<■652行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 別姓で自己否定する自民 阿比留瑠比の極言御免 2024/6/27 1:00 https://www.sankei.com/article/20240627-TWC52YKBYNKC7DKHOP5EBO4BQU/ 自民党が性懲りもなく選択的夫婦別姓に関する党内議論を再開させるという。 経団連や経済同友会のビジネス的見地からの要請に後押しされた形だが、不必要だったLGBT理解増進法に続いて夫婦別姓にまで突き進むとしたら、自民の存在価値をまた1つ自己否定することになろう。 「多様性」 というはやりの聞こえのいい掛け声に目が眩み、安易に取り込もうとするのでは、立憲民主党や共産党、社民党と最早選ぶ所がない。 もっとも、岸田文雄首相は2024年6月21日の記者会見で、選択的夫婦別姓については次のように慎重だった。 「様々な立場の方に大きな影響を与える問題だ」 「だからこそ世論調査でも意見が分かれている」 「前向きな意見の方の一方、家族の一体感や子供の姓をどうするかなどに関心を持つ消極的な意見もある」 LGBT法を巡っては、元首相秘書官の性的少数者差別とも受け取られかねない発言や米民主党政権の圧力に屈して成立に前のめりになった首相だが、今度はぶれないでもらいたい。 安倍晋三元首相もかつてこの問題に関し、首相にこう信頼を示していた。 「岸田さんはそうリベラルではないんだ」 「以前、夫婦別姓の議論が高まった時に 「子供の視点が全然ない」 と話していた。 ■アンケートでは やはりこの点が重要だと考えるので、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する。 子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい。 それによると、両親が別姓となったら 「嫌だと思う」(41.6%) 「変な感じがする」(24.8%) の否定的な意見が、合わせて3分の2に達した。 一方で 「嬉しい」 は僅か2.2%しかいなかった。 また、成人を対象とした令和3年実施の内閣府の 「家族の法制に関する世論調査」 結果を見ても、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は28.6%に留まった。 「夫婦同姓制度を維持した方が良い」が27.0%、 「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方が良い」が42.2%で、 夫婦同姓維持派が7割近くに達している。 夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては 「好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合が69.0%で 「影響はないと思う」は30.3% に留まっている。 留意すべきは 「兄弟の姓が異なっても構わない」が僅か13.8%で、 「姓は同じにするべきだ」が63.5% に上ることだろう。 夫婦どちらの姓を名乗らせるかを巡り、親族間のトラブルも予想される。 ■フェミニストの議論 選択的夫婦別姓については、 「選択的」 だから別に同性を選びたい人はそうすればいいだけだという意見もあるが、事はそう単純ではないだろう。 既に平成17年刊行の 「ザ・フェミニズム」(上野千鶴子、小倉千加子著) で、フェミニスト【フェミニストとは、全ての性が平等な権利を持つべきだという理由から女性の権利を主張する行為(フェミニズム)を支持する人のことだと、英オックスフォード辞書で定義されている】である小倉氏がこんな議論をしている。 「(選択的)夫婦別姓になったら、まるで夫婦別姓をしている人の方が進んでいて、夫婦同姓の人の方が遅れているみたいになりかねない」 「そこでまた1つの差別化が行われるわけじゃないですか」 女優でタレントの橋本マナミさんが2024年6月 「私は一緒の名字がいいです」 「好きで結婚したから」 とテレビで発言しただけでニュースとして取り上げられる現状を見ると別姓導入で同性夫婦が肩身の狭い思いをする日が来るかもしれない。 (論説委員兼政治部編集委員)阿比留瑠比の極言御免 日経、朝日のコラムに異議あり 夫婦別姓論議に欠ける子供の視点 2015/11/9 5:00 https://www.sankei.com/article/20151109-Q7P53O3IFNNVLFLL3DOXYENVFM/ 2015年11月4日は最高裁大法廷で夫婦別姓(氏)を巡る訴訟の弁論が開かれるとあって、日経新聞と朝日新聞の朝刊1面コラムが、それぞれこの問題を取り上げていた。 夫婦別姓に賛成・推進する立場で書かれたこの2つのコラムを読んで感じたのは、立論の前提、出発点が異なり、議論が噛み合わないもどかしさだった。 「誰かに迷惑もかけない」 「コストも知れている」 「歩みの遅さを合理的に説明するのは難しい」 日経はこう書いていたが、夫婦別姓論議でいつも気になるのが、当事者である子供の視点の欠落だ。 子供の意見を反映した調査がなかなか見当たらないので少し古くなって恐縮だが、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を引用したい。 それによると、両親が別姓となったら 「嫌だと思う」(41.6%) と 「変な感じがする」(24.8%) との否定的な意見が、合わせてほぼ3分の2に達している。 一方、 「嬉しい」は僅か2.2% しかいなかった。 また、20歳以上の成人を対象とする内閣府の世論調査(平成24年12月実施)でも、夫婦の名字が違うと 「子供にとって好ましくない影響があると思う」と答えた人が67.1% に上り、 「影響はないと思う」(28.4%) を大きく上回った。 夫婦別姓と言うと、両性が納得すればいいと思いがちだが、夫婦が別姓を選択した場合、子供は必ず片方の親と別姓になる。 事は夫婦の在り方だけの問題ではなく、簡単に 「誰かに迷惑もかけない」 と言い切れるような話ではない。 日経コラムは更に、こうも書いている。 