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※2024年12月9日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年12月9日 日刊ゲンダイ2面
「口だけ反省」仰天答弁、居直る悪辣さは自民党の宿痾(C)日刊ゲンダイ
94年の政治改革の際に付則に盛り込まれた企業・団体献金の「5年後見直し」を巡る石破首相の仰天答弁。こうして「ロだけ反省」で逃げ切り、その後、居直る悪辣さは利権政党・自民党の宿痾だろう。
◇ ◇ ◇
何が何でも企業・団体献金を死守したいらしい。金権腐敗政治が国民から嫌悪され、総選挙で惨敗したというのに、それでも政治改革に本気で取り組むつもりはないのが石破自民党だ。とことんナメくさっている。
石破首相が就任後、初めて臨んだ予算委員会でも、「政治とカネ」「政治改革」が議題になった。石破は7時間の審議をほぼひとりで答弁して乗り切ったなどと話題になったが、その内容は石破が就任当初によく口にしていた「共感と納得」とはほど遠いものだった。特にひどかったのが、「企業・団体献金」をめぐる答弁だ。
5日の予算委で質問に立った立憲民主党の野田代表は「政治とカネの不祥事を起こさないため、改革の本丸は企業・団体献金の禁止だ」と指摘。1994年に成立した政治改革関連法で企業・団体献金については廃止の方向で法改正が行われたことに触れて、廃止に向けて「年内に決着をつけよう」と迫った。
すると、石破は「94年の政党助成法成立時に、政党助成金(政党交付金)を導入する代わりに企業・団体献金は廃止の方向となったというような事実は実際にございません」とシラをきってみせたのだ。恐るべき厚顔ではないか。
確かに、企業・団体献金の廃止は明文化されてはいない。しかし、政治改革関連法の付則には、政党や政党支部に対する企業・団体献金は施行後5年をメドに「見直しを行うものとする」と書かれている。この時に政治家個人への企業献金は禁止された。その上で、政党に対するものは5年後に見直すという付則の趣旨を考えれば、企業・団体献金を廃止するという全体の方向性は明らかなのに、石破は「見直しは廃止を意味しない」という牽強付会な論理で押し通そうとするのである。
元衆院議長の証言もガン無視
94年の政治改革当時はリクルート事件や佐川急便事件など自民党の「政治とカネ」が社会的な問題になっていた。金権腐敗を防ぐための政治改革が行われ、政治家への企業献金を禁止する代わりに、税金から政党交付金が払われることになった。当時を知る者からすれば、これが常識だ。企業献金をなくすというから、われわれ国民は1人あたり250円の負担を受け入れたのだ。
実際、94年当時に野党だった自民党総裁として細川護熙首相と政治改革の合意を交わした河野洋平元衆院議長も、昨年12月に公表された衆院事務局によるオーラルヒストリーで「公費助成が実現したら、企業献金は廃止しなきゃおかしい」と述べている。「自民党は何億と企業献金をもらっていて、来年からいきなり廃止というわけにはいかないので、激変緩和のための時間が欲しいと提案し、5年後に見直しという条件で企業献金を廃止することで合意できた」と証言しているのだ。
野田は「(94年の)背景を忘れてはいけない。ごまかさないで、忘れないできちんと対応しましょう」と訴えたが、石破は「公的助成が入ったので企業・団体献金がなくなるという意識を持った者は、少なくとも自由民主党にはいなかった」と言ってのけた。よくもまあ、イケシャーシャーと……。国民は口をアングリだ。
30年前、若手議員として政治改革に熱を入れたはずの石破が、当時の事実関係を知らないはずがない。それが、企業献金を維持するために歴史を修正しにかかる。この居直りには利権政党の神髄を見る思いだ。
国民との約束を平気で反故にする。嘘とゴマカシでしらばっくれる。問題が起きた時だけ反省するフリをして、ほとぼりが冷めたらやりたい放題。あわよくば焼け太り。付則の文言を入れる時から、後で骨抜きにする算段でいたのだとしたら、国民愚弄も甚だしい。
企業献金の9割が自民党に流れ政官財癒着の温床に
政治改革の合意を交わし、共同記者会見を終え握手する細川首相(右)と河野自民党総裁=1994年(C)共同通信社
