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学校という名の強制収容所
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2024年4月 7日 植草一秀の『知られざる真実』
4月4日掲載の教育問題に関するブログ・メルマガ記事に対する反響が大きかったので、さらに考察したい。
「児童の権利に関する条約」は1989年11月20日に第44回国連総会において採択され、日本政府は1990年9月21日に署名、1994年4月22日に国会が批准した。
条約批准を受けて文部科学省は以下の通知を発出した。
1.学校教育及び社会教育を通じ、広く国民の基本的人権尊重の精神が高められるようにするとともに、本条約の趣旨にかんがみ、児童が人格を持った一人の人間として尊重されなければならないことについて広く国民の理解が深められるよう。一層の努力が必要であること。
この点、学校においては、本条約の趣旨を踏まえ、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとり、教育活動全体を通じて基本的人権尊重の精神の徹底を一層図っていくことが大切であること。
また、もとより、学校において児童生徒等に権利及び義務をともに正しく理解をさせることは極めて重要であり、この点に関しても日本国憲法や教育基本法の精神にのっとり、教育活動全体を通じて指導すること。
同条約の根幹は第3条に明記された以下の条文。
第3条
1 児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
児童に関する措置をとるに際して「児童の最善の利益が」主として考慮されなければならないことが明記された。
「義務教育」という言葉が用いられるが、これは「子供が学校に行くことが義務である」ということではない。
「義務教育」とは「保護者が子女に普通教育を受けさせる義務」のことである。
この部分がいまだに広く誤解されている。
憲法が定めているのは保護者が子女に「普通教育」を受けさせる義務。
保護者が子女に「学校教育」を受けさせる義務ではない。
ところが、「学校教育法」が同法の第一条に定める学校=一条校に子女を就学させることを義務付けてしまった。
そのために、保護者は学校教育法第一条に定める学校に子女を就業させる義務を負うことになってしまった。
かつては、学校に登校しない場合、学校は卒業証書を渡さなかった。
ところが、1992年に運用が弾力化されて学校に行かない子供にも卒業証書を渡すようになった。
文部省内で議論があり、有識者会議で議論した結果として1992年に文部省が通知を出した。
このときに「登校拒否」の表現が「不登校」に改められた。
同時に、フリースクールなどに通っている場合でも、在籍している学校での出席として見なすことになった。
弾力運用が行われるようになった。
それでも、出席扱いを認めるフリースクールは「学校復帰を目指す」ことが条件とされた。
学校教育法第一条が定める学校に復帰することが大前提に置かれていた。
この考え方が、2017年施行の「教育機会確保法」でようやく変更された。
不登校の子どもに対する大前提が「社会的な自立に導くこと」に変わった。
その結果として「学校に戻ることが唯一の方法」ではないこととされ、学校に戻すことだけが目標ではなくなった。
2019年の通知でようやく「学校復帰が唯一の前提ではない」ことが明確になった。
「学校に復帰することがすべての前提に置かれる」状況は消滅した。
「学校に行かない」という選択が初めて市民権を獲得したと言ってよい。
世界の潮流は「学校は普通教育を受ける場の一つ」というもの。
学校を否定するものではないが、普通教育を受ける場を学校に限定しない。
「家庭での教育」も正規の普通教育として認める国が多い。
学校教育法第一条に定める学校以外の場も普通教育を受ける場として認めることが必要。
2017年に施行された「教育機会確保法」制定に際して、文部科学省は学校以外にも普通教育を受ける場を設定する原案を提示した。
ところが、与野党が一致してこの提案を葬った。
理由は、学校に行かない選択肢を正規に認めれば、みな学校に行かなくなるというものだった。
その主張の前提に置かれている考え方は「学校は嫌なところ」というもの。
「嫌な学校に子供を強制収容して子供に修練させることが必要」という前提が共有されている。
学校がそのような「強制収容所」であるなら、子供が学校を嫌うのは当たり前だ。
根本的な発想の転換が求められている。
普通教育を受ける場を学校以外にも開放するべきだ。
同時に、学校という場を子供にとって魅力のある場に変えるべきだ。
子供が輝きを失っている。
その最大の原因は「学校という名の強制収容所」にある。
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