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※2024年12月21日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
本気度が見えない(C)共同通信社
「派閥の指示だ」というなら、事務局長を参考人招致するのが当たり前だが、それすら拒否の自民党。その気になれば、真相なんかする割れるのに、首相は傍観、当事者は「知らない」と嘯く浅ましさ。こんな政党に振り回される野党にも国民の怒りの矛先。
◇ ◇ ◇
自民党派閥の裏金づくりをめぐり、3日間にわたって開かれた衆参の政治倫理審査会(政倫審)が終わった。旧安倍派と旧二階派の計19人が弁明に立ったが、予想通り、「知らなかった」「派閥の指示に従った」などの言い訳ばかり。
これで衆院は、裏金事件に関係した現職議員全員の審査が終了。参院も残り22人が20日になって一転、全面公開での審査を受け入れると言い出した。「禊は済んだ」と幕引きに急ぐ自民党の思惑が透けて見える。
しかし、だ。今年の2〜3月もそうだったが、政倫審を何度開いても、国民の疑念はまったく晴れない。旧安倍派の裏金づくりは、いつ、誰が、どうして始めたのか。いったん、廃止を決めたキックバックをなぜ再開したのか。いずれも解明されていないのだから当然である。
そこで、立憲民主党など野党各党が20日、衆院予算委員会の理事懇談会で、旧安倍派の事務局長兼会計責任者だった松本淳一郎氏の参考人招致を改めて要求した。ところが、自民、公明両党は松本氏が民間人であることなどを理由に拒否したという。招致は全会一致が原則のため、与野党で引き続き協議するというが、そんなフザケた話があるものか。
政倫審で旧安倍派の中核をなした「5人組」のひとり、萩生田光一元政調会長は、キックバックを政治資金収支報告書に不記載としたのは、「2004年の派閥パーティーの際、派閥の事務局長から指示された」と主張した。柴山昌彦元文科相も時期は14年と異なるが、「事務局から要請された」と話した。事務局主導だというのならば、経緯を知り得る立場の事務局長を国会に呼んで、説明を求めるのは当たり前だ。
それに、立件された松本氏が自身の公判で証言した内容と旧安倍派幹部らが政倫審で語った内容が食い違ったままなのだ。
安倍晋三元首相が派閥会長だった22年4月にキックバックをやめると決めたが、死去後の同年8月の幹部会合後に再開された。当時幹部の塩谷立、下村博文、世耕弘成、西村康稔の4氏は3月の政倫審で、「会合では結論は出なかった」と説明し、一方、松本氏は「4人の協議で決まった」と法廷で証言した。さらに松本氏は、「ある幹部から再開の要望があった」とも証言しているのである。松本氏を国会に招致するしかないだろう。
国民に対する説明責任を果たせ
つまり、その気になれば真相なんてすぐに割れるのだ。それなのに、旧安倍派はやらない。自民党もやらない。あれだけ衆院選で大惨敗し、痛い目に遭ったのに、それでも国民の疑念に真摯に向き合う気がない。そういうことだ。
1人1時間弱の政倫審を何人も重ねたって、実態解明には近づけない。やはり幹部4人を偽証罪が適用される証人喚問に引っ張り出すしかないのではないか。
幹部以外でも1000万円を超える裏金をつくっていた議員が「ただの不記載」だと政倫審だけで済まされていいのか。裏金2728万円の萩生田と裏金10万円の当選1期生の悪質さが同じなわけはない。当事者なのに「知らない」と嘯く浅ましさ。萩生田は「2004年に不記載を指示された」と主張するのならば、当時の派閥会長である森喜朗元首相に、なぜ経緯を自ら確認しないのか。
法大大学院教授の白鳥浩氏(現代政治分析)はこう言う。
