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ウクライナ侵攻2年〜終わり見えぬ戦いを乗り越えるには/安間英夫・nhk
2024年02月26日 (月)
安間 英夫 解説委員津屋 尚 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/492066.html
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ロシアがウクライナに全面侵攻してから2年がたちました。戦況や欧米からの軍事支援など、ウクライナを取り巻く状況は厳しさを増しています。終わりの見えない戦いの現状と課題について、ロシア担当の安間英夫解説委員と国際安全保障担当の津屋尚解説委員が解説します。
【攻勢から守勢に。苦戦強いられるウクライナ軍】
安間:ウクライナでの戦闘の現状をどのように分析しますか?
津屋:ゼレンスキー政権は、クリミア半島を含め全ての領土を奪還するまで戦う方針は変えていません。しかし、国民の期待を集めた反転攻勢の作戦が不発に終わった後、欧米からの支援が滞り、最前線では弾薬不足が深刻化しています。これに対してロシアは、北朝鮮から大量の砲弾やミサイルの提供を受け、ウクライナを圧倒する砲撃を行っています。ウクライナ軍は“守勢”を強いられ、守り続けてきた東部の要衝アウディーイウカからの撤退も余儀なくされました。ついに3年目に入った戦争に、国民や戦場で戦い続ける兵士たちは疲れをつのらせ、ゼレンスキー大統領への支持にも陰りが見え始めています。ウクライナの徹底抗戦は「欧米からの強力な軍事支援」「兵士や国民の士気の高さ」、そして「ゼレンスキー大統領の指導力」に支えられてきましたが、そのいずれも揺らいでいる状況です。
【ゼレンスキー大統領の焦燥】
津屋:政治的な観点からはゼレンスキー政権の対応をどう見ていますか?
安間:ゼレンスキー大統領は、対外、国内ともに難しい対応を迫られています。まず対外面ですが、ゼレンスキー大統領は25日の記者会見で、この2年間で3万1000人のウクライナ兵が死亡したと初めて明らかにした上で、欧米からの軍事支援の遅れが人的被害につながっているとして、「失望している。今はわれわれの結束にとって最も困難な時期だ」と述べ、焦燥感をにじませました。ゼレンスキー大統領は去年5月、G7広島サミットで“英雄”のように迎えられましたが、今は各国の“支援疲れ”に直面しています。国際社会の関心も、中東ガザの戦闘で、去年10月以降、相対的に低下するようになりました。
一方、国内では、軍幹部との確執が表面化し、今月、内外から高い評価を受けていたザルジニー軍総司令官の解任に踏み切りました。ザルジニー氏の支持率は今月の調査で94%と、ゼレンスキー大統領の64%を大きく上回り、大統領にとってザルジニー氏の解任は政治的に大きなかけとなっています。また全土奪還を目指して戦闘が長期化すれば、国民に痛みを伴う動員や犠牲者の増加も避けられず、求心力が低下する恐れがあり、ジレンマに立たされています。
【プーチン大統領の揺さぶり】
津屋:対するロシアですが、プーチン大統領の思惑をどうみていますか?
安間:ロシアのプーチン大統領は、来月行われる大統領選挙で圧勝を目指し、「軍事侵攻についても国民の投票で信任を得た」として、侵攻をいっそう推し進める構えです。
プーチン大統領はこのところ、「停戦を拒んでいるのはウクライナ側だ」、「悪いのはウクライナに軍事支援している欧米だ」とする主張を強めています。今月も、アメリカの保守系の元キャスターのインタビューの中で、「今やウクライナはアメリカの衛星国だ」、「停戦したいなら武器支援をやめればいい」などと欧米をけん制しました。欧米の“支援疲れ”を見透かし、揺さぶりをかける作戦に出ているようです。
【ウクライナの作戦の行方】
安間:厳しい戦いが続くウクライナですが、作戦はどうなっていきそうですか?
