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“世界最貧国”で広がる驚きの光景...アフリカの若者たちに広がる「クールジャパン」、最大級のアニメイベントに潜入/現代ビジネス
ウエノ ヨウヘイ の意見
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%9C%80%E8%B2%A7%E5%9B%BD-%E3%81%A7%E5%BA%83%E3%81%8C%E3%82%8B%E9%A9%9A%E3%81%8D%E3%81%AE%E5%85%89%E6%99%AF-%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E8%8B%A5%E8%80%85%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AB%E5%BA%83%E3%81%8C%E3%82%8B-%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3-%E6%9C%80%E5%A4%A7%E7%B4%9A%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AB%E6%BD%9C%E5%85%A5/ar-AA1n8Jgh?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=67e846ed06c94231a4b47d9128615f0b&ei=7
日本のアニメや漫画が海外で大人気なのはよく知られた事実だ。フランス中の日本オタクを集めるJAPAN EXPOや全米からアニメファンが集結するAnime Expoは日本でも有名だろう。
が、その人気がはるか“アフリカ”にまで及んでいることはあまり知られていない。筆者は、フランス語版のYoutubeにアップされた「火垂るの墓」に、「私も内戦の頃、住む家から焼け出されて野原に住んでいたことがある。だから節子の気持ちが分かる」とコンゴ人のユーザーが残したコメントを見つけたことがある。
戦争の悲劇を今に伝える名作アニメは、戦火に苦しむ記憶を生々しく持つアフリカの人にも訴求力があるのかと、しみじみ感じたものである。
アフリカ最大級のアニメイベント「マンガ・マニア」
さて、今回はそんなアフリカにおける知られざるアニメ人気を紹介したい。
舞台はアフリカ東海岸の島国マダガスカル。日本人にとってマダガスカルはアイアイやキツネザル、カメレオンやバオバブなど、珍しい動植物が多く生息する豊かな自然、または世界の消費量の8割がマダガスカル産と言われるバニラビーンズが有名かもしれないが、本記事で筆者が紹介したいのはこのマダガスカルで毎年開催されるアニメイベント「マンガ・マニア」だ。
筆者は2022年7月に開催された「マンガ・マニア」に参加したことがある。マダガスカルでは毎年、大規模なマンガ・アニメ関連イベントが複数開催されているが、この「マンガ・マニア」は首都の大型スポーツイベント会場を貸し切りにするイベントで、主催者によれば、今回で9年目を迎える。
「初めは市内の私立高校を会場に学生サークルの延長のような形で行っていましたが、来場者数が増えすぎて、イベント会社を設立したんです。開催場所もスポーツイベント会場に移して、テレビ局のスポンサーを見つけて事業化しました」とのこと。
まだ10年に満たないイベントだが、現在はアフリカ最大級のアニメイベントとして1万人の来場者を数えるほどの大型イベントになっている。
経済発展とともに広がる「クールジャパン」
会場前は朝から長蛇の列で、30分くらい並ばなければ入場できないほど。入場料は4000アリアリ(約115円)で、2000平方メートルの広さのある会場の中央には大きなステージが設けられ、日本のアニメソングの演奏やコスプレ、K-POP、ダンス・パフォーマンス、空手、剣道、テコンドーなど、アジア文化に関する各種催し物が行われている。
ステージを囲むように常設スタンドが70個以上出展されており、内容は日本語教室やアニメファンの活動紹介ブース、アニメ・キャラクターグッズの販売、ポケモンカード、K-POPアイドルの写真・グッズ販売等。
よく見てみると、「日本のアニメや漫画」のみではなくK-POPのラインナップも多い。日本を中心に、K-POPも含めたアジア系のポップカルチャーを混交したイベントといった雰囲気である。
これは、マダガスカルではあまり日本と韓国の違いが意識されず、K-POPもアニメや漫画も、ファン層がかぶっており、平たく「アジアの現代的なポップカルチャー」として捉えているのが原因だと思われる。なお、K-POPはマダガスカルでもBTSとBLACKPINKの人気が圧倒的に高い。
「マダガスカルでは、2000年代になって本格的にテレビで日本のアニメの放送が始まって、書店でもアニメ関係の雑誌が売られ始めました。マダガスカルの若者にアニメの人気が出てきたのはその頃です。」