「反発する人の声から『自分と違う価値観を持つ人間が、とにかく許せない』との響きを感じることがある」 どう感じようと自由ではあるが、この見解はかなり一方的だろう。 10年以上前のことだが、夫婦別姓を議論していた自民党の会議を取材した同僚記者は、夫婦別姓推進派で、現在は党総裁候補の1人と言われる議員から、こう面罵された。 「(夫婦別姓に慎重論を唱える)産経新聞は、新聞じゃない」 当たり前のことだが、自分と違う価値観が許せないのは、何も夫婦別姓に 「反発する人」 に限らないということである。 多様な価値観を説く人が、異なる価値観を否定するという矛盾を犯すのは珍しくない。 ちなみに、朝日のコラムにはこうあった。 「結婚や家族の多様化、個の尊重という冒頭に引いた変化(※国民意識の多様化、個人の尊重)は、別姓の議論にもそのまま当てはまる」 「社会は旧姓使用を広げる方向に動く」 確かに一般論としては、社会の多様化は歓迎すべきことなのだろう。 多様性を失えば硬直化し、やがては行き詰まっていく。 とはいえ、何でもかんでも 「多様化」 という言葉で正当化しても、そこで思考停止することになる。 また、夫婦別姓を法的に位置付ける事と、旧姓使用は全く別物である。 現在、夫婦同姓制度の下で通称使用が大きく緩和され、旧姓使用が広がっていることがその証左だと言える。 いずれにしてもこの問題を考える時は、直接影響を受けることになる子供の意見をもっと聞いた方がいい。 政府にも、今度調査する時は是非その視点を盛り込むようお願いしたい。 (論説委員兼政治部編集委員) 愚か者! 経団連「夫婦別姓」提言 WiLL2024年8月号 副県立大学名誉教授 島田洋一 2024年6月10日、経団連がいわゆる 「選択的夫婦別姓」 の 「早期実現」 を政府に求める提言を出した(具体的には民法750条の改正)。 経団連は、夫婦が妻の姓を選ぶことも可能ではあるものの、 「実際には95%の夫婦が夫の姓を選び、妻が姓を改めている」 「そのため、アイデンティティの喪失や自己の存在を証することが出来ないことによる日常生活・職業生活上の不便・不利益といった、改姓による負担が、女性に偏っている」 と言う。 経団連によれば、 「女性のエンパワーメント(強化)において、我が国は世界に大きく立ち遅れており」、 その背後に、 「各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度」 がある。 その代表的なものが夫婦同氏制度だというのである。 まず最初の疑問だが、女性の活躍に関して日本が 「世界に大きく立ち遅れて」 いるというのは本当か。 経団連・十倉雅和会長の頭にある 「世界」 がどの範囲なのか知らないが、少なくとも相当怪しい 「世界観」 だろう。 実際日本において、実力ある女性の活躍が、男の場合以上に阻害されているとすれば、 「女を下に見る」 不見識な経営者や重役が各所に残るでいではないか。 だとすれば、経済界の頂点に位置する経団連会長の責任が相当大きいと言わざるを得ない。 まずは自らの指導力不足を反省すべきだろう。 経団連提言で最も問題なのは、従来 「夫婦別姓」 法制化論で常に論点となってきた、 @親子や兄弟姉妹の間で姓が異なって良いのか A明治以来の戸籍制度を崩すことにならないか といった懸念に全く答えていないことである。 そもそも言及自体ない。 これは無責任だろう。 近年、パスポート、マイナンバーカードを始め、旧姓の通称使用が拡大されてきた。 経団連提言も、 「官民の職場では、女性の社会進出の進展を踏まえ、改姓によるキャリアの分断等を避けるため、職場における旧姓の通称としての使用を推進してきた」 「公的証明書や各種国家資格等でも婚姻前の姓(旧姓)の併記が可能になるなど、政府の施策としても通称使用が拡大され、経済界においても、通称使用は定着している」 と述べている。 「経団連調査では91%の企業が通称使用を認めている」 とも言う。 まだ不十分と言うなら、100%になるよう、経団連が強い姿勢で 「立ち遅れている」 経営者を叱咤すべきだろう。 そのための経済団体ではないか。 この問題で慎重論の先頭に立ってきた高市早苗議員は次のように言う。 「結婚すると、夫婦やその間に生まれる子供は同じ戸籍に登載され、姓は『家族の名称』という意味を持つ」 「だが、別姓になれば姓は単なる『個人の名称』になる」 「たとえ『選択制』にしても、家族の呼称を持たない存在を認める以上、結局は制度としての家族の呼称は廃止せざるを得なくなるだろう」 「事は家族の根幹に関わる」 (産経新聞・2021年3月18日) 「国際的トレンド」 云々についても高市氏は、 「日本は日本」 と一蹴する。 経団連は、旧姓の通称使用では問題解決にならない例として次のような 「トラブル」 を挙げる。 カッコ内は私のコメントである。 ・クレジットカードの名義が戸籍上の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓に合わせざるを得ない。 (合わせたら良いではないか。合わせると女性活躍が阻害されるのか)。 ・国際機関で働く場合、公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格として見做され、キャリアの分断や不利益が生じる。 (結婚したから姓が変わったと言えば済む話、国際機関を馬鹿にし過ぎてはいないか) ・社内ではビジネスネーム(通称)が浸透しているため、現地スタッフが通称でホテルを予約した。 その結果、チェックイン時にパスポートの姓名と異なるという理由から、宿泊を断られた。 (現地スタッフとの意思疎通をより密にすれば良いだけ。あるいはパスポートに旧姓を併記すればよい。令和3年4月1日以降、申請が非常に簡略化された) これが、女性にとって 「アイデンティティの喪失」 や 「自己の存在を証することができない」 ほどの不条理であり、家族別姓しか解決策がない次元の 「トラブル」 だろうか。 この程度の事象にも効果的に対処のマニュアルを示せない経団連では、日本経済停滞も無理はない。 民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。 