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※紙面抜粋
※文字起こし
どっちが「野合」?(小池都知事と蓮舫氏)/(C)日刊ゲンダイ
この期に及んで裏金汚染政党の延命に手を貸すとは、気が触れているとしか思えない。東京都知事選(7月7日投開票)は現職の小池知事が焦らし作戦の末、ようやく出馬を表明。20日に迫る告示を前に3選を目指す小池と参院議員を辞して「女帝」に挑む蓮舫氏との事実上の一騎打ちの構図が固まってきた。
首都の七夕決戦は単なる一自治体の選挙ではない。蓮舫は「反自民党政治、非小池都政」を打ち出し、有権者に「今の自民党の姿」を問うと強調。あえて国政の是非を持ち込み、政権交代に向けた前哨戦に位置づけた。
小池を「ステルス支援」する自民は首都決戦に負ければ、いよいよオシマイだ。衆院3補欠選挙やあらゆる地方選で連敗続きの腐敗政党はトドメを刺される。多くの有権者には願ってもない展開だが、最後の悪あがきというか、蓮舫叩きにシャカリキの連中がウジャウジャ出てきた。
解決済みの二重国籍問題を蒸し返し、長男との“絶縁”や母親との別居、実兄との金銭トラブル、果ては岩手・釜石市議の元亭主まで追いかけ、アラ探し。国会では無所属の浜田聡参院議員が今月2日の街頭演説を問題視。立憲民主党の枝野前代表が「蓮舫さんを勝たせよう」と言ったのは、公選法が禁じる「事前運動」に該当するというのだ。
国民民主党の玉木代表も便乗し、「力が入り過ぎて言葉が過ぎたのであれば、素直に謝ることが必要だ」とエラソーに忠告したが、このタイミングで小池都政が低所得者に1万円分の商品券を配ることには目もくれない。都民の血税を使った露骨な「選挙買収」の方が、よっぽど悪質だろう。
何が何でも「真っ赤なカラー」をつけたがる
案の条、この手の連中が力を入れるのは、毎度おなじみの「立憲共産党」攻撃だ。
立候補は立憲と共産、国政選挙で野党連携を支援してきた「市民連合」による候補者選定委員会に推された形だったとはいえ、すでに蓮舫は立憲を離党。「オール東京」を旗印に無所属の道を選んだ。立憲も推薦や支持を見送り、「支援」にとどめる。
政党色を薄め、幅広い層への浸透を図るのが狙いで、共産も同様に「支援」どまり。もっと言えば蓮舫を支援するのは立憲と共産に限らない。社民党、新社会党、地域政党の生活者ネットワーク、都民ファーストの会から分かれたミライ会議など、実は幅広い。
それでも蓮舫を叩きたがる連中は何が何でも真っ赤な「共産カラー」をつけたがる。出馬表明の翌日付の「しんぶん赤旗」が、1面に小池晃書記局長や蓮舫が並んだ写真を掲載すると「共産の公認候補と見まがうほど」とイチャモンをつける。田村智子委員長が自身のXに〈蓮舫さん、全力で応援します。清々しく力強い共闘を都知事選挙で築きたい〉と投稿すれば「無所属ちゃうやん」と難クセをつける。
「立憲共産」批判は野党にも伝播し、国民民主の榛葉幹事長が「共産党と堂々と連携する人は応援できない」と言えば、前出の玉木は共産党東京都委員会が配布した「蓮舫応援」ビラをヤリ玉に挙げ、「共産主導の候補予定者に見えてしまう。都民にもそう見えている」とくさした。
対照的に2人とも小池を礼賛し、榛葉にいたっては「王道だ。ゴングがなるとリングの真ん中で動かない。相手選手が周囲をうろうろ回ることで、観客は自然と馬場氏が格上と思ってしまう。見せ方がうまい」と語り、小池を国民的プロレスラーの故ジャイアント馬場さんになぞらえ、ヨイショする始末。意味不明だ。
こうした国民民主の姿勢に、立憲の岡田幹事長が「自民とがっちり組んでいる小池氏を応援するという判断をされているとすると、それは間違っている」と不快感を示したのも当然だ。やはり、国民民主は「野党」とは言えない。
立憲最大の支援組織が女帝の味方につく倒錯
ほんとんどビョーキ(連合の芳野友子会長と国民民主の玉木雄一郎代表)/(C)日刊ゲンダイ
