<■375行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> <主張>危険運転致死傷罪 遺族感情に応える改正を 社説 2024/11/18 5:00 https://www.sankei.com/article/20241118-4UPVNVBPQFJYXLR3R5DIIXNA7A/ 法務省の検討会が、悪質事故に適用される危険運転致死傷罪の要件見直しを提案する報告書案をまとめた。 曖昧と批判があった高速度と飲酒について、一定の数値基準を設定するよう求めている。 妥当な提案だ。 法改正は悪質運転で大切な人を奪われた遺族が強く求めていた。 遺族の怒りは国民の思いでもある。 国民感情との乖離を埋めるべく、法務省は同罪の適用要件を明確化してほしい。 同罪は、東名高速道で飲酒運転のトラックが女児2人を死亡させた事故をきっかけに平成13年に創設された。 法定刑の上限は20年で、過失運転罪の上限7年とは大きな開きがある。 現行法は高速度の対象を「進行の制御が困難」、飲酒を「正常な運転が困難な状態」とし、具体的な速度や数値を定めていない。 報告書案は一定の速度以上を高速度の対象とし、「法定速度の2倍や1.5倍」とする意見もあった。 令和3年2月、大分市内の県道交差点を右折する会社員の車に、当時19歳の少年が運転する直進車が衝突し、会社員は死亡した。 直進車は法定速度の3倍を超える194キロで走行していたが、大分地検は 「直線道路で走行を制御できていた」 として過失運転致死罪を選択した。 そもそも制御できなかったから、事故は起きたのだ。 納得できない遺族は署名を集めて訴因変更を求めた。 補充捜査を経て訴因は危険運転致死罪に変更されたが、尚争われている。 遺族の声による訴因変更こそが要件の曖昧さを象徴する。 一定の数値設定は必要である。 ただし、要件に定めた速度や数値が厳罰逃れの指標となってはならない。 例えば法定速度の2倍を高速度と定め、60キロ道路で120キロ以上のスピードで事故を起こせば 「危険運転」 となるが、これ以下の速度であっても 「ながら運転」 や飲酒などの複合要因で悪質な運転と判断されるケースはあり得る。 数値を唯一の基準とすべきではない。 遺族らの強い処罰感情は、ただ怒りに任せたものではない。 同じ不幸を経験する人がなくなるよう、事故そのものを恨み、撲滅を目指すものだ。 厳罰化や処罰対象の明確化が悲惨な事故の減少に寄与することは、飲酒運転の取り締まりが証明している。時速194キロ死亡事故で懲役12年を求刑、危険運転致死罪 大分地裁 2024/11/15 15:48 https://www.sankei.com/article/20241115-3DYFNCAVQVKBZOBOMO5UN6AK44/ 大分市の一般道で令和3年、時速約194キロで乗用車を運転し右折車と衝突、男性会社員=当時(50)=を死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪に問われた男性被告(23)の裁判員裁判が2024年11月15日、大分地裁(辛島靖崇裁判長)であり、検察側は懲役12年を求刑した。 予備的訴因とした同法違反の過失致死罪については懲役5年を求刑した。 弁護側は最終弁論で、同法違反の過失致死罪を適用するよう訴え、結審した。 判決は2024年11月28日。 検察側は論告で、時速194キロで走行した場合、道路の凹凸などによってハンドルやブレーキ操作のミスから進路を逸脱する可能性があり、制御困難だったと指摘した。 起訴状によると、令和3年2月9日午後11時頃、上限が法定速度の時速60キロと定められた県道交差点を、対向から右折する車を妨害する目的で、制御困難な時速約194キロで進入。 右折車に衝突して、会社員の小柳憲さんを死亡させたとしている。 時速194キロで死亡事故 “思いくみ取った判決を”姉が意見陳述 2024年11月15日 14時07分 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241115/k10014639291000.html 3年前2021年、大分市の県道で、時速194キロで車を運転して死亡事故を起こしたとして、危険運転致死の罪に問われている当時19歳の被告の裁判で、亡くなった男性の姉が意見陳述を行い 「遺族の思いを汲み取った判決を心からお願いします」 と訴えました。 