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金融政策正常化が正当である理由
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2024年3月27日 植草一秀の『知られざる真実』
日銀の政策修正は正当。
遅きに失したというのが実態だ。
2013年春以降、「インフレ誘導」の旗が振られ、インフレが進行することが良いことであるかの風説が流布されてきたが正しくない。
不幸中の幸いでインフレ誘導は失敗に終わったが、インフレ推進政策は正しいものでない。
インフレ進行は国民生活に打撃を与える。
企業と政府はインフレ進行を歓迎するが、これは企業と政府がインフレから利益を得るから。
逆に消費者・労働者・預金者はインフレで損失を蒙る。
一般国民の立場に立てばインフレ進行は悪事である。
インフレ率がマイナスと小幅プラスのどちらが望ましいかと言えば、小幅プラスの状態で安定するなら小幅上昇が望ましいとは言える。
相対価格の調整が円滑に実現するからだ。
資源配分の効率を高めるには相対価格の調整が進む方が好ましい。
これが、小幅プラスインフレ率が望ましい理由。
これ以上の理由はない。
どうしてもプラスのインフレ率にしなければならないというものではない。
インフレの利害得失でいえば、インフレは政府と企業に利益を与え、デフレは労働者・預金者に利益を与える。
2022年から23年にかけて日本のインフレ率は4%を超えた。
これは完全に許容範囲を超える。
したがって、日銀はインフレ抑止に基軸を移す必要がある。
2023年、日銀は低いインフレ見通しを発表してインフレ推進政策を実行した。
2023年度の生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価上昇率を日銀は次のように予測してきた。
2023年1月レポート +1.8%
2023年7月レポート +3.2%
2023年12月レポート +3.8%
実績としての2023年の生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価上昇率は+4.0%だった。
日銀は甘すぎるインフレ予測を立てて、その甘いインフレ予測に基づいてインフレ推進の政策を実行した。
2023年に日銀総裁が黒田東彦氏から植田和男氏に代わり、ようやく、日銀はインフレ見通しの誤りを認めた。
その上で、政策修正に動いたのである。
日銀法第2条に金融調節の理念が定められている。
日本銀行法
第2条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ことが金融調節の理念である。
その物価安定が損なわれたのであるから政策を修正するのは当然のこと。
インフレが与える影響を分かりやすい例で考える。
年収500万円・預金500万円の個人と年収500万円・借金500万円の個人を想定する。
物価が10倍になると年収は連動して5000万円になるが預金と借金の500万円は不変。
物価が10倍になると年収1年分だった預金と借金がいずれも年収の0.1年分になる。
預金者は損失を蒙り、債務者は利益を得る。
また、賃金の変動が遅れる間、インフレ進行は実質賃金を減少させ、労働者に損失を、企業に利益を与える。
日本一の借金王は日本政府。
日本政府は激しいインフレの発生を熱望している。
安倍内閣の下で財務省は日銀の実権を握った。
この下でインフレ誘導を展開した。
その政策がようやく修正されつつある。
日銀の政策修正は正当であり、この政策運営の下で日本のインフレが抑止されることが望ましい。
多額の借金を抱える者はインフレを待望する。
日銀のインフレ誘導政策を熱烈支援する者の多くが多額の債務を抱える者であることを知っておく必要がある。
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