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見てみないフリをする人々。日本崩壊を示す兆候はすでに噴出している【適菜収】
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/3327129/
2024.11.29 適菜 収 だから何度も言ったのに 第76回 写真:産経ビジュアル、アフロ BEST TiMES
2024年の年末、気が付いたら日本は貧しい国になっていた。道徳も破壊された。街は暗くなり、カスタマーサービスの電話はどこの会社もなかなかつながらない。マイナ保険証、インボイスの導入……どんどん不便な国になる一方、底が抜けた連中が暴走を続けている。新刊『自民党の大罪』(祥伝社新書)で平成元年以降、30年以上かけて、自民党が腐っていった過程を描写した適菜氏の「だから何度も言ったのに」第76回。
N国党党首・立花孝志が南あわじ市長選挙への立候補を表明(2024年11月22日/産経ビジュアル)
■予知はできないが警戒はできる
地震の後に、「そういえば、前日の空の色が変だった」「見たこともない形の雲が出ていた」「井戸の水が濁っていた」といった声が出ることがある。他にも、地盤の隆起や沈降、海面の変動、温泉の枯渇や異常湧出、温度変化、地鳴りなどもある。ナマズやネズミなど、動物が異常行動を示すという話もある。
現在の科学技術では、地震の発生時期、場所、規模を正確に予測することはできない。それでも注意深く前兆を観測することにより、準備、警戒することはできる。
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これは自然災害に限った話ではない。たとえば、恋人と別れてしまった後で、「あのときの一言はそういう意味だったのか」と後から気づくこともある。
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後悔先に立たず。兆候はたくさんあったのに、そしてそれを肌で感じていたにもかかわらず、具体的に対応しなかった結果、ひどい目に遭ったりする。自業自得と切り捨てるのは簡単だが、「なんか変だよな」と思いつつ、日々の生活に追われるのが人間でもある。
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わが国は崩壊のカウントダウンに入っている。そしてそれは百の兆候に表れている。
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別に大げさな話をしているわけではない。
これまで何度も書いてきたことなので、手短に示すが、三つのメルクマールがある。
一つは2015年の安保法制の際、国を運営する手続が破壊されたことだ。安倍晋三は、お仲間を集めて有識者懇談会をつくり、そこで集団的自衛権を行使できるようにお膳立てをしてもらってから閣議決定し、嘘とデマを社会に投下し、法制局長官の首をすげ替え、アメリカで勝手に約束してきて、最後に国会に諮り、強行採決した。さらには首相補佐官の礒崎陽輔が「法的安定性は関係ない」と言い出した。発言を撤回したとはいえ、これは近代国家としての建前をかなぐり捨てたということである。
二つ目は、安倍政権下で省庁をまたがる大規模な不正が発覚し、責任がうやむやになっていることだ。財務省の公文書改竄、防衛省の日報隠蔽、厚生労働省のデータ捏造、法務省のデータごまかし、国土交通省の基幹統計の書き換え……。国の信頼は完全に破壊された。
三つ目は、2017年、防衛相の稲田朋美が、「(南スーダンの戦闘で)事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法九条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、(日報で)武力衝突という言葉を使っている」と発言したことだ。要するに国が憲法を無視していることを公言したわけだ。
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これを正常な近代国家と考えるのは無理がある。
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今、社会が疲れ果てている。多くの人がうんざりし、面倒になり、黙り込んでしまう。
その隙を狙って、いかがわしい連中がラストスパークをかけてきた。
兵庫県知事選で公職選挙法違反の疑いをかけられている斎藤元彦
■百の兆候
今、目の前で何が発生しているのか。
兵庫知事選の斎藤元彦問題、東京都知事選の石丸伸二問題、大阪の維新問題も、根の部分ではつながっている。直接民意が反映される場所が狙い撃ちにされている。
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兆候はすでに見えていた。統一教会問題、裏金問題、機密費流用問題、政治家と反社のつながり、新型コロナの対応、政商による中抜き、ネトウヨ・ビジウヨの跋扈、オリンピック利権、ポスター塗りつぶし、下半身露出、盗作、主権放棄、地位協定の維持、全方位売国、手かざし、マルチ商法、部落差別、イスラムを冒涜、マネーロンダリング、ストーカー事件、サクラの動員、児童買春、組織的なプロパガンダ(Dappi事件)、黒瀬深事件、都構想という中の大阪市解体、沖縄切り捨て、アイヌ差別、核共有、リコール詐欺、いじめ、パワハラ、セクハラ、松本人志問題、人権侵害、言論統制、対立候補を再選させるための出馬……。ちょっと目についただけでも、腐敗は極限に達しているように見える。
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プロイセン王国出身の哲学者・古典文献学者のフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは言う。
《私の物語るのは、次の二世紀の歴史である。私は、来たるべきものを、もはや別様には来たりえないものを、すなわちニヒリズムの到来を書きしるす。この歴史はいまではすでに物語られうる。なぜなら、必然性自身がここでははたらきだしているからである。この未来はすでに百の兆候のうちにあらわれており、この運命はいたるところでおのれを告示している》(『権力への意志』)
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この時評を始めて、来年で5年目に入るが、続けてきた理由は「大多数向け」ではない小さな話題(ニュース)を拾うためだ。一見、どうでもいいような話でも、後から振り返ったときに、重要な兆候だったというケースもある。ジグソーパズルのピースが当てはまるように。
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歴史を都合よく修正・改竄する人々がいる。そして悪事が失敗しても、ほとぼりが冷めるのを待ち、世の中が忘れたころに再び動き出す。それに対抗するためには、記録し、蒸し返し、同じ批判を繰り返さなければならない。
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先日、SNSで拡散されている動画で「NHKから国民を守る党」の立花孝志がこう言っていた。
《バカな人たちをどうやって上手く利用するか。それはホリエモンがそういうことを言っている。最近、俺もそうやなと思ってね。だから、まあイヌとかネコと一緒なんよ》
三島由紀夫は《日本人は豚になる》と言ったが、イヌになったのかもしれない。
この30年にわたり、マーケティングとプロパガンダの手法により、訓育、調教されてきた結果が現在だ。われわれは現在、その報いを受けている。
文:適菜収
適菜 収 てきな おさむ
1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171
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