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※紙面抜粋
※2024年2月2日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
安倍派最後の総会(あいさつする塩谷座長と5人衆=奥)/(C)日刊ゲンダイ
派閥ぐるみでパーティー券収入をチョロマカし、裏金づくりに励んできた安倍派(清和政策研究会)が1日、最後の議員総会を開催。政治活動の停止を決めた。塩谷座長は冒頭、「歴史ある清和研を閉じなければならないのは断腸の思いだ」と話したが、それだけのことをやらかしたのだから仕方ない。
出席した議員からは、幹部の責任を問う声も上がったというが、結論には至らず、最後に塩谷が「誠にありがとうございました!」と締めくくっても拍手はまばらで盛り上がりに欠けた。
今後の解散手続きは、塩谷や「5人衆」と呼ばれる幹部ら15人の常任幹事会を中心とした「清算管理委員会」を立ち上げて進めることになった。派内に残った資金は公的機関に寄付する方針というが、そこにはせっせと貯め込んだ裏金も含まれているのではないか。そうだとしたら、寄付される側は素直に喜べないかもしれない。
「安倍派に所属していた衆院議員は今後、当選期数ごとに連絡を取り合うことになった。参院の方は5人衆のひとり、世耕前参院幹事長が『自分が仕切る』と言い出し、これからも仲よくしようね、みたいな雰囲気で終わった。悲愴感を漂わせていたのは、スケープゴートになって詰め腹を切らされそうな塩谷座長だけで、他の幹部はあまり責任を感じていないように見えました」(参加した安倍派議員)
安倍派幹部は、事実上のトップだからと塩谷に責任を押し付け、5人衆は生き残りをはかろうと画策している。塩谷が派閥会長に就任しようとした時はさんざん邪魔したくせに、こんな時だけ最高責任者扱いするのだからあさましい。だが、次期衆院選ではどのみち落選濃厚な塩谷ひとりが議員辞職したところで、何の意味があるのか。
訂正は裏金のマネーロンダリング
安倍派は、裏金事件で東京地検特捜部が刑事処分を出した19日から10日以上も経った1月31日になって、ようやく政治資金収支報告書の訂正を総務省に届け出た。
過去5年間で6億7654万円の不記載があり、裏金を受け取っていたのは現職・元職合わせて95人に上るという。所属議員のほとんどだ。
もっとも、安倍派が収支報告書を訂正したのは過去3年分だけで、実態解明にはほど遠い。
3年分の訂正額が大きかったのは、逮捕・起訴された池田佳隆衆院議員の3208万円、在宅起訴された大野泰正参院議員の3146万円、略式起訴され議員辞職した谷川弥一前衆院議員の2303万円、萩生田光一前政調会長の1952万円、三ツ林裕巳衆院議員の1808万円など。三ツ林は過去5年間では2954万円のキックバックを受けたと発表。立件ラインの3000万円ギリギリ。あと23枚、パー券を売ってたらアウトだった。
「裏金の金額を公表しても、何に使ったのかという明確な説明は誰もしていない。『政治活動』という言葉でゴマカしています。収支報告書を訂正して、政治団体の政治資金として処理すれば裏金のマネーロンダリングを許すことになる。訂正だけで終わらせていいはずがありません。裏金議員は議員辞職しない、自民党執行部も裏金議員を除名処分にしないとなれば、国会の予算委員会で証人喚問するなどして、裏金の使い道を徹底的に明らかにする必要がある。野党には頑張ってもらわなければならないし、派閥の解散程度で国民の政治への信頼が戻ると思っているとしたら、自民党も岸田首相も認識が甘すぎます」(政治評論家・本澤二郎氏)
市民団体が安倍派議員10人を「脱税」で告発
