは、経済発展を遂げた者に世界的権力がさらに集中していくシステムのことである”と言い、元世界銀行のエコノミスト、マーティン・ウルフは“グローバリゼーションとはさらなる世界的経済発展のために、生産手段・サービス・資本・労働力などを世界的に統合していく過程にすぎない”と語っている。すでに経済発展を遂げた一握りの多国籍企業がさらなる利益追求のために推し進めているものであり、その出先機関としてWTOは日本の農家の多くが失業に至るような提案を秘密裏に話し合っているのである。
多国籍企業の巨大化
 一九九九年、国連は「グローバリゼーションと人間開発」というテーマで人間開発報告書を出した。そこには「グローバリゼーションによって世界の最も裕福な20%の人々は急激な発展を遂げたが、それ以外の人々にとっては破滅がもたらされた」と書かれている。

 最も豊かな世界の20%の人々が地球の生産物の86%を支配し、その一方で最も貧しい20%の人々の手に入るのはわずか1%に過ぎない。またグローバリゼーションは世界の多国籍企業をさらに巨大化させ、一企業の売り上げが多くの国のGDPを上回っている。情報技術と文化的な影響をほとんど支配しているのはアメリカで、「アメリカの最大かつ唯一の輸出産業は、航空機でもコンピュータでもなく、娯楽である。映画とテレビ番組を世界中に輸出している」と報告書は記している。この報告書が書かれてから四年がたった今でもその波は一向に弱まることなく、むしろさらにメディアと多国籍企業の後押しによって促進されているのが現実である。

 競合するさまざまな人間社会において勝者と敗者が生まれるのは今に始まったことではない。これについては数年前に、生物学者のジャレド・ダイアモンドが『銃・病原菌・鉄』(草思社)というきわめて興味深い本を出版しており、二十世紀の技術革新の賜物だと思いがちのグローバル化が、実は古代からの現象であったことがわかる。

 人類の長い歴史において繁栄した文化や政治的思想、経済システム、そして食べ物すら、数カ所を発生の地として世界に広まり、それ以外のものが淘汰されて、現在のような世界が形作られてきた。飛行機、電話、インターネットの影響でずっとその速度は速まったが基本的な類似性は同じである。そして一部の人種が圧倒的に優位を誇り、世界を支配している現代、ジャレド・ダイアモンドはこれを人種の優位性によるものではなく、その生存する地形や動植物を含めた環境にあると結論づけている。つまり、日本人を含めて先進国の人々は運が良かったということだ。
埋まらぬ生活の格差
 今、運の良かった先進国の人々はこの幸運を自分たちの能力と取り違え、第三世界との格差を無視し続け、第三世界の数十億人の何十倍もの資源を消費し、同じくらい大量の廃棄物を排出している。古代と現代の違いは、映画やテレビ番組によって貧しい国の人々が豊かなライフスタイルを知り、それにあこがれているということである。しかし、一つ確かなことは世界中の人間が先進国並みに生活水準を上げることは不可能だということだ。地球の資源は残念ながらそれを維持することはできない。しかし古代のグローバル化の過程において文化の輸出を防げなかったのと同じく、途上国の人が先進国にあこがれることを阻止することはできないのである。

 ここで私たちは大きな問題に直面する。グローバル化を止めることができなければ地球は破滅に向かい、そのためには先進国は生活水準を下げるしかないという、グローバリゼーションの逆説である。しかし日本が利他主義を取り戻せば、取るべき道がどちらかは言うまでもないだろう。アシスト代表取締役)

http://www.nnn.co.jp/essay/tisin/tisin0310.html#09

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