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暴走続くトランプ政権、表舞台には決して出なかった首席補佐官がテレビの単独インタビューに応じて強調したこと/JBpress
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松本 方哉 によるストーリー
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E6%9A%B4%E8%B5%B0%E7%B6%9A%E3%81%8F%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E6%94%BF%E6%A8%A9-%E8%A1%A8%E8%88%9E%E5%8F%B0%E3%81%AB%E3%81%AF%E6%B1%BA%E3%81%97%E3%81%A6%E5%87%BA%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E9%A6%96%E5%B8%AD%E8%A3%9C%E4%BD%90%E5%AE%98%E3%81%8C%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%81%AE%E5%8D%98%E7%8B%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%81%AB%E5%BF%9C%E3%81%98%E3%81%A6%E5%BC%B7%E8%AA%BF%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%93%E3%81%A8/ar-AA1CHWFT?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=481bff9c22da4172b78ed1c0cfda89f8&ei=11
“猛獣使い”の首席補佐官就任に「恐怖を感じていた」
「私の目標はホワイトハウス内で、世界にとって大きな決断を下す人たちを快適で幸せな気持ちにすることです」
3月30日、FOXニュースで放送された単独インタビューでこう述べたのは、アメリカの政治史において女性初の大統領首席補佐官となったスージー・ワイルズ氏だ。独断専行で予測不能な行動に出るトランプ大統領とその周辺を政治的な勝利に持ちびくために日々を戦う、いわば“猛獣使い”である。
ワイルズ氏はインタビュー冒頭から、超大国アメリカの大統領の首席補佐官であるという重責への緊張感を隠さなかった。
「(首席補佐官を務めることに)少しも恐怖を感じなかったと言う人がいたら、人間ではありません」
こう笑うワイルズ氏だが、「私たちはあまり時間がないと認識して仕事をスタートしました。今はまさにトランプ大統領の計画を達成するために大変な苦労をしています」と話し、トランプ2.0政権が早くも正念場を迎えていることをうかがわせる興味深いインタビューとなった。
インタビュアーとなったのは、共和党全国委員会の共同議長を務め、トランプ大統領の次男であるエリック・トランプ氏の妻でもあるララ・トランプ氏だ。彼女はさる2月からFOXニュースで新番組のキャスターを務めている。
ララ・トランプ氏が「初めてのインタビューに感謝する」と述べると、ワイルズ氏は「最初で、おそらく唯一の私へのインタビューになると思うわ」と応じた。もちろんこれは自分がトランプ政権を辞める未来を見据えての発言ではない。ワイルズ氏は、常にトランプ氏の影に立ち、単独インタビューには一切応じないことで知られている。
トランプ氏が大統領に返り咲いた時も、「何か一言挨拶してくれ」と促されても笑顔を見せてトランプ氏と握手しただけで、挨拶は固辞した。トランプ氏との距離の近さを記者たちに見せびらかしたがる人間が多いトランプワールドでは稀有な存在と言える。
筆者がワイルズ氏の単独インタビューを見たのは、9年前の2016年のABC放送の単独インタビュー以来で、彼女がトランプ政権の操縦法を自らテレビカメラの前で明かすのは異例中の異例と言える。それを政権70日余りの段階で見るとは正直思ってもいなかった。
ワイルズ氏が明言したトランプ2.0の「政治的な時間感覚」
ワイルズ氏は、2015年にトランプ氏から電話をもらって以来、トランプ陣営の選挙対策本部長を務め、2020年の大統領選挙でバイデン氏に敗北した後も、トランプ氏の相談役を務め続けた。