選択肢のある社会の実現を目指して 〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜 2024年6月18日 一般社団法人 日本経済団体連合会 https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html 選択的夫婦別姓 経団連・十倉雅和会長「スピーディーに議論を」自民に要求 2024/6/25 23:24 https://www.sankei.com/article/20240625-GN2CKAAVRFIKFERTR7RAD7JTXQ/ 経団連の十倉雅和会長は2024年6月25日の定例記者会見で、自民党が 「選択的夫婦別姓制度」 に関する党内議論を本格化する意向を示したことについて、 「女性の社会進出、社会での活躍を進めたいという思いは一緒だと思う」 「オープンでスピーディーに議論してほしい」 と述べた。 経団連は結婚後も希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる同制度の早期実現を求める提言を2024年6月10日に発表し、2024年6月21日に自民党に提言を提出していた。 経済同友会の新浪剛史代表幹事も2024年6月18日の定例会見で、 「1つの姓を選ばなくてはいけないという非常に不都合なことがずっと放置されたままだ」 と指摘。 「政治が解決しないのであれば経済界がモノを言っていかなければならない」 との認識を示していた。 選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」 2024/6/25 22:34 https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/ 選択的夫婦別姓を巡る議論の経緯 https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/photo/TNK63PLFCRO4BDS2LNDI5YSMIU/ 自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。 経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。 とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。 保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、 「自民離れ」 が加速するのは必至だ。 自民の茂木敏充幹事長は2024年6月25日の記者会見で、 「多様な人材の活躍は社会活力の源だ」 「選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」 と述べた。 自民の渡海紀三朗政調会長は2024年6月21日、選択的夫婦別姓を含む 「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」 で議論に着手すると表明した。 新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。 党幹部は 「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」 と議論再開の必要性を強調する。 自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。 令和3年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。 しかし、経団連が2024年6月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。 自民の有志議員で作る 「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長) は2024年6月21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。 浜田氏は 「大変心強い」 「時代の要請として受け止めていく」 と語った。 一方、慎重派で作る 「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相) は2024年6月19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。 慎重派の議員は 「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』の更なる離反を招きかねない」 と不安を口にする。 岸田文雄首相(自民総裁)も2024年6月21日の会見で、慎重な姿勢を示した。 対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は 「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」 と述べた。 <主張>経団連「夫婦別姓」 家族の呼称をなくすのか 社説 2024/6/19 5:00 https://www.sankei.com/article/20240619-I4Q7IU7X5FJQTNZ3V4LDQESQHQ/ 結婚後に夫婦が同じ姓を名乗るか、旧姓を維持するか選べる 「選択的夫婦別姓」 について経団連が早期実現を提言した。 十倉雅和会長は、女性の社会進出が進む中で 「国会でスピーディーに議論してほしい」 と述べたが、国民の合意を欠いたまま、急ぐ問題ではない。 経団連は従来、夫婦同姓の下で職場での通称使用で対応できるとの立場だった。 別姓推進に転じたのは 「ビジネス上のリスク」 などが理由だ。 経団連が行ったアンケートなどでは職場で旧姓の通称使用が増えている一方、通称では銀行口座などが作れないことや海外渡航、契約で戸籍上の姓と異なることでトラブルが生じていることを指摘した。 だが夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定を変えることは、家族や社会の有り様に関わる。 