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※紙面抜粋
※2024年5月17日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
正気を失っている自民党、裏金幹部にも寛大(三男が地盤を継ぐ二階俊博元幹事長、続投する萩生田光一都連会長)/(C)日刊ゲンダイ
自民党は大丈夫か──裏金事件への無反省を通り越し、最近は国民の神経を逆なですることばかり繰り返している。もはや政権与党として正気を失っているとしか思えないのだ。
16日午前には総務部会と政治刷新本部作業部会の合同会議を開催。政治資金規正法改正の条文案を了承したが、続く政調審議会での審査では了承を見送った。条文案に異論が出たためで、きょう午後にも再審査し、その後の総務会で党内手続きを終える方針だ。
異論が総意にならないあたりが、今の自民を心配するゆえんだ。条文案は抜け穴だらけで「裏金づくりを続けます」と宣言したも同然だ。裏金の原資となった政治資金パーティーの券売収入を断念する気はさらさらなく、購入者の公開基準を現行20万円超から「10万円超」に引き下げるだけ。連立を組む公明党案の「5万円超」とは倍の開きがある。
合同会議では、出席者から「さらに引き下げないと国民の理解が得られない」との意見も出たというが、勘違いもはなはだしい。裏金の原資は根本から断たなきゃダメ。政治資金パーティーの全面禁止で許しを請わなければ国民の理解は得られない。今後の継続を前提に議論すること自体、虫がよすぎる。
自民は領収書不要で使途の記載報告の義務もない「政策活動費」(政活費)も温存。党幹部の手に渡る事実上の裏金も絶対に手放そうとしない。条文案には政活費の使途公開を盛り込み、「改革」のポーズを取っているが、インチキである。
公開対象は政党から議員への「50万円超」の支出だけ。それも与党間協議ではおおまかな項目ごとの支出額しか公開しようとせず、公明にまでソッポを向かれる始末だ。
ジャンキーに国政を任せるのは危険すぎる
22年分の政治資金収支報告書によると、自民党本部の政活費は14億1630万円。うち7割近くの9億7150万円を手にしたのは茂木幹事長だ。
茂木は使途公開ルールの緩い「その他の政治団体」へ4億円超の政治資金を移動させた張本人。脱法行為もヘッチャラの小ズルい男にかかれば「1回50万円以下に小分けし、複数回にわたって政活費をもらえば公開しなくてもいいんじゃね?」などと、すぐワルさを思いつくに違いない。
裏金政党に「政治改革」を求めるのはどだい、ムリ。泥棒に泥棒の取り締まりを期待するようなものだ。自民は公明との共同提出を断念し、改正案を単独で提出するらしいが、こんなナメ切った茶番法案を数の力で押し切れば、国民全体を敵に回すことになる。
よっぽど、自民は次の総選挙で負ける気マンマンなのか。マトモな神経でないことは確かだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)も裏金政党の居直りに驚愕する国民のひとりだ。こう語る。
「裏だろうが、表だろうが、自民党はいかがわしいカネまみれ。そうしなければ存続不可能なレベルにまで陥っています。危ないクスリに侵されているかのようで、民意に鈍感となり、裏金の何が問題なのかさえ理解する能力を失っているのです。裏金事件を受けた規正法改正を巡り、『自民党の力をそぎたいという政局的な話がごっちゃになっている』と言った議員もいましたが、大半の自民党議員の本心でしょう。裏金事件は事故みたいなもので『何が悪い?』という感覚です。危険薬物に侵されていれば、正常な判断がつかなくなるのも当然です」
これ以上、「ジャンキー」に国政を任せるのは危険である。
肌感覚で怒りを思い知らせる手段は下野のみ
「手心」と「被害者面」も(世耕弘成前参院議長=左、下村博文元文科相)/(C)日刊ゲンダイ
