<■596行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 米、ウクライナへ追加の軍事支援1千億円超 対人地雷、対無人機用兵器 2024/12/3 7:00 https://www.sankei.com/article/20241203-RTTQF47CJJPCZIELPDQKFWDXWY/ 米政府は2024年12月2日、ウクライナに対する7億2500万ドル(約1083億円)の追加軍事支援を発表した。 大統領権限で米軍の備蓄から対人地雷や対無人機用兵器を供与する。 来年2025年1月に就任するトランプ次期大統領は支援に消極的で、バイデン政権は任期中に支援を可能な限り進める構え。 オースティン国防長官はウクライナのウメロフ国防相と電話会談し、引き続き支援を強化すると伝えた。(共同)NATOのルッテ事務総長、トランプ氏の「早期ウクライナ和平」に警告 2024/12/3 6:48 https://www.sankei.com/article/20241203-PFHNFULNKNPRHC5QSH4VXHK2G4/ 北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は、トランプ次期米大統領がロシアのウクライナ侵攻を巡り意欲を見せる早期和平の危険性を警告した。 ロシアに有利な条件で和平を結べば中国や北朝鮮の動向に影響を与え、将来的に米国への脅威が高まると訴えた。 英紙フィナンシャル・タイムズが2024年12月2日、インタビューを報じた。 ルッテ氏は、和平合意でロシアによるウクライナの領土の占領継続を許した場合、台湾の平和統一を目指す中国の習近平国家主席は 「別の事を考え始めるかもしれない」 と指摘。 中国が武力の使用を検討する可能性があると懸念した。 更にロシアがミサイル技術を提供することで、北朝鮮が 「日韓だけでなく米本土に深刻な脅威をもたらす」 とした。(共同) ゼレンスキー氏、NATO加盟へ招待要求 戦況「極めて厳しい」 日本の支援には謝意 2024/12/2 0:24 https://www.sankei.com/article/20241202-LKBXDL5TOJPDHIIEGU22CUOSPU/ ウクライナのゼレンスキー大統領は2024年12月1日、首都キーウ(キエフ)の大統領府で共同通信と単独会見し 「ウクライナの安全を保証するには北大西洋条約機構(NATO)が重要だ」 と述べ、NATO加盟交渉への招待を強く求めた。 ロシア軍はウクライナ東部戦線で進軍を続けており、戦況は極めて厳しいとの認識を表明。各国の支援は不十分だと訴えた。 ゼレンスキー氏は、NATOに代わる安全保障の枠組みはないとの考えを示し、早期加盟を目指す考えを表明した。ウクライナの最大支援国である米国のトランプ次期大統領の政権移行チームでは、ウクライナのNATO加盟を棚上げして戦争を終結させる案が浮上しているとされる。 ゼレンスキー氏は、ロシア西部に展開中の北朝鮮兵が戦闘で死亡するなどしていると説明。 具体的な人数には言及しなかった。 日本の支援には謝意を改めて表明し、 「ウクライナは日本と共にある」 と強調。 石破政権との協力拡大に意欲を見せた。(共同) 日欧は独裁陣営の第一の標的 安全保障に投資し、ウクライナで独裁止めよ 国際政治学者グレンコ・アンドリー 2024/12/1 8:00 https://www.sankei.com/article/20241201-63FQGDIPBNJCVHFARKMWDYXFA4/ トランプ次期米大統領は 「米国第一」 を掲げており、国際問題への関心は高くない。 直近の16年間を振り返っても、オバマ政権以降の米国には、国際問題の解決に関わろうという意思が明らかに減っている。 程度の差はあるが、民主、共和の両党が国内重視になっている。 孤立主義傾向の強いトランプ次期政権も、厳しい世界の現実に直面し、完全に国際問題を放置するのは難しいと理解するかもしれない。 とはいえ、米国以外の自由民主主義諸国が、米国の選挙結果や指導者の個性、能力に左右されるのは危険だ。 日本と欧州は安全保障の分野で、自ら出来ることは自分たちでせねばならない時代になった。 地理的にも、世界の秩序変更を狙う中国、ロシア、北朝鮮、イランという独裁国家陣営と隣接しているのは、米国ではなく日欧だ。 真っ先に覇権主義の標的となり得るのだから、米国依存を減らし、大幅な防衛費増加、防衛力強化に舵を切って然るべきだろう。 日欧と米国では軍事力に大きな差があると思われるかもしれない。 今は確かにそうなのだが、日本、欧州連合(EU)、英国、カナダの国内総生産(GDP)を足せば、ちょうど米国と同等である。 これらの国々が防衛費を大幅に増やし、軍備強化や軍需産業の活性化に全力を尽くせば、米国に追い付かないにせよ、かなりの事が出来るに違いない。 また、日欧が最大限の防衛力強化を行えば、米国もある程度は協力するだろう。 米国が最も嫌うのは安全保障の丸投げだ。 日欧が主体となり、それを米国ができる範囲で支えるということならば協力を拒否しまい。 防衛産業がまだ十分に発達していない日欧が資金を用意し、大量に米製武器を買うという取引も米国は拒まないと考えられる。 