岸田文雄首相が2024年6月17日の衆院決算行政監視委員会で、選択的夫婦別姓の早期導入の提言に慎重な考えを示し、 「家族の一体感や子供の利益に関わる問題であり、国民の理解が重要だ」 と述べたのは、もっともだ。 夫婦別姓を認めない民法の規定を 「違憲」 だとする訴えに対し、最高裁は平成27年と令和3年に合憲の判断を示し、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。 別姓制が導入されれば、こうした姓の意義が、砂粒のような個人の呼称へと大きく変わる。 専門家によると姓は血縁血統を表すもので、家族の歴史や絆が断ち切られかねない。 同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要がある。 「選択」 と言っても別姓を希望しない人も含め社会に関わる問題だ。 別姓推進論は子供からの視点にも欠ける。 夫婦別姓では、どちらかの親と子が別姓になる。 子供の姓をどうするのか。 祖父母らも絡み、いさかいや分断が起きるのは見たくない。 最高裁の判決では、姓の在り方について国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきだ、としている。 深く理解すべきだ。 住民票や運転免許証、パスポートなどで旧姓を併記できる制度も広がっている。 経団連は、トラブルを嘆くより、我が国の夫婦同姓の意義を国際的に発信し、問題を解消してほしい。 <産経抄>経団連の「夫婦別姓提言」に異議あり 2024/6/17 5:00 https://www.sankei.com/article/20240617-BKNKSTIQ3FJ2DDKD2AI3HWGCEQ/ 夫婦別姓が叶わなくとも、パートナーを守る方法はある 経団連は 「選択的夫婦別姓」 の早期実現を求める提言を発表したが、法制化には国民の合意が必要だ 2024年6月の第3日曜は 「父の日」 だったが、 「母の日」 に比べ影が薄い。 父親の地位低下が指摘され久しい。 ▼ゲームに押されて、子供のおままごと遊びはあまり見かけなくなったが、やってみてもパパ役はママに叱られ、オタオタする様子を真似するのだとか。 「正論」 を重んじる同僚も、家では言いたいことを言えず、妻や娘たちに阿る日々だという。 それも平和を守る知恵か。 ▼だがこちらは黙って見過ごせない問題だ。 経団連が 「選択的夫婦別姓」 の早期実現を求める提言を先日、発表した。 十倉雅和会長は 「国会でスピーディーに議論してほしい」 と述べたが、拙速に進めては禍根を残す。 ▼選択的夫婦別姓は夫婦で同じ姓(氏)にするか、旧姓を名乗るかを選べる制度だ。 民法の改正などが必要となる。 女性の社会進出に伴い、平成8年に法制審議会が導入を求める答申をした。 30年近く経っても法制化に至らないのは、国民の合意が得られないからだ。 財界が 「急げ」 と号令をかける話なのか。 ▼最高裁は平成27年と令和3年に、夫婦別姓を認めない民法の規定について 「合憲」 とする判断を示した。 夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。 選べるならいいじゃないか、別姓を希望しない人には関係ない、と考えるのは早計だ。 専門家からは、姓について家族の呼称から個人の呼称へと大きく変質することが指摘されている。 ▼同じ戸籍に同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要があり、社会全体に関わる。 夫婦同姓は子供も両親と姓を同じくすることで利益を享受しやすい意義もある。 別姓では子の姓をどうするか。 双方の祖父母も絡み、決まらない混乱も予想される。 「国民の意見さまざま」 法相、選択的別姓に慎重 2024/6/11 11:24 https://www.sankei.com/article/20240611-JHRCRF76CFIA3LM3MAVGM7R5GY/ 小泉龍司法相は2024年6月11日の閣議後記者会見で、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めた経団連の提言に対し 「国民の間にまださまざまな意見がある」 とした上で 「積極的に動きを見極め、対応を検討していくことが必要だ」 と述べ、慎重な姿勢を示した。 法相の諮問機関の法制審議会は1996年、結婚後もそれぞれ婚姻前の名字を使える選択的別姓制度の導入を含む民法改正案を答申。 だが、保守系議員の反対などで法案は提出されなかった。 小泉氏はこの点にも触れ 「国会議員の方々の間でもしっかりと議論をし、幅広い理解を得ていただくため、法務省として積極的な情報提供をしたい」 とした。 「夫婦別姓制度、早期実現を」経団連が初の提言 通称は海外で理解得られずトラブルも 2024/6/10 18:29 https://www.sankei.com/article/20240610-PLZOKGZSLVKTZKDUTL3OBW74UQ/ 経団連は2024年6月10日、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。 希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度の早期実現を要求。 政府に対し 「一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を期待する」 とした。 経団連による同制度に関する提言は初めて。 十倉雅和会長は2024年6月10日の定例記者会見で 「世の中は大きく変わっている」 「国会でスピーディーに議論してほしい」 と述べた。 現在は婚姻時に夫か妻のいずれかの姓を選べるが、妻が改姓することが圧倒的に多い。 提言では 「生活上の不便、不利益といった改姓による負担が女性に偏っているのが現実」 と訴えた。 経団連の調査では、国内の91%の企業は旧姓などを通称として使用することを認めているものの、通称は海外では理解されづらく、トラブルの原因になることがあると指摘。 「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」 とした。 