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※2025年1月9日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年1月9日 日刊ゲンダイ2面
経済3団体の新年祝賀会でこの笑顔…(右3)/(C)日刊ゲンダイ
よほど、この堺屋太一のフレーズが好きなのか、あちこちでしゃべっているノーテンキ首相。本来、豊かさの先に来る成熟なのに、貧しい暮らしのまま、何を楽しめと言うのか。賃上げもお題目だけ、物価高放置で財界団体とはしゃぐ姿に庶民は怒りにも似た違和感ばかり。
◇ ◇ ◇
「楽しい日本」の大安売りだ。石破首相はよほどこのフレーズが好きなのか、あちこちで得意げにアピールしまくっている。
7日にハシゴして回った新年会でこう挨拶していた。
「国家や経済界が主導するのではなく、一人一人がどうやって楽しさを実感するのかが重要になる。大勢の人の意見を聞いて英知を結集し、豊かで楽しくて安全な日本の実現を目指したい」(経済3団体の新年祝賀会)
「強い日本でもなく豊かな日本でもなく、楽しい日本をつくっていかねばならない。前提として平和で安全な日本でなければなりません。健全な言論がないと民主主義は成り立ちません」(時事通信社の新年互礼会)
2つの会の合間に首相官邸でもこの通り。
「地方の農林水産業やサービス業はまだまだ伸びる余地がある。楽しい日本を皆さん方と一緒に突き詰めたい」(「ディスカバー農山漁村の宝」受賞者交流会)。
前日6日にも年頭記者会見で、「一人一人が実現する楽しい日本、これを国民の皆さま方と共につくり上げていきたい」と表明していたし、大晦日のフジテレビのバラエティー番組に出演した際も「楽しさを実感できる一年にしたい。楽しい日本を目指す」と2025年の抱負を語っていた。しかし、だ。誰もがうなずきたくなるようなフレーズなら何度聞いても気にならないが、そうじゃないから問題なのだ。
具体的なビジョンを示せ
石破が「楽しい日本」を最初に口にしたのは昨年12月24日の記者会見だった。肝いりの「地方創生2.0」の「基本的な考え方」という文脈で出てきたもので、“出典”は作家の堺屋太一氏の著書「三度目の日本」だ。明治政府が富国強兵で目指した「強い日本」、戦後の高度成長期の「豊かな日本」、これに代わる第3の価値観として堺屋氏が提唱したのが「楽しい日本」。石破はそこに自らの解釈を加え、次のように強調したのだった。
「今の多様性の時代にあって、自己実現の場として地域の魅力を高め、都市と結びついた『楽しい日本』を実現すると、そのような観点から地方創生の検討、そして実現、これを図ってまいりたい」
石破がこのフレーズを繰り返せば繰り返すほど、庶民の神経を逆撫でするばかりだろう。楽しいは本来、豊かさの先に来る成熟なのに、貧しい暮らしのまま、何を楽しめというのか。ノーテンキにもほどがある。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「明日どうやって暮らしていこう、仕事がなくなったらどうしよう、と多くの人が不安な気持ちを抱えてなんとか生活しているのに、『石破さんだけ楽しいの?』と国民に誤解されますよ。『楽しい日本』と言われれば言われるほど、気分が落ち込むのが現実。来週16日にはガソリンの補助金が縮小され、5円値上がりします。これでどうやって楽しくなれるのでしょうか。地方創生の充実にしても『またお金を地方にばらまくの?』『また増税なの?』と身構えてしまう。国民はみなマイナス思考になっている。楽しくなれる具体的なビジョンを示して欲しい」
国民がいま求めているのは「令和の日本列島改造」構想じゃない
ただのお披露目だけの武藤容治経産相(経団連会談で)/(C)共同通信社
8日も国民生活の苦しさをひしひしと実感させる経済指標が発表されている。
内閣府による昨年12月の消費動向調査で、向こう半年間の消費者心理を示す消費者態度指数(2人以上世帯、季節調整値)が、前月比0.2ポイント低下の36.2となり、2カ月ぶりに悪化したのだ。