ウクライナ支援も、こうした文脈に位置づける必要がある。 トランプ氏が消極的だとしても、日欧が主体となり、やれるだけのことを全てやるべきだ。 当面はロシアが勝てないように、ウクライナが侵略を食い止められるように支える。 時間が経てば、ウクライナの防衛産業が発展し、違う局面が訪れるだろう。 「なぜ関係ない国の支援をせねばならないのか」 と思われる方もいるかもしれない。 しかし、ロシアがウクライナで勝てば独裁陣営の国々は暴走し、あちらこちらで戦争が起きる。 そうなった時に最も困るのは、日欧である。 日欧によるウクライナ支援は、慈善事業ではなく、自らの安全保障への投資だ。 ウクライナの敗北後に自分たちで戦うより、今ウクライナを支援し、独裁陣営の暴走を食い止めたほうが遥かに安く、被害も少なく済む。 ◇ グレンコ・アンドリー 1987年、ウクライナ生まれ。 キーウ国立大卒。 京大院指導認定退学。 露を恐れるのは無意味だと証明したウクライナの越境作戦 国際政治学者グレンコ・アンドリー 2024/9/29 8:00 https://www.sankei.com/article/20240929-GTYOOYKDEBNUBHQMIOTXXWCDDI/ ウクライナ軍が2024年8月上旬に始めたロシア西部クルスク州への越境作戦については、様々な議論がある。 軍事戦略上の効果やロシアに対する揺さ振りの効果がどれほどかは、時間が経てば自然と見えてくるだろう。 だが、極めて大事なことは既に分かった。 自由民主主義諸国のいわゆる 「エスカレーション(拡大・激化)論」 には根拠がないということだ。 エスカレーション論とは、ロシアを刺激し過ぎれば、ロシアが核兵器を使ったり、ウクライナ以外の国を攻撃したりと、軍事行動を拡大・激化させるのではないかという考え方である。 自由民主主義諸国はエスカレーションを恐れる故に、ウクライナが必要とする武器を種類と量の両面で限定的にしか供与せず、露国内への攻撃を原則として禁止してきた。 エスカレーション論が間違っていることはもとより論理的に明らかだった。 もしロシアが核兵器を使えば自由民主主義諸国の軍事介入を招き、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)からも見放される恐れがある。 勝利どころか敗北に繋がるのでロシアは核兵器を使っていない。 また、ウクライナにさえ勝てないロシアが、他の国まで攻撃する可能性は低い。 戦線拡大や兵力分散、敵の数が大幅に増えることにより、勝利の可能性は激減するからだ。 これまでエスカレーション論が誤っているというのは理論上のことだった。 だから 「ロシアが行動を激化・拡大させない保証はない」 という懸念があったことは理解できる。 しかし、クルスク州への越境作戦により、エスカレーション論の誤りは実証された。 露領への越境攻撃と領土占領ほど強い刺激はないだろう。 ロシアの町にウクライナ国旗が掲げられ、露国民の一部がウクライナの統治下にある状態は、ミサイルで軍需工場などを破壊されるよりも強い刺激だ。 それでも恐れられたエスカレーションは起きていない。 自国領を占領されてもロシアは核兵器を使わないのだから、仮にウクライナ全土が解放されても使うことはないだろう。 ロシアには核兵器使用の指針文書があり、そこには 「国家の存在が危険に晒される場合」 に核を使い得るとある。 文字通りに解釈すればよい。 首都モスクワを攻められたら核を使うかもしれないが、ウクライナにその意図も国力もない。 自由民主主義諸国は何も心配せず、ウクライナの勝利に必要な武器を全て提供し、露国内への攻撃制限を撤廃すべきだ。 ロシアを過剰に恐れるのは有害である。 戦争が長引き、ロシアが勝利した場合の方が世界にとっての結果は恐ろしいものとなる。 ◇ グレンコ・アンドリー 1987年、ウクライナ生まれ。 キーウ国立大卒。 京大院指導認定退学。 露が勝利なら民主主義陣営が「自壊」の恐れ ウクライナ支援は国益にかなう戦略だ 国際政治学者 グレンコ・アンドリー 2024/7/29 8:00 https://www.sankei.com/article/20240729-VKFKZNAUT5MRTCMFTGHVUQQUSI/ ロシアの侵略を受けるウクライナへの支援は本当に必要なのか。 こんな疑問を持つ人は一定数いる。 ウクライナに何が起きても自国には関係ないという考え方だ。 しかし、実際には決してそんなことはなく、自由民主主義諸国に大いに関係がある。 ウクライナが敗北してロシアに占領されたら、世界はどうなるか。 ルールに基づく国際秩序が崩壊し、独裁国家が暴走する。 各地で戦争が起きやすくなる。 この事は何度も指摘されてきたが、危険性はそれだけではない。 筆者が非常に危惧するのは、自由民主主義陣営が言わば 「自壊」 する事態だ。 ロシアなどに宥和的な勢力が各国で台頭して政権に就き、結果として中露など強権主義陣営の伸長を許してしまうシナリオである。 ロシアがウクライナで勝てば、西側諸国では 「ロシアは強過ぎる」 「西側はウクライナを支援したが、それでも占領を防げなかった」 との印象が広がる。 そして各国で2つの政治勢力が競る可能性がある。 