主張 夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った 2021/6/24 5:00 https://www.sankei.com/article/20210624-BGWW7J52VRJMJFEQ5FVP7KQAZQ/ 最高裁大法廷は、 「夫婦別姓」 を認めない民法の規定を再び 「合憲」 と判断した。 夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27(2015)年の最高裁判決を踏襲した。 妥当な判断である。 事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。 女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。 平成27(2015)年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷付けたりする制度ではないことも明確になっている。 最高裁はこの時と同様、 「制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」 と指摘した。 平成8(1996)年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年経つ。 法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。 選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。 導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。 親子が別々の姓になる事態も起きる。 子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、諍いや混乱も予想される。 平成29(2017)年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が 「子供にとって好ましくない影響があると思う」 と答えていた。 社会情勢の変化と言うなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。 2年前の2019年には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。 パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。 日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、更に働きやすい職場作りなどに知恵を絞る方が現実的だ。 国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。 夫婦別姓認めぬ規定、再び「合憲」 最高裁 2021/6/23 21:54 https://www.sankei.com/article/20210623-WTZ3HHNALJO5RNCEOMMHNPXNAI/ 夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は2021年6月23日、規定は 「合憲」 とする判断を示した。 最高裁は平成27(2015)年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。 15人中4人は違憲とする意見や反対意見を出した。 決定理由で最高裁は、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、規定に男女の不平等はないとした平成27(2015)年の判断について 「社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、変更すべきとは認められない」 と指摘。 一方で、夫婦の姓を巡りどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを審査する問題とは 「次元が異なる」 とした上で 「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」 と、前回判断に続き、改めて立法での議論を促した。 合憲とした深山卓也裁判官、岡村和美裁判官、長嶺安政裁判官の3人は 「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民の様々な意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」 と、共同補足意見で述べた。 一方、違憲とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は 「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」 などと述べた。 事実婚の3組は、婚姻届に 「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」 と付記して自治体に提出したが不受理となり平成30(2018)年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てたが、却下された。 2審東京高裁でも棄却され、最高裁に特別抗告していた。 結婚後の姓を巡っては、平成8(1996)年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。 2021年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現への目処は立っていない。 ◇ ■夫婦同姓の規定 民法750条は、結婚した夫婦は 「夫または妻の氏」 を名乗るよう規定。 戸籍法でも、結婚時に 「夫婦が称する氏」 を提出書類に記載するよう定めている。 昭和22(1947)年に改正される前の明治民法では 「家の姓を名乗る」 とされていた。 