http://www.asyura2.com/24/senkyo293/msg/615.html
Tweet |
2024年3月13日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/314837
確定申告期限の3月15日まで、あと2日。自民党派閥パーティー券事件への風当たりは弱まらず、共同通信世論調査では、裏金を受け取った議員に税務調査を求める声が94.5%に達した。くしくも31年前の確定申告期間内には、金丸信前副総裁(当時)が脱税の疑いで逮捕されている。時効直前、政界に激震が走った捜査はどのように行われたのか。歴史をひもとき、いま見えてくることは。(西田直晃、岸本拓也)
◆「5億円と20万円はつり合わない」
金丸氏を東京地検特捜部が逮捕したのは1993年3月6日。翌7日の東京新聞には〈地検、執念の大逆転打〉〈綿密な税務捜査実る〉の大見出しが躍った。なぜか。
前年の92年8月、金丸氏が東京佐川急便から5億円の闇献金を受けていた事実が発覚。当時は今のように政治家個人への献金は禁止されておらず、政治資金規正法違反(量的制限)の罪で略式起訴され、罰金20万円の略式命令で捜査は終結した。
出頭を拒否した本人の事情聴取は見送られ、献金受領の事実を認める上申書が提出されただけだった。政界の実力者だった金丸氏は議員辞職したものの、「5億円と20万円はつり合わない」と世論の批判が高まった。
元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は「上申書で済ませた検察の捜査手法に批判が集中した。国民の反発は大きかった」と解説する。
◆ペンキが投げ付けられた「検察庁」
その年の9月には、検察への抗議として、東京・霞が関の検察合同庁舎にペンキが入った瓶を男が投げ付ける騒ぎも起きた(器物損壊容疑で逮捕)。「検察庁の石銘板が汚され、何も思わない検事はいなかっただろう」(高井氏)。捜査手法を巡って検察内部にも反発が巻き起こった。
そんな中の、急転直下の逮捕劇。特捜部と国税庁は5億円の闇献金とは別に、政治資金を流用した割引債が金丸氏個人に帰属していると突き止め、不正蓄財に該当すると判断した。隠し所得の総額は十数億円に達していた。
「時効が迫っていればどの事件でも同じだが、起訴のタイミングを逆算した上での着手だった」と高井氏。87、89年の2年分の収入を過少申告した所得税法違反容疑での逮捕だったが、87年分の時効成立を避けるには1週間後の13日までに処分する必要があった。ぎりぎりの日程で、その日に起訴に持ち込んだ。
◆金の延べ棒や多額の債券が…
地道な税務調査を続けていた国税庁と連携し、特捜部は金丸氏と、ともに逮捕された秘書の自白を得た。ところが、脱税事件に必要不可欠な証拠となる「たまり」と呼ばれる隠匿資金が発見されたのは、逮捕後の家宅捜索の段階だった。
事件を取材したジャーナリスト伊藤博敏氏は「(不正蓄財とされた)金の延べ棒や多額の債券があったのは、捜査員が初めに捜索した部屋と別の場所。『そんなことも知らずに入っていたのか』と驚いた記憶がある」と振り返る。
金丸氏は自身の初公判で「私や政治団体の活動のための政治資金。債券購入はこの資金保管のためで、蓄えてきた目的は政界再編などに備えるため」と全面無罪を主張。一審判決が出る前の96年3月に病死した。ともに逮捕された秘書は有罪判決が確定した。
金丸氏を巡る一連の事件は国民の政治不信を膨らませ、逮捕から約4カ月後の総選挙で自民党は単独過半数割れ。結果として非自民連立政権誕生の呼び水となった。
◆今回の「自民パー券裏金問題」も立件は難しいか
しかし、金丸氏の事件の前後をみても、政治家が脱税に問われることはほとんどない。
日本大の岩井奉信名誉教授(政治学)は「日本では、政治資金は基本的に非課税という前提があり、国の介入に対して『政治活動の自由を阻害する』と殊更に批判される。税務当局も後々の(政治家からの)報復を恐れて臆するところがあるのだろう。金丸氏の事件は例外中の例外だ」と指摘する。
