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※紙面抜粋
※2024年6月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
すべてが嘘っぱち。経済政策も「白旗」(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
通常国会を終えた岸田首相が21日、唐突に電気・ガス料金の追加軽減策を打ち出した。
5月使用分(6月請求分)で、打ち止めとなっていた補助金を、8〜10月の3カ月間だけ延長することにしたのだが、この「場当たり」にはア然だ。
効果が限定的な人気取りで、しかも9月の総裁選を意識しているのはミエミエだからだ。もちろん、カツカツ生活の庶民にしてみれば、3カ月だけでも補助金はうれしい。とはいえ、国民を経済苦境に追い込んだ張本人は岸田なのである。
その岸田は「骨太の方針」でも「所得増加や賃上げを定着」させて「成長型の新しい経済ステージに移行」などと仰々しくうたっていた。それが本当ならば、補助金延長などいらないはずだ。
すべてが嘘っぱちで、支持率下落に歯止めがかからないものだから、付け焼き刃で「バラマキ」を復活させたのである。
裏金問題のデタラメ対応で、もはや、死に体の岸田政権だが、「死んでいる」のはモラルだけではなかった。補助金延長は「新しい資本主義」とやらの破綻であり、経済政策でも「白旗を掲げた」と見るべきだ。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「4月の毎月勤労統計を見て、賃金がそれほど上がらない懸念が出てきたので慌てたのだと思います。賃金が上がらないのに、電気・ガス代の補助金を止めれば、光熱費は跳ね上がり、ますます実質賃金を下落させてしまう。これから本格的な猛暑が始まるのですから、なおさらです。そうなれば、賃金と物価の好循環はどうなったんだ、という話になる。追及、批判はすべて、政府に向かう。総裁選前にますます、支持率が下がれば、改造もできなくなり、追い込まれてしまう。それにビビったのだと思います」
ふざけているのは、岸田の場合は、いつもこうした付け焼き刃でシレッとしていることだ。
賃金がそれほど上がらず、狂乱物価高が止まりそうにないのは見えていたことだ。それなのに、日米金利差や円安を放置、悲鳴が上がると、例の4万円減税で「消費が上向く」と豪語していた。企業の事務負担増も何のその、「減税明記」を義務付け、「減税実感」を強要。自己宣伝にかまけていたのは記憶に新しいところだ。もちろん、消費に火が付く気配もなく、挙げ句がたった3カ月の補助金復活になったのである。
岸田首相には総裁選に立つ根拠がない
恐ろしいのは、こんなことで、国民がありがたがり、支持率が上がると岸田が踏んでいることだ。あり得ないような上から目線、国民愚弄だが、岸田はへっちゃら。報道によれば、秋の総裁選には「やる気満々」というから、絶句である。そういえば、再選が前提なのか、秋には新たな経済対策を打ち出し、低所得者層に給付金を配るなどと言いだしている。
で、二言目には「先送りできない課題に専念する」「道半ばの課題に結果を出す」などと力むのだ。
「そもそも、円安、物価高を止めなければ、実質賃金は上がりません。それなのに、日銀植田総裁は7月の政策決定会合まで何もやらないことを宣言してしまった。こうなると投機筋は安心して円売りを仕掛けてきます。今後も円安加速は避けられませんが、為替介入をしたくても、その原資が底を突きかけている。そこも見透かされていますから、円安、物価高は止まらず、一時しのぎの補助金や給付金ではどうにもならなくなると思います」(斎藤満氏=前出)
要するに、キシダノミクスとやらは空中分解。「どの面さげて9月の総裁選に出てくるのか」という話なのである。
裏金脱税集団が岸田降ろしという倒錯劇
みんな、同じ“ワル”(C)日刊ゲンダイ
こんな政治状況だから、自民党内からも盛んに「岸田降ろし」の動きが出てきている。
麻生派の斎藤洋明衆院議員(旧新潟3区、当選4回)が「責任は最終的に誰かが取らなければいけない。次の総裁選において、真に自民党を改革できる総裁候補を応援したい」と言ったのを皮切りに、茂木派の津島淳衆院議員(比例東北、当選4回)は代議士会で「岸田でてこい」と文句をつけた。同じく茂木派の東国幹衆院議員(北海道6区、当選1回)は「ゆめゆめ再選などと軽々しく口にせず思いとどまって欲しい」とぶち上げている。
菅前首相もきのう(23日)、「文芸春秋 電子版」のオンライン番組に出演し、「総裁選で新たなリーダーが出てくるべきか」との問いには「そう思う」と応じ、秋の総裁選で首相が交代するのが望ましいとの認識を示した。
そんな中、朝日新聞が自民党の都道府県連幹事長に「岸田続投」についてアンケートを実施したところ、5県連が続投を望まず、「無回答」や「わからない」が39都道府県に及んだという。
こうした動きを大新聞が「岸田降ろし加速」と報じる。裏に麻生副総裁や茂木幹事長、菅前総理などがいることをにおわせ、党内政局をガンガンあおっているが、国民にしてみれば、これも鼻白む話だ。
裏金脱税集団が「疑惑にフタ」の首相を引きずり降ろそうとする倒錯。盗人集団が「クビを代えろ」と言うハチャメチャ。結局、自民党という集団は上から下まで自分の生き残りしか眼中になく、国民を欺くことしか考えちゃいないのだろう。
8つの都議補選で全敗に追い込むことが必要
本来であれば、自民党全員が蟄居、懺悔が当たり前ではないか。東大名誉教授で哲学者の高橋哲哉氏はこう言った。
「本当に頭がクラクラしてきますね。確かに裏金問題で岸田首相は真相究明を怠り、処分も不公平、恣意的でした。法改正も不十分で、ゴマカした。でも、こうした政権運営に自民党議員が文句を言うってなんですか。裏金問題は自民党全体の体質の問題なんですよ。それなのに、当事者たちが岸田首相では選挙を戦えない、などと言う。これは本質から目をそらさせようとしているとしか思えません。それに協力しているのが大マスコミ。若手から岸田降ろしの声が出て、それを報じることで裏金問題を総裁選の政局話にすり替えている。国民は顔が変われば、政治が変わるような印象を受けてしまう。そうやって自民党が生き残っても何の解決にもなりません。国民は騙されないように本質を見極める必要がありますね」
若手、中堅議員が「岸田降ろし」の発言をした場には茂木幹事長や麻生副総裁がいた。「言わせているのはアイツら、重鎮たちだ」(党内関係者)ともっぱらだ。彼らにしてみれば、不祥事が起きたときの「いつものパターン」ということだ。
いずれにしても、シャッポのすげ替えで、ゴマカされないようにするには、一にも二にも選挙で自民に鉄槌を下し、下野に追い込んでいくことだ。その意味で、来月7日の都知事選も重要だし、同時に投開票される8つの都議補選も注目だ。
「自民党候補は全敗の可能性があるのです。そうなれば、裏金問題でもしぶとく生き残っている萩生田光一自民党都連会長もクビでしょう。いまの自民党は上から下まで自分の生き残りしか考えちゃいない。生き残るために岸田首相は補助金をバラまき、党内は岸田降ろしを画策する。有権者は自民党全体が悪に染まっているということをゆめゆめ忘れてはいけません」(政治評論家・野上忠興氏)
必要なのは岸田降ろしではなく、腐った自民党を丸ごと権力の座から引きずり降ろすことだ。岸田降ろしの政局報道に惑わされてはダメだ。
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