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※2024年12月10日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2024年12月10日 日刊ゲンダイ2面
石破政権に「政治とカネ」の反省なし…自壊に向ってましぐら
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/364710
2024/12/10 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
挙手の仕方もなっていない(C)日刊ゲンダイ
韓国の混乱、米国の政治空白、世界中の政治が麻痺しているなかで、保身に窮地の石破政権。口先だけの反省、ゴマカシを繰り返し、いつまで堂々巡りを続けるのか。茶番国会による政治の停滞に国民の怒り。
◇ ◇ ◇
「私はもうシリア難民ではない。私はシリア人。ただのシリア人です」--SNS上では歓喜の声が渦巻いている。シリアのアサド政権が崩壊した。先月下旬から電撃的な攻勢をかけた反体制派に屈し、父の代から半世紀以上も続いた強権体制が、ついに幕を閉じたのだ。
2011年にシリアが泥沼の内戦に陥って以来、人口の半数以上が戦火や迫害から逃れ、国内外への避難を強いられてきた。難民の数は今年2月時点で約505万人。国内では約720万人が避難生活を余儀なくされ、人道援助が必要な人の数は約1670万人とされる。
この間、欧州に救いを求める難民も急増。欧州全域に100万人単位で押し寄せ、移民・難民排斥の機運も高まっていった。多くのシリア難民を受け入れたドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ハンガリーなどで反移民・反イスラムの極右政党が台頭。国際協調の価値観が揺らいでいる。シリアの混乱が、巡り巡って欧州全域に不安定な政治体制をもたらした。いわゆる「バタフライ・エフェクト」である。
はたしてアサド政権崩壊により、次なる国際社会への影響はどのような形で訪れるのか。シリア支援を強調する米国もまた、トランプ次期大統領への政権移譲に向けた政治空白期に差しかかる。シリア同様、リスクと不確実性に直面するのだ。
一方、アサド政権を長年、支援してきたのはロシア、イラン、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラだ。シリアはイランによるヒズボラ支援の重要な「補給路」だったため、イスラエルとパレスチナ自治区ガザの戦闘や停戦中のレバノンの状況に影響を与えるのは必至である。
アサドが亡命したロシアのプーチン政権も混乱から逃れられまい。地中海地域におけるプレゼンス低下は長期化するウクライナ侵攻に、いかなる変化を及ぼすのか。ロシアとの連携強化を図ってきた中国や北朝鮮にも恐らく影響は伝播し、北朝鮮と対峙する韓国は「非常戒厳」を宣布した尹錫悦大統領の暴発を機に大混乱のさなかにある。
シリア発の混沌は東アジア情勢にも広がっていくに違いない。世界中の政治が麻痺しているなかで、深刻なバタフライ・エフェクトからポツンと取り残されているのが、この国の政治である。
世界の転換期に代わり映えのない日本政治
有権者に「政治とカネ」の金権腐敗が忌避され、石破自民党は総選挙で大惨敗。少数与党に追い込まれながらも「政治改革」には後ろ向き。国民の6割が廃止を求める企業・団体献金の死守に汲々とするありさまだ。
石破首相は臨時国会の答弁で野党の協力を得る「熟議の議論」を強調。「選挙結果を謙虚に厳粛に受け止め、誠心誠意『お願いですからわかってくださいな』という姿勢が必要」などと言うのだが、「反省」は口先だけのポーズに過ぎない。
政治資金規正法の再改正を目指す衆院政治改革特別委員会の審議が10日からスタート。ところが、裏金事件で「政治とカネ」の問題の再発防止に最も取り組むべきの自民案は、企業・団体献金に触れないまま。党政治改革本部の小泉進次郎事務局長らは「そもそも禁止すべきだと思っていない」と完全に開き直っている。
企業・団体献金の最大の問題は、カネによって政治が歪められることだ。何の見返りもなく、自民に大金を積むわけがない。
