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※2024年8月21日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字起こし
※紙面抜粋
※2024年8月21日 日刊ゲンダイ2面
オシマイ(左から茂木幹事長、岸田首相、麻生副総裁)/(C)共同通信社
何人立っても同じ穴のムジナ。企業・団体献金による利権政治をやめない以上、裏金の総括など出来るわけがない。どの候補者も似たようなゴマカシで、有権者にさらされる賞味期限切れの自民党政治の限界。
◇ ◇ ◇
「反五輪でボイコットをしている」
日本中がパリ五輪メダリストの話題であふれていた7月29日。TBS系ニュース番組で、東大の斎藤幸平准教授がこう断言し、大きな話題となったのは記憶に新しい。
斎藤准教授は「ボイコット」の理由として、イスラエルによるガザ地区攻撃などを示唆しつつ、「スポーツウオッシュ」を挙げていた。
「スポーツウオッシュ」とは、国家や団体などが都合の悪い事を覆い隠すためにスポーツを利用する、という意味だが、パリ五輪から一転して「ポスト岸田」を巡る自民党総裁選のニュース一色に様変わりした今のTV報道も、さながら「総裁選ウオッシュ」のよう。同党の不祥事や醜聞を隠したり、忘れさせたりするための“政治イベント”と化しているからだ。
1972年に推薦人による立候補制度を導入して以降、候補者が最多だった2008年と12年(ともに5人)を超え、過去最高の10人以上が出馬を検討しているとされる総裁選。総裁選挙管理委員会は20日、党本部で会合を開き、「9月12日告示、27日投開票」の日程で行うことを決めた。
現行のルールとなった1995年以降、選挙期間は12日間とするケースが多かったが、今回は最長となる15日間。立憲民主党の代表選が9月7日告示、23日投開票の日程で行われることを踏まえ、期間拡大を決めたというのだが、おそらく狙いは違う。派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で逆風が吹く中、メディア露出を増やして新体制をアピールするためだろう。
反社集団に等しい愚劣政党に政策通はいない
「新生自民党を国民に示すものとなる。真剣勝負の議論を国民の前で展開してもらいたい」「主流派も反主流派もなく、一致団結し、真のドリームチームをつくって、きたるべき国政選挙に臨んでほしい」(岸田首相)
「自民にはさまざまな政策に精通した人材がいる。地方遊説や討論を党員や国民に届けるためにも、長い期間をつくったのは望ましい」(茂木幹事長)
総裁選の日程が決まった20日、党役員会などでこんな意見が出ていたらしいが、へそで茶を沸かすとはこのことだ。
長年にわたって組織的かつ常習的に違法・脱法行為の裏金をせっせとつくり、表沙汰になった今もなお、真相解明もせず、誰一人として責任を取らない自民党。そんな反社会的集団に等しい愚劣政党の一体どこに「政策に精通した人材」がいるというのか。
そもそも、「民主主義の危機」を訴えていたにもかかわらず、安倍・菅の両独裁政権をしのぐ強権ぶりを発揮し、「平凡なチーム」さえもつくれなかった男が「真のドリームチームをつくって」などとよくぞ言えたものだろう。
何人立っても同じ穴のムジナ。にもかかわらず、TVは「刷新」「新生自民なるか」などと大騒ぎ。こんなバカバカしい茶番劇をあと1カ月もやるのかと思うとクラクラするではないか。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「総裁選だと浮かれているのは永田町の自民議員とメディアの政治部ぐらい。多くの国民はほとんど興味も関心もないでしょう。頭を変えたところで、中身は変わらないことが分かっているからです。立候補を検討している議員が多いのは総裁選よりも、次の選挙のために名前を売っておきたいからではないか。大騒ぎしているメディアもメディアです」
候補者はミニミニ安倍かプチ安倍
ポンコツばかり(総裁選挙管理委員会)/(C)共同通信社
「行動を起こす。より先の未来に責任を持てる世代として、先頭に立つ」
そろって期待薄のポンコツ候補の乱立が予想される中、先陣を切って立候補表明した小林前経済安全保障担当相。19日の会見では、滑り出しこそ「自民党は生まれ変わる」「脱派閥選挙を徹底する」と勢いがあったが、裏金事件の再調査を問われると、「党の調査は限界がある。新たな事実が出てきた場合は考える」などと途端にトーンダウン。
支援を受ける元安倍派議員らをおもんぱかるような言動が目立ち、自身と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関係についても歯切れの悪い応答に終始していた。
小林は会見で、「(日本の)経済力、科学技術力は国際的に低下をしています」「物価が高騰し、実質賃金がなかなか上がってこない」「暮らしが良くなったという実感を得られない」「人口が減少し、特に地方は疲弊しています」「この停滞感を打破し、活力ある社会を取り戻さなければ日本は世界の中で埋没してしまう」……とも言っていたが、ちょっと待て。
経済力が低下し、物価が高騰し、実質賃金が上がらない状況を招いた政権与党は誰なのか。
人口減少に有効な手を打たず、地方を疲弊させたのは誰なのか。いずれも答えは長期政権を担ってきた自民党ではないか。
自民議員は皆、絵に描いたような悪代官ばかり
そもそも第2次安倍政権が誕生した総選挙で初当選した元財務官僚の小林は、政権与党の一員としてアベノミクスを進めてきた当事者と言っていい。
異次元金融緩和でトリクルダウンを起こし、経済の好循環を生む。全国津々浦々に景気の実感を届ける──。国民にはそう喧伝されてきたはずなのに、今さら他人事のように「暮らしが良くなったという実感が得られない」なんて無責任にも程がある発言だろう。
結局、自民党が企業・団体献金による利権政治をやめない以上、裏金の総括などできるわけがない。この約1年間を振り返るだけでも、自民党国会議員による利権絡みのカネ問題は枚挙にいとまがないからだ。
洋上風力発電事業を巡る汚職事件で逮捕、起訴された秋本、東京・江東区長選をめぐる公職選挙法違反事件で逮捕、起訴された柿沢のほか、裏金事件では池田、大野、谷川らが逮捕されたり、在宅起訴されたりした。
カネの問題以外でも、「パパ活疑惑」報道を機に辞職した宮沢、選挙区の有権者に香典を渡した疑惑で強制捜査を受けた堀井、公設秘書の給与を騙し取った疑惑で家宅捜索を受け、辞職した広瀬など醜聞を挙げればきりがない。
繰り返すが自民党議員が「政策に精通」などとんでもない。皆、そろって絵に描いたような悪代官ばかり。総裁選では、そんな腐敗堕落政党の正体、賞味期限切れの自民政治の限界があらためて有権者にさらされることになるだろう。
ジャーナリストの横田一氏はこう言う。
「小林議員の会見の発言を聞く限り、ミニミニ安倍元首相というのか、プチ安倍元首相というのか。言っている内容が安倍政権と変わりません。つまり、また同じ愚策を続けるということ。おそらく今後も似たような主張をする議員が立候補するのでしょう。自民党の狙いは総裁選でメディアジャックしてご祝儀相場のまま解散、総選挙です。TVメディアは今、自民党の宣伝部隊となっているかのようです」
有権者は「総裁選ウオッシュ」に騙されてはダメだ。
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