とりわけ「立憲共産」批判にご執心なのが、立憲の最大の支援組織である連合だ。蓮舫について、清水事務局長が「まるで共産の公認候補のようだ。受け入れられない」と共同通信の取材に答えれば、芳野会長の共産嫌いは、ほとんどビョーキ。「考え方が共産党と違うので、連携していくことは非常に難しい」と語り、結局、連合東京は蓮舫支持を見送り。前回と同じく小池支持の方針を固めた。
いくらステルス支援の形を取ろうが「小池のバックに自民」は有権者にバレバレ。それなのに利敵行為に走るとは、気は確かなのか。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)も首をかしげて、こう言うのだ。
「なぜ連合が四の五の言うのか理解に苦しみます。衆院3補選で支援する立憲の全勝は、擁立予定者を降ろした共産の支援のおかげ。見返りを求めず黒子に徹した献身的な支えがあってこそです。自分たちだけメリットを享受しながら、共産に文句をつける筋合いはない。しかも、今回の都知事選は来たる解散・総選挙の前哨戦。与野党激突の首都決戦の先を見据え、大人の対応が求められます。国民民主も含めて冷静な政治判断ができず、何事も好き嫌いで支援を決めるのは、余りにも稚拙すぎる。腐っても鯛で、自民も小池知事も手ごわい。本気で国政を変えるなら、対抗すべく共闘するのは当たり前。野党勢力が1つにまとまらなければ太刀打ちできません」
自民党派閥の裏金事件の端緒を開いたのは、2022年11月の赤旗日曜版のスクープ記事だ。国会で最も自民の裏金を先鋭的に追及してきたのも共産党である。岸田政権の支持率が低迷し、世論調査で「自公政権の継続」より「政権交代」を望む声が上回ってきたのは、ハッキリ言って共産の貢献たるや大。恩をアダで返す「立憲共産」批判はあり得ない。「小池=自民」に加担する連中の神経を疑う。
自民スリ寄りのホンネを包む隠れ蓑
そもそも、かつての仇敵である小池と自民が手を握ることの方が、立憲と共産をはるかに上回る「野合」ではないか。
8年前の都知事選で小池は自民党東京都連を「ブラックボックス」と称して対立した。当初は都議会自民を仮想敵に見立て、時には「黒い頭のネズミ」とののしり、「古い議会を新しく」を掲げて都議会のドンを猛批判。ドンの追い落としには成功したが、結局はドンの絶大な権威が小池に移っただけだ。
今や小池は権力をほしいままにし、やりたい放題だ。樹齢100年のイチョウ並木を含む明治神宮外苑の数千本もの樹木を伐採・移植する計画に、著名人や専門家が相次いで中止・見直しを求めても聞く耳ナシ。この神宮外苑や築地市場跡地など大型再開発事業に邁進し、大手ゼネコンを潤すのは「古い」自民党政治そのものだ。一連の開発事業には読売新聞や朝日新聞、フジサンケイグループも関わり、小池とは利害が一致。なるほど、大手メディアからは「女帝批判」は聞こえず、小池の「学歴詐称疑惑」にも沈黙を続けているわけだ。
こうした構造腐敗を象徴する外苑再開発を蓮舫は「一度立ち止まるべきだ」と争点化し、当選の暁にはガラガラポン。女帝から都民に都政を取り戻し、女性や子育て、教育のために予算を割く。この政治姿勢こそが政権交代後に国を変える壮大な予行演習となるのだ。
「万が一、共産が小池知事の支援に回れば連合も国民民主も蓮舫氏を支援するのでしょうか。腐っても政権与党の自民にスリ寄り、甘い汁を吸いたいだけ。政官財の鉄のトライアングルに組み込んでほしいのです。『立憲共産』批判は、そのホンネを包む隠れ蓑。有権者の一部に残る共産アレルギーを利用し、不安をあおる。デマゴーグに過ぎません」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
冷静な有権者はあこぎなレッテル貼りに惑わされない。口先批判勢力の正体を国民は見ている。
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