自民党は2日から裏金事件の関係議員の聞き取り調査を始める。まずは安倍派と二階派の現職議員を対象に、森山総務会長、渡海政調会長、小渕選対委員長、梶山幹事長代行、松山参院幹事長、福岡参院政策審議会長の6人が3チームに分かれて聞き取りを実施するというが、身内のお手盛り調査では、実態解明なんてできっこない。アリバイづくりで終わるのは見えている。旧統一教会との癒着問題と同じで、“やってるフリ”の調査だけして、国民が忘れるのを待つ算段だ。問題の根本解決を考えているわけではない。
そんな中、新たな動きがあった。市民団体「自民党ウラガネ・脱税を許さない会」が1日、安倍派の「5人衆」ら幹部7人と、政治資金規正法違反の罪で立件された3人の計10人を所得税法違反(脱税)の疑いで東京地検に告発状を提出。記者会見を開いたのだ。
告発状によれば、裏金問題は<全員「小物」「雑魚」の類で政治資金規正法違反の事件としては終結した>が、<本告発は、派閥ではなく、派閥に所属する各議員のキックバック、脱税に焦点をあてた>という。
非課税の政治資金として扱われるためには収支報告書の作成が必須だが、キックバックを不記載にして裏金化し、使途も不明な以上は政治資金ではない。裏金議員は正当な理由もなく所得税の課税を免れたというわけだ。
呼びかけ人のひとりである立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「国民の代表である国会議員、特に国務大臣など要職経験者は一般国民より高い倫理観が求められる。それなのに、真逆のことをしていたのが裏金議員たちです。問題が発覚しなければ、ずっと隠していたのでしょう。国民は厳しく税金を取られるのに、裏金3000万円以下は罰せられないというのは、検察も自民党の国会議員に甘すぎる。『永田町の常識は世間の非常識』と言われますが、それが政治不信を招いているのです。説明責任も果たさない政治家には退場してもらうしかない。政治資金規正法で立件できなかったのなら、脱税容疑で取り締まるよう有権者が声を上げる必要があります」
「政治とカネ」で自民党政権は崩壊
3000万円の手取り収入を得るには、額面で約5500万円を稼ぐ必要がある。逆に、3000万円の収入なら手取りは1800万円程度だ。それを自民党議員は3000万円手にしたらまるまるポッケに入れ、好き勝手に使っていた。
まもなく確定申告のシーズンだが、零細事業者はインボイスで徹底的に徴税される。必死で納税している国民の怒りは今後ますます高まっていくのではないか。かつての「金丸事件」と同じ展開になる予感がする。
1992年、自民党の金丸信副総裁に5億円の闇献金が発覚。この政治資金規正法違反がわずか20万円の罰金刑で決着したことに世論の怒りが沸騰し、東京地検の看板にペンキがかけられる騒ぎになった。金丸自身も議員辞職に追い込まれ、翌年には巨額の脱税で逮捕された。
忘れてはならないのは、当時の金権政治への批判が、93年の自民党政権崩壊につながったことだ。
くしくも当時の首相は宏池会の宮沢喜一。宮沢が「やる」と約束した政治改革関連法案を廃案にしたことへの反発から、自民党内からも造反が出て、野党が出した内閣不信任決議案が可決。宮沢は解散・総選挙を選んだが、自民党は過半数を割り込み、自民を飛び出た新党さきがけ、新生党などと日本新党の保守3新党が躍進。細川護煕を首班とする非自民連立政権が誕生した。
岸田内閣は、宮沢以来30年ぶりの宏池会政権である。「政治とカネ」の問題が政権を揺るがし、「政治改革」がさかんに叫ばれているところも当時と似ている。
「国民の怒りの声が高まれば、検察も動かざるを得ないかもしれない。ただ、当時と違うのは、自民党内に党を割るエネルギーもないことです。それでも野党が一致団結すれば、国民の支持を得て政権交代の可能性がある。それほど政治とカネに対する国民の目は厳しい。この期に及んで裏金事件を『重く受け止める』と言うだけで、真相解明に後ろ向きな岸田首相が自民党下野の戦犯になっても不思議はありません」(金子勝氏=前出)
国民の怒りを甘く見ていたら、岸田政権は自民党もろとも沈むだけだ。
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