「強いロシアの脅威に備えねばならない」 という勢力と、 「強いロシアとは仲良くして平和を維持すべきだ」 と主張する勢力だ。 国際情勢を十分に理解しない一般国民は選挙で後者に投票し、親露派政権が誕生するのではないか。 あり得ないと思われるかもしれないが、既にハンガリーやスロバキアの政権は親露派だ。 フランスやドイツ、英国でもポピュリズム(大衆迎合主義)勢力が最近の選挙で躍進した。 米大統領選で共和党の候補指名を得たトランプ前大統領も同じ系譜の人物である。 こうした勢力は、ロシアに宥和的で国際問題に余り関心がない。 自国ファーストを掲げており、有事であっても同盟国を助けないという考えに至りかねない。 この勢力が各国で政権をとれば、第二次大戦後の国際秩序で根幹を成した西側の集団防衛体制は形骸化する恐れがある。 北大西洋条約機構(NATO)や日米同盟、米韓同盟などが形骸化して最も喜ぶのは中国やロシアだ。 ロシアは労せずに旧東側諸国を衛星国にし、中国は欲しい国・地域を征服していく。 各国・地域で権威主義化が進み、自由民主主義圏は大幅に縮小しかねない。 これは西側諸国の国民にとって悲劇であり、現体制なり現在の指導層にとっては脅威となろう。 独裁国家に宥和的な勢力の台頭を防ぐには、ウクライナで侵略者を明確に敗北させ、大きな打撃を与える必要がある。 ウクライナ支援の加速と拡大が不可欠だ。 支援は慈善事業なのではなく、全ての自由民主主義諸国の国益に適う重要な戦略である。 この事を西側諸国の国民と指導層に再認識してほしい。 ◇ グレンコ・アンドリー 1987年、ウクライナ生まれ。 キーウ国立大卒。 京大院指導認定退学。 ロシア国内を西側の武器で攻撃できない…ウクライナを縛る足かせ 国際政治学者 グレンコ・アンドリー 2024/5/26 8:00 https://www.sankei.com/article/20240526-3D4ITVQ2VJOF5OXSEAZU4A74P4/ 今回の侵略戦争を始めてから、ロシアは多くの失敗を重ね、多大な損失を被った。 しかし、露指導層はこの失敗から学び、次第により成功率の高い戦術に変えつつある。 ロシアの国防相交代は、プーチン大統領が失敗に学んでいる証拠の1つだ。 国防相に軍人ではなく、経済戦略家であるベロウソフ氏を任命したことについて、多くの専門家が 「ロシアは長期戦に備えている」 とコメントしている。 この分析は正しいが、十分ではない。 正確には、ロシアは 「長期的な総力戦」 に備えている。 国の全ての資源、産業、人材、財政などを戦争での勝利に集中的に使うつもりなのだ。 長年の総力戦に備え、軍需産業の活性化を狙っているロシアに対して、自由民主主義諸国はどのような対応を取るべきか。 端的に言えば、ウクライナの勝利、ロシアの敗北のために本格的に動く必要がある。 対露経済制裁の強化に加え、ウクライナへの武器提供を拡大することが不可欠だ。 露軍が武器の量を増やす場合、これに対抗する唯一の方法はウクライナ軍も武器の量を増やすことである。 各国がこれを理解して軍需産業を活性化させ、最大限の武器提供に踏み切らなくてはいけない。 西側製の武器でロシア国内を攻撃してはならない、という有害な制限もなくす必要がある。 この制限は元々おかしいが、今後は勝敗を決める要素になるかもしれない。 ロシアは軍需産業の活性化に全力を尽くし、武器製造の拡大を狙っているのだから、当然、露軍需産業施設を破壊しなければならない。 このために西側製の長距離ミサイルも不可欠だ。 ロシアを刺激すればエスカレーションが起きる恐れがあるとして、各国が慎重になっていると言われる。 しかし、ロシアはウクライナで勝たない限り、他の国を攻撃しないだろう。 ロシアが他の国を攻撃するとしたら、ウクライナを征服してからだ。 敗北を意味する 「2正面作戦」 のような愚かなことを、ロシアは絶対にしまい。 ロシアが他の国を攻撃できなくするには、ウクライナで敗北させるのが一番良いのだ。 ロシアは負け過ぎると核兵器を使うのではないかとも懸念されている。 だが、西側は2022年に既に、核兵器を使えば介入すると明言し、ロシアを牽制した。 ロシアは、西側が介入すれば自分たちは敗北するとよく分かっている。 ロシアに核を使わせないよう、明確なメッセージを発することが何より重要だ。 ウクライナに対する武器支援の加速、拡大はこれまでにも増して重要な課題になった。 根拠のない懸念やロシアの脅しを顧みず、自由民主主義諸国が本気を出す時だ。 グレンコ・アンドリー 1987年、ウクライナ生まれ。 キーウ国立大卒。 京大院指導認定退学。 なぜロシアと戦うのか…これはウクライナの独立戦争だ 国際政治学者 グレンコ・アンドリー 2024/2/25 8:00 https://www.sankei.com/article/20240225-6ACQZ2JSYVOHDH4I4X3N2DLC5U/ ロシアによるウクライナ全面侵略が始まってから、2年が経った。 しかし、ウクライナ人の認識では 「戦争が始まってから2年」 という表現は正確ではない。 今月で始まってから10年が経つという認識なのだ。 戦争は、2014年2月にロシア軍がクリミア半島を占領してからずっと続いている。 クリミア占領の後、ウクライナ東部が戦場となり、その時期から戦いが止んだ日はなかった。 