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※2024年8月30日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字起こし
※紙面抜粋
※2024年8月30日 日刊ゲンダイ2面
党内世論ばかり気にして口だけ「改革」/(C)日刊ゲンダイ
党内世論を気にして、口だけ「改革」のメンメンに心底、国民は呆れているが、これが自民党の体質なのだ。
金と利権にどっぷり漬かり、批判されたらシャッポを取り換えて、反省のフリ。そんな集団にいれば、丸ごと全員腐っていく。総裁選でハッキリした腐敗政党の限界。
◇ ◇ ◇
「全て私の順法精神の欠如が原因だ。深くおわび申し上げる」
公選法違反事件で自民党を離党した堀井衆院議員=比例北海道=が28日、額賀衆院議長宛てに辞職願を提出し、許可された。
東京地検特捜部が同法違反に加え、所属していた安倍派(清和政策研究会)からキックバックされた裏金を政治資金収支報告書に適切に記載しなかったとして、堀井を政治資金規正法違反罪でも略式起訴すると報じられたことから、自ら辞する道を選んだとみられる。
「絶対にあきらめない」。中学時代からそう自分に言い聞かせ、ひたむきにスピードスケートに取り組んでいた堀井。ストイックに練習に励む姿は多くの国民の共感を集め、1994年のリレハンメル五輪男子スピードスケート500メートルで見事に銅メダルを獲得。
競技一筋だった真面目で朴訥な青年が政界に転身したのは2007年。当時、自民党北海道連会長だった橋本元五輪相から直接、道議選への出馬を要請されたことが要因だったという。
その五輪メダリストがたった14年で、私利私欲で刑事事件に触れる罪を犯す人間に「転落」するとは一体誰が予想したであろうか。堀井を支援してきた道民や国民はさぞ驚いているだろうが、これが今の自民党の体質。まさに「悪貨は良貨を駆逐する」かのごとく、いったん足を踏み込んだら最後。たちまち善悪の判断がつかなくなる。まさに反社組織そのものと言っていい。
裏金議員の公認の是非に踏み込みながら一転してトーンダウン
新聞、テレビが連日、大騒ぎで報じている自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)にもその正体が透けて見える。
総裁選最大の焦点と言ってもいい裏金事件を巡る各候補の言動だ。
5度目の挑戦となる石破元幹事長は出馬を表明した24日の会見で、裏金事件への対応として、政治資金規正法の再改正の必要性に加え、裏金議員の国政選での公認の是非にも言及。「責任を持って有権者にお願いできるかどうか、厳正に判断されるべきだ」と踏み込んだ。
裏金事件で岸田首相(党総裁)は4月に安倍、二階両派の議員ら39人に党員資格停止などの軽い処分を科しただけ。朝日新聞の世論調査(24〜25日)によると、「新総裁は派閥の裏金問題の実態解明を進めるべきだと思うか」との問いに、「進めるべきだ」が7割に達している。このため、石破は裏金事件に中途半端な態度を示せば世論の支持を失いかねず、このまま衆院選に突入した場合、党自体が追い詰められる可能性が高いと考えたのだろう。
だが、安倍派議員からは「安倍派を守ってほしかった」「単なるウケ狙い。総裁選には逆効果だ」などと反発の声が続出。すると、石破は発言の真意を問い合わせてきた議員に「一律に公認を取り消す意味ではない」などと釈明したといい、翌25日の講演でも、「最終的に公認するのは党総裁だ。党として有権者にしっかり説明できないといけない」と一転してトーンダウン。
26日のテレビ朝日の番組でも「(公認、非公認の)権限を持っているのは、自民党は選挙対策委員会だ」などと前言撤回とも受け取られかねない発言をしていたから何をかいわんや。ネット上で<石破茂にもガッカリだ>との声が目立つのも無理はないだろう。
