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エンプティ―法改正容認する立憲
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2024年6月 5日 植草一秀の『知られざる真実』
政治資金規正法改正が混乱している。
自民党は6月4日、政治資金規正法改正案について、衆院政治改革特別委員会で同日予定していた岸田文雄首相出席の質疑と採決を見送った。
自民は日本維新の会の主張を反映させ、政策活動費の扱いを修正した案を同特別委の理事会に提示。
自民、立憲民主両党は6日の衆院本会議で採決することで合意した。
しかし、結論から言えば「中身のない法改正」。
エンプティ―。
立憲民主党がどこまで本気なのか不明な部分はあるが、野党提案に意味はあった。
立憲民主党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、衆議院会派「有志の会」は5月28日の衆院政治改革特別委員会の理事懇談会で、
・企業・団体献金の禁止
・政策活動費の廃止または領収書の全面公開
・議員が会計責任者と同等の責任を負う制度の導入
の3点を共同で要求した。
ところが、自民、公明、維新は5月31日に政治資金規正法改正案で合意した。
その内容は、
・政治資金パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げること
・政策活動費の支出などをチェックする第三者機関を設置すること
・政策活動費の年間支出上限額を定めること
・10年後に領収書などを公開する仕組みを早期に設けること
などだった。
一部メディアは、この合意内容を高く評価する誇大報道を行ったが、基本的に「ザル法維持」でしかない。
エンプティ―だ。
野党4党プラス1会派が合意したのは
・企業・団体献金の禁止
・政策活動費の廃止または領収書の全面公開
・政治家に会計責任者と同等の責任を負わせる措置
の3点だが、自公維合意案に「企業・団体献金の禁止」は盛り込まれていない。
政策活動費について、
「10年後の領収書等公開」
が示されたが、「10年後」ではまったく意味がない。
法改正しても、当面2年間はいまのまま。
つまり、次の総選挙と参院選はこのままでやるということ。
領収書などを10年後に公表するとしているが、
・政治資金収支報告書の保存期間は3年
・不記載などの罪に問われる公訴時効は5年
であるから、10年後に領収書等が公開されて不適切な支出などが明らかになっても罪を問うこともできない。
自民修正案では、政策活動費について収支報告書公表の10年後に領収書を公開するとしたが、制度の具体的な内容は
「早期に検討し、結論を得る」
とされており、領収書が具体的にいつから公開されるのか、領収書等を公開する政策活動費の年間支出額上限も未定である。
また、6月3日の特別委で
「領収書の黒塗りを認めることはあり得るのか」
との質問があったが、自民案出者の鈴木馨祐氏は
「プライバシーや営業秘密とのバランスは考慮されないといけない」
と答え、「領収書黒塗り」の可能性が示唆された。
つまり、自民党は制度の抜本改正の意思を持たず、これに公明も維新も同調したということ。
維新に至っては野党で合意を結びながら、野党合意を踏みにじる自公案に賛成したわけで、信用は完全消滅した。
自公に寝返ったことへの批判はすさまじく、この状況に慌てた維新は、自民案が政策活動費の公開対象を50万円超の支出に限るとした点を問題にして与党案が再修正される運びとなった。
このために6月4日の委員会採決が先送りされることになった。
この点が修正されて公開対象の支出金額下限が撤廃されても、領収書等の公開が10年後であるなら、法改正に意味がないと言うほかない。
この修正案で法案採決が強行されて法改正が終幕を迎えるなら、実態は何も変わらない。
岸田内閣に「政治とカネ」」問題を解決する意思はないことが確定することになる。
同時に、このエンプティ―法改正に維新が賛同したという重大事実も確認されることになる。
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