戦いの規模は2022年2月24日以降の2年間よりは小さかったが、それでも毎日のように撃ち合いや砲撃が起き、戦死者が出ていた。 この10年間、ロシアと戦争を続けてきた意義は何なのか。 筆者は、これはウクライナの独立戦争だと認識している。 独立戦争というと、普通は植民地が宗主国に対して蜂起し、戦い、独立を獲得するというのが順序だが、ウクライナの場合は少し違う。 冷戦前からロシアによって旧ソ連の一部という形で支配されていたウクライナは、ソ連崩壊というロシアの内政事情で、1991年に奇跡的に戦争することなく独立している。 しかし、やはり独立を認めたくないロシアは、ウクライナをその勢力下におこうとし続け、10年前の2014年、遂に侵略に踏み切った。 その意味では、今のウクライナは真の独立のために戦っているのであり、今回の戦争は少し遅く始まった独立戦争なのではないかと思うのだ。 この戦争はウクライナにとって、国と民族の存亡を懸けた戦いでもある。 ロシアが戦争に勝った場合、独立したウクライナの存在を認めないだろう。 そして高い確率で、ウクライナ民族そのものを無くす政策を取ると予想される。 なぜならロシア人は今回の戦争で、ウクライナ人をそのまま残しておくと彼らは必ずまた盾突くから、ウクライナ人のアイデンティティーを持つ人を生かしておくわけにはいかない、と学んだはずだからだ。 つまりウクライナ人にとって、この戦争の敗北は国家と民族の滅亡を意味する。 だから、何としてでも、侵略者を撃退しなければならないのだ。 同時に、この戦争は世界にとって国際秩序を懸けた戦いでもある。 もしウクライナが敗北し、滅亡すれば、世の中の独裁侵略国家は 「他国を征服しても、国際社会は反応しない」 「征服は普通に出来る事だ」 と確信し、侵略や征服が繰り返されることになる。 そうなれば、世界は戦乱に陥る。 どの国も次の侵略対象になり得るだろう。 言うまでもなく、これは侵略者以外、誰も望まない展開だ。 ウクライナが勝利し、国際秩序が守られるように、世界は今、一丸となってウクライナを支えるべきなのではないだろうか。 グレンコ・アンドリー 1987年、ウクライナ生まれ。 キーウ国立大卒。 京大院指導認定退学。 最大の原因はプーチン氏にあらず 国際政治学者グレンコ・アンドリー 2024/1/28 8:00 https://www.sankei.com/article/20240128-PRO6D765IFOYVDBVOPLGMURXEQ/ ロシアによるウクライナ侵略で、ロシアの凶暴な振る舞いや領土拡大の野望が明白になり、欧米や日本でもそれを疑う人は少なくなった。 しかし、多くの人は今も、その最大の理由はプーチン大統領の独裁政治だと思っている。 それは間違いである。 もちろん、プーチン氏が、ひたすら領土や支配領域拡張を目指すという意味で、 「帝国主義」 的な野望を持っていることは疑いようもないだろう。 ただ、プーチン体制のみが諸悪の根源だと思ってしまうとロシアを見誤る。 ロシアを論じる上では、国民の中の帝国主義的な意識を無視してはならない。 何故そう言えるのか。 ロシアにおけるプーチン大統領の支持率の推移を見るといい。 彼の支持率は常に高い数字だが、中でも特に上がった時期がある。 1回目は、2014年にロシアがクリミア半島を併合した後、2回目は2022年にウクライナに対して全面侵略を始めた後だ。 ロシアでプーチン氏を基本的に支持していない人でも、領土拡張は支持することが分かる。 こう言うと、独裁国家ロシアにおける世論調査に疑問を持つ人もいるだろうが、比較的に民主的な時代であった1990年代でも、同様の国民意識は見て取れる。 この時期は比較的、公正な選挙が行われていた時代で、1993、1995、1999年に下院選が実施されたのだが、その結果を見ると、毎回、帝国主義や旧来の共産主義、領土拡張を目指す政党が多数派となり、自由や民主主義思考の政党が少数派となっていた。 1993年の選挙は、プーチン氏より遥かに過激な主張で有名なジリノフスキー氏が率いたロシア自由民主党が第1党になったし、1995年と1999年の選挙ではソ連共産党の後継政党であるロシア共産党が第1党となった。 また、1996年の大統領選では当時のエリツィン大統領が共産党の候補に辛うじて勝ったが、その時点でエリツィンは既にチェチェン戦争をはじめ、旧ソ連圏でいくつかの戦争を起こしていた。 当時の彼はお世辞にも民主主義思考の指導者とは言えなくなっていた。 以上の傾向から分かるように、ロシアの領土拡張路線は指導者の個性だけによるものではなく、国民の欲求が反映されたものと言える。 領土拡張の歴史を振り返れば、この国民性が当分変わる見込みはないと考えたほうがいい。 たとえプーチン氏が権力の座を去っても、次の指導者がまた帝国主義路線を始めるだろう。 だからこそ、いつかロシアが変わると期待するのではなく、これからも継続的にロシアの脅威に備えなければならない。 今回のような悲惨な戦争を繰り返さないために、常に対露警戒、対露防衛を意識する必要がある。 グレンコ・アンドリー 1987年、ウクライナ生まれ。 キーウ国立大卒。 京大院指導認定退学。 