政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「過去の三角大福と呼ばれた総裁選では、出馬したいずれの候補も命がけで政策を練り、党内、国民世論に懸命に応えようとしていた。しかし、今度の総裁選では、いずれの候補も本気で総裁、総理を狙うという覚悟がみられません。だから発言内容が単なる国民ウケとみられ、党内批判を説得することができないのでしょう」
不公平、不公正な自民党政治「腐ったリンゴは箱ごと捨てるべき」
全員ヒール!(C)共同通信社
総裁選で「腰抜け」「ヘタレ」と揶揄されているのは石破だけじゃない。河野デジタル相も出馬会見で、裏金議員に政治資金収支報告書への不記載分の国庫納付を求め、応じた議員は公認する──という考え方を示していたのに、28日のテレビ朝日の番組では「国民になるべく納得してもらえるやり方を議論する必要がある」などと、これまた発言内容がぐっと後退していた。
もっとも河野の返納発言をめぐっては、「パーティー券の購入者でもない国はそもそも返納先になり得ない」「仮に返納できたとしても罪が消えるわけじゃない」といった指摘が党内外で相次いでおり、人気取りの河野の思い付き発言と指摘せざるを得ないだろう。
そしてハナから裏金事件に頬かむりしているのが小林前経済安保担当相だ。
「一人一人の政治家が自ら説明責任を果たしていく。これが原則」と他人事のように言い放っていたが、裏金事件は発覚してから半年以上経つのだ。それなのに誰一人として何ら説明していないからこそ、いまだに世論批判が収まらないわけで、原則もヘッタクレもないだろう。
裏金事件の“震源地”となった安倍派の所属議員はもともと94人。裏金議員の支持が総裁選の勝敗を左右するとはいえ、党内世論を気にして、口だけ「改革」のメンメンに心底、国民は呆れているに違いない。
総裁選ポスターにそっくり「アウトレイジ」のコピーは「全員悪人」
自民党にいると、政治家はどんどん劣化する。繰り返すが、これが腐った自民党の体質なのだ。その象徴が安倍派の議員だろう。「一度決めた処分を蒸し返すべきではない」「非公認をほのめかす候補は応援できない」。総裁選候補が裏金事件に触れるたび、こう言って不快感をあらわにしているといい、衛藤元衆院副議長に至っては河野の返納発言について、「返せという考えは、我々としては理解できない」と色をなして反論したらしいが、何を寝ぼけたことを言っているのか。
長年にわたって組織的、常習的に繰り返されてきた裏金づくりは専門家からも脱税行為と指摘されている違法、脱法行為。つまり犯罪なのだ。
それをいまだに何ら反省もせず、返納と言われただけで過剰に反応し、逆ギレするとは言語道断。「理解できない」のは国民の方だろう。カネと利権にどっぷり漬かり、批判されたらシャッポを取り換えて、反省のフリ。そんな集団にいれば、丸ごと全員腐っていくのも当然なのだ。
安倍元首相ら歴代総裁26人の白黒写真が並び、中央に「THE MATCH」と赤い文字で書かれた総裁選の宣伝ポスター。構図が北野武監督のヤクザ映画「アウトレイジ」そっくりと話題になったが、SNS上では映画のキャッチコピーとの共通点を指摘する声も続出。「全員悪人」だったからで、<その通り><全員悪人自民党>といった投稿が相次いだのも無理はないだろう。
元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。
「国民が裏金事件にいまだに強い関心を寄せているのは、今回の事件を通じて、自民党は他にもまだ何らかの不正行為を行っているのではないかと疑っているからです。裏金事件で見えたものは、自民議員や一部の取り巻きが税金を中抜きして懐を肥やしているという実態。カネの流れが極めて不透明で、不公平、不公正な政治の姿です。一般国民はひたすら税金を収奪されるだけで、何ら恩恵もない。この怪しい構図に国民が気付いたのであり、コトは裏金事件の問題だけではないのです」
総裁選であらためてハッキリしたのは腐敗政党の限界だ。「腐ったリンゴは箱ごと捨てるべき」とはよく言ったもの。自民党そのものを瓦解させることこそ、この国がまっとうな政治を取り戻す唯一の手段なのだ。
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