主催者はそう教えてくれた。マダガスカルの経済発展が始まったのは2000年代に入ってからだが、これは日本のアニメが人気を集め出した時期と同じだ。経済発展による庶民の購買力の向上やメディア産業の発展と重なって、アニメを好む人が増えたということだろう。
テレビ放送から始まったマダガスカルのアニメ人気だが、現在ではテレビよりインターネットで見ることが一般的であるらしく、Youtube やDailymotion などの無料動画サイトや、また、金銭的に余裕のある層はNetflix などの定額制配信サービスなどでアニメを見ることが多いと言う。
都市に住む富裕層の若者に人気
「マンガ・マニア」来場者の大半は高校生と大学生だが、マダガスカルの人間開発指数はUNDPによれば世界191 か国中173 位、UNESCOと世銀のデータによれば高校就学率が約13%、大学就学率は約6%の最貧国でもある。アニメやマンガは、日本と異なり、若くして文化的な趣味にお金を使うことができる、経済的に裕福な社会階層の若者の文化であると言えよう。
また、マダガスカルの電化率が25%であることも考えれば、アニメ・マンガの視聴者層は、娯楽の消費のために電気にアクセスし、さらにインターネットにもアクセスできる都市在住の限定的な富裕層であるとも言える。
確かに、手の込んだコスプレ衣装を着こなして、スマホで記念撮影をしたり、テレビゲームに興じたりなど、イベントに参加しているマダガスカルの人々を見る限りは、ここが世界最貧国であるということを忘れてしまう。
自らイラストを描き、コスプレを楽しむ
さて、会場を闊歩するコスプレイヤーの衣装はやはり「鬼滅の刃」が人気で、他にもピカチュウ、「NARUTO」などもあった。コスプレイヤーが写真撮影に快く応じてくれるのは世界共通で、みんな快く撮影に応じてくれる。
スタンドを回ってみると、グッズの販売だけでなく、マンガのイラストを学ぶ教室や、イラストの展示もある。マダガスカルのアニメファンが、アニメを見てコスプレをする単なるコンテンツを消費するだけのコンシューマーではなく、日本のアニメオタクと同様、自らも生み出す「プロシューマー」化している様子も確認できた。
実際、外務省がマンガを通じた国際交流を目的に2007年に創設し、2023年度には第17回を迎える「日本国際漫画賞」にも、例年、マダガスカルから応募作が出ている。
「手塚治虫」より「ライトノベル」
このように日本と同様のアニメ愛に満ちたマダガスカルだが、現地のアニメファンと深く話をしてみると、マダガスカルと日本で異なる点が2つあることに気づいた。
一つ目は、マダガスカルのアニメファンは、最近の作品しか知らないということである。例えば日本人なら誰でも知っている「手塚治虫」の名前を口にしても「誰それ?」といったような顔をされるのだ。
「マンガ・マニア」イベントの主催者もこれは同様で、筆者が、(諸星大二郎や、つのだじろうなどの漫画家を念頭に)「“グロテスク”なマンガは読まないのですか?」と質問したら、「読みますよ」と言われたので、「タイトルは?」と聞いてみると、ライトノベルが原作の「ようこそ実力至上主義の教室へ」(衣笠彰梧)と、筆者の質問意図とは認識のズレがある、少々微妙な答えが返ってきた。
漫画が世代を超えた大衆文化として確立されている日本とは異なり、マダガスカルでの漫画はあくまで一部の若者のサブカルチャーということになるだろう。
また、マダガスカルのような途上国では漫画を含め出版物は高価でなかなか買えないが、アニメはテレビやネットで見られるので、アニメ化されていない大御所の漫画は流通せず、最近のアニメ化された漫画しか人口に膾炙しないという事情もある。
「日本語のアニメを見るのがかっこいい」
また、二点目は、マダガスカル人は、アニメを吹き替えではなく、音声は日本語のままフランス語字幕で見るということである。
「字幕じゃ見づらくないんですか?」と聞いても、「登場人物の日本語を聞くのが好き」や「日本語を聞く方が格好いい」という反応が多くあった。彼らと話をしていると、アニメを日常の延長にある娯楽というよりも、海外の文化に触れるツールとして捉えているように思える。
例えば日本人だって、洋楽を聞く際に、日本語カバー曲を聞くことはなく、基本的にはオリジナルの曲を好むだろう。それと同じように、マダガスカルのアニメファンはアニメの中の海外のクールな文化=日本文化を感じることに意義を見出しているのだ。
アフリカにおける日本コンテンツの人気は、現在の欧米やアジアのように大企業や公的なお金が投資されたわけではなく、かつての台湾のように、市井の若者たちが「日本カッコイイ!」と自然発生的に醸成したクールジャパンである。
まだまだ市場規模は小さいものの、現地の若者が主体的に、草の根的に作り上げたという点で大きな可能性がある。
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