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※紙面抜粋
※文字起こし
一蓮托生(岸田首相と公明党の山口代表)/(C)日刊ゲンダイ
自民党の派閥パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法の改正をめぐり、合意文書を交わしたはずの自公が具体的な法案の中身で決裂。自民は17日、単独で衆院に改正案を提出した。野党は、立憲民主党と国民民主党、衆院会派「有志の会」が改正案を来週20日に共同提出する方針。日本維新の会も来週前半に独自の改正案を出す。22日の衆院政治改革特別委員会で、各党案が審議入りとなる方向だ。
「政治とカネの問題に対する抜本的解決策。実効性のある再発防止策だ」
岸田首相は、17日の参院本会議で自民案についてこうヌカしていたが、一体、どうやったら抜本的に解決するというのか。
自民案は“なんちゃって改革”の噴飯モノだ。議員本人が責任逃れできるいわゆる連座制。裏金づくりの温床となったパーティー券は、購入者の公開基準を現行の20万円超から「10万円超」へとわずかに引き下げただけ。政党から議員個人に支給される“掴み金”の政策活動費も、使途公開は1件当たり「50万円超」と条件をつけたうえ、「組織活動費」「選挙関係費」など項目を報告するだけの曖昧さ。裏金を温存したい意図がアリアリで、与党とはいえ公明がソッポを向くのは当然である。
岸田自民は来月23日の国会会期末までの改正法成立を目指しているが、自民は参院では単独で過半数に達しておらず、先行き不透明だ。
自民案を蹴ったのは衆院選対策
とはいえ、公明がいつまでも自民と反目するのかどうか。公明はパー券の公開基準で「5万円超」を譲らず、「10万円超」の自民と決裂した。だが、政治資金パーティーなどほとんどやらず、パー券収入に頼っていない公明が、なぜ「パーティー禁止」の抜本改革に踏み込まないのか。自民に配慮したのは明らかで、「5万円超」という修正の落としどころを自民のために用意してあげた、ということではないのか。
つまり、自民案がヒドすぎるのは間違いないが、公明だって乗らないふりの目眩ましだ。その証拠に、山口那津男代表は一昨日の党会合で「法改正が成し遂げられるよう自民、公明が力を合わせ、推進していきたい」と発言している。なんだ、やっぱり協力するわけだ。
公明が自民案を蹴った理由と目的はハッキリしている。早ければ今夏にあるかもしれない衆院選対策だ。政治改革に本気なワケじゃない。
公明は衆院の選挙区で現状、9議席を保有している。うち4つが大阪、2つが兵庫だ。「常勝関西」と言われてきたが、前回までは維新との選挙協力ですみ分けしたから6議席を確保できたまでで、次回は選挙協力がなく、全面対決する。
税金無駄遣いの大阪・関西万博への批判などで全国的には評判ガタ落ちの維新ながら、大阪や兵庫では依然、強く、公明は関西全敗もあり得る状況。公明は全体でも選挙区擁立を11に増やし、必勝体制を敷くが、「勝てても1つか2つ。全滅してもおかしくない」というのが選挙のプロの見方だ。比例単独から埼玉14区に移った石井啓一幹事長も当落線上だとされる。
政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「公明党にとって結党以来の最大の危機です。『どこまでも ついて行きます 下駄の雪』でやってきたが、今回ばかりは自民党の道連れはゴメンということでしょう。支持母体の創価学会は高齢化が進んでいるうえ、池田大作名誉会長が昨年、死去した。組織の衰退と比例するように公明票がガタ減りし、比例は過去最悪だった2022年参院選の618万票が、次は600万票割れどころか、500万票を切るのではとも言われています。明確な自民党離れを支持者に見せないとマズい、と相当焦っている。ただ一方で、自公は『選挙区は自民、比例は公明』の掛け声で長年“選挙互助会”を続けてきた。規正法改正をめぐる亀裂も、お互いに離れられない関係だというお家事情を分かったうえでの茶番に見えます」
戦争国家と安いニッポンを招いた因果応報
国民の総意(C)日刊ゲンダイ
焦る公明、自業自得だ。「平和の党」を掲げながら、国民生活そっちのけの強権・腐敗政党に、ただただついていく下駄の雪に成り下がった。
安倍元首相が第2次政権で、集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲と安保法制に突き進んだ際は、創価学会員のモーレツな反対や署名運動まで行われたのに、結局、戦争国家への道に加担した。
失敗したアベノミクスが招いた安いニッポンもそうだ。ガッポリ献金をもらって大企業優先の政治に邁進する自民と、一蓮托生で庶民生活を苦しめてきた。裏金自民だけでなく、公明に厳しい目が向けられるのも当然の因果応報である。
慶大名誉教授(憲法学)の小林節氏が言う。
「1990年代の細川連立政権時に小選挙区比例代表並立制という今の選挙制度ができました。当時、私は参考人として国会でこの新しい選挙制度に賛成しましたが、それは『政権交代によって権力の腐敗を掃除できる』ということだったからです。公明党は当時、連立側にいて、自民党と敵対していた。それがいつのまにか自民と結託し、全国の各小選挙区に1万〜2万票あるという公明票によって、自民党を絶対的権力に増長させ、政権交代があり得ない状態にしてしまいました。いまや公明は自民のいち派閥。権力のうまみを覚えさせられ、戦争法では『ダメよダメよ』と言いながら、ちゃっかり自民に手を貸した。今回も出来レースでしょう。気づけば日本は貧乏な国になってしまいました。国民は大きな苦労を背負わされ、さすがに怒っている」
次の選挙は自公過半数割れ
国民の怒りは、各種世論調査で政権交代を望む声が増えていることに象徴されている。自公も自らが崖っぷちに立たされつつあることを分かっているだろう。規正法改正をめぐる自公のゴタゴタは、権力からの転落危機に右往左往する様であり、醜悪としか言いようがない。
自民はここへきて、維新を取り込もうと、旧文通費(調査研究広報滞在費)の使途公開で秋波を送る。ずっと公開に反対し、放置してきたのに、やることが分かりやす過ぎる。規正法改正の自民案については、自民党内の了承手続きギリギリになって「小手先の改革ではダメ」だとか、「問題を起こした自民がとがった案を示すべき」などの声が上がったというが、何を今ごろ、というマンガだ。
そして、そんな自民に距離を取ろうとする公明も、何を今さら、である。長年やりたい放題をしてきた権力亡者の両党は「同じ穴のムジナ」。国民はお見通しだ。積年の悪政の成れの果て。自公は「決裂」ではなく、「共倒れ」がふさわしい。
前出の野上忠興氏が、5月6日付の本紙で今国会会期末の衆院解散・総選挙となった場合の議席予想をしているが、自公で81減の207議席、過半数(233議席)を割り込むという結果だった。
「控えめに分析しても、過半数割れです。自公はもっと減らす可能性もあり、81議席減どころか最悪、3ケタ減だってあり得ます。国民に物価高や負担増を押しつけ、自分たちだけヌクヌクなんて、世論は許しませんよ」(野上忠興氏)
今回ばかりは、国民は冷ややかだ。20年超にわたった自公連立政権の終わりが見えてきた。
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