ロシアとの停戦論は根本的に誤りだ 国際政治学者グレンコ・アンドリー 2023/11/26 8:00 https://www.sankei.com/article/20231126-6TTSLKI25ZKDRLXSVT44OPVMFM/ ロシアによるウクライナ全面侵略が始まってから1年9カ月経った。 ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、英エコノミスト誌への寄稿で、戦争が膠着状態に入ったと述べた。 現時点で両軍は技術的にも戦力的にも同レベルなので、どちらかが勝利を収めるのは困難だというのだ。 ウクライナの勝利に疑念が生じないように国内外の世論に配慮しなければならないゼレンスキー大統領は、この 「膠着状態」 という分析を否定していたが、総司令官の解説には政治的なスローガンや精神論は一切ない。 厳しい戦争の現実をそのまま詳述した、トップレベルの将軍の分析だ。 寄稿ではウクライナが勝つには何が必要なのか詳細に書かれている。 ロシア軍より技術的に優れた装備が十分な量、必要だということ、どのような兵器が必要なのかも明確にされている。 つまり、この兵器の供給こそがウクライナ勝利のための条件だというのだ。 一方、各国ではまた、一部の人が停戦交渉を行うべきだと主張している。 もし戦場で決着をつけることが出来ないなら、交渉して停戦するしかないという理屈だ。 しかし、この理屈は根本的に間違っている。 何故なら、ロシアは恐らく本気で停戦交渉に応じるつもりはないからだ。 人的資源や天然資源でウクライナに勝るロシアは、このまま双方が戦力の削り合いを続ければ、最終的に自分たちが勝てると思っている。 逆に停戦は、ウクライナに防衛能力強化の時間を与えることになり、ウクライナの征服を難しくするという考えだろう。 停戦交渉が不可能である以上、この戦争を終わらせる唯一の方法は、ウクライナを勝たせることだ。 そのためには、ウクライナを支援する自由民主主義諸国からの武器提供を拡大、加速してもらわなければならない。 ウクライナ軍は必要な装備さえ手に入れば、ロシア軍を国土から排除し、戦争を終わらせることができる。 自由民主主義諸国は、そのために必要な装備を全て持っている。 そして必要な装備をすべて提供することは、各国に政治的な意思さえあれば、さほど難しいことではない。 ウクライナ勝利への道筋は明確で、現実的である。 では、日本は何が出来るのか。 日本はこれまでウクライナに人道支援、経済支援を行ってきたが、最近では、武器輸出の緩和についても政府が議論を進めている。 是非、この議論を実らせ、日本もウクライナに武器を提供出来るようになって頂きたい。 そうなれば日本は国際平和に大きく貢献し、ロシアの侵略の意図を挫くことで、結果的に極東でも有事の可能性を低くすることができる。 グレンコ・アンドリー 1987年、ウクライナ生まれ。 キーウ国立大卒。 京大院指導認定退学。 論点直言 広島サミット、日本への要望 自由VS独裁 「脱中国」主導を ウクライナ人国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏 2023/5/14 9:00 https://www.sankei.com/article/20230514-BTPTY3GZCNO2BA3KOE4HZ3HVQM/ 先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が2023年5月19〜21日、広島市で開かれる。 岸田文雄首相をはじめとするG7の首脳が国際情勢を巡って議論するが、ロシアの侵略を受けるウクライナや国際的に存在感を増すグローバルサウス(南半球を中心とした新興国・途上国)など、議論される側はどんな思いで会議を見つめているのか。 ウクライナや新興国の視点からの議長国・日本への要望を3人の識者に聞いた。 このうち、ウクライナ人国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏の話は次の通り。 ◇ G7広島サミットは、主要国がウクライナ危機を含め、世界が直面する重大な問題に対する共通認識を確認し、行動に踏み出す場になってほしい。 重大な問題とは、中国やロシアなど独裁国家による陣営と、自由主義国家陣営の対立の激化だ。 独裁側は今、国際秩序を自由主義陣営から奪おうとしている。 世界は大変な危機に直面している。 現在、自由主義陣営の足並みが揃っているとは言い難い。 2023年4月に訪中したフランスのマクロン大統領の振る舞いは、明らかに自由主義の大国のリーダーに相応しくないものだった。 核保有国のトップとして自信があるのかもしれないが、自由主義陣営の結束を強く求められる局面で、中国との商売を拡大する実利外交を進めてしまった。 一部の国が中国依存からの脱却を図り、一部の国が逆の行動を取る。 そのような事がないよう、自由主義陣営はサミットという場で集まり、足並みを揃えなくてはならない。 日本は議長国として、自国の立場をはっきりと示し、脱中国依存に向けた議論を主導してほしい。 G7諸国は今こそ、防衛、外交双方でも協調行動を取らねばならない。 G7諸国はサミットを通じ、ウクライナへの支援の重要性を改めて確認し、他の国々にも発信する必要がある。 