3年前の2021年2月、大分市の当時19歳の被告は法定速度が時速60キロの市内の県道で、車を時速194キロで運転し、交差点を右折してきた車と衝突して、運転していた小柳憲さん(当時50)を死亡させたとして、危険運転致死の罪に問われています。 これまでの裁判で弁護側は 「車線から逸脱することなく直進できていて、危険運転致死罪は適用できず、成立するのは過失運転致死罪だ」 と主張しています。 2024年11月15日に大分地方裁判所で開かれた裁判で、午前中、亡くなった小柳さんの姉が 「被害者参加制度」 を利用して意見陳述を行いました。 この中で姉は 「弟は突然、人生を終わりにさせられました」 「交差点を右折しただけです」 「これほど理不尽なことがあっていいのでしょうか」 「本人の無念さを思うと胸が苦しくなります」 と述べました。 そして、裁判官や裁判員に向けて 「もう何も言えない弟の無念さや私たち遺族の思いを汲み取った判決を心からお願いします」 と訴えました。 午後には検察の求刑や弁護側の弁論が行われて全ての審理が終わる見通しで、判決は今月2024年11月28日に言い渡される予定です。 [社説]危険運転を根絶する法律に 社説 2024年11月14日 19:00 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD144HR0U4A111C2000000/ 飲酒や猛スピードの走行など悪質な運転による事故の刑事責任を問う危険運転致死傷罪について、見直しを議論してきた法務省の検討会が報告書案をまとめた。 現行法は要件が曖昧で立証のハードルが高いとの批判があり、適用基準を明確にするなどの方針を示した。 更に議論を深め、悲惨な事故の撲滅に繋げなければならない。 危険運転致死傷罪は2001年に新設された。 東名高速道路で飲酒運転の大型トラックが乗用車に追突し、女児2人が死亡した事故がきっかけだ。 飲酒や高速走行、信号無視、煽り運転などによる事故が対象で、法定刑の上限は懲役20年と過失運転致死傷罪(同7年)より重い。 だが同罪に問うには 「進行を制御することが困難な高速度」 や 「アルコールの影響で正常な運転が困難」 だったことを立証しなくてはならない。 「事故を起こす前まで正常に運転していた」 などの反論が認められる可能性があった。 2024年5月に群馬県伊勢崎市で家族3人が死亡した事故では、飲酒運転で事故を起こしたトラック運転手が過失致死傷罪で起訴された後、遺族らが要望して危険運転致死傷罪に訴因変更された。 飲酒を 「過失」 とするのは市民感覚からかけ離れ、立法趣旨にも反しよう。 遺族らが納得できなかったのは当然だ。 報告書案では、速度や呼気中のアルコール濃度などの数値基準を定め、超えた場合に一律で同罪を適用することとした。 具体的数値はこれからの検討課題になる。 数値だけが適用の物差しになれば、 「基準以下だから危険運転には当たらない」 という発想を誘発しかねない。 法体系全体のバランスを踏まえつつ、適切な刑事罰を科せられるような制度にしなければならない。 厳罰化だけで事故を根絶することはできない。 ドライバー1人1人の安全意識を高めるため、交通教育や啓発を充実させる必要がある。 194キロ死亡事故「加速感楽しんでいた」 裁判員裁判で男性被告 2024/11/12 17:07 https://www.sankei.com/article/20241112-2UE5FVEWWVKTBHMWZG47XXHZHI/ 大分市の一般道で令和3年、時速約194キロで乗用車を運転し右折車と衝突、男性会社員=当時(50)=を死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪に問われた男性被告(23)は2024年11月12日、大分地裁の裁判員裁判の被告人質問で、スピードを出す理由を 「エンジンやマフラー音、加速する感覚を楽しんでいた」 と述べた。 被告は死亡事故を起こすまで、高速道路で時速200〜210キロ、事故現場の県道で170〜180キロ出した経験があると説明。 弁護側からの質問に、事故時は 「150キロくらい出ている感覚だった」 と供述した。 一方、供述調書には、事故直前に感覚では200キロ近く出ていたと述べていたことを検察側から問われると 「覚えていない」 と答えた。 