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イスラエル首相が米国の議会で作り話を延々と語り、議員は拍手喝采という茶番劇
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2024.07.27 櫻井ジャーナル
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が7月22日にアメリカを訪問、24日には連邦議会の上下両院合同会議で演説した。イスラエル軍がガザで続けている住民虐殺を正当化するために作り話を延々と続け、議員たちは何度も立ち上がって拍手喝采するという茶番劇が繰り広げられたのである。
証拠を示さずに敵を「悪魔化」して見せるだけでなく、ハマスが「赤ん坊を生きたまま焼き殺した」、ハマスが「1200人を虐殺した」といったすでに嘘だということが明確になっている話も堂々と主張、それをアメリカの議員は受け入れたわけだ。先住民であるアメリカ・インディアンを虐殺、生き残りを「居留地」へ押し込めて建設されたアメリカの議員だけある。
ちなみに、昨年10月にハマスがイスラエルを攻撃した際、約1400名のイスラエル人が殺されたとされたのだが、その中にハマスと交戦したイスラエルの軍人や治安機関員が含まれていると指摘されて1200名に訂正された。その1200名の大半がイスラエル軍に殺害されたことをイスラエルのハーレツ紙が伝えている。敵に人質になる可能性があるイスラエル人は殺して構わないという「ハンニバル指令」が出たという。
同紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊したとしていた。ハーレツの記事を補充した報道もあるのだが、西側の有力メディアはそうした報道を無視する。
イスラエル軍によるガザでの虐殺を西側は支援しているが、中東だけでなく「グローバル・サウス」と呼ばれる国々はイスラエルとその支援国に対して厳しい姿勢を示している。
中東ではサウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、ヨルダンなどアメリカの影響下にあり、イスラエルと友好的な関係を結んでいる国もあるのだが、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はイスラエルやアメリカなど、イスラエルへ物資を運ぶ船舶を攻撃攻撃、イスラエル経済は破綻しつつある。
7月19日にイエメンはテル・アビブにあるアメリカ領事館の近くをドローンで攻撃、それに対してイスラエルは20日にフダイダ港を攻撃したが、イエメンは報復を宣言、軍事施設と治安施設を標的にするとしている。紅海を迂回する陸路や空路を提供している「一部のアラブ国」、つまりヨルダンへの報復も示唆している。
そのヨルダンにNATOは連絡事務所を設立することを決定したと今月、発表したが、すでに約3000名のアメリカ兵をはじめとする西側の部隊が駐留、軍事インフラも存在している。
イエメンに続き、昨年10月8日からイスラエルを攻撃しているのはレバノンのヒズボラ。イスラエル北部の軍事施設にミサイルを発射、北部に住むイスラエル人入植者8万人が自宅から逃げ出した。
ヒズボラには2500人の特殊部隊員、訓練を受けた2万人の兵士、3万人の予備役、さらに5万人がいると言われている。つまり兵力は10万人を超え、イラク、アフガニスタン、パキスタンの反帝国主義勢力、そしてイエメンのアンサール・アッラーの戦闘員がレバノンへ派遣される可能性もあり、戦闘陣地とトンネルが縦横に張り巡らされ、15万発以上のミサイル(その多くは長距離)が準備されている。こうした勢力と戦い、勝利する力をイスラエルは持っていない。アメリカの支援頼みだと言えるだろう。
「アマレク人」を家畜ともども殺し、その後に「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたと旧約聖書では記述されている。アメリカやイスラエルの傭兵として活動しているダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)が中東の遺跡を破壊した理由もそこにあるかもしれない。
アマレク人は歴史の上で存在が確認されていないが、この民族をイスラエルが敵視している勢力に重ねて見せた。パレスチナ人が生活していた歴史を破壊で消し去るということだろう。
サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだというのだ。
ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民だ」としたうえで、イザヤの預言を理解しなければならないと主張する。「われわれ」とはイスラエル人、「彼ら」とはパレスチナ人、イスラム教徒、あるいはイスラエル以外の人びとを指しているのだろう。
ネタニヤフはリクードの政治家だが、同じようにこの政党に所属する元国会議員のモシェ・ファイグリンはガザをドレスデンや広島のように破壊するべきだと主張している。実際、破壊されたガザの様子は両都市を彷彿とさせるものがある。
