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通貨外交はどうなっているのか
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(2003年10月2日 日本経済新聞(夕刊)「十字路」掲載)
通貨の変動は、貿易よりも直接投資のフローに影響を与える。人民元に対して円が切り上がれば、対中投資は一段と加速し、地方経済の空洞化と地価や賃金の下落を押し進めることになる。
9月20日の七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議での最大の課題は人民元の切り上げを迫ることであったが、日本やアジア諸国の為替介入政策を否定した形の共同声明が発表されたため、ドルと共に、ドルにリンクした人民元が、円、アジア通貨、ユーロに対して全面的に切り下がってしまった。
今春以降の株高によってもたらされた景気回復への期待が、これによって、大きく損なわれてきている。世界的に株価が下落し、債券相場が上昇しているが、これは米国を先頭に世界経済が減速することを見込んだ動きだといってよい。
中国が人民元の切り上げを受け入れないことは明白なのに、ドル切り下げを意図した米国の動きに、日本代表が本気で異を唱えなかったのは誠に無責任といわざるを得ない。
結果としての人民元の切り下げは、日本やアジアの投資を中国に一段とシフトさせ、デフレを加速させるであろう。これはドル安によって輸出を拡大しようとする米国にとっても逆効果である。大統領選挙を控えた米国の政治が、中国をターゲットとした保護貿易に向かうことはまず避けようがない。
人民元が切り上がらないままでの通貨調整は、百害あって一利なし、である。人民元に対する円高の是正には、対ドルで円安の促進するしかない。
円高の是正が難しいのは、必要な資本輸出がスムーズに進まないからだ。資金が国内投資にしか回らない公的年金や郵貯といった公的金融に対して、政治が対外投資を命令する位のことが必要なのではないか。
(中前国際経済研究所代表 中前 忠)
http://www.nier.co.jp/kijikanri/news/news-00522.shtml