時速194キロ事故「過失のわけがない」 危険運転罪認めず、遺族が批判 2024/11/6 0:01 https://www.sankei.com/article/20241106-RV6O2PJRMRJ7FILIB3YCGVK3WU/ 大分市で令和3年、時速約194キロの乗用車で死亡事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪に問われた男性被告(23)の裁判員裁判初公判で、検察側は2024年11月5日、事故時の様子が写った映像や損傷した被害車両の写真などを示した。 遺族は記者会見で 「一体どんな高速度だったのか」 「過失のわけがない」 と憤った。 弁護側は危険運転罪は成立せず、同法違反(過失致死)罪にとどまると主張している。 死亡した会社員、小柳憲さん=当時(50)=の姉、長(おさ)文恵さん(58)は閉廷後、ドライブレコーダーの映像や小柳さんの着衣の写真を法廷で見て、弟の痛みを想像して涙が溢れたと明かし、 「うっかり起きた過失と一緒にされたら困る」 と語気を強めた。 被告は罪状認否で危険運転罪に関して 「よく分かりません」 と述べる一方、 「小柳憲さんとご遺族に心より謝罪します」 とも口にした。 長さんは、謝罪時に遺族を見ようとしなかったとし、 「誰に向けて謝っているのだろうと感じた」 と非難した。 194キロ危険運転争う姿勢 50歳男性死亡事故で弁護側 大分地裁 2024/11/5 10:58 https://www.sankei.com/article/20241105-ETIDIULAWVIZFCIPXIZSFYQJZE/ 大分市で令和3年、時速約194キロで乗用車を運転し右折車と衝突、男性=当時(50)=を死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪に問われた男性被告(23)は2024年11月5日、大分地裁の裁判員裁判初公判で起訴内容について 「よく分かりません」 と述べ、弁護側は 「危険運転致死は成立しない」 と主張した。 令和4年12月に、同法違反(過失致死)罪から訴因変更されていた。 判決は2024年11月28日。 起訴状によると、令和3年2月9日午後11時頃、上限が法定速度の時速60キロと定められた県道交差点を、対向から右折する車を妨害する目的で、制御困難な時速約194キロで進入。 会社員、小柳憲さんの車に衝突して死亡させたとしている。 大分県警は危険運転致死容疑で書類送検したが、大分地検は令和4年7月、一旦同法違反の過失致死罪で在宅起訴。 より法定刑の重い危険運転罪適用を求める署名提出を遺族から受けた後、地裁に訴因変更を請求し認められた。 時速194キロで走行、危険運転致死に問われた元少年は初公判で「そのようなこと分かりません」 2024/11/5 13:07 https://www.yomiuri.co.jp/national/20241105-OYT1T50067/ 大分市で2021年、法定速度の60キロを大幅に上回る時速194キロで乗用車を走行して事故を起こし、男性を死亡させたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死)に問われた元少年(23)の裁判員裁判の初公判が2024年11月5日午前、大分地裁(辛島靖崇裁判長)で始まった。 元少年は罪状認否で 「そのようなことは分かりません」 と述べた。 事故で大破した小柳さんの車(遺族提供) 起訴状では、元少年は2021年2月9日深夜、大分市の県道交差点で、制御困難な時速194キロで走行。 右折中だった同市の会社員小柳憲さん(当時50歳)の車の通行を妨害する目的で交差点に進入して事故を起こし、小柳さんを死亡させたとしている。 公判では、元少年の運転が、危険運転の適用要件である 〈1〉制御が困難な高速度 〈2〉妨害する目的で通行中の車に接近 に該当するかどうかが主な争点となる。 弁護側はこの日、危険運転致死について否認し、検察側が予備的な訴因として加えている同法の過失運転致死については争わない姿勢を示した。 検察側は冒頭陳述で、小柳さんは事故で締めていたシートベルトがちぎれて路上に飛び出し、骨盤を骨折するなどして死亡したと主張。 〈1〉については、路面の状況から車体に揺れが生じ、ハンドルやブレーキの操作を誤る恐れや、夜間に194キロで運転することで視野や視力に大きな影響を与え、操作を誤る恐れがあったなどとした。 