そして2024年に再選したトランプ氏は「彼女と偉大な勝利を得た。彼女はまさに世界で最も力のある女性だ」とワイルズ氏の手腕を称賛し、「ice maiden(氷の乙女)」と名付けて2期目の政権の最大の要である首席補佐官に任命した。
今回のワイルズ氏のインタビュー発言で注目すべきは、「ここからは100日、6カ月、1年半(18カ月)がわれわれの仕事のベンチマークとなります」と、トランプ2.0政権における政治的な時間感覚について明言した点だ。
トランプ氏が再選した2期目は2029年1月まで「4年(48カ月)の任期」がある中で、まず来年2026年11月の中間選挙までの「18カ月間」を政権運営上の成功達成の目標に据える意志を示したわけだ。中間選挙で上下両院での共和党の完全勝利をターゲットにする考えを明確に打ち出したものと言える。
ちなみに「100日」という数字は、アメリカ政治では通例「マスコミとの蜜月期間」を意味する。政権発足後100日まではマスメディアも新政権の働きを黙って見つめ、あまり批判を加えないという伝統があるのだが、トランプ2.0政権はすでにメディアとの対立は荒れ模様となっている。
「6カ月」も重要な節目となる。通例は夏の米議会の休会時期に当たり、この時期に政争がひと段落するため、ホワイトハウスでは体制を見直すことが少なくない。
米国大統領の2期目の4年は「レームダック」と呼ばれる。政権の周囲からは「この政権は間もなく終わる」という対応を取られることから、大統領が達成を望む政策課題を進めるのが困難になる。だが、トランプ2.0政権はこの点を考慮し、とにかく最初の18カ月を懸命に走り続け、前進し続けることで、その先の展開にも活路を見出したいとの戦略がうかがえる。
「現在われわれは貿易問題に深く関わっています。また、ウクライナ戦争を解決しようとしています。これらは米国の将来にとって重要です」
当面の政策課題を尋ねられたワイルズ氏はこう答えたが、現実にはこうした課題も現状のハードルはどんどん上がり始めている。
政権が持たないと言われる「3つの重大事案」が同時発生
アメリカ政治を見つめる米国人の記者たちはよく、「米政権は運営にあたって3つの失態や出来事が重なると政権が持たない危険な状況に陥る」と警戒するが、これは確かに言い得て妙だ。
バイデン前大統領は、米議会内の集まりで自分の親しい議員の名前を呼んだが、その議員は亡くなっていたことを忘れていた、という出来事があった。さらに同時期に軍の催しで物につまずいて転んだり、ダメ押しにトランプ氏との討論会で発言がメロメロになって、結果、認知症問題がクローズアップされて大統領候補の座をカマラ・ハリス副大統領に譲らざるを得なくなった。自分の大統領としての人生を最後は棒にふったのだ。
1つだけなら「年齢でしょう」とか「うっかりミス」で終わるのだが、3つ重なったことで大統領を再選の座から引きずり下ろすことが可能になったのだ。どの政権もこうした事態が重なって起こることがあり、政権側は何か大きなことが起きそうな場合は早めに火消しに動くことになる。
トランプ2.0政権では、ウクライナ戦争でのトランプ大統領個人の明確なロシア寄り外交が、共和党の保守本流の人々にトランプ政権への深い疑念を抱かせ、同時に欧州に脱トランプの芽が育ちつつある。さらに今回、世界各国に「相互関税」を強引に導入した。この政策に対しては経済的な知性の欠如を感じるとの懸念が聞かれ、民主党サイドはもちろん、共和党内からも「自ら危機を生み出している」との非難の声が強まっている。
さらに、今も火種がくすぶっているのが、トランプ政権が極秘情報を正しく扱えない実態が暴露された、いわゆる「シグナルゲート事件」の発生である。
イエメンの親イラン武装組織「フーシ派」に対する武力攻撃について、安全保障担当の閣僚がセキュリティの効いた政府の連絡手段ではなくて、民間のメッセージアプリ「シグナル」を使って極秘情報をやり取りしていた問題である。しかも、米誌アトランティックの編集長をなぜかメンバーの一人に招き入れていたために、この事実がスクープとして世界中に広がってしまった。米国の国家安全保障の歴史の中でも過去に聞いたことがないお粗末な事件だ。
NSC(国家安全保障会議)の担当補佐官や国防長官、CIA(中央情報局)長官やFBI(連邦捜査局)長官など安全保障担当の閣僚が全員、機密の扱いにど素人であることが明確になったことで、米国民の怒りと不安が一挙に爆発している。そもそも、なぜジャーナリストをチャットリンクへ招き入れたのか、原因究明と犯人探しが続く中で、政権内で責任を押し付け合う内ゲバも起きている。
このように3つの大事が重なってしまっている現状は、トランプ政権の支持率低下も招いており、表舞台に出ないワイルズ氏がこのタイミングでFOXニュースの単独インタビューを受けたのは、早くも正念場に立たされたトランプ政権の危機感の裏返しと言えるだろう。