リクードはウラジミール・ヤボチンスキーが1925年に結成した「修正主義シオニスト世界連合」の流れの中から生まれた。彼は第1次世界大戦でイギリス軍の「ユダヤ人部隊」に参加している。イギリスと「ユダヤ人」の関係はヤボチンスキーに限らず、武装組織のハガナや情報組織のニリもイギリス軍に協力していた。
その後、1933年にドイツではナチスが国会議事堂放火事件を利用して実権を握るが、この年の8月にシオニストはナチス政権とユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意した。「ハーバラ合意」である。
ナチスの「ユダヤ人弾圧」によってユダヤ系の人びとをパレスチナへ向かわせることができるとシオニストは考えたようだが、ユダヤ教徒の多数派はパレスチナへ移住しない。ヨーロッパでの生活に慣れている人びとの多くはオーストラリアやアメリカへ向かった。1938年11月にドイツではナチスがユダヤ系住民を襲撃、多くの人が殺され、収容所へ入られ始めるが、この「水晶の夜」以降もユダヤ教徒はパレスチナでなくアメリカやオーストラリアへ逃れた。つまり、ユダヤ人の行き場を作るためにイスラエルが必要だったわけではない。
アメリカへ亡命していたヤボチンスキーは1940年にニューヨークで心臓発作のために死亡、後継者に選ばれたのは後に首相となるメナヘム・ベギン。アメリカでヤボチンスキーの秘書を務めていたベンシオン・ネタニヤフの息子、ベンヤミン・ネタニヤフは現在、イスラエルの首相である。
リクードが力を得る切っ掛けは1967年6月の第3次中東戦争だ。イスラエルがエジプト、シリア、ヨルダンを奇襲攻撃したのだが、戦争勃発の直前、5月30日にイスラエルの情報機関モサドのメイール・アミート長官がアメリカを訪問している。
戦争の最中、6月8日にアメリカ政府は情報収集船の「リバティ」を地中海の東部、イスラエルの沖へ派遣。この艦船をイスラエル軍が沈没寸前まで攻撃している。この攻撃についてリンドン・ジョンソン大統領はすぐに報告を受けるが、ロバート・マクナマラ国防長官は第6艦隊に対し、救援のために離陸した戦闘機をすぐに引き返させるようにと叫んでいる。救援のために戦闘機を空母から向かわせたのは、しばらくしてからだ。
リバティ攻撃はジョンソン政権の意向だという疑惑がある。この政権で秘密工作を統括していた「303委員会」において、1967年4月に「フロントレット615」という計画が説明されたという。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもので、実際、後にリバティや潜水艦は派遣されていた。
この計画の中に含まれる「サイアナイド作戦」はリバティを沈没させて責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけて戦争を始めようとしたという推測がある。これが事実なら、ジョンソン政権はトンキン湾事件の再現を狙ったということになるだろう。
リバティの近くにいたアメリカの潜水艦アンバージャックが潜望鏡を使って見ていたとする証言もある。リバティの乗組員も潜望鏡を見たとしている。ただ、記録したはずのデータは見つからない。存在していたとしても破棄されてしまっただろう。
第3次中東戦争をアメリカでは「六日戦争」と呼ぶが、それだけ短期間にイスラエル軍は勝利したのだ。ベトナム戦争で苦戦していたアメリカ軍に苛立っていた人びとがイスラエル軍に飛びついたのだ。
アメリカのキリスト教系カルト、いわゆる「聖書根本主義者」はアメリカ軍を「神の軍隊」だと信じていた。彼らの教義によると、キリストに従う「善の軍勢」と反キリストの「悪の軍勢」が「ハルマゲドン」で最終戦争を行い、人類の歴史は幕を閉じる。その際、再臨するキリストによって自分たちは救われるのだという。
ジェリー・フォルウエルなど有名なテレビ説教師の大半がこの説を信じていたのだが、そのォルウエルを政治の世界へと導いたのはエド・マクティールなる人物。彼はフォルウエルをロナルド・レーガン、ジェシー・ヘルムズ上院議員、そしてジョージ・W・ブッシュ政権で司法長官を務めたジョン・アシュクロフトなどに引き合わせている。それ以降、ヤボチンスキーの後継者をキリスト教系カルトが支えるという構図が出来上がった。(Ken Silverstein & Michael Scherer, "Born-Aain Zionist", Mother Jones, September/October, 2002)
1972年に行われたアメリカの大統領選挙には戦争反対を明確にしていたジョージ・マクガバン上院議員が民主党の候補として選ばれたのだが、これは民主党の支配層にとって衝撃だった。党の内部ではヘンリー・ジャクソン上院議員を中心にして、反マクガバンのグループが出来上がる。CDM(民主党多数派連合)だ。
ジャクソン議員のオフィスにはリチャード・パール、ポール・ウォルフォウィッツ、エリオット・エイブラムズ、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなど後にネオコンの中核グループを形成する人々が在籍していた。
こうした工作もあり、マクガバンは共和党のリチャード・ニクソンに敗れる。ニクソンはアレン・ダレスに近く、平和的な人物とは言えないのだが、それでもデタント(緊張緩和)を主張する。そこで好戦派は送るのだが、その中にはネオコンも含まれていた。