また、右折車が来ることが想定されたとして、 〈2〉の要件も満たすと主張。 「常軌を逸した高速度で、動機は極めて身勝手」 と指摘した。 事故を巡っては、大分地検は2022年7月、法定刑の上限が懲役7年の過失運転致死で在宅起訴。 遺族らは法定刑の上限が懲役20年の危険運転致死への訴因変更を求めて約2万8000筆の署名を地検に提出。 地検は補充捜査の上、変更を地裁に請求し、認められた。 <主張>危険運転致死傷罪 国民常識との乖離埋めよ 2024/2/7 5:00 https://www.sankei.com/article/20240207-V6KMS75HSZNLZB4I5Z5XJLQDXU/ 法務省は、危険運転致死傷罪の要件を見直す検討を始めた。 現行要件の基準が分かりにくく、事故遺族らが 「危険で悪質な事案を取りこぼさないようにしてほしい」 と要望していた。 令和3年2月、大分市内の県道交差点を右折する会社員の乗用車に、当時19歳の少年が運転する直進車が衝突した。 会社員は死亡した。 直進車は法定速度60キロの3倍を超える時速194キロで走行し、少年は 「何キロ出るか試したかった」 と供述したのだという。 大分県警は危険運転致死罪の要件である 「制御困難な高速度」 に当たるとして同容疑で送検したが、大分地検は 「直線道路で走行を制御できていた」 などとして過失運転致死罪で在宅起訴した。 危険運転の法定刑の上限は懲役20年、過失運転の上限は7年で、大きな開きがある。 遺族は納得いかない。 そもそも制御できないから衝突したのではないのか。 遺族は署名を集めて訴因変更を求める上申書を提出し、これを受けた補充捜査を経て危険運転致死罪に訴因は変更された。 遺族の声を受けての訴因変更は、要件のあいまいさを物語る。 平成30年12月、法定速度60キロの一般道を146キロで走行してタクシーに突っ込み、乗客ら4人が死亡した事故でも、危険運転致死傷罪で起訴された被告に津地裁、名古屋高裁は 「制御困難な高速度が証明されていない」 として過失運転と判断し、懲役7年の判決が確定した。 現行法では、無免許であっても一定の運転技能ありと判断されれば、危険運転の要件を満たさない。 信号無視による事故は 「殊更に」 無視した場合に限られ、 「殊更」 の証明、解釈に振り回される。 法曹界には他罪種や過去事件の刑罰とのバランスを重視するあまり、危険運転の適用を躊躇する傾向があり、要件の曖昧さがこれを助長しているとの指摘もある。 被害者や家族は、この構図に憤っている。 危険運転致死傷罪は、東名高速道で飲酒運転のトラックが女児2人を死亡させた事故をきっかけに平成13年に創設された。 強い被害感情に応えるための法律が、その運用をめぐって被害者の怒りを倍加させている。 要件の整理と明確化で国民常識との乖離を埋めてほしい。 再考・犯罪被害者 <特報>時速194キロ、危険運転ではないのか 遺族が動かした異例の訴因変更 2023/1/23 8:50 https://www.sankei.com/article/20230123-NBCPUZLDCVJIJAQRRGGPI2ZWXM/ 憲ちゃんが亡くなった−。 訃報は突然やってきた。 令和3年2月9日午後11時頃、大分市内の県道交差点。 右折する車に、対向車線を直進してきた1台の乗用車が衝突した。 いわゆる「右直事故」。 右折車を運転していた会社員、小柳憲さん=当時(50)=がこの事故で死亡した。 衝突直前の直進車の走行速度は時速194キロ。 法定速度(60キロ)の3倍を超えていた。 「なんで弟が…」。 事故から半日後、小柳さんの姉は、棺に横たわる弟と対面した。 顔にはほとんど傷がなく、 「事故に遭ったとは思えないほど、いつもの穏やかな表情だった」。 ただ頭部以外は全て包帯でくるまれていた。 「辛い思い出が残るから見ない方がいい」。 受傷の程度が書かれた死亡診断書でさえ、見るのを制された。 大分県警から受けた説明によると、小柳さんは事故当時、シートベルトをしていたが、衝撃でベルトが切れて車外にほうり出され、後続車の近くに倒れているところを発見された。 肋骨や骨盤など全身に多数の骨折があった。 死亡確認は約2時間半後。 「最期を迎えるまで、どれほど苦しかったことか…」。 想像を絶したであろう弟の痛みや苦しみを思い、姉はただ涙を流すことしかできなかった。 