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※紙面抜粋
※2024年4月4日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
「岸田裁定」に猛反発(安倍派の世耕弘成前参院幹事長、右奥が岸田首相、鈴木俊一財務相)/(C)日刊ゲンダイ
自民党の薄汚い金権体質をあらわにした裏金事件が火を噴いてから5カ月。内閣支持率も政党支持率も見事にダダ下がり、自民党は政権復帰以降、最大のピンチに立たされている。遠心力に歯止めをかける根治療法は裏金事件の実態解明、それを下地とする再発防止策を講じる以外にない。しかし、そこは自民党のやること。問題を棚上げし、臭いものには徹底的にフタ。4日の党紀委員会で決定する処分をもって裏金事件に幕を引こうとしているのだが、その内容をめぐって大混乱の醜悪をさらしているのだから度し難い。連中は全く反省していない。
党紀委員会の処分対象は、安倍派(清和会)と二階派(志帥会)の裏金議員ら85人のうち、半数に過ぎない39人。派閥幹部および、政治資金収支報告書の不記載額が5年間で「500万円以上」で線引きされた。内訳は安倍派36人、二階派3人。現職トップの裏金3526万円をこさえていた二階俊博元幹事長は政界引退を表明したため、岸田首相は個人の裏金ナシで対象外だ。
処分は8段階ある。いわゆる量刑が最も重いのは安倍派座長の塩谷立元文科相と、参院側をまとめる清風会会長の世耕弘成前参院幹事長で、2番目に重い「離党勧告」となる見通し。通達から10日以内に再審査を請求せず、離党届を提出しなければ最も重い「除名」となる。派閥パーティーの販売ノルマ超過分の取り扱いをめぐり、会長だった安倍元首相が廃止を打ち出した現金還流を復活させる2022年8月の疑惑の謀議に参加したカドだ。同席した当時の事務総長の西村康稔前経産相と事務総長経験者の下村博文元政調会長は3番目の「党員資格停止」、同じく経験者の松野博一前官房長官と高木毅前国対委員長も同程度の処分を受けるとみられている。世耕、西村、松野、高木とともに「安倍派5人衆」と呼ばれて威張り散らし、現職3位の2728万円の裏金をつくっていた萩生田光一前政調会長は6番目の「党役職停止」だというのは腑に落ちない。
道徳を説く文教族の正体
政治資金は非課税だが、議員にわたった裏金は全額が雑所得にあたり、所得税と住民税を課されるべきだと指摘されている。しかし、修正申告して納税したという話はトンと聞かない。領収書をかき集めて帳尻合わせで収支報告書を訂正するか、「不明」「不明」「不明」で押し通してきた。そのくせ、脱税疑惑集団は処分について「軽すぎる」だの「重すぎる」だの、ああでもないこうでもない。不服申し立てをすると息巻くヤカラもいる。朝日新聞(3日付朝刊)はこう書いていた。
〈塩谷氏は離党勧告の見通しが伝えられると、周囲に「真相が分かるまで調べるのが筋だ。早く問題を終わらせようと処分を急いでいる」と不満を漏らした〉
三大義務をマジメに果たしている国民から見れば、盗人どもが何をやっているんだとア然ボー然だ。党内処分なんて仲間内のペナルティーに過ぎず、国会議員の身分を剥奪されるわけではない。
ジャーナリストの青木理氏はこう言う。
「朝日新聞が報じた塩谷発言には呆れ果てました。会長不在の集団指導体制だったとはいえ、派閥を代表する立場にあった。それこそ率先して真相究明にあたるのが筋でしょう。人間、ここまでずうずうしくなれるものか。裏金づくりに手を染め始めたのは元首相の森喜朗会長時代とされますが、脱法的手法を受け入れてきた責任は免れません。森、塩谷、下村、松野、萩生田の各氏は文科行政トップの大臣経験者。こんな卑劣な面々が道徳を説き、愛国心をたきつけてきたのですから、文教族の程度が知れる。衆院の選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変わった結果、党本部がカネも公認権も握るようになり、派閥の親分がカネをかき集めて子分の面倒を見る文化が廃れた。そうしたパラダイムシフトに森氏はうまく乗っかり、上納によって忠誠心を競わせ、人事で処遇するシステムを作り上げたのではないか。だとしたら、政治屋としては天才的なものがある。他方、政治家をさもしくさせ、自民党はコメツキバッタばかりになった」
「キングオブ老害」として歴史に名を
「政治改革特別委員会」の設置で与野党合意(C)共同通信社
「自民党はもうオシマイ」と国民が匙を投げるのはもっともだ。しかしながら、疑惑のド真ん中にいる森に悪びれた様子はないという。
「もともと清和会のパー券は大して売れず、総理就任前の森会長時代もサッパリだった。1999年の政治資金規正法改正(2000年施行)で政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金が禁止されて弱っていたところに、小泉政権が誕生し、大フィーバーが起き、〈小泉総理に一目会いたい〉というミーハーな理由でパー券が買われるようになった。そこに目を付けたのが森さんで、本人の意識は主導ではなく、あくまで発案なのです。だから、党が自分を聴取するなら、小泉元首相や福田元首相にも聞けという話になっているようです」(与党関係者)
キングメーカー気取りの成れの果ては、キングオブ老害。この際、自民党を再び下野に追い込んだ張本人として、歴史に名を刻んでほしいものだ。
それにしても自民党というのは、岸田を筆頭に誰も彼もが延命しか考えていない。世論から乖離した我利我利亡者の集まりなのがよく分かる。だから、実態解明を求める声はトコトン無視。政治資金規正法改正の音頭を取る厚顔無恥をやってのけるのだ。
「令和の政治改革」の温度
与野党は衆参両院に「政治改革特別委員会」を今月中に設けることで合意。
衆院では既存の「政治倫理・公選法特別委員会」(倫選特)を改組し、各会派から40人の議員が参加する予定なのだが、自民党側は倫選特委員長である自民の石田真敏議員のスライドを要望。裏金事件の真相究明をめぐる議論も嫌がっている。組織的に違法行為をしていた自覚の欠如、選良に求められる責任感の欠落、品性を疑われる恥知らず。どこまでも身勝手な連中がザル法を改正しようなんてマンガだ。「平成の政治改革」を引っ張り出すまでもなく、ドロボーに縄をなわせるようなもの。関わる資格はない。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう指摘する。
「自民党がやっていることは法治主義の破壊です。自分たちを国会に送った法制度を平然と踏みにじっている。存在の正統性を否定する愚かさに気づかず、国民におわびする気持ちもさらさらない。民主主義社会に欠かせない政権交代をしないこの国は、独裁主義に向かう分水嶺に立っています。自民党議員は裏金の有無にかかわらず、一人残らず辞職し、国民の審判を仰がなければはじまりません。主権者国民に対する責任の取り方は辞職しかあり得ない。それが『令和の政治改革』を議論する最低限の土台です。さもなければ、また自分たちに都合の良い抜け穴を残すでしょう。そもそも、国会議員の手足を縛る法案作成を当事者に委ねるのが適当なのか。市民の視点を取り込んだ第三者による審議会を設置し、そこで法案をまとめ、国会審議にかけるやり方を検討する時期にきています」
世論は岸田自民党を見放している。だがしかし、ぬるま湯に甘んじている野党に政権を担う覚悟があるのか。国民は見ている。
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