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「血で血を洗うほどの凄まじい戦国時代の猛将たちが、なぜあれほど静穏極まる茶の湯に没頭したのか」
井上「大体において戦国の武将はみんな字がうまいですね。家康や秀吉に限らず戦国の歴史に名を出している連中は、だいたい立派な字を書いてますね」
松本「やっぱり教養の一つでしょうね。だから各国の禅僧を手元に置いたりして、信玄なんか五山文学をささえて、それから山口の大内ね、幸い応仁の乱で禅僧たちは京都で食えないから、地方大名に保護を求めて行った。」
井上「それからお茶ですね。茶道具というものをそれぞれ大切にしているけれども面白いことですね。僕など凡人は乱世になったら、そんな余裕はないな、まず勝たなければならないと思うんだけれども。」
司馬「そういう意味で言えば文化というか、そういうものへの憧れは我々の想像以上に強かったようです。」
井上「強いですね。今の時代は茶がなくとも生きられますけれども、あの頃は生きられなかったと思います。ほんとにあの頃は茶というものが、彼らの持っていた死生観の中に生きていたと思います。それほど凄まじい時代だったでしょう」
司馬「それを非常に殺風景に解釈すると、茶や茶室というものは非常に利用価値があった。たとえば松本清張先生と私が話をするときは松本先生が上段の間に座って、室町時代の作法だと私のような若輩ははるか下へ座って、顔を上げちゃいけないんです。
ですから将軍が「これからお前と協力して信濃国を盗ろうと思うがお前はこうしろ」とディテールを話そうとしても、数十歩を隔ててですから、できない。それは室町の小笠原流ですね。
それで対面の式が終わったあとで、茶室へ行こうというので行くと、松本清張将軍は亭主に過ぎない。それから私は客に過ぎないでしょう。そうすると、亭主と客というだけの無階級の場で、一尺隔ててのことですから、非常にディテールを話すことができる。
つまり、お茶というものが政治工作にどれだけ大きな役割を果たしたか、想像を絶するほどですね」
とまあ、以上の通りで「茶の湯」にそういう役割があったなんてまったく「目からうろこ」で、猛将たちが茶の湯に勤しんだのも風流どころではなくて「生き残る」ためだった!
「茶席での内密の話」を知り過ぎた「利休」が権力を持っていくのとは裏腹に危険視されて秀吉から切腹を命じられたのもわかるような気がしてくる。
それにしても戦国時代の「茶席」の意義は現代における「ゴルフ」に通じるような気がしてならない。
大事な商談をはじめ組織での重要なポイントや人事などが公式の場を離れて私的なゴルフのときの身近な会話を通じて決められていく・・。
したがってゴルフをしない人は 出世競争から自然と脱落・・。
▲△▽▼
柔道、剣道、弓道、華道、茶道 何でも同じですが、日本人は仏教の悟りの過程を真似して中身の無い物を如何にも奥深い深遠な物に見せかけるのが得意なのですね。
本来、剣道、弓道は殺しのノウハウ、柔道は喧嘩のノウハウ、華道、茶道はもてなしのノウハウであって、それ以上の物ではないのです。道と付くものをやる人間はみんな知性も教養もゼロのアホばかりでしょう。アホだからこそ道だとか精神だとか言ってカッコ付けるしかないのですね。
それに悟りと言っても、大乗仏教や禅宗や密教では釈迦の悟りの意味を完全に誤解していたのですが:
禅宗は知識ではなく、悟りを重んじる。禅宗における悟りとは、生きるもの全てが本来持っている本性である仏性に気付くことを言う。このため、唐代の祖師たちは苦闘を重ねながら悟ってきたのである。
しかし宋代以降、悟りを得るための多くの技法が考案されてきた。坐禅(瞑想とは異なる)、公案(知的な理解を超えた話を理解すること)、読経(お教を読むこと)、作務(普段の作業)などの修行を既に悟りを得た禅師の元ですることで、悟りが得られるようにメソッド化されてきた。
悟りは、ロウソクの火が、消えているロウソクに伝わるように(伝灯)、師から弟子へと伝わるとされる。それは言葉(ロゴス)による伝達ではない。それゆえに正しい禅師を選ぶことが肝心とされる。それは悟りを得ている事だけではなく、自分の個性に適合している禅師を選ぶという意味もある。しかしながら、悟りを得た禅師が指導して悟らせるのではない。師を持たずに悟りを得たゴータマ・シッダッタ(仏陀、釈尊)を持ち出すまでもなく、唐代の祖師たちは、師匠から教わって悟ったのではないのである。
悟りを言葉により定義することは出来ないが、言葉を始めとしていろいろな方法で悟りの境地を表現することはできる。そのため特に日本に伝わった後、詩や絵画を始めとした芸術的な表現の上に悟りが表現されており、その香りを味わうことができる。芸術以外にも、茶の湯や生け花を始めとした振舞いなどにも表現されており、振舞いをたどることによって、悟りの世界を味わうという手段も生まれている。
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