自民党議員は口をそろえて「政治にはカネがかかる」と言う。それで企業・団体献金の存続を主張しているのだが、いったい何にそんなにカネがかかるのか。
「政治家個人への企業・団体献金を禁止したところで、政治家の『第2の財布』といわれる政党支部への献金は30年間、続いてきた。政党支部の代表は国会議員だから、ただのトンネルです。政治資金パーティー券の購入という形での資金提供もある。そうやって集めたカネを選挙のために使う。受け取る献金額が多い自民党が、カネの力で権力を維持してきたのです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
自民党議員は「野党幹部も昨年まで献金を受け取っていた」などと言って問題をスリ替えようとするが、企業・団体献金の9割が自民党に流れている。企業献金は取りも直さず自民党の問題なのである。
2023年分の政治資金収支報告書の集計では、企業・団体献金の総額18億9513万円のうち17億8437万円を自民党の支部が受け取っている。支部とは別に、自民党本部の政治資金団体「国民政治協会」も企業・団体から約24億円の献金を受けている。
「約160億円もの政党交付金を受け取りながら、『まだ足りない、もっとよこせ』と企業・団体からもカネを集めるのが自民党の政治姿勢ですが、カネを出す企業側にも問題がある。企業にとって何のプラスにもならないのに巨額のカネを流し続ければ背任にあたるでしょう。それなのに従業員や研究開発などの事業に使わず自民党に巨額の献金をし続けてきたのは、それだけのウマミがあるからです。つまり、カネで政策が歪められてきた。法人税の減税分を消費税増税で賄うような大企業優遇の政治が続き、国民生活は顧みられなくなった。企業・団体献金は政治腐敗の元凶なのです」(五十嵐仁氏=前出)
政策もカネ、選挙もカネ
問題だらけのマイナカードは象徴的だ。ひも付けミスなどのトラブルが多発して国民の不安は根強いのに、政府は2日から「マイナ保険証」への一本化を強行。マイナカードと健康保険証や運転免許証との一体化をゴリ押しする背景には、自民党と大企業の癒着がある。
共産党の山添拓議員が6日の参院予算委で示したパネルによれば、マイナンバー事業の受注大手5社が13〜21年の9年間で自民党側に7億円超を献金。それで2810億円もの巨額発注を受けていたという。例えば、トップが経団連会長を務めていた日立製作所は3億円超を献金し、22年度までにマイナンバー関連事業を94億円も受注したとされる。
同時に、これらの献金企業には経産省や総務省、内閣府などの幹部がゾロゾロ天下っているのだ。政官財の癒着──これぞザ・自民党政治という感じがする。
マイナ保険証への強制移行について、総裁選では「不利益を感じる人がいる状況があれば、(現行保険証との)併用も選択肢となるのは当然」とか言ってた石破も、首相になった途端に手のひら返し。予算委で「適切な医療の提供に大きく寄与する」と利点を強調していた。
政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「政策はカネ、選挙もカネ、カネありきの政治が自民党の本質です。石破首相も例外ではない。石破政権には防衛相経験者が3人もいますが、自民党は軍事産業からも多額の献金をもらっています。それで軍拡を進め、兆円規模の税金で軍事産業に発注をし、防衛費の増額が必要だからと増税を言い出す。税金で軍事産業を儲けさせ、そのツケは国民に回すのです。こんな腐敗政治は今こそたださないといけません」
10日からは政治改革特別委員会での審議も始まる。複数の野党が共同で企業・団体献金を禁止するための法案を国会に提出する方針だが、自民党が示した政治資金規正法再改正の要綱案には、企業・団体献金の扱いが明記されなかった。自民党政治改革本部の小泉進次郎事務局長は「そもそも禁止すべきだと思っていない」と開き直る始末だ。
自民党が政権の座にあるかぎり「政治とカネ」の問題はなくならない。金権腐敗政治を一掃するには、やはり政権交代しかないのだ。
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