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※紙面抜粋
※2024年4月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
補選全廃へ(C)日刊ゲンダイ
本人も「こんなはずじゃなかった」と大慌てになっているのではないか。9年ぶりの「国賓待遇」で米国を訪問した岸田首相のことだ。
日米首脳会談や日米比首脳会談などのスケジュールを次々とこなし、米議会演説や晩餐会ではジョークを交えた英語スピーチで周囲から拍手を浴びた。持ち上げられていい気分になったのだろう。ニタニタする満足げな表情からは、岸田が「これで旧統一教会問題や裏金事件で低迷した支持率も急浮上するに違いない」との思いを抱いていたであろう様子が十分、伝わってきたが、そうは問屋が卸さない。
帰国後にメディア各社が実施した世論調査の結果を見る限り、訪米の“成果”は空振りに終わったとみていいだろう。
毎日新聞が20、21の両日に行った全国世論調査によると、岸田内閣の支持率は3月中旬の前回(17%)から改善して22%となったものの、上昇幅はわずか5ポイントの微増。他の調査結果を見ても、FNNが3ポイント余り、朝日新聞社が4ポイントの上昇で、読売新聞社は前回と変わらずだった。
そして、いずれの調査でも「危険水域」とされる支持率3割台を大きく下回る状況は変わっておらず、逆に不支持率が上昇傾向にあるから岸田も真っ青になっているに違いない。
国民もようやく自民党の正体に気付いた
さらに衝撃的だったのは、世論調査で「政権交代」に対する期待感が国民の間に膨らんでいる実態がうかがえることだ。
毎日が次の衆院選で政権交代してほしいか尋ねたところ、「政権交代してほしい」が62%で、「政権交代してほしくない」は24%。産経新聞とFNNによる同様の質問でも、「政権交代を期待」が52.8%にも達し、「自民党中心の政権の継続を期待」(40.1%)を大きく上回っていた。
相変わらず、野党の支持率は横ばいか微増で伸びていないのだが、それを上回る自民党政権への凄まじい嫌悪感と絶望が広がっている証左だろう。おそらく岸田自民も「政権交代」を望む声が急増している展開にビビりまくっているに違いない。
有権者が岸田自民に愛想を尽かすのも当然だ。
派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題が発覚してから既に5カ月が過ぎようとしているにもかかわらず、何ら実態解明されていないからだ。
「誰が」「いつ」「何のためにキックバックを始めたのか」「裏金化したカネは何に使われたのか」「脱税ではないのか」……等々、多くの国民は今も不信感を抱いている。それなのに裏金自民は政治倫理審査会(政倫審)開催の有無を巡ってゴタゴタし、ようやく開かれたと思いきや、出席した安倍派(清和政策研究会)幹部らは「知らぬ存ぜぬ」。「説明責任を果たす」とは言葉だけで、逃げまくり、党は党でうやむやのまま離党勧告や党員資格停止処分でごまかす。
産経とFNNの調査では、安倍派幹部らに対する処分については「あまり納得できない」「全く納得できない」が計55.0%に達し、岸田自身が処分対象とならなかったことについても、7割近くが「妥当ではない」と回答。自分の政治資金さえも適切、適法に扱えない政治家に血税を扱う資格があるはずがない。もはや国民は岸田自民が政権与党の座にいることに対して明確に「NO」を突きつけ始めているのだ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「保守層読者の多い産経新聞でも政権交代を望む声が強いということに驚きましたが、国民もようやく自民党という政党の正体に気付いたのでしょう。地方、庶民に目を向けるそぶりを見せながら、実際は大企業ばかり優遇し、庶民には大増税。自分たちは裏金をつくり、誰も責任を取らない。庶民の怒りは頂点に達しているのです」
私腹を肥やし国民に増税を強いる与党よりも野党の方がマシ
国民も気づき始めた(C)日刊ゲンダイ
毎日の調査では、裏金事件で安倍派の会長経験者である森元首相に国会で説明するよう求めるべきかどうかを問うたところ、「求めるべきだ」との回答は全体で84%に達し、自民党支持層でも6割強が「求めるべきだ」と答えたという。
森は1998〜2006年に会長を務めていて、複数の派閥幹部が森会長時代に裏金づくりが始まった可能性について言及。共同通信も2005年1〜3月にかけて森派の裏金疑惑を報じており、「議員に配った数億円 森派明細不記載か 1998年-2003年の収支報告書」との見出しがついた記事もある。つまり、森が裏金の経緯を知り得る「キーパーソン」の一人であるのは間違いないだろう。
岸田が裏金事件の解明について「火の玉になって先頭に立つ」というのであれば当然、森を国会に呼んで問いただすべきなのは言うまでもない。ところが岸田は、電話で確認しただけで「シロ」判定だ。22日の衆院予算委で、立憲民主党の岡田幹事長にこのやりとりを問われた岸田は「私の責任で聞き取り調査した。記録はございません」と言い放っていたから何をか言わんや。
誰が聞いても「私がちょっと電話したよ」という程度に過ぎず、一体どこが「聞き取り調査」なのか。岡田が「それで納得する国民がどれだけいるのか」と呆れていたのも当然ではないか。
公明が自問に「NO」を言うのも時間の問題
脱税について問われると「国税当局が」などと言い、自身の処分を問われると「国民と党員が……」とこれまたゴニョゴニョ。岸田の姿勢は一事が万事、この調子で、てんでヤル気がない。
今国会の焦点でもある政治資金規正法の改正でも曖昧な答弁を繰り返し、同じ与党の公明議員から「首相が先頭に立って取り組んでいると言えるのか。覚悟があるならすぐ案を提示すべきだ」などと突き上げられる始末だ。
これでは、公明も岸田自民に「NO」を言い出すのも時間の問題だろう。
衆院3補選で自民は東京15区と長崎3区で不戦敗。島根1区で総力戦を展開しているが、公明の山口代表はきのう(23日)の会見で、自民候補の応援に自身が入る予定はないと明言。「国会の状況などもある」などと説明していたが、他党候補とはいえ、公明も推薦し、その候補が苦戦を伝えられているのだ。それなのに代表が応援に入らないのは異例の対応だ。
全国有数の「保守王国」島根で自民が負ければ補選全敗。最近の世論を見ると、「野党はだらしない」というステレオタイプの意見から、「まっとうな野党を育てる必要がある」との意見も増えている。裏金をつくって私腹を肥やしながら国民に増税を強いる与党よりも野党の方がマシ--との機運がより高まれば、自民下野が現実味を帯びてくるだろう。2009年の衆院選で敗北し、自民が下野した前夜の興奮が蘇るかのようだ。
ジャーナリストの横田一氏がこう言う。
「補選の島根を取材していても、裏金・脱税疑惑に対する有権者の怒りはすさまじいものがあります。保守や革新などと言っている場合ではなく、今の自民に政権与党を任せていたら、どれだけ自分たちの生活が苦しめられるか分からないと、本気で立ち上がり始めたのでしょう」
野党も“期待”に応える義務があるだろう。ふらふらせず、国民に選択肢となる政策を提示し、第2自民党を公言する維新はさっさと切り捨て「本気」の野党で結集する。「受け皿」になる覚悟を決めることだ。
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