厚生労働省の統計では、平成27(2015)年に結婚した夫婦のうち、96%が夫の姓を選択。 改姓による社会的な不便・不利益が指摘されてきたことなどを背景に、夫婦が希望する場合には結婚後に姓を変えない 「選択的夫婦別姓制度」 の導入を求める声が強まっている。 夫婦別姓認めぬ最高裁判断「家族に一体感」安堵の声も 2021/6/23 20:45 https://www.sankei.com/article/20210623-CEFJAVRIAZIRPHCEU6S7ZFUAEI/ 最高裁大法廷が2021年6月23日、6年前に続き、 「夫婦別姓」 を認めない民法の規定を 「合憲」 とする判断を示した。 この間の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえつつ、国会に議論を委ねた形に。 「違憲」 となれば、新たな対応を迫られる現場からは安堵の声も聞かれた一方、申立人からは決定に不満が漏れた。 「結婚して姓が一緒になることで、家族としての一体感が生まれる」。 結婚生活40年以上になる東京都江東区の男性(71)は、合憲判断に納得の表情を浮かべた。 「子供のことを考えれば、両親が違う姓だと違和感を覚えるのではないか」 とも指摘した。 内閣府の平成29年の調査では、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正42.5%が賛成と答え、反対の29.3%を上回った。 ただ、賛成派に実際に別姓とするかを尋ねたところ、希望するが19.8%、希望しないが47.4%だった。 夫婦別姓が認められれば、子供への心理的影響も懸念される教育現場。 最高裁の決定に注目していた千代田区の幼稚園園長は 「途中で姓が変わった場合に、子供たちの間に動揺が広がらないようにケアするなど、新たな対応が必要になってくるだろうと思っていた」 と打ち明ける。 一方、先祖代々の墓を管理する寺院は、家族観の変化に危機感を抱いていた。 豊川稲荷(愛知県豊川市)によると、旧姓と結婚後の姓の両方を墓石に刻む女性が増えてきているといい、同寺の男性役員(53)は 「夫婦別姓になると、家という概念が失われる可能性がある」 「別姓が認められるのは難しいと思っていた」 と話した。 夫婦別姓には、財産をめぐる問題が持ち上がる可能性もある。 生命保険の受取人は原則戸籍上の配偶者や2親等以内の血縁者に限られており、ライフネット生命保険(東京)の担当者は 「姓が異なる場合、配偶者であることの確認が課題になる」。 同社では事実婚のパートナーらを保険金の受取人にできる仕組みを作っており、 「今後も社会の変化に合わせて検討していきたい」 と話した。 選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に 八木秀次×小島新一・大阪正論室長 ラジオ大阪ぶっちゃけ正論 2021/6/17 8:00 https://www.sankei.com/article/20210617-C2ELAEDPJ5MIHI5KLUORROEF4A/ ■家族名が消える 小島 選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。 八木 選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。 選択ができるという仕組みです。 一見よさそうに思えるんですよ。 小島 自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。 八木 ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。 別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。 戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。 小島 家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。 八木 「氏名」の性格が根本的に変わるんです。 氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。 家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。 すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。 小島 たまたま上の名が同じということですね。 八木 ええ。 たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。 家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。 ■3つの姓から選択も 八木 別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。 兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。 子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。 すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。 妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。 複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。 子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。 旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。 おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。 小島 社会が大混乱しますね。 八木 自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。 