自民は裏金派閥の幹部にも寛容すぎる。先週末には離党勧告処分を受けた世耕前参院幹事長の地元・和歌山で、森山総務会長が「将来のある方だ」と世耕を持ち上げ、党として対抗馬の擁立を見送る考えを示した。世耕は組織的な裏金づくりに手を染めた安倍派の参院議員グループの元トップだ。責任を重く見て、詰め腹を切らせたはずの相手への「手心」は「形だけの処分」を自白したに等しい。
裏金事件の責任を取り、次期衆院選への不出馬を表明した二階元幹事長は処分見送りにとどまらず、世襲も容認だ。三男がきょうにも二階の地元・新和歌山2区からの出馬を表明。裏金派閥の解散会見で「派閥は悪くないもん」と開き直った二階に党内では誰も頭が上がらず、望み通り地盤を継がせるしかないのだ。
国民には理解しがたいセンスだが、自民のマヒした感覚を物語る逸話はまだまだある。東京都連は、裏金2728万円で党から1年間の役職停止処分を受けた都連会長の萩生田前政調会長の続投方針を決定した。
都連は来月20日告示の都知事選で小池都知事にひれ伏し、独自候補を立てない「不戦敗」が既定路線だ。そのため、女帝とパイプのある萩生田を温存。党による「推薦」など形式はともかく、3選出馬を目指すとみられる小池の支援に回り、他力本願でも衆院3補選全敗など大型選挙に負け続きのイメージを払拭したいのだろう。浅はかな思惑が透けて見える。
かと思えば、同じく処分を受けた下村元文科相は15日、都内の講演で「真相解明がなくて、ただスケープゴートのような形で処分された」と被害者ヅラ。そのクセ、「どんな組織でも部下が問題を起こしたら、最終的には社長が責任を取る。岸田総理にも責任はある」とエラソーに言い放ち、「森元総理にはもっと詳しく聴取をする必要がある」と注文を付けた。裏金処分を巡る醜悪なバトルである。
下村本人は否定しているが、月刊「文芸春秋」最新号でも森に土下座して2000万円の裏金を渡そうとしたと暴露されたことへの腹いせだろう。「おまえが言える立場か」と突っ込みたくなる。
常に献金先の顔色をうかがう「カネ欲しさ」
こんなイカレタ政権が、エネルギー基本計画の見直し議論に着手。「人工知能(AI)時代の電力需要拡大」を理由に「原発回帰」にだけはシャカリキだから、目まいがしてくる。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「AI時代を見すえた政府の原発回帰は、電気を大量に使うデータセンターや半導体工場の新増設とワンセット。半導体関連株の上昇が目的で、それで潤うのは半導体企業と海外投資家です。円安放置も同様で喜んでいるのは輸出大企業とインバウンドの訪日客のみ。自民党政権は常に米国中心の『外圧』に弱く、巨額献金の送り主である大企業の顔色をうかがってばかり。原発回帰もその一環で、円安物価高に苦しむ庶民の悲鳴には絶対に聞く耳を持たない。企業・団体献金の廃止で自民党の『カネ欲しさ』の体質にメスを入れなければ、利権をエサに政権基盤を安定させる金権腐敗政治が永久に続きます」
自民のやっていることは何から何まで「自爆テロ」。その自覚があるのか、下村は先の講演で6月の国会会期末に合わせた解散論を巡り、「自爆選挙になる」と発言。広報本部長の平井元デジタル相もきのう、岸田の地元・広島市の政治刷新車座対話後、記者団に「今したら大変不都合な結果になる」と打ち明けた。
平井は岸田派所属。岸田がもくろむ6月解散論に「身内」が待ったをかけた形だが、自民はどいつもこいつも往生際が悪い。有権者の鉄槌を恐れて、選挙から逃げ回っている。
「危険薬物に侵された自民党には荒療治が必要です。罪の深さを理解させるには、下野という大きな罰を与えるしかない。民意の激しい怒りを肌感覚で思い知らせる上でも、次の衆院選で有権者は目に物を見せるべきです」(五十嵐仁氏=前出)
「大丈夫か⁉」と本紙にまで心配されるようでは、いよいよ自民党もオシマイだ。
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