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※2024年9月12日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字起こし
※紙面抜粋
※2024年9月12日 日刊ゲンダイ2面
付け焼き刀公約は野党のパクリ、神輿の軽さも…(小泉進次郎元環境相)(C)日刊ゲンダイ
自民党の総裁選の候補者が出そろったが、前代未聞のグロテスク。候補者たちの付け焼き刃公約は野党のパクリ。いかに自分たちが反国民政権だったかの裏返しだが、そのうえ、党内を覆う「進次郎の不安」。神輿の軽さへの疑心暗鬼。これほどふざけた争いは前代未聞だ。
◇ ◇ ◇
「立憲自民党ですか」
立憲民主党の泉健太代表にまで小ばかにされている。12日告示日を迎えた自民党総裁選(27日投開票)。上川陽子外相が11日出馬表明し、名乗りを上げたのは9人目だ。候補者数は1972年の推薦人制度導入以降、最多だった5人を大幅に上回る。さあ、本番。これから政策論争に花が開くかと思えば、ハナから期待できない。
なぜなら各候補の「目玉公約」は立憲や共産党など野党の政策のパクリ。しかも、ことごとく自民が反対してきたものばかり。とりわけ「おまえが言うな!」と引っぱたきたくなるのが、茂木敏充幹事長だ。4日の出馬表明で使途公開の義務のない政策活動費の「廃止」をブチ上げた。幹事長として茂木は2022年の1年間だけで計9億7150万円の政活費を受領し、すでに2年9カ月に及ぶ在任中にせしめた額は推計約26億円を超える。
党内の誰よりも事実上の裏金をガッポリ手にした茂木が、今さら「廃止」とは不適切にもほどがある。総裁選出馬に伴い、茂木は職務権限を党総裁の岸田首相に委ね、すでに幹事長の任期を終えたようなもの。あの人望のなさがにじみ出る表情で廃止を明言されると「ボクさえ、おいしい思いができたら後は野となれ」と考えているフシすら勘ぐりたくなる。
そんな身勝手な茂木に「どの口が言うのか」とツッコミを入れるどころか、他候補は「じゃあ俺も俺も」と便乗する始末。小林鷹之前経済安保相や石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安保相が次々と廃止に言及し、「ひとり勝ちは許さん」と言わんばかりである。集団コントじゃあるまいし、どいつもこいつもホンの3カ月前のことを、もう忘れたのか。
いただき男子と女子がウジャウジャ
改正政治資金規正法の審議で、野党の政活費廃止要求に抵抗したのは自民党だ。岸田は「個人のプライバシー、企業の営業秘密、政党の方向性について外部の政治勢力や外国に知られることになる」とナゾの屁理屈をこね、使途公開すら拒否。党首討論では「禁止、禁止、禁止は気持ちいいかもしれない」と廃止を求めた立憲の政治姿勢をあてこすってみせた。
結局、日本維新の会と手を握り、「領収書の10年後の公開」で合意。こんな中途半端な改正法に誰ひとり造反することなく、右へ倣えで賛成したのが総裁選候補の面々だ。
国民に詫びのひと言もなく、いけしゃあしゃあと手のひら返し。野党の要求をパクって平気の平左。この点だけでも総理・総裁どころか、政治家の資格ナシ。いい大人のすることじゃないが、候補者には「いただき男子」と「いただき女子」がウジャウジャいる。
林芳正官房長官が口火を切った「マイナ保険証に一本化、現行保険証の廃止」の時期見直しも噴飯ものだ。マイナ保険証の利用率は低調で、現行保険証廃止の評判は最悪とはいえ、官房長官は政府のナンバー2だ。先の通常国会でも野党は現行保険証の「廃止の延期」を強く求めていた。林が本気なら、いつでも岸田に具申できたはずだ。
12月の廃止まで3カ月を切って突然「見直し」を表明しても遅すぎる。延期には法改正が必要で、残された時間は皆無に等しい。つまり廃止時期の見直しは、単なる思い付きに過ぎない。
旗振り役の河野デジタル相が突然のハシゴ外しに「林氏も閣内で政策を推し進めてきた一人だ」と反発するのも当然だ。河野のマイナ保険証ゴリ押し暴走を、林がどんな思いで見つめていたのかは知らないが、完全な閣内不一致。総裁選をやる前に岸田内閣はサッサと総辞職すべきだ。
政権担当能力を失った政党の最後の宴