櫻井よしこ氏「保守政党らしからぬ提言に危機感」 2021/5/19 16:40 https://www.sankei.com/article/20210519-FRWVDCNTRVN7PLO57QDGPU2CK4/ 選択的夫婦別姓制度の導入に慎重な自民党有志議員を中心に作る 「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」 が2021年5月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ、麗澤大学教授の八木秀次の両氏を講師に招いて国会内で会合を開いた。 櫻井氏は 「保守政党としての自民党の矜持」 と題して講演。 安倍晋三政権から菅義偉政権に代わったことで党内に変化が生じていると指摘し、 「保守政党らしからぬ政策提言、法案の提出、そしてそれを通そうとする非常に強い動きに大変な危機感を感じている」 と強調した。 「保守は、よりよい社会や国をつくるために変化はするが、その本質は変えず守っていくことだ」 とも語った。 八木氏は、選択的夫婦別姓を導入した場合の課題について 「多くの人は子供の氏が決まらないことや、氏の取り合いが起こることを懸念して結婚や出産を躊躇する」 「逆に少子化が進む可能性がある」 と指摘。 「現在の戸籍制度の下では、旧姓の通称使用を拡充することが最も現実的な解決策だ」 と訴えた。 一方、会合ではLGBTなど性的少数者をめぐる 「理解増進」 法案についても取り上げられた。 法案をめぐっては、稲田朋美元防衛相が委員長を務める 「性的指向・性自認に関する特命委員会」 が中心となり、立憲民主党などと協議して今国会での成立を目指している。 これについて、山谷えり子参院議員は 「もともとの自民党案は国柄に基づいた内容だったが、超党派の議員立法でガラッと哲学がかわってしまった」 「自民党として認めるには大きな議論が必要だ」 と語った。 異論暴論 正論6月号好評販売中 やるべきことは「夫婦別姓」か? 2021/5/3 10:00 https://www.sankei.com/article/20210503-QHTMRK3OE5KWVOEUGDN5FVJWZE/ 自民党内で選択的夫婦別姓をめぐる論議が起きている。 推進論者からは結婚に伴う改姓によって生じる生活上の不都合や不便が強調されるのだが、そもそも夫婦が別姓になれば親子は別姓を余儀なくされる。 これまでの家族観や結婚観は変わり、子供に与える影響も無視できないはずだ。 正論2021年6月号では 「やるべきことは『夫婦別姓』か?」 を特集した。 高市早苗衆院議員(自民党)は、自民党のこれまでの選挙公約の実現に向け、自身が起草した 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」 の成立の必要性を強調する。 高橋史朗・麗澤大学大学院客員教授と池谷和子・長崎大学准教授の論文は、推進者たちの主張の見せ方がいかに一面的で、良い面ばかりが強調されたものかを考えさせられる。 ジャーナリスト、平野まつじ氏は夫婦別姓が現実になると、何がもたらされ、どんな弊害が起こるのか、具体的に考えた。 子供の最善の利益をどうするか、という視点がいかに蔑ろにされ、議論のあり方として極めて危ういかがわかる。 党内で提唱される 「婚前氏続称制度」 「ミドルネーム案(結合氏制度)」 など歯牙にかけるに値しない。 選択的であろうが、夫婦別姓の導入は必要ない。 正論 国民の大多数は夫婦別姓望まず 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章 2021/7/6 8:00 https://www.sankei.com/article/20210706-2KVYJSZJQNPT3OSBPGFYEMTHXA/ ■最高裁は合憲判断を維持 2021年6月23日、最高裁大法廷は予想通り夫婦同姓(氏)制は憲法に違反しないと判断した。 しかも合憲とした裁判官は11人と前回の平成27年判決より1人増えている。 平成27年の最高裁判決は、氏には 「家族の呼称」 としての意義があり、その呼称を一つに定める夫婦同姓制には合理性があるとして現行制度を合憲とした。 その上で、夫婦の姓の在り方は国会で判断すべきだとして、国会の立法政策に委ねた。 今回の最高裁決定は、この平成27年判決の立場を維持し、夫婦同姓を定めた民法750条や戸籍法を合憲とした上で、その後の社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更する必要はないとした。 これも妥当と言えよう。 ところがマスメディアの中には各種世論調査を引き合いに、別姓支持が国民多数の声であり、夫婦別姓の実現へと誘導するような報道があふれている。 そのため同姓支持を主張することがはばかられるような雰囲気さえある。 確かに内閣府の調査でも別姓支持が平成24年には35.5%だったものが、平成29年には42.5%に増加しており、その傾向は否定できない。 しかし、平成29年の調査でも、 「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」が29.3%、 「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが旧姓を通称として使用するのは構わない」が24.4% あった。 つまり、同姓支持は計53.7%もあり、別姓支持を上回っている。 ■別姓望む国民はわずか8% さらに、別姓支持者の中で自ら 「別姓を希望する」と答えた者は19.8% にとどまる。 つまり、別姓希望者は支持者(42.5%)の19.8%だから全体でいえば0.08、つまり国民のわずか8%が別姓を希望しているだけである。 平成24年の調査でも別姓希望者は全体の8%にすぎないから、別姓希望者は全く増えていないことが分かる。 そのようなごく少数の希望者のために、明治以来120年以上の伝統を有し、国民の中に広く定着している夫婦同姓制度を改正してしまうのは乱暴ではないか。 この問題は慎重な上にも慎重に対処すべきだ。 