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アメリカの民主主義は見かけだけで機能していない
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2024.11.08 櫻井ジャーナル
今回のアメリカ大統領選挙で勝利したのはドナルド・トランプでもカマラ・ハリスでもなくネオコンだとする人がいる。トランプもハリスも外交や安全保障分野はネオコンの世界制覇戦略に従っているということだ。
ネオコンが表舞台に登場したのはジェラルド・フォードが大統領だった1970年代。デタント(緊張緩和)を打ち出したリチャード・ニクソン大統領はウォーターゲート事件で1974年8月に失脚し、副大統領を務めていたフォードが昇格したのだ。
大統領になったフォードはFBI長官だったJ・エドガー・フーバーと近く、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された後、リンドン・ジョンソン新大統領が設置した「ケネディ大統領暗殺に関する大統領委員会」のメンバーでもあった。
最高裁裁判長だったアール・ウォーレンを委員長に据え、メンバーにはフォード下院議員、ヘイル・ボッグス下院議員、リチャード・ラッセル上院議員、ジョン・クーバー上院議員、アレン・ダレス元CIA長官、ジョン・マックロイ元世界銀行総裁。主席法律顧問を務めたのはリー・ランキンだ。
言うまでもなくダレスはウォール街の弁護士で、大戦中から破壊活動を指揮、ケネディ大統領にCIA長官を辞めさせられた人物。マックロイはウォール街の大物で、大戦の後に世界銀行の総裁を経てドイツの高等弁務官を務め、ナチスの大物たちを守っている。委員会の中で唯一の専従はダレスだった。ダレスの側近で1966年6月から73年2月までCIA長官を務めたリチャード・ヘルムズによると、彼がダレスを委員にするように説得したのだという。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015)
フォード大統領はジョージ・H・W・ブッシュをCIA長官に、ドナルド・ラムズフェルドを国防長官に据え、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パイプスもこの時に表舞台へ出た。ラムズフェルド、チェイニー、ウォルフォウィッツ、パイプスはネオコンと呼ばれる一派に属していた。
ブッシュの父親プレスコットは銀行の元幹部で、ウォール街時代にダレスと親しくしていた。そうしたこともあり、エール大学時代にジョージはCIAからリクルートされたと信じられている。
ネオコンには「元トロツキスト」が多いと言われている。トロツキストはレフ・トロツキーの理論を信奉する人びとだが、この人物は1917年の「二月革命」当時、ニューヨークに住み、メンシェビキのメンバーだった。
トロツキーは1917年3月にニューヨークを離れたが、途中で彼の乗った船がイギリス海軍に拿捕されてしまう。釈放されたのは4月のこと。ロシアへ着いたのは5月に入ってからだ。トロツキーがボルシェビキに加わるのはその後、十月革命の直前になってからである。
ボルシェビキの幹部も二月革命当時、革命の現場にはいなかった。刑務所に入れられていたか、ウラジミル・レーニンのようにスイスへ亡命していた。そのレーニンたちボルシェビキの幹部32名をドイツ外務省は列車でロシアへ運ぶ。当時、第1次世界大戦が始まっていたが、レーニンたちは即時停戦を主張していたからだ。ボルシェビキの幹部がロシアへ戻ったのは1917年4月のことだ。
アメリカのトロツキストで有名な人物のひとりはジェームズ・バーナム。1929年にニューヨーク大学の教授に就任、30年代の半ばからトロツキストだったとされているのだが、第2次世界大戦中にアメリカの戦時情報機関OSS(戦略事務局)入りし、大戦後にはジョージ・ケナンの推薦で極秘の破壊工作機関OPCへ参加したことも知られている。バーナムの周辺からネオコンへ流れた人がいるようだ。
しかし、ネオコンの思想的な支柱はシカゴ大学のレオ・ストラウス教授だとされている。この人物は17歳の頃にウラジミール・ジャボチンスキーのシオニスト運動へ接近、1932年にはロックフェラー財団の奨学金でフランスへ渡り、プラトンやアリストテレスの研究を始めた。
ストラウスは1937年にアメリカへ渡り、コロンビア大学の特別研究員になる。1944年には教授として受け入れられ、49年から73年までシカゴ大学で教えている。ストラウスと同じようにシカゴ大学の教授を務めたアルバート・ウォルステッターもネオコンを支えたひとりだ。
このネオコンの人脈を見ると、彼らの背後にはアメリカやイギリスの金融資本が存在、トランプもハリスも、つまり共和党も民主党も米英金融資本を中心とする私的権力に操られている。ファシズム、あるいは帝国主義と呼ぶべき体制だ。アメリカにおいて選挙は単なる儀式にすぎず、この国の体制を民主主義と呼ぶことはできない。
それにもかかわらずアメリカを「民主主義国」だと信じている人が少なくないのはそのように信じさせる強力な仕組みがあるからだ。教育で思考のベースが形成され、メディアや映画などでイメージが作られている。ハリウッドにはカバラの信者が巣食っているが、CIAはシナリオをチェックしていると言われている。
CIAの検閲基準に従っても支配システム内の犯罪、悪事を描くことは許されるが、あくまでも個人やグループによるとしなければならない。システム全体は健全で、最後にはそのシステムが犯罪や悪事を正すとしなければならないのだ。ハリウッドの外でも、ある政治勢力はダメだが別の政治勢力は良い、システム内の善玉が悪玉を処罰する、といった類の話は眉に唾をつけながら聞いた方が良い。
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