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米国は二正面戦争で戦術核兵器の先制攻撃を計画(CSIS核問題プロジェクト)
DOMOTO
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目次
■ I 報告書の概要
■ II 米国による核兵器の使用
■ I 報告書の概要
2024年6月、バイデン政権下で中国、ロシア、北朝鮮、イランの間の軍事的関係が強化され進行している中で、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)から、二正面戦争を現実的な想定とした軍事戦略報告書が公開された。
Understanding Opportunistic Aggression in the Twenty-First Century(PDF)
(「21世紀の便乗型侵略についての見解」)
(June 6, 2024 戦略国際問題研究所)
https://www.csis.org/analysis/understanding-opportunistic-aggression-twenty-first-century
この報告書でいう便乗型侵略(戦争)[Opportunistic Aggression] とは、米国の同盟国などが敵対国から侵略戦争を受けている時に、もう一つの別の敵対国がそれに便乗して米国の別の同盟国などに戦争を仕掛けた場合の侵略(戦争)を指し、報告書は主として第2の戦域での軍事戦略上の米軍の弱点を考察し強調している。
このケースの敵対国の侵略戦争をCSISの核問題プロジェクトでは「21世紀での便乗型侵略」として想定し、この二正面戦争では米軍による核兵器使用の可能性が高くなることを結論的に述べている。そしてこの報告書では「21世紀での便乗型侵略」を「現実に直結する問題」として指摘している。
現状では米国は核兵器を抑止力として使うだけにとどまっている。しかし、米国は二正面戦争において、軍事作戦のプロセスとして核攻撃を組み込んだ核戦術を構築し始めている。二正面戦争では米国の通常戦力が分散して不足するので、核兵器を使用する必要が出てきたのである。
この軍事戦略報告書は、米国の核兵器問題の専門家11名によって作成された。このチームには国防総省の政策担当官や研究技術担当官、海軍の政策担当官、海軍研究機関の核兵器政策の専門家、空軍研究機関の核拡散の専門家、エネルギー省の国家核安全保障局の外交問題専門家など7名の政府機関の専門家のほか、非政府機関の核問題の専門家が含まれる(PDF 32〜34ページ参照)。
報告書は記事の紹介ページで次のように記している。
「戦略国際問題研究所(CSIS)の核問題プロジェクトは、将来の核戦略と核態勢に影響を与える中心的な問題についての新たな考え方を作り出すために、「21世紀の便乗型侵略の把握」に焦点を当てた作業部会を立ち上げた。」
https://www.csis.org/analysis/understanding-opportunistic-aggression-twenty-first-century
この「新たな考え方」とは核兵器使用についての軍事原則を指している。つまり核兵器使用について根底をなす基本的な考え方のことだ。
■ II 米国による核兵器の使用
プーチンは2024年11月に、2020年6月以来の核兵器使用に関する核ドクトリンの改定を行った。バイデン政権下では中国、ロシア、北朝鮮、イランの間の軍事的関係強化が急速に進んでいる(下記は参考記事)。
Back in Stock? The State of Russia's Defense Industry after Two Years of the War
(「戦争から2年を経たロシア国防産業の現状」)
(April 22, 2024 戦略国際問題研究所))
https://www.csis.org/analysis/back-stock-state-russias-defense-industry-after-two-years-war
冒頭にあげているCSISのこの報告書は二部構成で、そのうち私は本論にあたる第一部に目を通したが、報告書は二正面戦争と便乗型侵略戦争を現実的な想定とした後、米国は同盟国を守るために、二正面戦争で最終的に核兵器の使用を必要とする可能性が高いという結論に達している。
なかでも二正面戦争での両方の敵対国が核保有国である場合、米国は戦術核兵器による先制攻撃を行う可能性が最も大きくなるとしている(※ 筆者注-これは現段階ではロシア、中国、北朝鮮が対象となる)。
Finally, if both the initial adversary and the opportunistic aggressor are nuclear peers, the United States would confront an insufficient resources challenge. … This strategy would likely require the greatest reliance on nuclear weapons and result in the greatest likelihood of U.S. first use, as the United States might need to employ tactical nuclear weapons to offset conventional weaknesses. (PDF 21ページ, first useは軍事用語で「先制使用」 )
また危機が敵対国の核使用から始まる場合についても想定している。例えば北朝鮮による米国の同盟国への核攻撃、また中国やロシアによる米国の同盟国への核兵器の威嚇使用(米軍の介入阻止のための威嚇)に対しても、米国が核兵器を使用する可能性は大きくなるとしている(PDF 21ページ)。
報告書は第一部の終わりで「これらの紛争内および紛争間の戦争抑止政策の同時管理の難題は、十分に研究されておらず、理論化もされていないが、拮抗する二極化する世界においてますます現実に直結する問題となっている」 と指摘している (PDF 23ページ)。
この箇所の記述と報告書の内容から言って、この軍事報告書は核軍事政策の基本的立場の提言を原則論としてまとめたものであり、実戦上の軍事作戦のシナリオは、時の政治的判断も加わりまた別のものになるかもしれない。
もし、米国が二正面戦争での戦術核兵器の先制攻撃などを実戦上の軍事作戦のシナリオと策定するならば、この軍事報告書の最大の欠陥は、米国の先制核兵器攻撃に対する敵対国による報復核攻撃への対処に触れていないことだ。これが軍事政策上において「十分に研究されておらず、理論化もされていない」ということであろう。この重大な想定はプーチンが改定をしている核軍事ドクトリンも同じで、米欧側がロシアに報復核攻撃を行った場合についてのロシアの軍事行動は示されていない。
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