直進車を運転していた当時19歳の元少年は調べに 「何キロ出るか試したかった」 と供述したという。 大分県警はこうした事情も踏まえ、元少年の運転が、自動車運転処罰法が定める危険運転致死罪の適用要件である 「制御困難な高速度」 に当たると判断。 事故から2カ月後に元少年を同容疑で書類送検した。 姉も当然、同罪で起訴されるものと期待した。 だが大分地検は翌年令和4年7月、過失運転致死罪で元少年を在宅起訴した。 遺族には 「直線道路で走行を制御できていた」 などと説明し、 「制御困難」 に当たらないとの見解を示した。 《高速度走行(自動車運転処罰法2条2号)その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為》 「一般道を時速194キロで走るのが危険運転でないのなら、一体どんな運転が危険運転になるのか」。 姉は思わず本音をぶつけた。 だが、担当検事は 「捜査の結果、危険運転の立証には至らなかった」 と答えるのみだった。 「前代未聞の高速度」 「家族にも見せることができない身体の損傷」 「原形をとどめないほど大破した車」 「危険運転致死傷罪は生命の尊厳を守るために創設されたはずなのに、こんな理不尽なことがあってもいいのでしょうか」 姉はそれ以降、地検に翻意を促そうと奔走した。 令和4年8月には記者会見を開いて危険運転致死罪の適用が見送られた理不尽さを訴え、同罪への訴因変更を求める上申書を地検に提出。 翌月令和4年9月には犯罪被害者の自助グループ「ピアサポート大分絆の会」(大分県国東市)の支援も受けながら、地検に補充捜査を求める署名活動を行い、全国の賛同者から集まった約2万8000筆を令和4年10月に提出した。 「弟の無念を晴らしたい」。 その一心で続けた地道な訴えは令和4年11月、ようやく実を結ぶ。 地検と県警が当時の事故状況を再現する補充捜査を実施。 僅か2週間後の令和4年12月1日には地検が危険運転致死罪への訴因変更を大分地裁に請求し、同月令和4年12月20日に認められた。 「声を上げなければ過失運転で終わっていた」 「ほっとしました」。 姉は訴因変更の知らせに安堵の言葉を口にした。 事故は今後、裁判員裁判で審理される。 「裁判をしたからといって弟の命は決して戻りません」。 それでもようやく、スタートラインに立てた気がする。 「真っ当な判決が言い渡されてほしい」 「望むことはそれだけです」。 初公判の日を静かに待っている。 ■「常識」と乖離する司法 「被告人の運転が常識的にみて『危険な運転』であることは言うまでもない」 小柳さんの事故から間もない令和3年2月中旬。 名古屋高裁は、三重県津市の国道で時速146キロの自動車がタクシーに衝突し、乗客ら4人が死亡、1人が負傷した事故で、被告に判決を言い渡した。 制限速度の2.5倍近い異常なスピードで高級車を駆り、車の間隙を縫うように車線変更を繰り返していた被告。 「あたかも自分1人のための道路であるかのごとき感覚」。 高裁判決はこんな非難の言葉を並べながら、それでも1審津地裁と同様、危険運転致死傷罪の成立を否定した。 市民感覚と司法判断がここまで乖離するのは何故か。 それは同罪が不注意を罰する過失犯ではなく、故意犯であるところに大きな要因がある。 同罪の故意とは、自分の運転行為が法の定める 「危険運転」 の類型に当たることを認識しながら、敢えてそのような運転をしたということ。 条文の文言を知っている必要はないが、 「制御困難」 の要件の場合は、高速度走行の一般的な危険性の認識では足りない。 津市のケースでは、僅かなミスで自分の車を進路から逸脱させるような状況を 「具体的な可能性として現実に頭に思い浮かべていたことが最低限必要」(津地裁判決) と判示され、被告にこの認識がなかったとして故意が否定された。 事故前に百数十キロで走行しながら複数台の車両を追い抜いたことを 「特段の支障なく進行した」 と被告に有利な事情とみた。 大分の事故現場は、その幅員から 「40メートル道路」 と呼ばれる直線道路。 スピードを出しても比較的コントロールしやすい場所といえ、大分地検が当初、危険運転致死罪の適用を見送る一因になったとみられる。 もっとも同罪の適用を巡っては、司法判断も揺れている。 大分地検が補充捜査で訴因を切り替えたことも、要件解釈が定まっていないことの表れとみることもできる。 ◇ 過失では済まされないような危険な運転を厳しく罰するため、世論の後押しを受けて制定された危険運転致死傷罪。 