今回の自民党派閥のパーティー券収入からキックバック(還流)された裏金を巡っても、脱税での立件は難しいと見る向きは多い。
政治資金の税法上の扱いでは、還流資金の帰属が政治団体であれば非課税だが、議員個人であれば所得税の課税対象となる。特捜部は、還流資金の帰属先を各議員の政治団体と判断し、脱税に問うハードルは上がった。
元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は「検察は、政治資金収支報告書に記載しない前提で議員に渡った金について、政治団体の収入ではなく、(課税対象となる)個人所得だと追及しなければならなかった」と指摘する。「そうすれば、金額の基準的に脱税での立件は難しくても、国税と連携して裏金議員への追徴課税は行えた」
◆1966年「黒い霧事件」では国会議員203人修正申告させたが
先の岩井氏も「裏金は不正な所得であり、本来は課税対象となるべきもの」と強調。「最終的に政治資金収支報告書の訂正が認められたために、裏金が(政治活動のための)表金になってしまった。無条件で訂正を認める現在の制度欠陥をふさぎ、政治資金を監督する第三者組織が必要だ」と説く。
国会では、裏金議員への税務調査と追加納税を求める声が根強い。2月22日の衆院予算委員会で大西健介氏(立憲民主党)は、閣僚や自民議員の不祥事が相次いだ1966年の「黒い霧事件」で国税庁が国会議員を調べ、申告漏れのあった203人の修正申告、更正決定をしたことを紹介。今回も税務調査して追加納税させる必要があると主張したが、鈴木俊一財務相は「課税上、問題があるかどうかは国税庁が独立的に判断する」と答えるにとどめた。
60年代には国会で国会議員の申告状況などが明らかにされたが、今回はどうか。裏金を受け取った議員は確定申告したのか、国税庁は税務調査しているのか。あらためて国税庁に聞いたが、担当者は「個別の事柄については、お答えを差し控える」と話した。
◆確定申告締め切りまで2日、納税者のモヤモヤは…
15日の確定申告の締め切りまで2日。納税者のもやもやは晴れない中、「特捜部は、政治資金パーティー以外の捜査を何かをやろうとしているのでは」と語るのは、元東京地検特捜部副部長を務めた元衆院議員の若狭勝弁護士だ。
今回特捜部が立件した政治資金規正法の虚偽記載について「検察にとって、たとえば贈収賄での立件が『金メダル』だとすると、形式犯の虚偽記載はせいぜい『銅メダル』だ。にもかかわらず、忙しい年末年始に全国の検事に応援を求めて捜査していた。銅メダルにかける力の入れようではない」と指摘する。
「少なくとも特捜部は、議員の金の動きを緻密に把握している。もし帳簿や銀行口座の動きから、大きな金額の脱税が見つかるとなれば、刑事事件でやってもおかしくない」とし、こう続ける。
「検察も、国民からの評価は意識している。『金メダル』につながる捜査ができるのか、大山鳴動して何もない失態で終わるのか。すべて終わったと決め付けるのは時期尚早ではないか」
◆デスクメモ
国の2022年度の税収は71兆円を超え、3年連続過去最高。好景気が実感できない中、その税の使途を決める議員の聖域が発覚し、国民の怒りに火が付いた。連座制や透明性の確保程度の改革で済むのか。時代の変化は「政治資金は非課税」という大前提の再考も求めているのでは。(本)
【関連記事】億単位の裏金がバレても「政治資金」で届けたらOK 庶民なら「脱税」なのに…現行ルールのガバガバ具合
【関連記事】「納税ばからしくなる」怒りが充満する確定申告会場 自民裏金議員との「信じられないほどの不公平」
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK293掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK293掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。