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2次避難を妨害する行政対応
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2024年1月26日 植草一秀の『知られざる真実』
能登半島地震の被災者の多数が避難生活を余儀なく迫られている。
いまも1万人以上の被災者が避難生活を強いられている。
NHK報道によると13の市と町にある300箇所余りの避難所のうち、自治体でない地域の人たちがみずから運営する「自主避難所」が半数余りにのぼるとのこと。
被災地から離れた宿泊施設等に避難する2次避難所、中途の1.5次避難所に避難している被災者が約3600名いる。
2次避難所のキャパシティーとしては3万人程度の枠が確保されているとされるが、実際に2次避難している人は3300人にとどまる。
被災者に対するNHKのインタビューでは行政対応の杜撰さが浮かび上がる。
原則として3食の食事提供付きだが、施設によっては食事が提供されない。
また、自家用車での移動の場合に駐車スペースが自己負担になるケースがある。
行政に2次避難を希望しても県内で食事付き施設を提供できないと断られたとの声が紹介されている。
また、県外の施設に2次避難しても期間が1ヵ月に限られるとの通告を受けたとの声も明らかにされている。
これで2次避難が進むわけがない。
行政が対応して3食の提供と駐車スペースの保証を行うべきだ。
また、被災地での住環境が整えられる見通しが立たない状況で避難期間を1ヵ月に限定したのでは2次避難しないのが当然と思われる。
行政当局の避難所ではない自主避難所に避難している者が多いのは、行政避難所の住環境が劣悪であることが背景。
自主避難所に対する行政のケアが遅れ、不十分である。
それにもかかわらず、自主避難所での避難を続けるのは、行政避難所の環境が劣悪なためだ。
被災者の命と健康を守るには被災地から少し離れた場所に2次避難するのが適正である。
被災して家財を失った被災者の経済事情は深刻である。
2次避難所で食事の提供がなければ2次避難を選択することは不可能。
行政が弁当業者を活用して3食の弁当を届けることは十分に可能。
それすら実行しない政府は被災者の救援に尽力していないということになる。
宿泊施設提供事業者には1人1泊1万円の支払いが行われる。
通常の料金体系、稼働率を踏まえれば、事業者にとってメリットは極めて大きい。
それでも食事提供が難しい場合は、行政当局が弁当の配給を実施すればよい。
いま、何よりも優先されるべきことは被災者救援である。
ところが、何を血迷ったのか、岸田首相が北陸4県の旅行支援を打ち出した。
1人1泊2万円の利益供与を行うとの発表。
補助率は5割になると考えられる。
上限いっぱいの2万円の利益供与を受けるには、1人1泊4万円の宿に泊まることが必要になる。
Gotoトラブル(トラベル)事業の際に、1人1泊2万円の補助では高級旅館に需要が集中するとの批判が生じたことを忘れたのか。
当該地域の高級旅館では1月の宿泊料金が1人1泊3万円だったのに、3月、4月の料金を急遽、1人1泊5万円に書き換えた旅館もある。
人気旅館で1人1泊3万円の料金で満室が予想できるから、料金を1泊5万円に引き上げた方が得だとの計算である。
旅行支援を受ければ本人負担は1人1泊3万円になる。
過去の旅行支援では割引後の旅行者負担が上がらない範囲で、宿泊料金を大幅に釣り上げた旅館が数多く観察されている。
結局は地域の有力な高級旅館への利益供与なのだ。
石川県金沢市などでは行政、企業、メディアの来訪者が殺到して、ホテルの宿泊料金が震災前の3〜5倍に跳ね上がっている。
このような宿泊施設では、2次避難所に客室を提供して1人1泊1万円を受領するよりも、一般宿泊客を受け入れた方が、利益が拡大するため、2次避難を受け入れない宿泊施設も多く見られる。
こんな状況のどこに被災者救援の行政姿勢があると言えるのか。
旅行支援を実施すれば、大多数の宿泊施設は旅行支援客獲得に向けて争奪戦を展開する。
2次避難者などは邪魔者扱いされるに違いない。
しかも、能登半島全体は旅行支援の対象から外される。
旅行支援を喜ぶのは高級旅館とお金と暇を持て余した富裕層だけだ。
いまは被災者無視の旅行支援などを実施するべき時期でない。
施策の中止を速やかに決定するべきだ。
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