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※紙面抜粋
※2024年6月11日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
栃木県鹿沼市長選の政策ビラ(左)には茂木幹事長の姿が… やっぱりG7サミットが花道に…(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
岸田自民党が面白いほど選挙で連敗している。事実上の与野党対決だった9日投開票の栃木・鹿沼市長選でも自公が推薦した元県議会議長が惨敗。県連会長の茂木幹事長らがモーレツ支援したにもかかわらず、立憲民主党県連幹事長を務めた元県議に約8000票も差をつけられ、初当選を許した。しかも、いわくつきの黒星だ。元議長陣営は著作権侵害が濃厚なパクリ政策ビラを配布するなど、手段を選ばずに追い上げを図っていたことが判明。裏金事件で白眼視されているただ中、違法行為に手を染めてでも勝とうとする自民の腐敗体質がここでも露呈した。
元議長の陣営がバラまいたのは、世界的人気マンガ「スラムダンク」の劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」(2022年公開)のポスターを丸パクしたビラ。大書きされた「総力結集」の文字の下に、ユニホーム姿のオッサン5人が並ぶ。元議長を中心に、茂木や福田知事ら4人が脇を固め、「このまちをもう一度建て直す あきらめたらそこで鹿沼が終わる」とのメッセージが躍る。これも、湘北高校バスケットボール部の安西光義監督の名言「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」の剽窃とみられる。「あきらめが肝心」を知らない栃木自民は終わった。
釈明は「若いスタッフが」
パクリ問題を特報した共同通信の取材に対し、元議長陣営の幹部は「他県の商店街が同様のポスターを使用しているのを参考に、若いスタッフが作成したようだ」と説明。告示前に新聞折り込みで市民に配布したという。その釈明は裏金議員が「派閥が」「秘書が」と異口同音だったのと同じパターンだ。自身が代表を務める党支部に寄付し、所得税の一部控除を受けていた平井卓也元デジタル相は「同じようにされている議員はたくさんいらっしゃると思う」と居直っていた。すべての道は裏金に通ず。組織的な犯罪行為を四半世紀にわたって続けてきた集団の本質は変えようがない。その上、典型的なトカゲの尻尾切りである。
政府・自民は生成AIによる著作権侵害の取り締まりを進めている最中だ。与党ナンバー2の茂木はどうオトシマエをつけるのか。見ものだ。
やはり、岸田自民が衆院3補選をすべて落とし、静岡県知事選も敗北したのは必然だ。連敗記録は両手で収まらなくなってきた。党内は案の定の阿鼻叫喚。4日の横浜市連の会合では、会長を務める市議が下野した2009年のムードを引き合いに「政治資金規正法改正にメドが付いた今、総裁自ら身を引く苦渋の決断をし、強いリーダーシップの取れる新進気鋭の総裁を選び、変革の証しを示さなければならない」と岸田首相に退陣を要求。党政治刷新本部長を務める岸田の一声で始まった政治刷新車座対話でも首相交代を求める声が相次いでいる。5日は青森県連幹部が、8日は長野県連幹事長の県議が「党執行部の顔ぶれを一新してほしい」と迫った。「選挙で勝てない!」となったら途端に内部崩壊するのだから、自業自得の哀れな末路だ。
連立を組む公明党もあからさま。沖縄県議選(16日投開票)の応援演説で9日にマイクを握った山口代表は、「自民党はなかなか具体策を出さず、グズグズし、あっちの補欠選挙、こっちの知事選挙と、どんどん負け続けて今のところほとんど負け。これは国民の皆さんの政治不信がいかに強いかということを表している」などと言いたい放題だ。
国民生活は透明化でも「政治とカネ」は不透明
長野県連からも退陣要求(C)共同通信社
あらゆる地方選で負け続けた結果、下駄の雪の公明からも恨み節を言われ、党内では「岸田じゃ勝てない」の声が蔓延しているわけだが、まったくもって違う。ズレている。世論が突きつけているNOは岸田自民のみならず、自民そのものへのNOなのだ。ついでに言えば、熱心な創価学会信者以外は公明に対してもNOだ。有権者が問題視しているのは、自民の金権腐敗体質と与党の国民愚弄。いまだに汚い選挙を平然とやっているのだから、なおさらである。
法大大学院教授の白鳥浩氏(現代政治分析)はこう指摘する。
「自民党の規正法改正案は世論から乖離しています。政治家の責任を明確にする連座制は盛り込まれず、政治を歪める企業・団体献金の廃止はスルーし、その抜け道として裏金づくりの温床となっている政治資金パーティーもほぼ維持。パーティー券購入者の公開基準を現行の20万円超から5万円超に引き下げるとしていますが、回数を重ねれば収入はキープできる。年間上限額を設けなければ、意味をなしません。ブラックボックス化している政策活動費にしても、領収書などの公開は10年後。改正法の施行時期は27年1月です。37年までバッジをつけている議員が何人いるか。存続している政党がどれほどあるか。インボイス制度やマイナンバーカードの導入で国民生活の透明度はどんどん引き上げられているのに、『政治とカネ』は不透明なまま。世論が納得するはずがありません」
NHKの世論調査(7〜9日実施)も散々だった。内閣支持率は前月比3ポイント減の21%に下落し、12年の政権復帰以降で最低を更新。規正法改正案の衆院通過については、「評価しない」との回答が60%を占め、「評価する」の33%を大きく上回った。50%が企業・団体献金を「禁止すべきだ」とし、パー券公開基準についても「さらに引き下げるべきだ」が24%、「パーティーはすべて禁止すべきだ」は40%に上った。政活費をめぐる10年後の領収書公開案は75%が「妥当ではない」と回答した。与ゆ党への猛反発が浮き彫りである。
ポスト岸田に展望なし
政治評論家の野上忠興氏はこう言う。
「支持率は底なし沼に入り込んでいる。会期末(23日)が迫るにつれ、自民党内は波立ち、反岸田の空気は強まるでしょう。いずれも驚きはありません。起死回生の好機だった規正法改正は小手先で、岸田首相-麻生副総裁-茂木幹事長の三頭政治は事実上崩壊して守護神に見放された。岸田首相は超がつく能天気で知られていますが、このまま突っ走れば最後はズタズタ。菅前首相の二の舞いを演ずることになる。G7サミット(13〜15日)への出席を花道にし、一連の外遊を終えたら退陣表明をするのが本人にとってベストシナリオでしょう。ポスト岸田をめぐって名前が取り沙汰されていますが、誰になっても国民生活に展望は開けない。自民党は下野して出直すのが筋です」
しかし、ヌエに例えられる自民はしぶとい。このところ大手メディアが注視しているのが、岸田から引きずり降ろされた非主流派の菅前首相の動向だ。菅政権の閣僚だった萩生田光一前政調会長、加藤勝信元官房長官、武田良太元総務相、小泉進次郎元環境相と6日にすし会合を開き、岸田降ろしの号砲かとザワザワ。岸田批判の口火を切った横浜市連は、菅のお膝元でもある。
東京都知事選(20日告示、7月7日投開票)をめぐり、萩生田が牛耳る都連は3選を目指す小池百合子知事に徹底して抱きつき。政党に準じた選挙運動ができる「確認団体」の設立を検討し、ステルスの相乗りで連敗記録にストップをかけようとしている。計算高い小池から表立った支援に難色を示され、いつの間にやら下駄の雪。権力は必ず腐敗するし、自壊し始めたら止める術はない。一縷の望みも同情も禁物。次期総選挙で野党に転落させなければ、この国の政治はオシマイだ。
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