津屋:先ほど指摘した通り地上戦では劣勢ですが、ロシア海軍が拠点とするクリミア半島などへの遠距離攻撃は成果をあげています。ウクライナ軍は「水上ドローンなどによって黒海艦隊の3分の1を無力化した」と主張しています。これにより黒海への脅威はほぼ取り除かれ、主要産業である穀物の輸出も再開されています。
また、航空作戦には欠かせないロシア版AWACS=早期警戒管制機などの撃墜にも成功し、ロシア空軍に大きな打撃を与えています。しかし、今の戦力では、大規模な反転攻勢に出るのは難しいとの見方が支配的です。ロシア側も一気に支配地域を広げる力はなく、このまま膠着状態が続く可能性が高そうです。
【積極防衛戦略とは】
津屋:そこでウクライナが採用するとみられるのが「積極防衛」と呼ばれる戦略です。NATOの関係者によると、今年の間は、守りを重視して大規模な反撃に必要な戦力や態勢の強化を優先する。同時に▽ドローンやミサイルによる遠隔攻撃でロシアの戦力を削いでいくというものです。▽強固な陣地を築いて守りを固め、ロシアの侵攻を食い止めている間に、▽ウクライナ兵はNATOによる徹底した訓練を受け、欧米の兵器により最適化した部隊を再構築します。▽武器・弾薬の製造や調達の体制も強化します。▽ウクライナが待ち望むF16戦闘機が実戦に投入できるようになれば、戦力はさらに向上します。こうしてしっかり態勢を整えたうえで、来年、一気に勝負をかけることを狙っています。
【鍵握る欧米の軍事支援】
安間:その戦略はねらい通りにいきそうですか?
津屋:鍵を握るのは欧米の軍事支援です。ただ、アメリカと、地理的にロシアに近いヨーロッパとでは、その危機感に温度差があります。中でもイギリス・ドイツ・フランスなどはロシアを直接の脅威とみなしています。ウクライナの安全保障を長期的に支援するための二国間協定を結んだ上で、この先1年に向けて、それぞれ1800億から最大4800億円規模の追加の軍事支援も表明しました。問題は、それが約束通り、遅延なく実行されるかです。
そして、さらに大きな問題は、何といっても最大の支援国アメリカです。ウクライナ支援の9兆円規模(約600億ドル)の予算案が議会で承認されなければ、ウクライナの新戦略は頓挫してしまうでしょう。仮に承認されたとしても、さらに大きな懸案は今年11月のアメリカ大統領選挙です。プーチン大統領を利するような発言を繰り返すトランプ前大統領の返り咲きが現実味を帯び、ウクライナ情勢の行方は不透明感を増しています。
【日本はウクライナをどう支援するのか】
安間:そうした中で、日本政府は先週、東京でウクライナの経済復興推進会議を開きました。岸田総理大臣は、ウクライナの復興を進めることは「日本、ウクライナ、世界の未来への投資」だとして、官民一体となってウクライナを支援していく決意を示し、▽地雷の除去や、がれき処理、▽農業の生産性向上、▽電力・交通インフラの整備など、7つの分野で支援策を打ち出しました。ただ、戦時下でどのように安全を確保するのか、巨額の復興費用をどうねん出するかが課題となっています。世界銀行によると、復興には今後10年間でおよそ72兆円あまり(4860億ドル)が必要と見込まれますが、確保できる見通しはついていません。
侵攻から2年。当初の衝撃の記憶が薄れる中で、立ち返らなければならないのは、この戦争は、国際法で許されないロシアによる一方的な侵略戦争であるということです。
ウクライナには、外交、軍事、経済などさまざまな分野で国際社会の支援が必要で、とりわけ軍事支援に制約のある日本には、民生分野の支援で大きな役割が期待され、その期待に着実に応えていくことが重要だと思います。
【困難を乗り越えられるか】
津屋:私が意見交換したウクライナ政府の元高官は、「“戦争疲れ”が叫ばれるが、疲れたからと言って命をあきらめる者はいない。困難があっても乗り越えられると信じている」と話していました。世界で自由や法の支配の価値観が揺らいでいる今、ウクライナで続く戦争は決して他人事ではありません。隣国による蹂躙が続くウクライナを支え続けることができるのか、日本を含む国際社会が問われています。
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