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※2024年8月20日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字起こし
※紙面抜粋
※2024年8月20日 日刊ゲンダイ2面
イメージはだいだい色(小林鷹之前経済安保相)/(C)日刊ゲンダイ
猫も杓子もと総裁選に名乗りを上げているが、ここまで劣化したのかと驚くばかり。投票までにボロが出る候補がほとんどだろう。そもそも、裏金まみれに頼ったり、自分がマネロンまがいのことをしていたり、裏金議員に隠蔽を求める勘違いなど、前代未聞のグロテスク。
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お盆の最中の退陣表明を境に、かすかだった存在感すら消え失せた岸田首相の後継を選ぶ自民党総裁選の火ぶたが切られた。「コバホーク」とあだ名される小林鷹之前経済安保相(49)が19日、一番乗りで出馬を表明。自民を下野前夜へ追い込んでいる裏金事件を意識して「脱派閥選挙を徹底する。旧派閥に対する支援は一切求めない」とタンカを切り、「当選4回、40代、普通のサラリーマン家庭で育った私が派閥に関係なく、今この場にこうして立っている事実こそが自民党が本気で変わろうとする象徴になる」と政治改革や党改革の実行を力強く訴えた。
国会内の会見場には立ち見を含め200人超が詰めかけ、小林を支持する衆参両院の24議員も出席。小林と同じ当選4回が10人、当選1回9人、当選3回3人、当選5回1人、当選2回が1人。裏金事件の震源地となった安倍派11人、小林の古巣の二階派4人、麻生派3人、岸田派1人、森山派1人、無派閥4人──という内訳だった。中堅若手にもり立てられ、出馬に必要な20人の推薦人を確保したとの演出は当然、出足からけつまずいた。政治倫理審査会での弁明から逃げ回っている裏金議員が晴れの舞台にのこのこ現れたのだから、ドン引きである。呼ぶ方も呼ぶ方だし、来る方も来る方だ。
問題の安倍派11人のうち、キックバックの受け取りが判明しているのは7人、総額4404万円。このメンツの中で最も悪質なのが当選3回の宗清皇一衆院議員(比例近畿)で、1408万円の還流を受け、役職停止6カ月の処分中の身だ。当選5回の大塚拓衆院議員(埼玉9区)ら3人も戒告を食らっている。
ウラガネ烏合の衆の思惑
「同じ安倍派でも、中堅若手ホープと目される福田達夫元総務会長(群馬4区=当選4回)は議員席には着席しなかった。写真に収められ、同列に扱われるのを避けたようです」(議員秘書)
こうヒソヒソ言われている福田もまた、処分は免れたものの、98万円の裏金受領が判明している。小林は、大臣室で口利きワイロをポケットに入れた甘利明前幹事長のひも付きだ。えてして、金銭感覚の狂いは倫理観の緩さにも通じる。ガテン系の愛人を私設秘書としている疑惑を「週刊文春」(8月15.22日号)に報じられた森由起子衆院議員(比例東海)が議員席を占めていたのもア然。パパ活がバレて辞職した安倍派の宮沢博行前衆院議員の辞職に伴い、繰り上げ当選してわずか3カ月だ。小林のもとに集ったのが、選挙で勝つことを目的とした烏合の衆であることが透けて見える。選挙互助会は自民の本質である。
その一方で、NHKは「高校野球・準々決勝」の放送を中断し、小林の会場入りの瞬間から10分超にわたって生中継。首相会見さながらの手厚さだった。スタジオで会見の内容や立候補予定者の顔ぶれなどを解説する丁寧な仕事ぶり。今後、出馬会見が開かれるたびに生中継する構えなのか。現状、11人が色気を見せている。小林だけ特別扱いをするわけにはいくまい。世論人気は断トツ、党内ではぐれ者の石破茂元幹事長(67)は週内にも地元の鳥取県で5度目となる立候補を正式表明する見通しだ。刷新感を打ち出したい自民の思惑通りにメディアジャックが展開されているわけだが、逆効果だろう。過去最多の立候補者が見込まれる乱立総裁選は「人材払底」の見本市。度し難い集団であることを満天下にさらされることになる。