ウクライナ危機が示しているのは、世界秩序を維持したい側と、そうではない側の戦いが起きているという事実だ。 侵略を受けたウクライナが負ければ、世界は戦争し放題の状況に陥りかねない。 ウクライナが陥落すれば、ロシアは必ず次の戦争を起こす。 中国もロシアの勝利に勇気付けられて、台湾有事を起こす。 日本も巻き込まれるだろう。 その次は、日本が侵略される事態すら懸念される。 ウクライナでの戦争が長期化する中、ロシアは手段を選ばなくなりつつある。 ロシアは国家の全ての資源を戦争に勝つためだけに投入する態勢に入りつつある。 中国がロシアを軍事支援するのも時間の問題だ。 独裁陣営が強固になる中、その攻勢に対抗できる態勢を自由主義陣営も取らなくてはならない。 自由主義陣営は今ならば、ウクライナへの支援で済む。 しかし、もしもウクライナが負ければ、自ら武器を持って独裁陣営と戦わねばならなくなるだろう。 だからこそ今、ウクライナを支援することが重要なのだ。 グレンコ・アンドリー キーウ国立大卒。 京都大大学院博士後期課程指導認定退学。 著書に『プーチン幻想』(PHP新書)など。 35歳。 ウクライナ侵略1年 私はこうみる G・アンドリー氏「日本は武器支援を検討するとき」 2023/2/6 18:34 https://www.sankei.com/article/20230206-KR47B6E5RBOIXJIADGPH4MRJUI/ ロシアのウクライナ侵攻から間もなく1年。 ウクライナ出身の国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏(35)は、ロシアが戦争長期化も厭わない中で重要となるのは、ウクライナへの迅速な武器供与であり、日本も武器支援を検討する時だとの認識を示した。 ◇ ロシアによるウクライナ侵略が始まり約1年を経て明確になったのは、ロシアはあらゆる手段でウクライナ全土を併合し、その民族も根絶させたいと考えている事実だ。 彼らがそう考える背景には、ウクライナはロシアの領土の一部で、更にウクライナ人もロシア人の一部だと捉えるプーチン大統領ら同国指導部の歪んだ世界観がある。 侵略戦争にはこれまで3つの段階があった。 第1段階は首都キーウ(キエフ)の制圧を狙った電撃戦。 ロシアは失敗し、第2段階として昨春2022年春から大量の砲弾を撃ち込む戦略に移った。 この戦略も思ったような結果は出ず、次第に欧米の武器支援を背景にウクライナ側が勢力を盛り返すに至った。 そして第3段階として昨年2022年9月の部分的動員令のように、ロシアは人員の大量投入を開始した。 「総力戦でなければ戦争に勝てない」 と気付いたからだ。 ロシアを理解する上で注意すべきは、人命に関するロシア人の考え方が他の国々と大きく異なるという点だ。 指導者も国民も、戦争でどれだけ人が死んでも構わないと考えている。 旧ソ連時代は国民の間でアフガニスタン紛争への従軍を懸念する声が出たり、反戦的な兵士の母の会が立ち上がったりしたが、現在のロシアでそのような動きはほぼない。 これはウクライナ侵略が開始されて以降、戦争に批判的な数百万人とも言われるロシア人が国外脱出したことも背景にある。 もう1つは、ロシアは物事を極めて長いスパンで考えるということだ。 戦争の長期化も厭わないだろう。 そうした考えを変えさせるには、ロシア軍を戦場から物理的に排除するしかない。 そのためにはウクライナに迅速に武器を供与するしかない。 もしウクライナ軍が現在の装備を昨年2022年2月時点で保有していれば、恐らく戦争に勝利していただろう。 多くの人命が失われる前に自由主義諸国はウクライナを支援しなくてはならない。 このままでは戦争は何年も続く。 日本も、この戦争を終わらせるために何が出来るかを改めて考えてほしい。 兵器でなくても、ピックアップトラックや救急車など、車両の提供は極めて有効だ。 ただ欧州ではドイツ、スウェーデンも武器支援に踏み切っている。 先進国で武器支援を検討すらしていないのは日本ぐらいだ。 今こそ考え直すべき時ではないか。 ◇ グレンコ・アンドリー キーウ国立大卒。 京都大大学院博士後期課程指導認定退学。 著書に『NATOの教訓 世界最強の軍事同盟と日本が手を結んだら』(PHP新書)、『プーチン幻想』(同)、『ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟』(育鵬社)、『日本を取り巻く無法国家のあしらい方』(同)。 35歳。 ウクライナ・キーウ出身。 露軍攻撃「生活破壊が狙い」 グレンコ・アンドリー氏 2022/10/12 12:57 https://www.sankei.com/article/20221012-BN46J2T5TRLGBMSQODYBPPDQ64/ ロシア軍は2022年10月10、11日と、ウクライナ各地の主要都市に対し、ミサイルで大規模攻撃を行った。 日本在住のウクライナ人国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏は、ウクライナ全土への攻撃はすでに計画されていたもので、同国南部クリミア半島と露本土を結ぶ橋が爆破されたことを受けて、 「露軍は攻撃の計画を早めたに過ぎない」 と指摘。 