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※2024年8月18日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大 文字起こし
紙面抜粋
自民党総裁選への不出馬を表明する岸田首相(C)共同通信社
このままでは自民党は終わるとかで、中堅も含めて乱立模様のに総裁選。これまで党の対応に異を唱えず、デタラメ改正法にも賛成した面々が「政治の信頼」など取り戻せるわけがない。さも「自分だけは違う」と言いたげな同じ穴のムジナの醜悪。
◇ ◇ ◇
岸田首相が9月の自民党総裁選への不出馬を表明した14日、テレビのワイドショーに出演していたキャスターの古舘伊知郎が、この先の「ポスト岸田」一色の報道への懸念を示し、こう発言していた。
「水を差して申し訳ないんですけど、テレビはすぐ『次の総裁は』『ポスト岸田は』ってなる。まさに会見で『自民党は生まれ変わらなきゃいけない』って岸田さん、何度もおっしゃいましたよ。だけど、生まれ変わってないじゃないですか。そういうふうに見てる国民も一定の割合、かなりいると思いますよ」
実際、その通りの展開になっている。総裁選への出馬に意欲を見せる候補者は、これまで名前が挙がっているだけでも、石破茂元幹事長(67)、小泉進次郎元環境相(43)、小林鷹之前経済安保相(49)、河野太郎デジタル相(61)、高市早苗経済安保相(63)、茂木敏充幹事長(68)、加藤勝信元官房長官(68)、野田聖子元総務相(63)、斎藤健経済産業相(65)、上川陽子外相(71)、林芳正官房長官(63)と、11人もいる乱立模様。永田町や大メディアの政治部は、「小林氏が推薦人20人確保」「進次郎氏に待望論」などと囃し立て熱を帯びてきているが、自民党不信の多くの国民はシラけているんじゃないか。
なぜ裏金事件で声を上げなかったのか
小泉進次郎元環境相(左)と小林鷹之前経済安保相(C)日刊ゲンダイ
早々に20人の推薦人にメドをつけ、週明け19日にも出馬表明するという小林を推すのは、当選4回以下の若手が中心だ。派閥解消で独自に動きやすくなり、裏金事件で世間の風当たりが厳しい安倍派議員らも加わる。そのうちのひとり、福田達夫元総務会長は月刊誌に同期2人と「自民党改革試案」を発表し、「世代交代」の必要性を主張。小林本人も11日のテレビで「自民は危機的な状況にある」と訴えていた。
小泉も待望論が出ることにまんざらでもない様子。自身の出馬には触れないものの、11日に視察先で「総裁選に向け、いかに自分たちの手で変えることができるか、本当に生まれ変わった自民党のきっかけをつくることができるかだ」と強調していた。
だが、小林も小泉も軽量級大臣を1回やっただけ。自民党が政権政党である以上、総裁は首相になるのに、党三役も重要閣僚の経験もない2人がこれほど持ち上げられるのには違和感がある。
任期満了まで1年ちょっとに迫った衆院選を前に、党内が慌てふためいている裏返しだ。
総裁選新顔の中堅も複数加わることで、国民にトコトン嫌われた岸田からフレッシュな顔にすげ替え、「刷新感」を出すことが狙い。「自民党は変わった」と世論に訴えるのが目的で、本気で改革する気なんてないのだろう。
党青年局も「今回の総裁選は党の命運がかかった最後のチャンス。開かれた議論をしっかりと行わなければならない」(鈴木貴子青年局長)と岸田に申し入れていたが、小林や小泉を推す中堅・若手や青年局は、ならばどうして裏金事件の渦中に行動に移さなかったのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏もこう言う。
「ここへきて総裁選のキーワードは『刷新』や『政治改革』とされ、若手も含めいろいろな名前が出ていますが、だったらなぜ裏金事件の時に声を上げなかったのか。自民党にとって最大の危機と言っていいほど世論から批判を浴びたのに、裏金の実態解明や原因究明もせず、処分も政治資金規正法の改正もいい加減にお茶を濁した。その間、中堅・若手は執行部を突き上げるでもなく、嵐が過ぎるのを待っていただけでした。それで今になって改革と言われても、まったく信用できません。永田町でしか通用しない論理です」
本当にその通りで、改革に後ろ向きな党の対応に異を唱えず、政治資金規正法のデタラメ改正に賛成した面々が「政治の信頼」など取り戻せるわけがない。堕落しきった政党が、今ごろ「刷新」も何もないだろう。
逮捕者まで出した裏金事件であらわになったのは、ベテランから若手まで、金権腐敗政治にどっぷり漬かっている自民党の実態だ。キックバックをこっそり懐に入れ、脱税疑惑が指摘されても知らんぷり。再発防止のため、政治資金パーティーの全面禁止が俎上に載れば、「パーティーでカネ集めをしないと事務所が運営できない」と悲鳴を上げる。政策を歪めると批判され続けている「企業・団体献金」については、一切触れもしなかった。
「自民とカネ」はコインの裏表の関係で断ち切れない
堀井学衆院議員(左)と広瀬めぐみ前参院議員(C)日刊ゲンダイ
国民は「カネのかかる政治」に疑念の目を向けているのだ。もっと言えば、「カネをかけるのが当たり前と思っている政治家」に不信感でいっぱいなのに、「民主主義のコスト」だと強弁し、カネをかけることを是とする。
