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※2024年9月14日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大 文字起こし
※紙面抜粋
連日のメディアジャックに、一般の国民はすでにお腹いっぱい(C)JMPA
普通の神経、普通の企業ではあり得ないことを平然とやるのが自民党。その象徴が推薦人名簿に裏金議員が堂々と入っていることだ。公然と載せた高市だけでなく、小泉の懐刀は巨額裏金の二階派議員。国家ぐるみの不正隠し、不正幕引きのセレモニーの本質をなぜか、スルーのNHK。
◇ ◇ ◇
12日に告示され、ようやく正式にスタートした自民党の総裁選。さっそく、9人の候補者が連日、メディアジャックしている。一般の国民は、すでにお腹いっぱいだろうが、27日の投開票日まであと2週間、このバカ騒ぎがつづくことになる。
さすがに、良識ある国民は呆れ返ったのではないか。総裁選に出馬した候補者の推薦人に「裏金議員」が名前を連ねていたからだ。
この総裁選は、岸田首相が「政治とカネの問題の責任を取る」と退陣表明してはじまったものだ。裏金事件で失った国民の信頼を取り戻すための総裁選だったはずである。
ところが、裏金議員21人が、5候補の推薦人になっていたのだから国民は驚愕したに違いない。投票権を持つ裏金議員75人のうち、ざっと3分の1が推薦人になっていた(別表参照)。
なかでも、高市早苗・経済安保相(63)の推薦人は、20人のうち13人が裏金議員だった。推薦人の約7割が裏金議員なのだから異常だ。
当初から、この総裁選は、裏金議員の復権の場に利用されるのではないかと危惧されていた。危惧された通りの展開となっている。
推薦人に裏金議員はゼロだったが、コバホークこと小林鷹之・前経済安保相(49)の出陣式には、福田達夫・元総務会長ら、少なくとも6人の裏金議員が参加していた。
小泉進次郎・元環境相(43)の事実上の選対本部長も、裏金1926万円をつくっていた二階派の武田良太・元総務相がつとめている。
謹慎するどころか、総裁選をきっかけに、裏金議員が公然と動きだしている状況だ。
しかし、東京地検に立件されてもおかしくない裏金議員を推薦人にするとは、マトモな神経では考えられないことだ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「裏金事件によって国民の信頼を失ったのに、裏金議員を総裁選の推薦人にするのは、一般常識ではあり得ないことです。国民にケンカを売っているのも同然です。大手メディアは『推薦人が集まらず、裏金の有無にこだわる余裕がなかったのだろう』などとシタリ顔で解説していますが、納得していい問題ではないでしょう。NHKを筆頭に、裏金議員が推薦人に名を連ねている異常事態を問題視しない大手メディアはどうかしています。それにしても、裏金議員を推薦人にしたらどう思われるか、という当たり前の想像力さえ自民党議員は失ってしまったのでしょうか。9候補のうち、5候補が推薦名簿に裏金議員を載せているのだからどうかしています」
裏金議員が決める新総裁
各陣営の推薦人になった裏金議員(C)日刊ゲンダイ
朝日新聞の世論調査では、「新総裁は派閥の裏金問題の実態解明を進めるべきだと思うか」との問いに、7割が「進めるべきだ」と答えていた。
しかし、もはや自民党内に裏金事件の真相を解明しようという空気は皆無だ。このままでは、この総裁選も不正幕引きのセレモニーに使われかねない状況である。
13日、「裏金事件の真相解明に向けて再調査をするか」と、記者会見で聞かれた候補者9人は、全員「すでに党が厳正な処分を行った。追加調査は考えていない」などと、再調査を否定していた。裏金問題を“終わった”ことにするつもりだ。
おかしなことに、総裁選がはじまった途端、不正な裏金づくりに手を染めていた連中が、俄然、力を持ちはじめている。
本来「政治とカネ」が最大の争点になるはずなのに、総裁選の候補者は全員、裏金議員に対して、腫れ物に触るような態度をとっている。
出馬会見の時、裏金議員の公認について「責任を持って有権者にお願いできるかどうか、厳正に判断されるべきだ」と、正論を唱えていた石破茂・元幹事長(67)も、すぐに「一律に公認を取り消す意味ではない」と慌てて釈明し、告示日の12日は、公認問題に触れもしなかった。
それもこれも、75人の裏金議員が、総裁選のキャスチングボートを握ってしまったからだ。総裁選びの「投票権」を持つ国会議員は367人。裏金議員は、ざっと4分の1を占める。裏金議員の不興を買ったら当選はおぼつかない状況なのだ。
しかし、そもそも、犯罪行為に手を染めるような裏金議員に「投票権」を与えたことが間違いだったのではないか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「自民党内の理屈だと、裏金を多く集めた議員ほど、政治力のある有力議員ということになるはずです。力があるからパー券を大量にさばけた、ということでしょうからね。もし、裏金議員に総裁選の“投票権”を与えていなかったら、総裁選の候補者も思い切った政治改革案を掲げられ、自民党が生まれ変わるチャンスになったかもしれない。しかし、もはや、総裁選の候補者9人に裏金問題への切り込みを期待しても難しいでしょう。新総裁になるためには、裏金議員の顔色をうかがいながら総裁選を戦うしかないからです。勝敗を決することになりそうな上位2人の決選投票になったら、裏金議員75票は、決定的な力を発揮しますからね」
お馴染みの「生まれ変わる」宣言
9月27日に新総裁を選出したら、自民党は一気に解散総選挙になだれ込むつもりだ。
有力候補の石破茂も小泉進次郎も、いまから「早期解散」を宣言している。新政権への「ご祝儀相場」がつづいているうちに衆院選を行えば、絶対に負けないと計算しているのだろう。岸田も首相に就任した直後に解散し、単独過半数を確保している。
自民党が巧妙なのは、1カ月間メディアジャックをやりながら、野党の武器まで奪っていることだ。
「自民党の総裁候補が、突然『選択的夫婦別姓の導入』や『政策活動費の廃止』を掲げていることに対し、立憲民主党が『野党の政策をパクっている』と声をあげているのは、危機感もあるはずです。このまま衆院選に突入したら、野党は訴える独自政策がなくなってしまうからです。自民党のやっていることは、一種の野党つぶしであり、選挙の争点つぶしですよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
総裁選に手をあげている9人の自民党議員は、口を揃えて「信頼される自民党に生まれ変わる」と訴えている。とにかく「刷新感」を訴えて、総選挙に突っ込むつもりでいる。
しかし、国民はだまされてはいけない。自民党が「刷新」されることは、絶対にないからだ。
これまでも自民党は、ことあるごとに「生まれ変わる」と宣言してきた。野党時代だった2010年の党の政策でも「自民党は生まれ変わって皆さんの期待に応えます」と訴えていた。2021年に総裁に選ばれた岸田も「生まれ変わった自民党をしっかりと示す」と約束している。茂木幹事長も、政治資金規正法改正案をまとめた時、「新しい党に生まれ変わる決意で取り組みを進める」と語っていた。
しかし、これまで自民党が生まれ変わったことは一度もない。
「あれだけ国民から裏金事件を批判され、支持率も下落したのに、それでも自民党の総裁選候補者は、平然と推薦名簿に裏金議員を載せているのだから異常です。マトモじゃない。彼らに、生まれ変わるつもりがないことは明らかです」(本澤二郎氏=前出)
総選挙は、早ければ10月27日に行われる。国民は手ぐすね引いて待つしかない。
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