今後も、電力など民間インフラへの攻撃を断続的に行い、 「冬に向けて国民生活に打撃を与えることで、ウクライナ国内で恐怖と混乱を引き起こす狙いがある」 と述べた。 グレンコ氏は、露軍によるミサイル攻撃は ▽民間人の殺戮 ▽ウクライナ国民に恐怖を与える ▽冬季に向けて生活インフラを攻撃することで、暖房や電気、水道などを利用できなくする の3つの狙いがあると指摘。 「電気や暖房がなければ病院などが運営できなくなり、北部では凍死者も出るだろう」 「露軍は装備の不足や技術面での問題から、同様の攻撃を長期間、連続して行うことはできないが、数週間おきに波≠フように攻撃を仕掛けてくるのではないか」 と推測した。 更に、今回の攻撃は 「橋が爆破されたことへの報復という側面もあるが、橋に関係なく、いずれ起きただろう」 と語った。 一方で爆破された橋は、 「(ロシアによる)クリミア半島支配の象徴」 であり、その橋が爆破されたことは 「クリミアに対する露側の支配が絶対ではないということを証明した」 と指摘した。 戦況については、 「ウクライナ軍はこの1カ月半で、かなりの成功を収めた」 ものの、露軍は占領地域が減少したことで 「防衛線が短くなり、占領地域を防御しやすくなった側面もある」 と分析。 今後は、ウクライナ軍が少しずつ占領地を開放するが、 「進軍が鈍ったり、戦況が硬直状態に陥ったりすることがあるだろう」 と語った。 また露軍は 「人権の意識は全くない」 と述べ、動員で新たに招集された兵力を 「(前線に配置し)血と肉≠ノよる防衛に使うだろう」 と指摘。 ウクライナ軍が、それらの新兵らとの戦いで戦力を消耗したところで、 「既存のプロの軍人が攻撃を行う」 「これは、かなりやっかいだ」 との見方を示した。 ロシアによる核兵器の使用は 「現時点で計画はないようだが、戦場での露軍の敗北が確実になり、プーチン氏がそれを理解すれば、劣勢を挽回する切り札として使いかねない」 と指摘。 「そうならないように、国際社会はロシアに対し圧力を掛け続け、更に万が一使用した場合に、各国はどのような行動を取るかを、入念に決めておく必要がある」 と述べた。 また日本政府が2022年10月5日にキーウの日本大使館を再開したことについては、欧米諸国より大幅に遅れたと指摘し、 「日本政府は決定が他の先進国と比べ数カ月遅い」 「(大使館の再開遅れは)それを証明した」 と述べ、 「このままでは、日本は国際社会におけるプレゼンスを示せなくなり、その影響力も弱まってしまう」 と警鐘を鳴らした。 ◇ グレンコ・アンドリー キーウ国立大卒。 京都大大学院博士後期課程指導認定退学。 著書に『ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟』(育鵬社)『NATOの教訓 世界最強の軍事同盟と日本が手を結んだら』(PHP新書)、『プーチン幻想』(同)など多数。 34歳。 ウクライナ・キーウ出身。 停戦しても「露軍は必ず再侵攻」グレンコ・アンドリー氏 2022/3/22 20:00 https://www.sankei.com/article/20220322-KRLIJBRMQRME5LG57SSUW6NMUQ/?889044 ウクライナ人の国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏(日本在住)はロシアによるウクライナ侵攻に関して産経新聞のインタビューに応じ、仮に停戦が実現しても露軍は 「ウクライナ支配の目的を達成するため必ず数カ月以内に再侵攻する」 と警告。 ウクライナは停戦交渉で 「軍備の縮小など安易な妥協は決して受け入れてはならない」 と訴えた。 グレンコ氏は、戦争を短期で決着させるプーチン露大統領の狙いが 「明らかに失敗した」 「現在は手段を選ばない消耗戦に戦術を切り替えた」 と指摘。 「民間人の避難所への攻撃など残酷な手法で損失を拡大させ、ウクライナに対し、不利な条件でも早期に停戦したいと思わせる狙いがある」 と語る。 露軍の包囲が続き、人道危機が深刻化する東部マリウポリから多数の市民をロシア側に拉致した目的は 「彼らの返還を停戦交渉のカードにする思惑だろう」 「カネを渡してロシアの協力者を作り、ウクライナを非難させるなどプロパガンダ(政治宣伝)に利用する目的もあり得る」 と見る。 ロシアは 「ウクライナを支配するという目標は変わらず、仮に停戦しても作戦を練り直して数カ月〜半年後には確実に再侵攻する」 と断言。 現在の停戦交渉で 「ウクライナは自軍の規模縮小の要求を受け入れてはならない」 「先月2022年2月24日以降に侵攻した露軍の完全撤退も実現させなくてはならない」 「占領地で住民が粛清されかねない」 と主張する。 露側が断念を求めるウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟も 「簡単に非加盟に同意してはいけない」 「米国などがウクライナの安全を保障する枠組みなど、代替の仕組みを露側に容認させる必要がある」 と強調した。 対露経済制裁の影響について 「経済疲弊がプーチン氏の支持低下に繋がるとは限らない」 「ロシア人は生活が苦しくても領土を拡大できればいいという思考を持つ」 「若年層は不満かもしれないが、治安部隊に殺される危険を冒してまで反抗しないだろう」 と悲観的な見方を示した。 