どの口が!貴方たちが言うな(茂木敏充幹事長と林芳正官房長官=右)/(C)日刊ゲン
他の候補も重職に就く林の軽い発言をいさめるどころか、石破はシレッと見直しに賛同。高市も10日に「しっかりとマイナ保険証が使える環境が整備されてからが一番皆さまのためになる」と語り、見直し議論に参戦した。パクリの連鎖反応はすさまじい。
他にも小泉、石破、河野が明確に賛成している「選択的夫婦別姓の導入」をはじめ、「防衛増税の停止」(茂木)、「金融所得課税の見直し」(石破)、「学校給食無償化」(加藤勝信元官房長官)──と出そろった候補者の公約は、野党パクリのオンパレード。そうでなければ、河野の「年末調整の廃止」や、石破の「米国本土に自衛隊の基地を置く」など荒唐無稽な付け焼き刃である。全くもって無責任。恥も外聞もありゃしない。
「現職閣僚や党幹部まで野党のパクリとは……」と嘆息するのは立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)だ。こう続けた。
「あれだけ野党の要求を潰してきたのに、まるで言ったもん勝ち。裏を返せば、歴代の自民党政権が『反国民』だった証拠です。野党からパクった政策の実現を拒んできたのは散々、大企業優遇、米国言いなりの軍拡路線、社会保障切り捨て、反ジェンダー平等の政治を続けてきたから。一方で政治資金パーティーの禁止や企業・団体献金の廃止には誰も言及せず、裏金事件の決着には頬かむり。89人が投票権を持つ安倍派の議員票欲しさに真相究明に切り込もうとしない。本気度が疑われるパクリの数々は『変わったふり』の演出で、裏金隠しの論点ズラシ。小泉・河野両氏が選択的夫婦別姓を打ち出したのも、経団連が早期導入を求めているため。2人とも『解雇規制の緩和』を唱え、実現すれば大企業は大喜び。大企業優遇は相変わらずで、候補者全員が改憲の大合唱。結局、誰が選ばれても改憲だけはやるということ。自民の本性は変わりません」
「あすの日本」より「あすの選挙」が大事
もっと言えば、今回の総裁選そのものが立憲代表選のパクリでもある。現職の泉、枝野幸男前代表、野田佳彦元総理が争う構図は「新味なし」だが、総裁選も一皮むけば岸田と菅前首相、麻生副総裁がキングメーカー争い。それぞれ現総裁、前総裁、元総理で立憲代表選とウリふたつ。表で堂々と競い合っているか、それとも裏で暗躍しているかの違いでしかない。
何から何までグロテスク。前代未聞の総裁選で目下、党内を覆うのは優勢の見方が強まる進次郎への「不安」だ。経験・実力不足は誰もが知るところ。例のセクシー発言など「進次郎構文」から資質そのものが疑われ、同僚だった金子恵美元衆院議員には「地頭が悪い」と身もフタもない評価を下されている。
進次郎本人が「早期解散」を表明し、最も早くて10月27日投開票説も取り沙汰される。裏金やスネ傷議員、選挙に弱い議員にすれば見栄えの良い進次郎に「表紙」を替え、ボロが出る前に選挙を乗り切りたいのがホンネ。「神輿は軽くて」の論理だが、あまりにも軽すぎると政権運営が危うい。「保身」を取るか、それとも「国の行方」か。進次郎の軽薄さが多くの議員を疑心暗鬼に陥れ、総裁選の票読みを難しくさせているに違いない。何たるジレンマか。
「ウクライナやパレスチナで戦争が続き、米大統領選では大国の分断をみせつけられる世界の現状において、自民党議員は『あすの日本』より『あすの選挙』を優先。溺れる者は藁をも掴むの言葉通りに資質は度外視で進次郎氏の人気にすがる。総裁選の候補たちも目先の勝利が大事。野党の政策をパクって国民受けのする政策を並べ立てるだけです。そこには政治哲学もなければ、日本が今後進むべきビジョンやグランドデザインもない。この国の将来への責任を放棄し、もはや政権担当能力を失っています。今回の総裁選は最後の宴です」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
告示の12日から総裁候補たちは民放各局を行脚し、電波ジャックも始まる。
ふざけた争いにもう食傷気味なら、いっそネットフリックスと契約し「地面師たち」を一気見した方がマシだ。
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