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混乱の様相を強めているシリア
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202501100000/
2025.01.10 櫻井ジャーナル
バシャール・アル・アサド政権が倒れた後、シリアではアラウィー派住民の虐殺が伝えられているが、それだけではなく、混乱の度合いが高まっているようだ。反アサド勢力にはいくつかの勢力が存在、それらをまとめる存在が今のところ見当たらないことが大きい。
反アサド勢力の中核だったHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)はトルコを後ろ盾とする武装勢力で、アル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を改名した組織。そのアル・ヌスラはシリアで活動を始める前、AQI(イラクのアル・カイダ)」と呼ばれていた。そのほかアメリカやイギリスを後ろ盾とするRCA(革命コマンド軍)、アメリカが手先として利用してきたクルド、さらにバシャール・アル・アサド政権の残党やイスラエルが活動している。こうした反アサド勢力による内乱が起こると予想する人は少なくない。
シリアの北部ではHTSとクルドの戦闘が激しくなっているようだが、これはトルコとアメリカの対立とも言えるが、両国はNATOの加盟国であり、状況によってはNATO加盟国同士の戦闘もありえる。南部ではレバノンへ侵入したHTSの戦闘員が逮捕されるという出来事もあったようだ。アサド政権が倒される前からシリアへ入っていたイスラエルはダマスカスの近くまで侵攻している。
アメリカの外交や安全保障の分野を支配してきたネオコンは1980年代からイラク、シリア、イランを制圧する計画を立てていたが、欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めたウェズリー・クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃されてから10日ほど後、彼は統合参謀本部で見た攻撃予定国のリストを見たという。そこにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランが記載されていた。(3月、10月)
イラクは2003年3月にジョージ・W・ブッシュ政権がアメリカ主導軍で先制攻撃して破壊、シリアやリビアは2011年春から軍事侵略を受けている。このリストで侵略されていないのはイランだけだ。
ブッシュ政権は自国軍を動かしたが、バラク・オバマ政権はサラフィ主義者やムスリム同胞団を主力とする傭兵を使った。そのため、オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆プロジェクトを始めた。いわゆる「アラブの春」だ。2011年2月にはリビア、そして同年3月にはシリアを傭兵に攻撃させている。HTSもそうしたジハード傭兵の流れに属す。
2011年3月からシリアで政府軍と戦っていたジハード傭兵の雇い主はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟にイギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設をシリアに拒否されたカタール、そしてトルコなどだ。
ジハード傭兵はシリア東部の油田地帯を制圧、2015年になるとオバマ政権は政府を好戦的な布陣に変える。2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、同年9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへといった具合だが、デンプシーが解任された直後の9月末にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、アル・カイダ系武装勢力や新たに出現したダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を敗走させた。
そこでアメリカはクルドと手を組み、地上部隊を油田地帯のデリゾールへ入れて基地を建設した。2016年9月には2機のF-16戦闘機と2機のA10対地攻撃機で政府軍部隊を攻撃、80名以上の兵士を殺害している。アメリカ軍は交通の要衝、アル・タンフにも基地があり、戦闘員の訓練などにも使われてきた。
シリアの混乱はイスラム諸国の西側に対する信頼、あるいは信仰の結果だったようだ。イランの経済分野には新米勢力がまだ存在していると見られている。反帝国主義を掲げるマフムード・アフマディネジャドを2005年に攻撃したのもそうした勢力だった。その際、ロイターはアフマディネジャド大統領の発言を捏造している。2009年にはカラー革命も試みられ、13年に彼は排除された。そして登場したのがハッサン・ロウハニだ。
経済分野に巣食う親米派や大統領の交代も問題だが、防諜部門の問題も深刻。2011年に任命された防諜の責任者は21年までその職にあったが、この人物はイスラエルのスパイだった。2021年に彼は約20名のチームを率いてイスラエルへ亡命している。こうしたイスラエルのネットワークが消えたとは思えない。
2024年5月19日にエブラヒム・ライシ大統領やホセイン・アミール-アブドラヒヤン外相らを乗せたベル212ヘリコプターがイラン北西部で墜落、全員が死亡。7月31日にはハマスのイスマイル・ハニヤがテヘランで暗殺され、ハッサン・ナスララを含むヒズボラの指導者が立て続けに殺されたが、イランの情報機関から漏れた可能性もある。ライシの次の大統領、マスウード・ペゼシュキヤーンは親欧米派だ。
また、シリアのアサドは数年前からエジプト、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど親欧米派の影響下にあったとする情報もある。その親欧米派はアサドに対し、イランとロシアとの関係を断ち切るよう促していたというのだ。アサド政権は収入源である石油や農業をアメリカ軍に抑えられ、しかもアメリカ主導の経済制裁で苦しんでいた。そこで「経済制裁の解除」という餌に食いついたのかもしれない。HTSがアレッポを制圧するまでアサドは楽観していたとする情報もある。
かつてリビアに君臨していたムアンマル・アル・カダフィは欧米諸国やイスラエルの計画を見抜いていた。まずレバノンとシリアを破壊し、イスラエルとトルコが国境で面することになり、シリアは5つの小国になると語っていた。大イスラエル構想とオスマン帝国構想の衝突とも言える。また、2008年のアラブ首脳会議でカダフィは、サダム・フセインと同じように処刑の順番が回ってくると各国の首脳に語った。「サダムに起こったことはあなた方にも起こるだろう」というわけだ。
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