その上で国際社会には、 「ウクライナの防空装備の提供などを更に強化してほしい」 「日本においても、侵略された国に対しては武器提供を出来るようにするなど法改正を検討してほしい」 と訴えた。 ◇ グレンコ・アンドリー ウクライナ・キエフ出身。 キエフ国立大卒。 京都大大学院博士後期課程指導認定退学。 著書に『NATOの教訓 世界最強の軍事同盟と日本が手を結んだら』(PHP新書)、『プーチン幻想』(同)など。 34歳。 「地上戦で数十万人が犠牲になる」 ウクライナ人政治学者「最大限の制裁で止めるべき」 2022/2/26 10:08 https://www.sankei.com/article/20220226-6L3U4THNKZLDLN36K4SXTIOFLQ/ ロシアがウクライナへの軍事侵攻を続けるなか、その危険性をかねて警告してきた日本在住のウクライナ人国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏(34)が産経新聞のインタビューに応じた。 グレンコ氏は、プーチン露大統領の狙いはウクライナの制圧と傀儡政権の樹立にあると断じ、 「都市部での地上戦が本格化して数万人、数十万人の犠牲者が出る前に、国際社会はロシアを国際経済から切り離すなど、最大限の制裁でロシアを食い止めなくてはならない」 と訴えた。 ■「都市の制圧も」 グレンコ氏は、2014年にクリミア半島を併合するなど、ウクライナの支配を目指したプーチン氏の試みは 「ことごとく失敗してきた」 と指摘。 昨年末以降は、 「ウクライナ国境周辺に軍事力を配備し、戦争の危険性をバイデン米大統領に突きつけてウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟などをあきらめさせる思惑だった」 が、その試みも不調に終わったことから、 「唯一残った直接的な手段として、軍事的占領を選んだ」 と分析した。 そのうえで、ロシア軍は今回の軍事侵攻で、 「ウクライナ全土、そうでなくても、(欧州に近い)西部の一部を除く全域を制圧する」 狙いだと述べ、ロシア軍は 「まず基本インフラを制圧した後に、大都市を封鎖して降伏を要求するだろう」 「ウクライナ側が応じなければ地上部隊を出して、都市の制圧にかかる」 と予測。 そのような事態に至れば 「数万から数十万人」 が犠牲になると指摘した。 ■「犠牲を顧みない人物」 プーチン氏については 「自分の考えを実現するためには、犠牲を顧みない人物だ」 「侵攻で何人の犠牲者が出るかには意を介さない」 「ウクライナ人、ロシア人に対しても同様だ」 と分析。 軍事侵攻については 「(圧倒的な軍事力の差があり)ロシアがウクライナを軍事的に屈服させる可能性は高い」 「その上でゼレンスキー大統領を拘束し、議会を制圧して、一方的に国の指導者を指名して傀儡政権を樹立させるだろう」 「いずれウクライナそのものを併合し、ベラルーシなどと合わせて国家連合を作って、自身がトップになる考えだ」 と語った。 ロシア国民の間でも、戦争を批判する声が出ていることについては 「少数派に過ぎず、仮に10万人がデモを行っても、治安部隊に鎮圧されるだけだ」 「数百万人がデモを行うなどしなければ、プーチン氏の考えには影響を及ぼさない」 と述べ、 更に 「民主主義をほぼ経験しておらず、権力に従順なロシア人が、そのような行動を起こすことは考えにくい」 「数万人のロシア軍兵士が死亡して、遺体が本国に運ばれるような事態にならなければ、『おかしい』と思わないだろう」 「メディアも国の統制下に置かれている」 と語った。 ■「今の制裁では足りない」 また国際社会の対応について 「プーチン氏は、欧州がエネルギー資源を買わなくなるなどの最大限の制裁≠ヘ行われないと判断したのだろう」 と推測。 ドイツ政府が稼働の承認を停止した、ロシアからドイツに天然ガスを輸送する海底パイプライン 「ノルドストリーム2」 を巡っても、 「同パイプラインが稼働しなくても、ウクライナを制圧すればロシアから陸路でガスを欧州に運べる」 と述べて、影響は限定的との見方を示し、米国などから欧州に代替のエネルギー資源を輸出する手法も 「即効性はない」 と指摘した。 その上でグレンコ氏は 「欧米などが新たな制裁を発表したが、これだけでは足りない」 「ロシア軍の地上部隊が侵攻して、数十万人が死ぬ前に、貿易によってロシアが利益を得られる道を完全に断つなど最大限の制裁を実施して、プーチン氏を止めなくてはならない」 「今のような状況では、明らかに不十分だ」 と危機感を露わにした。 グレンコ・アンドリー キエフ国立大卒。 京都大大学院博士後期課程指導認定退学。 著書に『NATOの教訓 世界最強の軍事同盟と日本が手を結んだら』(PHP新書)、『プーチン幻想』(同)、『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』(育鵬社)、『日本を取り巻く無法国家のあしらい方』(同)。 34歳。 ウクライナ・キエフ出身。
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