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シリアにおける傭兵を使った侵略の背後でトルコ、イスラエル、米国、ウクライナ
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202412060000/
2024.12.06 櫻井ジャーナル
イスラエルの治安機関「シン・ベト(総合治安局)」を統括するロネン・バールは11月18日にトルコを訪問、同国の情報機関「MIT(国家情報機構)」のイブラヒム・カリンと会談したという。11月25日にはNATOのマルク・ルッテ事務総長がトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会った。アル・カイダ系武装集団でトルコを後ろ盾にするハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)数千人がシリア軍を奇襲攻撃したのは、イスラエルとレバノンの停戦が合意された直後の11月27日のことだ。
イラン外務省のエスマイル・バガエイによると、この奇襲攻撃はアメリカとイスラエルが調整したというが、シリアの特殊部隊関係者の話として、ウクライナの顧問がアレッポ占領で重要な役割を果たしたする話が伝えられている。
ウクライナ人はドローン、アメリカの衛星ナビゲーション、電子戦システムを提供、シリア内の工作員やTIP(トルキスタン・イスラム党)の協力者にそれらの使い方を教えたという。停戦の直前にイスラエルはシリアとレバノンとを繋ぐ通信網をほぼ破壊、HTSはウクライナから提供された電子戦システムによってシリア軍の通信を妨害する一方、GPSとAIが攻撃に利用された。
なお、中国政府によると、TIPは新疆ウイグル自治区で破壊活動を続けてきた東トルキスタン・イスラム運動と実態は同じだ。そうした軍事的な支援の代償としてHTSは兵士不足のウクライナへ戦闘員を派遣したとも言われている。中東の戦争はウクライナにおける対ロシア戦争、新疆ウイグル自治区における対中国戦争と結びついているとも言えるだろう。
バラク・オバマ政権がムスリム同胞団やサラフィ主義者を主力とする戦闘集団を使い、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒す工作を始めたのは2011年3月のことだった。一歩先に軍事作戦を始めたリビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ政権を倒したが、シリアでは難航。そこで反シリア政府軍への支援を強化した。
そうしたオバマ政権の方針を危険だと警告する報告書を2012年に同政権へ提出したのがアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)だった。反シリア政府軍の主力はAQIであり、その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、さらにオバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告したのだ。その時にDIAを率いていた軍人がマイケル・フリン中将にほかならない。この武装集団がHTSになった。
DIAの警告通り、シリアでは2014年に新たな武装集団ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)が出現する。この年の1月にこの武装集団はイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧。そして8月にフリン中将は解任された。
フリンだけでなく、ジハード傭兵を危険だと考える人物をオバマ大統領は政府から排除していく。2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、同年9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへといった具合だ。
デンプシーが統合参謀本部議長の座を降りてから5日後の9月30日、ロシア軍はシリア政府の要請で介入し、ジハード傭兵を攻撃して占領地域を急速に縮小させていく。そうした戦闘集団はイドリブへ逃げ込むのだが、ロシア軍がその気になればイドリブの戦闘集団を壊滅させることは可能だった。ただ、そうした展開になると武装集団はトルコへ逃げる可能性が高く、すでにジハード傭兵の拠点になっていたトルコの不安定化が予想された。
そうしたこともあり、2020年にはロシアのウラジミル・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、イランのハッサン・ロウハニ大統領とビデオ会議を開いて協議、シリアでの戦争に軍事的な解決はなく、政治的プロセスを通じてのみ解決しなければならないという「確信」を3カ国は共同声明で表明した。
その結果、イドリブの戦闘集団は排除されず、この協定はウクライナのミンスク合意と同じような働きをることになる。戦闘集団は外部からの支援で戦力が増強されてきたのだが、シリア政府側は対応策を講じず、今回のHTSによる奇襲攻撃につながった。しかも、事前にシリア政府へロシア政府から警告が伝えられていたのだが、シリア政府軍は反応しなかったと言われている。
ロシア、トルコ、イランの3カ国首脳が会談した翌年、2021年1月にアメリカではジョー・バイデン政権がスタートするが、バイデン大統領はプーチン大統領を殺人者呼ばわりし、軍事的な挑発を開始、22年に入るとウクライナの反クーデター派が支配するドンバスへ軍事侵攻する動きを見せた。そこでロシア軍はウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設を攻撃し始めるのだが、その段階ではまだロシア政府は西側への信頼を完全には失っていなかった。それが状況を悪化させたと批判する人もいる。似たことがシリアでも起こっていたわけだ。
HTSに反撃するため、イラクからカタイブ・ヒズボラ、ファテミユーン旅団、ハシュド・アル・シャアビなどの戦闘員数万人がシリアへすでに入り、イランの軍事顧問がシリアに戻ったとも伝えられている。12月3日にはイスラム革命防衛隊の幹部、ジャバド・ガファリがダマスカスへ入ったという。
ミンスク合意や2020年の3カ国協定は敵に戦力増強の時間を与えただけだった。アメリカをはじめとする西側諸国やトルコなどは話し合いで物事を解決する意思がないことをロシア政府は学んだはずだ。中東だけでなくウクライナでも相手を信用したなら、ロシアやシリアだけでなく世界の人びとにとって致命的なことになる。
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