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※紙面抜粋
※2024年6月17日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
ずばり裏金自民を裁くことだ(都知事選候補の蓮舫氏と小池百合子都知事=右)/(C)日刊ゲンダイ
今月12日、ようやく、東京都知事選への立候補を表明した小池百合子都知事。「18日が大安なので、その日に公約を出したい」などと言っていたが、そうなれば、ワイドショーなどは競うように紹介する映像が目に浮かぶようだ。フリップを並べて対抗馬の蓮舫参院議員との比較など、連日のように騒ぐ。もちろん、小池は織り込み済みで、4年前の都知事選で打ち出した「東京大改革2.0」をバージョンアップしたような「東京大改革3.0」を打ち出し、「働きやすい東京」「災害に強い東京」などを一方的に打ち出してくるとみられている。それを大メディアが連日、ああだこうだとやれば、それが都知事選の争点、焦点になっていくのだろうが、騙されてはダメだ。
小池といえば、そうやって、メディアを使った派手なキャッチフレーズで、都民をけむに巻いてきた「常習犯」なのである。東京都庁関係者も「小池さんは自分に有利なタイミングで票につなげる政策をぶち上げることしか考えていない」と皮肉る。指示された裏方は大変なのだが、選挙直前に打ち出した低所得者層への商品券配布なんか典型だ。
有権者はそんな小池マジックに目を奪われず、この選挙の本質を見極める必要がある。小池に先んじて立候補表明した蓮舫が最初に明言したように「小池は自民返りした」政治家だ。裏に自公与党が蠢いているのは明白で、この都知事選は衆院3補選、静岡県知事選、小田原市長選、目黒都議補選、港区長選などに続く「岸田自民党への審判」なのだ。それも最大級、岸田にトドメを刺すべき選挙なのである。
ステルス選挙が笑っちゃう支援強制文書
とはいえ、裏金政治への審判ということになれば、とてもじゃないが、小池陣営=自公に勝ち目はない。そこで、彼らは争点隠しにシャカリキになるのだ。
自民党はステルス選挙だし、もちろん、選挙応援にも入らない。なるべく自民色を打ち消し、国政とは無関係に小池の「東京大改革」を最大限に打ち出していく。教育や子育てに関心を持っていき、蓮舫の政策にかぶせていく。そんな作戦なのだろうが、もうインチキがバレている。
自民党東京都連の萩生田光一会長が都連の各総支部、議員に宛てた“裏指示書”がネット上に出回ってしまったのである。そこに書かれていることはエグい。自民党都連として「3点の方針」を明記しているのだが、1、蓮舫による共産党主導の革新都政を絶対阻止しなければならないこと。2、小池都知事が出馬する場合は、自民党は小池都知事への全面支援を行うこと。3、今後の支援の方法などについては都連4役にご一任いただくこと、と選挙支援を「強制」しているのである。
それも蓮舫を呼び捨てにし、共産主導とレッテル貼りし、敵意むき出し。全共闘セクトの文言みたいだが、ここで思い出して欲しいことがある。小池は2016年、自民党都連のことを「意思決定がわからないブラックボックス」と猛批判。票をかき集めた過去がある。裏でコソコソやっている萩生田自民党都連こそ、ブラックボックスもいいところなのではないか。しかし、今度はシレッと支援を受ける。会見で聞かれると「大変心強い」などと言う。機を見るに敏な風見鶏政治家の面目躍如だ。
与野党対決隠しに加担の面々
裏金議員張本人が自民党都連会長で都知事選にも暗躍(萩生田光一同会長=14日)/(C)日刊ゲンダイ
ステルス作戦の自民党だけでなく、今度の選挙では露骨な「与野党対決隠し」「与野党対決潰し」が行われている。
連合の芳野友子会長は蓮舫支援について、共産党との関係を問題視、「連合は共産党とは考え方が全く違う。連携していくことは非常に難しい」と力説した。
連合は前回も野党系候補の宇都宮健児氏を支援せず、小池支持に回ったので、別にニュースでも何でもないのだが、今回はこうした発言が話題になる。連合が支援しないことで「与野党対決とはちょっと違う」というムードが醸成されていくからだろう。連合内も分裂していて、当然、蓮舫支持も多いのだが、その辺はなかなかニュースにならない。
国民民主の榛葉幹事長が蓮舫について「共産党さんとガッツリやっておいて、(国民民主も)ご一緒に、と言ったってご一緒できない。これでは本当に『立憲共産党』だ」と揶揄したのもそうだ。予算案に賛成するような「ゆ党」の蓮舫嫌いはご勝手にだが、こうした発言が垂れ流されることで、「野党分裂」に見えてしまう。「足並みそろわず」などと書くところもある。こうした報道を見るにつけ、日本の大メディアの正体を思い知らされるようだ。
「都庁と自民党、企業とメディアが1本の線でつながっているんですね。八王子市長選では自公が推薦する初宿和夫候補が小池都知事の応援を受けて当選しましたが、元都庁の局長です。対立候補は都民ファーストの会の元都議だったが、小池さんはブラックボックスと批判してきた自民党に寝返った。江東区長選では自、公、国民、都民ファーストが推した候補者が勝ちましたが、こちらも東京都の部長です。そんな小池都政がすすめるのが築地や神宮の再開発ですが、三井不動産はじめ、大手ゼネコンがズラリ、事業予定者として名を連ねている。その三井不動産や再開発の関連企業には都庁の幹部が天下る。三井不動産は大量のテレビCMを流してメディアが潤う。事業予定者の中には読売新聞、朝日新聞も入っている。都庁のプロジェクションマッピングを担っているのは利権五輪で逮捕者を出した電通の子会社です。利権に群がっている彼らにしてみれば、革新都政のちゃぶ台返しが困るのでしょう」(淑徳大大学院客員教授・金子勝氏)
だから、蓮舫には立憲共産党のレッテルをペタリと貼り、争点を別のところに持っていって、陰に陽に小池都政を支援する。
有権者はゆめゆめ、今度の選挙の争点を見誤らないことだ。
都知事選は国政の審判になることが多い
生き残りに必死の小池自身も「与野党対決潰し」に懸命だ。14日の会見でも「あまり国政を持ち込むと都民は戸惑われるのでは」と蓮舫を牽制。8年前は自民党を目いっぱい腐して初当選したくせに、本当に勝手だ。とはいえ、東京都は特殊な事情がある。首長の選挙の争点に「国政が持ち込まれる」ことが多いのだ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう解説してくれた。
「東京都は日本一流動人口が多いので、4年間で大体3割くらいの人が入れ替わってしまう。彼らに10年後の東京都をどうするかを訴えても響かないのです。だから、東京都知事選ではそのときの国政の争点が持ち込まれることが多い。それで、革新都政が生まれる。古くは美濃部都政、青島都政、革新ではないけれど、石原慎太郎都知事も中央の政策の是非を東京都知事選に持ち込んで勝った知事です。その辺を蓮舫さんはよく知っていて、反自民を争点に掲げたのは流動人口の中の無党派層を意識してのことだと思います。いくら、国政と都知事選は違う、と言っても、都民は“はいそうですか”とはならない。面白い選挙戦になっていくと思います」
小池=自民党の思惑どおりにはならないわけだ。岸田内閣の支持率は直近の時事通信の世論調査で16.4%と低迷。岸田が起死回生に賭けた定額減税も65.3%が「効果なし」とボロクソだった。そんな中で迎える都知事選。投開票日の7.7は岸田政権のご臨終になるかもしれない。
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