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※紙面抜粋
※2024年6月3日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
「苦渋の決断!?」を演出(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
自民党の裏金事件に端を発した政治資金規正法改正をめぐる国会審議は、今週がヤマ場だ。先週末の与ゆ党会談で、岸田首相は公明党と日本維新の会の抱き込みに成功。支持母体の創価学会に突き上げられている公明の主張を丸のみし、イイトコ見せて失速に歯止めをかけたい維新のプランを取り込み、抜け穴だらけの自民案での法改正実現に望みをつないだ。とどのつまり、政治とカネの問題の抜本的な解決が期待される「令和の政治改革」は、30年前の「平成の政治改革」に劣る結果になりかねないということだ。
規正法改正案を議論する衆院政治改革特別委員会が設置されたのは、およそ2カ月前。世論無視の自民がザル法のザル改正でお茶を濁そうとするため、与野党の修正協議で2回もはねつけられ、一向に仕上げに向かわなかった。そうして、5月中に改正案を衆院通過させる自民の青写真は崩壊。焦った岸田が公明と維新に抱きつき、再修正案への賛成を取り付けたというわけだ。
それで何がどう変わったのか。答えは、ほぼ変化なしだ。
政治資金パーティー券購入者の公開基準を「10万円超」から「5万円超」へと引き下げ。公明の要求によるものだ。政党から支出を受けた議員に使途報告義務がなく、ブラックボックス化した政策活動費については、年間の使用上限を設定し、10年後に領収書を公開するなどの規定が付則に盛り込まれた。これは維新がこだわった。結局、規正法改正の本丸である公選法に準じた連座制の導入も、政策を歪めてきた企業・団体献金の廃止も棚上げ。献金で集められないカネの受け皿となっている政治資金パーティーの透明化も徹底しない。骨抜きそのものなのだ。
金権腐敗の根っこをすべて温存
にもかかわらず、党首会談後のムードはまるで三方よし。公明の山口代表が「ギリギリの場面で首相の決断が示されたことを大事にしたい」とベタ褒めの上、「今後も連立政権を維持し、国民の信頼を取り戻していきたい」と言えば、維新の馬場代表も「我が党の考えが100%通った」「非常に大きな前進だ」と成果をこれでもかと強調。およそ8時間後に官邸でぶら下がり取材に応じた岸田は、「今国会で改正を実現しなければ政治への信頼回復はできない。こうした強い思いから自民として思い切った、踏み込んだ案を決断した」と胸を張っていた。3日の特別委で質疑。4日には特別委と本会議で採決し、衆院を通過させる構えだ。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう指摘する。
「自民党のシナリオ通りのデキレース。この間の流れで、それがよーく分かりました。与党案をまとめられなかった自民党が行き詰まった。すると、岸田首相が政権を支える麻生副総裁や茂木幹事長の反発を乗り越え、苦渋の決断で公明党に歩み寄り。こんな猿芝居で世論を丸め込めると踏んでいるのですから、国民をナメ切っています。結局、裏金づくりの実態解明はなされず、党内処分は実害のない大甘、再発防止策もおざなり。金権腐敗の根っこである企業・団体献金、政治資金パーティー、政策活動費はすべて温存する。万事、今まで通りなのです。改革幻想を振りまくのもいい加減にしろ、と言いたい。自浄能力を完全に失い、トコトン腐敗堕落し、民意とかけ離れた自民党にまんまと欺かれている大手メディアも情けない」
公維と握った自民再修正案「評価せず」7割
聞く耳持たない総裁にぷんぷん(自民党の麻生副総裁と茂木幹事長=左)/(C)日刊ゲンダイ
この国の大新聞を読んでいると頭がおかしくなりそうだ。「同じ穴のムジナ」であることを体現した公明の首相礼賛や、犯罪者集団と揶揄される維新の「100%通った」などという戯言を垂れ流し、スカスカ合意で採決強行に無批判のデタラメ。マトモなのは、東京新聞くらいだ。
社説(1日付)でこう書いていた。
〈抜本改革を避けてきた岸田文雄首相が、内容が不十分な再修正案の成立を強行するなら、衆院解散・総選挙で国民に信を問うよう求める。裏金事件を反省しない自民党や裏金議員が立法府にとどまり続けることの是非を判断するのは、主権者たる国民である〉
汚いカネにまみれた政党に国政を任せられやしないし、裏金議員にバッジをつけ続ける資格はない。そんな連中とニマニマしながら握った公明や維新は当然、連座の対象だ。
大手マスコミ各社による世論調査では、大半が自民案にノーを突きつけてきた。JNNの調査(1、2日実施)でも、その流れは変わらない。自民の再修正案について「評価する」としたのは28%で、「評価しない」と回答した70%を大きく下回った。鉛筆をなめた程度の微修正に留飲を下げるお人よしはそういない。内閣支持率が反転するわけもなく、前月調査から4.7ポイント下落し、25.1%に沈んだ。ちなみに、岸田が政権浮揚をかける定額減税(1人あたり所得税3万円、住民税1万円)については60%が「評価しない」と回答した。
港区長選も負けて連敗記録更新
組織的な裏金づくりに邁進してきた自民は、どこから見てもみな盗人だ。「首相の決断」という三文芝居に国民が辟易しないわけがない。党内は揉めているらしいが、ドロボー同士の内輪揉め。国民愚弄の世紀の茶番を繰り広げる自民に対し、大手メディアはなぜ下野を迫らないのか。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「報道機関に露骨な圧力をかけた第2次安倍政権以降、大手メディアの多くが政府・自民党の応援団に成り下がってしまった。政治改革をめぐる議論はようやく入り口に立った程度なのに、政権の意向に沿って『やった、やった』と言わんばかりにもてはやしている。そんな体たらくだから、2024年の『報道の自由度ランキング』(国際NGO国境なき記者団発表)で日本は70位。G7最下位で、民主主義国家を名乗れる状況ではありません。『政治とカネ』が透明化されなければ、政治不信は深まる一方です。自民党政権に政治改革は断行できない。国民の負託に応えられない岸田内閣は総辞職し、野党に政権を託すのが憲政の常道なのです」
2日に投開票を迎えた東京・港区長選では、自公が推薦した5期目の現職が新顔の元区議に敗れた。衆院3補選、静岡県知事選と大型選挙で負け続けの自民にとって手痛い敗北だ。
目黒区長選、神奈川・小田原市長選、静岡県議補選、都議補選(目黒区)のほか、岸田のお膝元である広島・府中町長選でも負けている。いよいよ、機が熟してきた。
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