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※紙面抜粋
※2024年6月5日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
与ゆ党合意で採決だけ決めとく卑しい思惑(左から馬場「日本維新の会」代表、岸田首相、山口公明党代表)/(C)日刊ゲンダイ
まさに、愚にもつかないドタバタ劇である。
自民と維新の“仲間割れ”は、たった1日で終結し、抜け穴だらけの「政治資金規正法」が成立しそうだ。
4日予定されていた衆院の特別委員会は、前代未聞の流会となった。野党と合意していた審議日程を、与党サイドから撤回を申し入れたのだから異例のことだ。さすがに、自民党の浜田国対委員長も「大変申し訳ない。恥ずかしい話だ」と平謝りだった。
4日の特別委は、岸田首相も出席し、自民党が3日に提出した「政治資金規正法案」を採決する予定だった。本会議も開かれ衆院を通過するとみられていた。
その特別委が流会になったのは、自民党と「合意書」までかわしていた日本維新の会が、「自民案には賛成できない」と態度を一転させたからだ。自民と維新との間で「政策活動費」の扱いをめぐって“齟齬”が生じたのが原因だった。慌てた自民党は、4日の特別委を流会にし、維新の主張を取り入れて「自民案」を修正せざるを得なくなった。修正された法案は6日に衆院を通過する予定だ。
自民党関係者がこう言う。
「自民と維新の齟齬は、特別委を流会させるような大きな話じゃなかったはずです。齟齬といっても、現在、使途の公開義務がない『政策活動費』の使途公開について、自民党が提出した法案が『50万円超に限る』としていたのに対し、維新サイドは『全支出を対象にすべきだ』と要求した、という一点だけです。あの一点だけだったら、簡単に折り合える話ですよ。使途を公開するといっても10年後のことですからね。実際、自民党が法案から『50万円超』を削除したら、維新の遠藤国対委員長は『自信を持って賛成したい』と、すぐに矛を収めていた。あのドタバタ劇にどんな意味があったのか疑問です」
自民と維新のケンカは、茶番劇だったのではないか。抜け穴だらけの「自民案」は、ほとんど中身が変わらず、2日遅れで衆院を通過しそうなのだから、バカみたいな話だ。
自民の「3点セット」を許すな
裏金集団(C)日刊ゲンダイ
そもそも、自民と維新が結んだ「合意書」を見ても、本気で「政治とカネ」にメスを入れるつもりがないことは明らかだ。
自民と維新は5月31日、トップ会談を行い、維新の主張に沿って自民案を修正することで合意し、岸田と馬場代表は「合意書」までかわしている。馬場は「100%我が党の考え方が通った」と大喜びだった。
しかし「100%」どころか、実際には、ほぼ「ゼロ回答」だったのが実態だ。
もともと維新は主要野党と一緒に、▽企業・団体献金の禁止▽政策活動費の廃止または領収書の全面公開▽議員が会計責任者と同等の責任を負う「連座制」の導入--の3点セットを自民党に求めていたが、自民党の修正案にはまったく入っていない。
しかも「政策活動費」の使途公開は10年後である。収支報告書への虚偽記載などの時効は5〜10年だから、10年前の支出に違法性が疑われるものが含まれていても罪に問えない。そのうえ、領収書の公開は「黒塗り」でもOKというのだから、ありえない話だ。
さらに、もともと維新案は「政策活動費」の年間支出の上限を5000万円か政党交付金の1%の少ない方としていたのに、自民との「合意書」には「年間の使用上限を設定する」とだけ記され、金額の明記もなかった。
よく、これで維新は自民党と「合意書」など、かわせたものだ。
立憲民主の議員が、「自民、公明が同じ穴のムジナと批判され、その同じ穴に維新まで入った。ムジナ3兄弟だ」と批判していたが、まさにその通りだろう。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「自民、公明、維新の3党が、同じ穴のムジナというのは、その通りでしょう。政界浄化に後ろ向きな自民党に、公明と維新が手を貸しているのは間違いないからです。公明党はクリーンを売りにしていますが、政治資金パーティー券の購入者の公開基準を、現行の“20万円超”から“5万円超”に引き下げることを自民党がのんだだけで、よしとしている。なぜ、政治資金パーティーの禁止を訴えないのでしょうか。自民党が維持しようとしているのは『企業献金』『政治資金パーティー』『政策活動費』の3点セットです。この3点セットの廃止を要求しない維新と公明は、自民党にとっては同志みたいなものでしょう」
自民党は6月23日の国会会期末までに「政治資金規正法案」を成立させ、裏金事件からはじまった「政治とカネ」の問題に幕を引くつもりだ。そうなれば、自民党の狙い通り「企業献金」「政治資金パーティー」「政策活動費」の3点セットも温存されることになる。
維新の連立入りにメリット
これまでも維新は、自民党の補完勢力、野党でも与党でもない“ゆ党”だと揶揄されてきたが、いよいよ自民党と一体だということがハッキリしてきたのではないか。
すでに政界では、馬場の「入閣説」まで流布されている。ポストは万博担当相である。自民党にとっても公明党にとっても、維新との連立はメリットがあるという。
「自民党議員にとって、維新は選挙で対峙した時、強力なライバルになります。もし、連立を組み、選挙区を調整できるのならば、自民党はすごく楽になります。公明党にとってメリットは、自民党以上でしょう。次回の衆院選、公明党は大阪と兵庫の6選挙区に候補を擁立する予定です。これまでは維新が選挙区を譲ってくれたから、公明議員は当選できたが、維新とガチンコになったら勝ち目は薄い。維新が連立与党の一員となり、選挙区調整が可能になれば、これほどありがたいことはないでしょう。もちろん、常識的には、維新の連立入りは、次の衆院選の後でしょうが、自民と維新が急接近しているのは確かです」(政界関係者)
冷静な国民は、ムジナ3兄弟に「政界浄化」を期待しても無駄だと気づいているに違いない。
日本の政界から「政治とカネ」の問題を一掃するためには、ムジナ3兄弟を国会から放逐するしかないのではないか。
年明け以降の選挙を振り返ると、有権者も「政権交代」を望んでいる可能性が高い。4月の衆院トリプル補選、5月の静岡県知事選、東京都議補選(目黒区選挙区)、さらに6月2日の東京都港区長選と、自民党候補が次々に落選しているからだ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「国民の政治不信、自民党不信は、収まる気配がありません。都心部だけでなく、岸田首相の地元・広島の首長選でも自民候補が敗北しています。地殻変動が起きているのは間違いないと思う。驚くのは、投票率が低くても自民党候補が負けていることです。無党派層が動かなくても、自民党候補は落選しているということです。従来の自民党支持者が“自民党離れ”を起こしているのだと思う。こうなったら立憲民主や国民民主は、一致団結して“反自民、反公明、反維新”を掲げて戦うべきです。維新を野党と考えない方がいい。その方が、色分けがハッキリして有権者にも分かりやすいはずです」
裏金事件の発覚から半年。自民党の逃げ切りを許してはいけない。
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