そのニクソンは1974年8月にウォーターゲート事件で失脚、副大統領だったジェラルド・フォードが昇格、この政権でネオコンは台頭してくる。
新政権でデタント派はパージされ、ドナルド・ラムズフェルド、リチャード・チェイニーなどネオコンがホワイトハウスの主導権を握ったのだ。ポール・ウォルフォウィッツがCIAで反ソ連プロパガンダを行なっていたグループ「チームB」に入ったのもこの時だ。こうした人びとはロナルド・レーガン政権で要職に就く。
チームBの活動には国防総省内のシンクタンクであるONA(ネット評価室)が協力したと言われているが、その室長だったアンドリュー・マーシャルはネオコンに戦略を提供してきた人物。ラムズフェルドはこの人物に心酔していた。またマーシャルの師と言われている人物がバーナード・ルイス。ルイスはサミュエル・ハンチントンと同じように「文明の衝突」を主張、シオニストを支持している。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)
イスラエルの強さはアメリカのキリスト教系カルトの支援を受けているためだけではない。世界の有力者を脅す材料を握っていると言われている。
イスラエルの電子情報機関、8200部隊は少なからぬ「民間企業」を創設し、電子技術を利用して情報を収集しているが、それ以外にも脅迫のための仕組みが存在する。
有力者の弱みを握り、操り、自分たちの利益を図る人たちは昔からいた。そのひとりが禁酒法時代に密造酒で大儲けしたルイス・ローゼンスティールだと言われている。ローゼンスティールと「親子のように」親しく、犯罪組織ガンビーノ・ファミリーのメンバー、例えばジョン・ゴッチの法律顧問にもなっていたのがロイ・コーンなる弁護士だ。
コーンはコロンビア法科大学院を卒業後、親のコネを使ってマンハッタンの地方検事だったアービン・セイポールの下で働き始めたが、この検事はコミュニストの摘発で有名。1950年にソ連のスパイとして逮捕されたジュリアス・ローゼンバーグとエセル・ローゼンバーグの夫妻の裁判でコーンが重要や役割を果たしたことも知られている。
コーンは1950年代にジョセフ・マッカーシー上院議員の側近として活動、反ファシスト派の粛清でも重要な役割を果たした。この粛清劇は「マッカーシー旋風」や「レッド・バージ」とも呼ばれている。マッカーシーの黒幕はFBI長官だったJ・エドガー・フーバーで、コーンはマッカーシーとフーバーの間に入っていた。
化粧品で有名なエステイ・ローダーもコーンが親しくしていたひとりで、エスティの息子であるロバート・ローダーはドナルド・とペンシルベニア大学時代からの友人。ベンヤミン・ネタニヤフと親しく、「世界ユダヤ人会議」の議長だ。1973年にコーンはトランプの法律顧問になり、AIDSで死亡する85年までその職にあった。
このコーンの後継者ではないかと疑われているのが2019年7月に性犯罪の容疑で逮捕され、同年8月に房の中で死亡たジェフリー・エプスタイン。自殺とされているが、その刑務所の事情に詳しい人はありえないとしている。
ロバート・ローダーの前に「世界ユダヤ人会議」の議長を務めたエドガー・ブロンフマンも密造酒の家系で、父親のサミュエル・ブロンフマンはローゼンスティールの仲間。エドガーの弟、チャールズが1991年に創設した「メガ・グループ」はイスラエル・ロビーとされているが、イスラエルの情報機関と緊密な関係にあると言われている。エドガー・ブロンフマンの関係でイスラエルの情報機関へ引き込まれたひとりがエプスタインだ。
エプスタインは未成年の女性と有力者を引き合わせ、ふたりの行為を盗撮し、それを利用して後に恫喝の材料に使っていたと言われている。そのエプスタインは2011年にビル・ゲイツと親しくしていたとニューヨーク・タイムズ紙が伝えたのは2019年10月12日のことだった。
エプスタイン、彼と親密な関係にあったギスレイン・マクスウェル、そして彼女の父親はイギリスのミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルはいずれもイスラエルの情報機関のために働いていたと言われている。マクスウェルはエプスタインをイランとの武器取引に加えようとしていたようだ。
イスラエル軍の情報機関ERDに所属、イツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経験のあるアリ・ベンメナシェによると、3名ともイスラエル軍の情報機関(AMAM)に所属していた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019)
ギスレインとエプスタインは1990年代に知り合ったとされているが、ベンメナシェによると、ふたりは1980年代に親しくなっている。ニューヨーク・ポスト紙の元発行人、スティーブン・ホッフェンバーグによると、ふたりはあるパーティで知り合ったという。
ロバート・マクスウェルがAMANのエージェントになったのは1960年代だとも言われ、ソ連消滅でも重要な役割を果たしたと言われいるが、ソ連消滅の前の月、つまり1991年11月にカナリア諸島沖で死体となって発見されている。
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