「政倫審に出た議員らは、一体、誰に対して弁明しているのでしょうか。役職復帰や参院選での公認目当てという党内向けで、国民に対して説明責任を果たす姿勢が見えない。今後はもう少し強制力のある参考人招致や証人喚問に進むしかありません。石破首相も他人事のように傍観している。衆院選に敗れ、裏金問題の真相究明に動くのかと思いきや、今までの自民党総裁と何も変わらないじゃないですか。自公が過半数割れした与野党伯仲下で、野党が一致すれば内閣不信任案が可決されるというのに、そうした危機感が自民党から感じられない。野党がバラバラなことに自民党が救われている面もあります」
国民民主と維新を両天秤に、結局、自民ペース
裏金2728万円(萩生田元政調会長)/(C)共同通信社
少数与党に転落し、政権運営に汲々とする石破政権は、確かに野党に譲歩しまくりで、法案の修正、丸のみを連発している。
とはいえ、総額13.9兆円の巨額補正予算は、国民民主党と日本維新の会が賛成に回り、アッサリ成立。裏金事件も真相究明されず、政治資金規正法の再改正という“再発防止策”の問題にすり替わった。
野党はそれぞれが少しずつの“手柄”をもらって、満足しているようす。国民民主は「年収103万円の壁の引き上げ」。維新は「教育無償化の協議」。補正予算自体には反対した立憲も、能登地域の復興経費1000億円を積み増すことで、与党が望む委員会採決の日程に応じた。
で、補正予算が成立したら自公は現金なもので、年収ラインの引き上げ額について、国民民主が求める178万円からほど遠い「123万円」しか提示せず、国民民主は激怒し、協議打ち切りを宣言。しかし、20日、来年度の税制大綱が決定した後、国民民主は「引き続き協議を進める」と復帰した。
自民が維新にも秋波を送っているから焦ったか。自民が国民民主と維新を両天秤にかける相変わらずの「国対政治」と駆け引きが続いている。
「自民党のやり方は『肉を切らせて骨を断つ』ようなものです。政治資金規正法の再改正で、野党は自民党に政策活動費を全廃させたと喜んでいますが、第三者機関の設置や収支報告書のデータベース化など、詳細はよく分からない。どうも野党側の詰めが甘く、結局、自民ペースで進んでいるのではないですか。補正予算も予定調和で成立した。過去にトリガー条項や旧文通費をめぐって自民にだまされたことがあるのに、国民民主も維新も学習能力が足りません」(白鳥浩氏=前出)
カネと権力だけの貧困な精神
先の衆院選で有権者が自民党に鉄槌を下したのは、裏金政治、金権腐敗政治への怒りが頂点に達したからだ。
庶民は日々、カツカツの生活を強いられている。円安物価高は止まらず、食品の値上げラッシュは来年も続く。帝国データバンクが先月末に公表した調査では、年明けから来春までの飲食料品の値上げは3933品目に及び、前年同時期に公表した今年の値上げ品目見通し(1596品目)を倍以上も上回った。
実質賃金はマイナス。だから、国民民主の「手取りが増える」という選挙公約に有権者は飛びついた。それなのに、自民党議員は「政治にはカネがかかる」「民主主義にはコストがかかる」と開き直り、驚くべき金銭感覚のルーズさで、数百万、数千万円を裏金にして「知らなかった」「派閥が」「秘書が」と嘯く。もう、いい加減にしろ、である。
経済評論家の斎藤満氏が言う。
「一般国民のために奉仕するという本来の政治家像から逸脱した議員が与党に目立ってきたように思います。『政治業』は高所得業界。政治家になる目的が、権力を持って、お金を自由に動かすことだと考えるような、貧しい精神の持ち主ばかりになってきた。補正予算の編成に政治の貧困が象徴されています。規模ありきで緊急性の低い予算まで後から付け足し、我々の血税を弄んでいる。財政の本来の機能は経世済民の手段。余裕のある人から困っている人へのお金の分配です。こんな政治が続いていいわけがない。政治そのものを変えないと、格差がますます広がり、日本経済も衰退の一途です」
やはり、自民党を政権から引きずり降ろさなければ、何も変わらないのだ。
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