厚労省がまとめた昨年10月の生活保護申請件数は2万1561件で、前年同月比3.2%増だった。増加は4カ月連続。月別データがある12年以降で、10月の申請件数として過去2番目に多かった。
岸田前首相が昨年、「春闘で大幅賃上げが実現した」と大威張りだったが、実質賃金がプラスになったのはボーナス効果の“特殊要因”があった6月と7月だけ。8月以降は実質賃金マイナスが続いている。つまり、物価高に賃上げが追いついていないのだ。
帝国データバンクの調べでは、今年の食料品の値上げは昨年を大きく上回る品数になる恐れがある。庶民は必死に安い店を探し回って買い物をしているが、なるべく買わない、なるべく食べない、と慎ましやかに暮らしても限界がある。
経済評論家の斎藤満氏が言う。
「『楽しい日本』は精神論としては否定しませんが、そう言うのなら、石破首相は日本経済全体を明るくするような政策をつくらなきゃいけない。地方創生を通じて東京一極集中を打破する『令和の日本列島改造』構想は、国民の気持ちと必ずしも一致していない。いま国民が困っているのは物価高であり、生活の困窮です。子ども食堂で食材が足りなくて子どもの貧困が加速するなどの事態も起きています。コメの高騰も深刻。これには減反政策の結果、供給不足に陥っているという政治の責任も大きい。問題山積で楽しくなんてなれませんよ」
“官製春闘”は格差を広げる過剰介入
石破も出席した経済3団体の新年祝賀会で、大企業の経営者からは今年の春闘について前向きな発言が相次いでいた。8日は武藤経産相が経団連の十倉会長らと都内で会談。武藤は「30年ぶりの高い水準となった昨年の勢いで賃上げをしてほしい」と要請していたが、こんなのお題目だけだ。
衣料品の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、国内グループの新入社員の初任給を30万円から33万円に引き上げるというし、三井住友銀行も大卒初任給を25万5000円から30万円にするというが、大盤振る舞いできるのは大企業に限られる。中小企業にとって賃上げは簡単ではないし、中小の倒産が今年は昨年以上に拡大するとも予想されている。「失われた30年」に先進国で日本だけ賃金がずっと横ばいだったツケは大きすぎる。
6日の東京新聞1面に興味深い記事があった。役員報酬の多い上場企業上位100社について、役員と従業員の平均年収の格差を調べたところ、平均66倍だったという。10年前は平均39倍。格差がさらに拡大している。グローバル化で役員には世界の水準が報酬増に影響している一方で、従業員はドメスティックに捨て置かれてきたわけだ。
「賃上げが進まないのには、労働分配率が低すぎるという問題がある。もっとも、だからと言って“官製春闘”のような過剰介入はいかがなものか。そもそも経済が成長し、パイが大きくなれば、政府が賃上げした企業に補助金を出す必要もない。賃上げ促進減税の恩恵は大企業により大きく、中小企業との賃金格差を広げるだけです。むしろ政府がやるべきは、物価高を抑える政策であり、省エネや新技術の開発などへの投資。企業の生産性が上がれば、物価上昇圧力に負けない賃上げができます」(斎藤満氏=前出)
こんな状況で、何が「楽しい日本」なのか。ズレまくりだ。怒りにも似た違和感ばかりが広がっていく。
国民民主党の主張する「年収の壁」引き上げは、「手取りを増やす」と言ってもあくまで減税にすぎず、賃上げに直結するわけではない。それでも国民が喝采したのは、所得が増えず、痛税感が重いことの裏返しでもある。
日本経済全体を考えても、日本製鉄のUSスチール買収計画にストップがかけられたように、トランプ大統領の2期目就任で他の日本企業もどう扱われるのかわからない。
日本中に先行き不安が蔓延し、列島を分厚い雲が覆っている。楽しい気持ちになどなれるわけがない。
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