隠しきれない悪しき保守のDNA
小林前経済安保相を支持する議員の面々(C)日刊ゲンダイ
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「小林氏は〈自民党は、生まれ変わる。日本は、生まれ変わる。この国を、より高く、より遠くへ〉というキャッチフレーズを掲げていますが、どこをどう新しくしようというのかサッパリ分かりません。岸田首相の退陣理由のひとつとなった裏金事件をめぐっては、世論の感覚と明らかに乖離している。発言に若干の修正をかけましたが、党内処分を受けなかった安倍派議員の人事を『適材適所』で行うというのでは、自民党に対する世間の冷たい視線は強まるばかりでしょう。小林氏は終戦の日に靖国神社を参拝した。近隣諸国を刺激する悪しき保守のDNAをまるっと継承している。党刷新は言葉遊びに聞こえます」
猫も杓子も総裁選に名乗りを上げているが、ここまで政権政党が劣化したのかと驚くばかりだ。日程は20日の選挙管理委員会で「9月12日告示、27日投開票」が正式決定される見通し。これはこれで、退場する岸田への配慮の末。「新時代リアリズム外交」と称し、米国隷従で軍拡を推し進めた岸田は、9月下旬にニューヨークで開かれる国連総会への出席に未練たらたら。新総裁選出後の訪米は格好がつかないため、思い出づくりの調整をしたという。一事が万事この調子だから、投票までにボロを出す候補がほとんどだろう。
ポスト岸田に前のめりだった茂木敏充幹事長(68)は、頼みの綱の麻生太郎副総裁の支持を取り付けられず、勢いを失っているが、そもそも政治資金パーティーとは別の裏金疑惑がある。政治資金を移動させ、使途を分かりにくくさせるマネーロンダリングさながらの手法で脱法資金をつくっていた疑いだ。親分である麻生からようやくお墨付きを得た河野太郎デジタル相(61)は、周知の通りの人格破綻者。茂木派が足場の加藤勝信元官房長官(68)は地味だが、どう転ぶか分からない。
空疎であり続ける「改革」
岸田派ナンバー2の林芳正官房長官(63)はセクシー個室ヨガ通いを報じられた過去があり、いっとき持ち上げられた同じく岸田派の上川陽子外相(71)も一癖ある。野田聖子元総務相(63)については、夫の存在がネックだ。元暴力団員であることが「真実」との認定が最高裁で確定している。斎藤健経産相(65)は一体どうしたいのか、腹の底が見えない気味の悪さがある。裏金まみれに頼ったり、自分がマネロンまがいのことをしていたり、裏金議員に恩赦を求める勘違いなど、前代未聞のグロテスクな様相だ。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう指摘した。
「総裁選は茶番。国民的行事のようになっていることが非常にバカバカしい。選挙戦を通じて有権者と議論し、理解を深めようという姿勢が全く見えません。一番乗りした小林氏は若いだとか、高身長だとか、外形的な要因ばかりが関心を集めていますが、ゴリゴリの改憲派。選択的夫婦別姓も同性婚も反対の立場で、安倍路線の継承をアピールしている高市早苗経済安保相(63)と同等か、それ以上に危うい。彼らの言う『改革』というのは空疎で、単に物事を前に進めるというだけのこと。各方面から期待が高まっているとされる小泉進次郎元環境相(43)がいい例で、バッジを15年つけ続けてもスカスカ。だからこそと言うべきか、背後には影響力を誇示したい森喜朗元首相だとか、菅義偉前首相の存在が見え隠れする。刷新イメージを振りまき、この危機を乗り越えようとする自民党の思惑に乗せられたら、どうしようもない歴史を繰り返すことになります」
総裁選はまるで小悪の棚卸し。この先40日近くもお祭り騒ぎを続けられるのか。自民も国民も正念場だ。
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