その末路が、自民を離党した堀井学衆院議員の違法な香典疑惑であり、議員辞職した広瀬めぐみ前参院議員の秘書給与詐取疑惑ではないのか。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「ただ岸田首相が辞めると言っただけのことでしょう。自民党が『刷新』なんて、あり得ません。ここまでの間に、何らかの改革の芽も、変わるかもという兆しも何もありませんでしたから。特に、『政治とカネ』の問題では、ロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件と昔から同じことを繰り返してきた。で、その時々には『改革』が叫ばれるが、結局、元に戻ってしまう。政治資金を私物化したり、隠したり。政党交付金という我々の税金が入ったカネですら、使途を透明化することができないのですからね。『自民とカネ』はコインの裏表の関係みたいなもので断ち切れない。体質なんです」
国民騙しのマジックワード
岸田が旗を振った派閥解消も実態はそのままだ。総裁選で誰を担ぐかをめぐって、水面下で派閥単位の情報交換が夜な夜な繰り広げられている。唯一、派閥を存続させた麻生派の河野は、総裁選に出馬するため領袖の麻生副総裁に頭を下げた。派閥の看板を下ろしたはずの岸田派も「いざとなれば結束する」(同派関係者)と言うし、退陣する岸田本人はキングメーカーを狙っているらしい。総裁選はやっぱり、これまでと変わらぬ派閥の数合わせに収斂していくのだろう。
つまり「改革」「刷新」は、総裁選とその先の解散総選挙に向けた国民騙しのマジックワードでしかなく、総裁選に誰が名乗りを上げようが、誰が勝利しようが、選挙さえやり過ごせば元の木阿弥。出馬に意欲を見せる候補者たちは、さも「自分だけは違う」と言いたげだが、しょせん同じ穴のムジナだ。新総裁が誰になるとしても自民党が変わるとは思えない。我も我もの候補者乱立は、むしろ醜悪でしかない。
「自民党というコップの中で騒いでいるだけですから、誰が総裁になろうが何も変わりませんよ。口先でカッコいいことを言 国民は「カネのかかる政治」に疑念の目を向けているのだ。もっと言えば、「カネをかけるのが当たり前と思っている政治家」に不信感でいっぱいなのに、「民主主義のコスト」だと強弁し、カネをかけることを是とする。
その末路が、自民を離党した堀井学衆院議員の違法な香典疑惑であり、議員辞職した広瀬めぐみ前参院議員の秘書給与詐取疑惑ではないのか。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「ただ岸田首相が辞めると言っただけのことでしょう。自民党が『刷新』なんて、あり得ません。ここまでの間に、何らかの改革の芽も、変わるかもという兆しも何もありませんでしたから。特に、『政治とカネ』の問題では、ロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件と昔から同じことを繰り返してきた。で、その時々には『改革』が叫ばれるが、結局、元に戻ってしまう。政治資金を私物化したり、隠したり。政党交付金という我々の税金が入ったカネですら、使途を透明化することができないのですからね。『自民とカネ』はコインの裏表の関係みたいなもので断ち切れない。体質なんです」
■国民騙しのマジックワード
岸田が旗を振った派閥解消も実態はそのままだ。総裁選で誰を担ぐかをめぐって、水面下で派閥単位の情報交換が夜な夜な繰り広げられている。唯一、派閥を存続させた麻生派の河野は、総裁選に出馬するため領袖の麻生副総裁に頭を下げた。派閥の看板を下ろしたはずの岸田派も「いざとなれば結束する」(同派関係者)と言うし、退陣する岸田本人はキングメーカーを狙っているらしい。総裁選はやっぱり、これまでと変わらぬ派閥の数合わせに収斂していくのだろう。
つまり「改革」「刷新」は、総裁選とその先の解散総選挙に向けた国民騙しのマジックワードでしかなく、総裁選に誰が名乗りを上げようが、誰が勝利しようが、選挙さえやり過ごせば元の木阿弥。出馬に意欲を見せる候補者たちは、さも「自分だけは違う」と言いたげだが、しょせん同じ穴のムジナだ。新総裁が誰になるとしても自民党が変わるとは思えない。我も我もの候補者乱立は、むしろ醜悪でしかない。
「自民党というコップの中で騒いでいるだけですから、誰が総裁になろうが何も変わりませんよ。口先でカッコいいことを言っても、根本的に国民の不信感が払拭されることはないでしょう。直面する選挙をしのごうというだけなのがミエミエで、国民はドッチラケです」(野上忠興氏=前出)
乱戦模様のお祭り総裁選で支持率をアップさせ、総選挙突入を画策とは、相変わらず有権者はナメられたものだ。自民党の選挙対策に携わってきた元党事務局長で「選挙・政治アドバイザー」の久米晃氏は、16日発売の本紙で「とにかく岸田さんよりマシな人に代えて、というだけで選挙をやっても自民党は負ける」と断言していた。その場しのぎの刷新感などに、国民は騙されない。 っても、根本的に国民の不信感が払拭されることはないでしょう。直面する選挙をしのごうというだけなのがミエミエで、国民はドッチラケです」(野上忠興氏=前出)
乱戦模様のお祭り総裁選で支持率をアップさせ、総選挙突入を画策とは、相変わらず有権者はナメられたものだ。自民党の選挙対策に携わってきた元党事務局長で「選挙・政治アドバイザー」の久米晃氏は、16日発売の本紙で「とにかく岸田さんよりマシな人に代えて、というだけで選挙をやっても自民党は負ける」と断言していた。その場しのぎの刷新感などに、国民は騙されない。
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