しかも、聞き手は、ララ・トランプ氏というワイルズ氏にとってはいわば身内のような存在であるだけに、安全なインタビュー環境を確保できる中で、政権への圧力を少しでも下げるためにインタビューを許諾したというのが実情ではないか。
レーガン主義者のワイルズ氏は政権内でも「まともな大人」だが…
そもそも若きころのワイルズ氏は、当時のロナルド・レーガン政権においてホワイトハウスで仕事をした経験を持つ。レーガン共和主義の信奉者であり、ホワイトハウス内の数少ない「大人」(共和党の保守本流の考え方で冷静に物事を進められる人)の一人である。
トランプ2.0政権では、「シグナルゲート事件」の煽りで、ピート・ヘグセス国防長官やマイケル・ウォルツ国家安全保障担当補佐官のクビも囁かれているほか、政権にうまく溶け込めないお騒がせ起業家、イーロン・マスク氏の政府効率化省の離任も取り沙汰されている(ちなみに「規律」を重んじるワイルズ氏とマスク氏の間では摩擦も報じられている)。
こうした事態がトランプ氏のコア支持層MAGA(アメリカを再び偉大な国に)の推進者たちにも「米国経済や外交の先行きへの巨大な不安」という火をつけそうな懸念がある中で、今回の単独インタビューは、政権内が正常であることを世の中に示すために行われたと読める。
トランプ1.0政権でも、発足当初からホワイトハウス内で補佐官同士の内部対立や、トランプ氏が思いつきの政策を次々と実行したために混乱がいくつも見られた。
だが、今回のインタビューでワイルズ氏は、トランプ2.0政権は第1次政権の関係者は半数ほどで、人的にも考え方の面でも2016年にはなかった視点があり、チームミッションのもとに動いていることを強調してみせた。
「1日は早くから始まり遅くに終わります。午前7時半にはホワイトハウスで仕事を始め、終わるのは午後9時半か10時。それが月曜から金曜まで続き、週末は遊説がある」と述べ、就任式以来、1日も休んでいないことを明かした。
そのうえで「休みを取りたいとも思わない」と述べると、「自分は読書家で散歩が趣味だが、やることが多すぎて、以前より静かで内向的になった」と述べている。「世界の誰もがドナルド・トランプを愛しているわけではないので、散歩は落ち着くまでお預けにします」と言うと笑顔を見せた。
肝心のボスとの関係については良好であることを強調し、トランプ氏の政権運営についてはこう高く評価してみせた。
「本当に良い関係を築けたのはとても幸せです。私は女性で、高齢で、長いこと政治に関わる仕事をしてきました。私たちの関係はなかなか良好で楽なものですが、朝目を覚ましてトランプの今日の動きを支援すると考えた時には毎日少し緊張しています。
トランプ氏は本当に多くのことを経験してきました。暗殺未遂事件を経て、以前とは別人になりました。誰か一人が彼を変えたとは思いませんが、人生経験と人柄がトランプを変容させ、今ではより良いリーダーになっていると思います」
しかし、相互関税問題一つを取っても国際的にさらに火がつく様相を見せており、今回の単独インタビューが、どこまで火消しにつながるかは予断を許さない。
ワイルズ氏は、依然、トランプ氏を米国内で共和・民主両サイドから評価の高いレーガン大統領のような人物にすることを狙っている。インタビューの発言をこう締めくくった。
「私の仕事は列車を線路上で時間通りに走らせることだと考えています。特に大統領という名の列車を」
トランプ政権の強引な政治手法の数々は、まるで暴走列車との指摘も聞かれる中で、こうした雑音を消して、粛々と目標を達成することこそ自分の仕事と考えるワイルズ氏。チームミッションはすでに大きな剣が峰にあるとも言えるだけに、「正常さ」を持つワイルズ氏の手腕にはさらに注目が集まることになるだろう。
【松本 方哉/まつもと・まさや】
ジャーナリスト。1956年、東京都生まれ。上智大学卒業後、1980年フジテレビに入社。報道局記者として首相官邸や防衛庁担当、ワシントン特派員などを務める。湾岸戦争、米同時多発テロ、アフガン戦争、イラク戦争などでは情報デスク、解説委員を務めた。2003年、報道番組「ニュースJAPAN」のメインキャスターに就任。専門は日米関係、米国政治と米国外交、国際安全保障問題。妻の介護体験を機に、医療・介護問題にも取り組む。日本外国特派員協会会員、日本メディア学会会員、白百合女子大学講師。著書に『突然、妻が倒れたら』(新潮文庫)「トランプVS.ハリス アメリカ大統領選の知られざる内幕」(幻冬舎新書)がある。
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