石破も国会答弁で企業献金が政府の政策決定に影響を与えてきた可能性を認めながら、「国益に資する」内容に限定した。その理屈は「日本の会社は日本の利益を考えている。会社法で律されている。企業・団体の自分たちの利益と国益が相反すると私は思っていない」──。まったくの詭弁にしか聞こえない。
自民案は使い道の公開義務のない「政策活動費」の廃止を盛り込んだものの、外交関連などの支出は「要配慮支出」と称し、非公表にできるとしていた。さすがに非公表はマズイと提出直前に修正したかと思いきや、「要配慮だと何か隠そうとしているのではないかと言われる」(自民幹部)として名称を「公開方法工夫支出」に変えただけ。「抜け道」はしっかり残し、事実上の裏金温存に躍起だ。
嘘とゴマカシでしらばっくれる。少数与党に陥っても堂々巡りの国民愚弄は相変わらずだ。この政権に「政治とカネ」の反省なし。石破のやっていることは「政敵」だったはずの安倍元首相の1強政権時代から何ひとつ変わっていないのだ。
実入りは死守、血税はしょせん他人のカネ
世界の転換期が次々にー このままでは日本はきっと取り残される(アサド政権崩壊で歓喜するシリア難民)/(C)ロイター
一方、9日から総合経済対策の裏付けとなる補正予算案の審議が始まったが、一般会計の総額13兆9433億円のうち、ほぼ半分の6兆6900億円を国債の追加発行で賄う。予算規模は東日本大震災後などの復旧・復興経費に匹敵するが、災害が相次いだ能登半島の復興に充てられる費用は2684億円にとどまる。
財政演説で加藤財務相が「日本経済は、33年ぶりの高水準の賃上げ、名目100兆円超の設備投資、名目600兆円超のGDPを実現するなど、前向きな動きが見られます」と胸を張る中、これだけの規模の経済対策が必要なのか。
支出の中身も緊急性や妥当性が疑わしいものだらけ。
例えば、政府が見直しを始めたムダの温床である「基金」には、今回も半導体支援などに計3.5兆円も投じる。総選挙の第一声で石破が「昨年(13.2兆円)を上回る大きな補正予算を」と宣言した手前、規模ありきの水増し補正としか言いようがない。
「企業献金や政策活動費など自分たちの実入りは必死で守るのに、血税の使い道はしょせん“他人のカネ”と言わんばかりに水膨れです。石破首相のメンツを守る『保身』のために国の借金を積み増し、次世代にツケを回す。あれだけ大敗しながら、総選挙が終われば“みそぎ”が済んだと居直り、変節と手のひら返しの連続。国民民主党など『ゆ党』を巻き込めば、政権運営はしのげると妙な自信を深めているとしか思えません。そうだとすれば『茶番国会』です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
企業献金こそ30年に及ぶ停滞のシンボル
世界の歴史が大きな転機を迎える中、日本政治の光景は一向に代わり映えがしない。そもそも、企業献金廃止は30年来の「政治の宿題」だ。リクルート事件や佐川急便事件などを受けた1994年の「平成の政治改革」で税金を原資とする政党交付金の導入に伴い、政治家への企業・団体献金は禁止された。さらに全面禁止に向け「5年後に見直す」とされたが、今になって石破は「廃止の方向となったというような事実はございません」とシラをきっている。
「30年来の宿題を片づけられない政権に、この国の30年に及ぶ停滞を解決できるわけがない」と言うのは、高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)だ。こう続けた。
「過去30年、日本は国際競争力のある新たな産業を生み出せず、国際社会における外交プレゼンスも低下の一途です。企業の海外進出は停滞気味で、いつまでも内需頼み。90年代に世界一だったODAも激減し、国際社会から資源と安全を得る手段も失われました。今の日本は内向きで守りの姿勢ばかりが目立ち、イノベーションを起こせません。国に寄生していれば何とかなるという企業風土がはびこり、実際に公共投資や補助金で生き永らえているゾンビ企業も多い。こうして30年もの長期停滞を招いた旧態依然の利権構造の象徴こそが、企業献金なのです。構造転換を図り、ぬるま湯体質から抜け出さなければ、この国は歴史の濁流にのみ込まれてしまいます」
まっしぐらに石破自民が自壊に向かうのは勝手だ。しかし、この国までぶっ壊し、世界に取り残されるのは、有権者が阻止しなければいけない。
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