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2024年3月5日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/313099
先月末に閣議決定された経済安保の保護法案は「特定秘密保護法の拡大版」と危惧される。秘匿する情報の範囲を経済分野にも広げ、漏洩(ろうえい)した場合などに処罰を下す中身になっている。この法案、保守色の濃い議員に加え、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)系の団体が推してきた「スパイ防止法」と相通じるとも指摘される。法案の背後にある政権の思惑とは。相似形をどう描くのか。(岸本拓也、曽田晋太郎)
◆「成立へ全力」前のめりな高市早苗氏
「法律案は、日本の経済安全保障のさらなる強化のために非常に重要だ。成立に向けて全力を尽くす」
法案の閣議決定と国会提出があった先月27日。所管する高市早苗経済安保担当相は、記者会見で前のめりな姿勢を隠さなかった。
今回の「重要経済安保情報保護・活用法案」は、防衛・外交・スパイ防止・テロ防止の4分野の情報保全を目的にした2014年施行の特定秘密保護法の仕組みを拡大する趣旨だ。
国が保有する経済分野の情報のうち、他国に流出すると安全保障に支障が出る恐れがある分を、所管省庁が「重要経済安保情報」に指定する。この情報を扱う人物を限定するため、民間人を含めて国が事前に調べて認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度も導入する。漏洩した場合には5年以下の拘禁刑などを科す。
◆「本当の狙いは対中国」親中的な人を排除?
日本は主要7カ国(G7)で唯一、経済安保の適性評価制度がなく、日本企業が国際的な共同開発などに参加できないこともあったという。適性評価の導入で「同じスタートラインに立ってビジネスができる」(高市氏)と期待する。その適性評価は、対象者の同意を前提に犯罪歴や飲酒の節度、借金の状況などを調べ、秘密を守ることができる人物か確認する。
今回の法案の成立後、秘密を守る仕組みを持つ国々の輪に入り、経済分野の機密情報を企業間などで共有、活用する—という意図が語られるようだが、ジャーナリストの斎藤貴男氏は「本当の狙いは対中国であることは明白」とみる。
半導体やその材料の輸出規制強化で米中の対立が深まる中で「日本も米国と一体となり、軍事に転用されそうな民間技術や半導体などのサプライチェーンから中国を排除する動きの一環」と説き、こう懸念する。
「適性評価が恣意(しい)的に運用されれば、中国と関わりがある、もしくは親中的な考えのある人をあぶり出し、排除することが許されてしまう。思想信条の自由を妨げるだけでなく、企業がそうした人を採用から排除する『就職差別』にもつながりかねない」
ただ、どんな情報が秘匿の対象として指定されるのか、肝心の運用基準は曖昧なままだ。冒頭の会見で高市氏は具体例や想定件数について「分からない」と繰り返した。
一方、適性評価が既に導入されている特定秘密保護法では、秘密を取り扱う人は約13万人おり、うち97%が公務員だ。しかし経済安保の適性評価は、民間人も幅広く対象となりうる。
東北大の井原聡名誉教授(科学技術史)は「基幹インフラをはじめ半導体や原子力、人工知能(AI)、宇宙、海洋、量子など、軍事転用が可能な先端分野を含め、対象者は数十万人規模になるのでは」と指摘。政府との共同研究の名の下に「幅広い分野の研究成果やベンチャー企業のユニークな技術が防衛目的以外に使えなくなる恐れがある。適性評価を通じた研究者の色分けや企業の国家統制にも道を開く」と危ぶむ。
◆最高刑は死刑だったスパイ防止法、旗振り役は
今回の法案は、産業スパイによる情報流出を警戒する名目で、適性評価と称した監視、さらに罰則を盛り込んだようにも思える。そんな中で頭をよぎるのが「スパイ防止法」だ。
自民党は1985年に関係法案を国会に提出。防衛や外交に関する機密情報を国家秘密と定義し、外国に漏らすなど違反した場合の最高刑は死刑とした。
スパイ防止法の旗振り役となったのが、岸信介氏。57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けていた。84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると会長に就いた。
スパイ防止法を求めたのは、旧統一教会系の政治団体「国際勝共連合」もだ。会長は79年にできた「スパイ防止法制定促進国民会議」の発起人に名を連ねた。勝共連合の機関紙「思想新聞」では何度となくスパイ防止法の制定を主張。岸氏の孫、安倍晋三氏が首相に就くと、北朝鮮のミサイル発射や中国の軍拡などを背景に国内でのスパイ活動が活発化しているとし「制定急げ」と論陣を張った。
ジャーナリストの鈴木エイト氏は「勝共連合は反共産主義を掲げる団体。冷戦時代における旧ソ連の脅威から日本を守るとし、米国からの法整備の要請も背景にスパイ防止法制定を一貫して訴えてきた」と語る。「冷戦後も諦めていないのは、その主張に呼応する保守政治家との連携が念頭にあるのかもしれない」
80年代のスパイ防止法は世論や野党の反発に加え、自民党内にも慎重論があり、日の目を見ることはなかった。とはいえ最近でも、スパイ防止法に言及する議員はいる。
例えば今回の法案の所管大臣である高市氏。自民の政調会長だった2022年、テレビ番組で「スパイ防止法に近いものを経済安保推進法に入れ込んでいくことが大事だ」と発言している。日本維新の会の馬場伸幸代表も国会で質問に立った際、岸田文雄首相に制定への見解を求めた。
保守色の濃い面々が推してきたスパイ防止法。情報流出を念頭に置く以外に今回の法案との共通点をどう考えるべきか。名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は「公権力からの監視が強まり、プライバシー侵害の危険性も高まる。背景に米国の要請があるのも共通する」と説く。
今回の法案は「経済活動に関する規制」と語る一方、これを端緒に今後、スパイ防止を名目にして監視や罰則の強化に拍車がかかることも危惧する。
「幸福追求権が脅かされ、戦前のようになりかねない危険性がある」
◆現行法では本当に間に合わないのか
日弁連で秘密保護法・共謀罪法対策本部副本部長を務める岩村智文弁護士も「政府は防衛費増など、日本の軍事化を進めている」と指摘した上、今回の法案が「情報規制し、国民全体を監視する流れにつながる。問題意識を持たないとまずい」と訴える。
「特定秘密保護法からの切れ目のない統制につながりかねない。経済安保の概念も不明瞭で、農業などを含め将来、政府の都合のいいように次々に統制が広がる可能性は十分ある」
経済分野での情報流出を防ぐという点に関しては「不正競争防止法など現行法では間に合わないのか議論されていない。労働者の人権や労働権、中小企業の経済活動への影響などについて、国会で細かく議論する必要がある」と断じる。
その上で立憲民主党に言葉を向ける。2年前の経済安保推進法案の採決で賛成に回ったが「特定秘密保護法の時のように腰を据えて与党に対峙(たいじ)するかどうかに懸かっている」と訴える。
◆デスクメモ
世間の目は裏金疑惑に向くが、経済安保の保護法案も重要だ。市民生活に多大な影響が及びうる。身辺調査を通じた監視。「日本経済を守る」と言えば聞こえがいいが、文中にあるように国家統制が強まる危惧が。私たちが他に気を取られていると、国の思うツボになりかねない。(榊)
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