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最後まで冷静と情熱の好ましいバランスを保っていた蓮舫氏。弱者への揺るぎないまなざしが詰まっていた。 松尾潔のメロウな木曜日
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/341894
2024/06/21 日刊ゲンダイ
蓮舫氏(C)共同通信社
七夕に投開票が行われる東京都知事選の告示を10日後に控えた6月10日、ぼくは【長文です】と前置きしたテキストを自分のX(旧ツイッター)にポストした。以下、引用する。
「都知事選への注目が過熱気味。現職の小池百合子さん、参院議員の蓮舫さんのふたりが本命とされる。一方で、適当な候補者がいないと棄権する都民が多そうだと報じられてもいる。ちょっと待って、とぼくは言いたい。都知事選は『無理して選ばなくてもいい』結婚相手や恋人選びじゃないんだよと。棄権は支持団体の強い候補者を後押しするだけ。つまり棄権したところで、あなたは結局『選んでしまっている』。じゃあ誰を選べばいいかといえば、それは『まだマシな人』です(略)問題が山積するいまの東京都は『かなり散らかった部屋』のようなもん。一瞬で部屋をキレイにするマジックの主の登場を期待する気持ちはぼくにだってあるけれど、だからといって、そんな救世主が現れるまで散らかった部屋を放置してよいものか。少しずつでも片付けてくれそうな人を選ぶのが、棄権するよりまだマシ(略)『弱者に寄り添うこと』あるいは『弱者を生み出さないこと』。ぼくはその観点で都知事を選ぼうと思います」
長文投稿が可能なのはXの認証バッジを取得しているからだが、じつはその機能を使うことはきわめて稀だ。X空間で長文が疎まれがちなのも重々承知している。でも今回はそのリスクを負っても言いたかった。それだけ都政には問題があるとぼくは考えているので。好きならまだしも、不本意に感じながら汚部屋に住みつづけるのは人生の損。税金払ってるんだし。蓋を開けてみれば、長文、しかも東京ローカルの内容にも拘わらずこのポストに付いたインプレッションは110万超、いいねも1万を超えたのだった。ほっ。
そして今日20日、ついに都知事選が告示された。これまで現職が立候補して負けた例は一度もない。ならば3選を目指す小池知事が絶対的に有利なはずだが、今回ばかりは状況が異なるという声は意外なほど多い。8年前、反自民を声高に叫んで都知事の椅子を手に入れた彼女だが、再選の2020年の段階で自民と距離を詰めたことは都民の誰もが知っている。その自民はいま裏金問題でどん底にいる。4月28日の衆院補選では3選挙区で立民が全勝。特に保守王国で知られる島根で自民が負けたのは、全国の有権者が相当な自民不信状態にあることの証左となった。
2728万円という突出した額の裏金を明らかにしてもなお、党の役職停止1年という大甘処分で済んだ萩生田光一前政調会長は「反省は必要ですが、いつまでも下を向いているわけにはいきません」なんて男前なセリフも厭わない、鋼のメンタルの主。驚くべきことに裏金発覚後も自民都連会長の座にあるが、その都連が小池知事の支援を決めた。そんな自民の姿勢はエグいといえるが、支援者は欲しいが党派色はノーサンキューという「虫のよさ」を隠そうともしない小池知事の振る舞いもなかなかにグロテスク。
告示前日の昨日19日、有力4候補による共同記者会見を生配信で観た。一騎討ちと評されることの多い小池、蓮舫の両氏に、ネットで大人気の石丸伸二・前広島県安芸高田市長、14年の都知事選で61万票を得て4位だった田母神俊雄・元航空幕僚長という顔ぶれ。記者陣からの質問に答えた後は、候補同士による質疑応答。トータル1時間のなかで、都が直面する少子高齢化、朝鮮人追悼、プロジェクションマッピング、神宮外苑再開発、政治資金パーティー、知事給与などの課題について語りあった。
ここで水際立ったキレキレの言語化能力を見せつけたのは石丸氏。なにしろ「私が実現する政策は」という第一問に対してボード紙に自ら書いたのが「政治屋の一掃」だからね。都知事選において41歳という若さは経験不足のひと言で片付けられかねないが、だからこそ使える効果的な言葉を周到に選んできた感じ。会見で株を上げたという点では彼がぶっちぎりでしょう。ただぼくには妙に気になることがあって、それは石丸氏をバックアップする顔ぶれだ。安倍晋三番記者だった元NHKの岩田明子氏を自社の社外取締役に抜擢したドトールコーヒー創業者の鳥羽博道氏とか、〈選挙の神様〉の異名をとる選挙プランナーで東京維新の会事務局長だった藤川晋之助氏とか。まあ会見でそれを問う記者はいなかったが。
4人の回答ぶりを車に例えると、小池=高級ガソリン車、蓮舫=ハイブリッドSUV、石丸=テスラ、田母神氏=クラシックカーといったところか。確かにそれぞれに良さも趣もあるだろう。ただ、石丸氏の描こうとする景色にはほかの3人とは明らかに違う〈未来感〉があった。未来の経済を語るときも、明らかに彼だけは人口動態の観点をつよく感じさせたし。でもなあ、メガバンクの為替アナリスト出身、地方自治体首長経験者でもある彼の「日本を変えていくためには首都東京から」という主張は、皮肉にも都民以外にこそ強く訴求するのかもしれず、そこがどう得票に影響するかは未知の部分が大きいと感じましたね、正直。
小池知事は通常運転。「世界で一番の都市を目指す」なんてヌルく空疎きわまりない発言はその最たるもので、ぼくなんかは「あぁまた〈らしいこと〉言ってるよ小池さん」としか思えないのだが、昔も今も東京最高! と本気で感じているような都民にとっては、さぞや耳に心地よい言葉であったことでしょうねぇ。そうそう、会見で小池知事にだけ投げられた質問があった。根強く取り沙汰される学歴詐称についてである。前日18日、弁護士の小島敏郎・元都特別顧問が、知事が虚偽の学歴を記載した疑いがあるとして、公職選挙法違反の容疑で東京地検に刑事告発したばかり。だが知事は不快感を隠さずに反論し「選挙妨害」とまでも言った。ちなみに3候補は触れさえしなかった。この疑惑は今回もこのまま終わっていくのだろうか。
大勝ちを狙うことなく防戦一方のチャンプ小池知事に困惑気味だったのが、自称チャレンジャーの蓮舫氏だ。「闊達な議論を」と直接対決を呼びかけるも、知事は「特定の候補との討論は難しい」とつれない返答。失格処分モノの無気力試合ですよ、これは。でも選挙はバドミントンじゃないから。決定打が出せずに苦慮するさまが蓮舫氏からは見てとれた。ただ、最後まで冷静と情熱の好ましいバランスを保っていたのも彼女。知事が関東大震災の朝鮮人虐殺犠牲者への追悼文を送らない現状を「改めたい」と断言したところに、弱者への揺るぎないまなざしが詰まっていた。
最後に田母神氏だが……失礼、紙面が尽きました。
松尾潔 音楽プロデューサー
1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。
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