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票をつかむ言葉は、世論を動かす言葉と似て非なるものかもしれない 松尾潔のメロウな木曜日
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/362809
2024/10/31 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
予想通りの結果だった(C)JMPA
先の日曜(10月27日)の第50回衆議院選挙については、すでに多くの識者の言葉が出尽くした感がある。ましてやぼくみたいな政治素人が解説できるようなことが残されているとも思えないが、誰もが語る権利を有するのが政治でもある。あくまでエンターテインメント従事者、作詞家、作家の目線でふり返りたい。
自民党が多くの議席を失ったのは大方の予想通りだろう。比例代表で自民は前回2021年から533万票減の1458万票。連立を組む公明党も前回より114万票減の596万票。両党とも比例代表導入以降で過去最少の得票数である。近年の公明は比例800万票を目標に掲げてきた。今回は600万票にも届かず、何より先月末に新代表に就任したばかりの石井啓一氏(埼玉14区)が落選。比例区で重複立候補していなかったとはいえ衝撃的だった。安倍内閣で国土交通相を2代務めもした石井代表が落選した事実は、否応なく自公政権の落日を痛感させるし、代表を蹴落としたのが国民民主党の鈴木義弘氏であることも今回の衆院選を象徴していたのではないか。
そう、今回最も躍進したのは国民民主党、そしてMVP級の活躍を見せたのが同党の玉木雄一郎代表であることは間違いない。なにしろ前回の259万票からの617万票獲得である。およそ2.4倍。そこまでの跳躍ぶりは党としても想定外だったようで、東海、北関東ブロックの計3議席は名簿登載者が足りず、他党(自民・立民・公明)へ議席を譲るという事態に。うち東海ブロックで「棚ぼた」の幸運に浴したのが現職の復興大臣である自民党の伊藤忠彦氏というオチがまた何とも。この譲渡劇について玉木代表が「国民民主党に票を投じてくださった方がたにお詫び申し上げたい」とコメントする様子をテレビで見たが、言葉と裏腹にその表情に影はなかった。明るさを隠せなかったというべきか。〈議員バッジのない大臣〉寸前だった伊藤氏がコメントを控えたのとはあまりに対照的だった。
さて、話は2年前の夏にさかのぼる。2022年7月、参院選期間中に軽い気持ちで〈超党派ドリームチーム〉を夢想中とツイッター(現X)に投稿した。それを面白がった「サンデー毎日」編集部が、チームのひとりである自民党の石破茂氏とぼくの初対談を企画し、9月に実現した。チームの選抜条件は「自分の言葉で語る、説得力に満ちた政治家」だったから、対談テーマは当然のように「政治と言葉」に落ち着いた。
その模様は今年8月に出版された石破氏の最新著『保守政治家 わが政策、わが天命』(倉重篤郎編・講談社)に再録されているので、興味のある方はぜひお目通しいただきたい。だが同書にはチームの全ラインナップまでは引用されなかったので、このタイミングにご紹介したい。
石破茂、村上誠一郎、中谷元、小野寺五典、野田聖子、河野太郎(自民)、辻元清美、長妻昭、蓮舫、小川淳也、吉田晴美、森裕子(立憲)、福島瑞穂(社民)、玉木雄一郎、大塚耕平(国民民主)、志位和夫、小池晃、宮本岳志、田村智子、山添拓、辰巳孝太郎(共産)、山本太郎(れいわ)、田中康夫(無所属)。
──ううむ。自分でもすべて記憶しているわけではなかったこのリストを2年ぶりに読み直しながら、ぼくは唸ってしまった。いまならきっと除外した名前もあれば、追加したい名前もある。
総理大臣になった人、委員長になった人、内閣入りした人、幹事長になった人。もちろんその逆も。総裁選に落ちた人、委員長を退いた人、都知事選に落ちた人、議員バッジを失った人……たった2年でここまで立場が変わるものか。政治の非情さ、政治家という職業の厳しさに思いを巡らせずにはいられない。
ここからなぜ玉木氏が飛び出したのか? よく指摘されるのが、55歳にしてスマホ中毒と仄聞する彼のネットやSNSとの親和性だ。国民民主の選挙戦略は「ネットどぶ板」と言われる。代表自らそう説明するのをテレビでも見た。最もネットに詳しいわけでもないだろうが、最もネットの使い方に長けた政治家のひとりとはいえるはずだ。現にぼくの周囲の年少の音楽人たちは、玉木氏を知ったのはネットだと異口同音に言う。機を見るに敏、代表はこのタイミングを逃すまいと、来年の参院選、東京都議選への公募を呼びかける動画を早速公開している。いま政治を志す若者、何者かになりたい若者はぎゅっとハートを掴まれるんだろうなあという熱っぽさで。今回落選した日本維新の会政務調査会長の音喜多駿氏も、参院選に国民民主から出たりして。
でも、とあえて言うが、今回の本当のMVPは、神戸学院大学教授の上脇博之氏、そして日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の2組ですよねぇ。なのに共産党が議席数を減らすという皮肉。票をつかむ言葉は、世論を動かす言葉と似て非なるものかもしれない。前者とネットの最良の関係をさぐるのが各党に課せられた急務であることを痛感した今回の衆院選だった。
松尾潔 音楽プロデューサー
1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。
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