しかし厳罰ゆえに検察や司法が適用に慎重になるケースが相次ぎ、被害者遺族の無念は宙をさまよう。 同罪を取り巻く課題を検証する。 再考・犯罪被害者 危険運転致死傷罪、揺れる司法の判断 被害者・遺族の思いをすくい上げるには 2023/1/31 7:00 https://www.sankei.com/article/20230131-UNNJ7SBNRVLLTDM7ARQI5K6YSI/ ■危険運転、問われる意義 危険運転致死傷罪の創設から20年以上が経過したが、適用のハードルは高く検察や司法の判断も揺れている。拡大解釈による厳罰化の危険を避けつつ、被害者・遺族の思いをすくい上げるにはどうすればいいのか。有識者2人に聞いた。 時速194キロ、危険運転ではないのか ■高い起訴のハードル 大嶋実弦弁護士 危険運転致死傷罪は 「悪質な運転による死傷事故を重く処罰してほしい」 「『過失』で済まされるのはおかしい」 という事故の被害者や遺族の思いから出発し、創設された法律だ。 その一方で、実際に同罪が規定する危険運転行為と、一般の人が罪名から想像する行為との間には乖離があり、そのギャップが 「市民感覚を反映していない」 と指摘される要因にもなっている。 率直に 「危険運転ではないのか」 と思えるような行為も、同罪が厳格に定める要件や類型に当てはまらない限り処罰の対象とはならず、それゆえ遺族が不満の声を上げるケースが少なくない。 特に警察が危険運転致死罪で送検するような死亡事故は、遺族にしてみれば理不尽に家族を殺されたという思いが強い。 同罪はそんな遺族の拠り所でもあるはずだが、 「公判が維持できないから」 と検察に門前払いされると、 「なぜ」 というわだかまりと、やり場のない無念さだけが募ることになる。 遺族が声を上げる背景には、同じような境遇に遭う人をなくしたいという強い気持ちがある。 こうした声に世間が共感し、課題が社会に認知され、法改正で是正されてきた経緯がある。 厳罰ゆえに慎重になるのも十分理解できるが、公判の舞台に乗せないと、解釈や適用範囲を巡る司法判断が積み重ならない。 起訴のハードルを下げつつ、市民感覚との懸隔を埋めていくことが求められる。 ◇ おおしま・みつる 大阪弁護士会所属。 長年に渡り交通事故遺族らで作る自助団体「TAV交通死被害者の会」(大阪市)の活動を支援している。 処罰範囲の拡大はアンフェア 井田良・中大大学院教授 死傷者を伴う交通事故が起きた時、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪のどちらが適用されるか、その判断が注目を集めることがある。 そして危険運転の適用が見送られた時、報道で批判的に取り上げられることも少なくない。 危険運転致死傷罪について規定された刑は相当に重いものとなっている。 特に危険な運転を故意に行い、人を死傷させた場合に、傷害罪(上限懲役15年)や傷害致死罪(同20年)と同じように重く処罰するよう制定された経緯がある。 その際、誰もが犯しうるような不注意で重い処罰の対象とするのは適当ではないとして、危険運転に該当する行為を類型化し、その要件を限定した。 いくら危険な暴走行為であっても、この類型化された危険行為に当たらない限り、同罪を適用できないと考えるのが、法律で犯罪と刑罰を規定する 「罪刑法定主義」 の原則だ。 確かに同罪の条文を素直に読むと、問題とされる行為が危険運転に該当しそうに思える事例もあり、被害者側もそこに批判の根拠を持っていることは理解できる。 しかし、規定の解釈に当たっては、元々の立法趣旨や、これまでの判例が積み重ねてきた解釈を無視することはできないし、何より、軽い類型である過失運転致死傷罪との区別が曖昧にされてはならない。 立法趣旨や従来の裁判所による解釈を無視して処罰範囲を拡大することは、不意打ちでアンフェアな処罰である。 解釈による対応が難しければ再び立法が求められることになるが、過失運転致死傷罪との合理的な区別を可能とする新たな危険運転行為の要件を定立することは、相当に難しいことも事実であろう。 ◇ いだ・まこと 専門は刑法。 平成13年に危険運転致死傷罪が創設される際の法制審議会の議論に幹事として加わった。 平成28年から現職。
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