夫婦別姓希望者のために、現在では運転免許証、パスポート、さらにマイナンバーカードまで、旧姓を通称として併記することが認められている。 だから、日常生活における彼らの不便はほぼ解消しているはずだ。 にもかかわらず彼らが別姓にこだわるのはなぜか。 今回の決定において反対意見を述べた裁判官の中には、 「家族」 の定義は不明確であるとして否定的に解し、 「姓」 を 「個人の呼称」 の一部と考えて、夫婦同姓制度は 「個人の尊厳」 の侵害に当たると主張する者もいる。 ■「家族呼称」か「個人呼称」か 確かに、憲法24条2項は家族について 「個人の尊厳と両性の本質的平等」 に立脚して制定するよう定めているが、憲法は 「家族の保護」 を否定するものではない。 それどころか、憲法制定時の議会においては 「従来の良き意味の家族制度はどこまでも尊重していかなければならぬ」 (木村篤太郎司法大臣) との答弁がある。 わが国が批准している国際人権規約でも 「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し…与えられるべきである」 としている。 それ故、わが国の家族制度は、 「個人の尊厳」 と 「家族の保護」 によって支えられていると見なければならない。 だからこそ、平成27年の最高裁大法廷判決も、 「家族は社会の自然的かつ基礎的な集団単位であり、氏には家族の呼称としての意義があり、氏の在り方については国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきである」 とした。 それでは、家族制度の基本にかかわる 「姓(名字)」 について、国民はどのように考えているだろうか。 先の内閣府の調査(平成29年)によれば、国民の56.9%は姓を 「先祖から受け継がれてきた名称」 ないし 「夫婦を中心とした家族の名称」 と答えている。 これに対して姓は 「他の人と区別して自分を表す名称の一部」 と考える者は、全体のわずか13.4%にすぎない。 つまり、姓を 「個人の呼称」 の一部と考え、 「個人の尊厳」 を強調する反対意見は、姓を先祖伝来の 「家」 や 「家族」 の呼称と考える多数国民の意識と相当ズレていることが分かる。 以前、本欄で述べたように夫婦の姓をどう決めるかは、個人個人の問題であると同時に、わが国の家族制度の基本にかかわる公的制度の問題である。 しかも選択的夫婦別姓制は 「ファミリー・ネームの廃止」 につながり 「戸籍解体」 の恐れさえある(「『戸籍の解体』を招く夫婦別姓制」2021年3月29日)。 したがって、自らは希望しないにもかかわらず、 「選択的だから」 「望む人が別姓を名乗るだけだから」 などといった安易な発想で賛成してしまうのは、推進派を利するだけであり、非常に疑問といわざるを得ないであろう。 次世代の党、夫婦同姓規定「合憲」判断を「歓迎」 2015/12/16 19:12 https://www.sankei.com/article/20151216-JTCPST5AN5IUNNFTBEMB2AHLCU/ 次世代の党は2015年12月16日、最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断したことについて、中野正志幹事長名で 「判断を歓迎する」 との談話を出した。 談話では 「日本社会においては、夫婦、親子が同じ姓を名乗ることが家族の基本であり、家族の一体感を高めてきた」 「一方、夫婦別姓を求める運動では、家族が同じ姓を名乗ることを子供が望んでいることは省みられていない」 と指摘。 その上で 「日本は、既に職場などでの通称使用(旧姓使用)が否定されない社会になった」 「旧姓に拘りを持つ方は通称を用いることが可能であるし、結婚時に夫が妻の姓を選択することも可能である」 としている。 夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断 2015/12/16 15:24 https://www.sankei.com/article/20151216-EIZGWR6BTRIYTNB6YH7JAHKFYU/ 【産経新聞号外】夫婦同姓「合憲」[PDF] https://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/12/20151216iken.pdf 民法で定めた 「夫婦別姓を認めない」 とする規定の違憲性が争われた訴訟の上告審判決で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年12月16日、 「規定は合憲」 とする初めての判断を示した上で、原告側の請求を棄却した。 原告は 「時代の変化に従って選択的夫婦別姓を認めるべきだ」 などと主張したが、 「夫婦や親子など家族の在り方が損なわれる」 との慎重論は多く、世論調査も賛成・反対が拮抗してきた。 一方、 「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」 とする規定を巡る訴訟で、大法廷は 「規定は違憲」 と初判断。 100日間を超える部分は違憲だとしたことで、国は法改正を迫られる。 最高裁が法律を違憲と判断したのは戦後10件目。 夫婦の姓について原告側は 「選択的夫婦別姓を認めないことは、婚姻の自由を不合理に制約していて、両性の本質的平等に立脚していない」 と主張。 「規定は違憲で、国会の高度な立法不作為に当たる」 と指摘していた。 国側は 「民法では、結婚後にどちらの姓を名乗るかについて、夫婦の協議による決定に委ねている」 「婚姻の自由や男女の平等を侵害していない」 と反論。 規定に違憲性はなく国会の立法不作為にも当たらないと主張していた。 両規定を巡っては、法相の諮問機関の法制審議会が平成8年、選択的夫婦別姓を導入し、再婚禁止期間も100日に短縮するよう答申した。 しかし、国会や世論の反対が多く、改正は見送られた。 民主党政権時代にも改正の動きがあったが、閣内の反対などで法案提出には至っていない。
[18初期非表示理由]:担当:スレ違いの長文多数のため全部処理
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