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2024年4月8日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/319834?rct=tokuhou
東京・上野の国立西洋美術館で3月、企画展の出品作家らが、同館オフィシャルパートナーの川崎重工に対する抗議行動を行った。攻撃用ドローンの導入を計画する防衛省が、候補機としてイスラエル製を選定。川重がその輸入代理店になっているからだ。日本で美術家が美術館スポンサーに直接抗議するのは異例だという。ガザ侵攻に国際的な非難が強まる中、イスラエル製を選んだ政府の判断は、理解が得られるだろうか。(森本智之)
◆防衛省が選んだ「攻撃用ドローン」をつくるイスラエル
「私は美術家として直接展覧会に参加する立場にあり、本当にそれでよいのか、声を上げなければいけないのではないかと思った」。抗議した一人、美術家の飯山由貴氏は振り返る。
問題を知ったのは、企画展開幕約1週間前の交流サイト(SNS)の書き込みだった。防衛省は攻撃用ドローンの導入を検討するに当たり、2023年度に性能を検証する実証機を選定したが、7機中5機がイスラエル製だった。このうち1機の輸入代理店が川重で、他に日本エヤークラフトサプライ、海外物産、住商エアロシステムも別の機種の代理店になっている。
◆「松方コレクション」を批判的に読み解く作品を出品
西洋美術館は川重の前身・川崎造船所の初代社長を務めた松方幸次郎が収集した「松方コレクション」を基礎に発足した。飯山氏は今回の企画展で、コレクションは帝国主義下の戦争特需の利益で購入されたとして、批判的に読み解く立体作品を展示していた。その創作の過程とガザでの軍事衝突の激化が重なり、ドローンについて知った時「ガザが結び付いた。行動するしかないと思った」という。
開幕前日の3月11日に開かれるメディア向け内覧会で抗議行動をすることを決め、協力してくれそうな知人や出展作家らに伝えた。
当日は記者説明の途中で立ち上がり「イスラエル政府のジェノサイド(民族大量虐殺)に強く反対します」と抗議文を読み上げ、川重にドローンの輸入取りやめを、美術館には川重への働きかけを求めた。賛同する他の作家や市民も垂れ幕などで抗議の意を表した。
立場の強い美術館やスポンサーへの抗議についてSNSなどでは「勇気ある行動」とたたえる声の一方、批判も多い。中には「作家は創作で意思表明すべきだ」との意見もあるが、飯山氏は「抗議行動には瞬発的な拡散力やインパクトがある。創作では悪化していく現実のスピードに追いつけない。今回はアーティストではなく一人の市民として行動した」と述べた。
◆「今後数年は公立美術館から仕事は来ないだろう」と覚悟
元々飯山氏は社会や歴史の中で「周縁にいる人やもの」を追いかけてきた。精神疾患を患う妹の映像作品を撮った時、妹が患者の当事者運動に勇気づけられてきたことを痛感した。「社会に意見を表明する運動があることによって、力を与えられる人がいると信じるようになった」という。
東京都人権プラザが飯山氏に依頼した企画展で2022年、関東大震災の朝鮮人虐殺に触れた映像作品が上映中止になった。小池百合子知事が朝鮮人犠牲者に追悼文を送っていないことを踏まえ、都の担当が懸念を示していたことが後に判明した。この時も飯山氏は会見で顚末(てんまつ)を明らかにし都に抗議を続けた。「今後数年は公立美術館から仕事は来ないだろう」と覚悟していたが「できる人ができることをやればいい。今回の抗議でも私はできると思うことをやった」と述べた。
抗議後は西洋美術館と話し合いの場を持っているが、要求に応じるかは見通せないという。ただ、抗議行動がSNSなどで広まり「ガザで起きていることを人ごとだと感じられない人が増えたことは良かった」と話した。
◆「対応しない」「コメントは控える」…抗議の意味は
飯山氏らの抗議に対し、川重は「特に対応しない」とし、西洋美術館は「コメントは控える」とした。この回答を見る限り、飯山氏の言うように、状況が変わるかは分からない。
ただ、高千穂大の五野井郁夫教授(政治学)は「美術家が政治や社会問題をテーマに創作したり発言するのは普通のことだが、今回のように美術館やスポンサーに内覧会で直接抗議するのは、海外と異なり日本では珍しい。美術館は表現の自由を守る場所。飯山さんがストレートに声を上げ、それを制止せず表現させた西洋美術館側の対応も適切だった」と意義を述べる。
イスラエルとの武器取引をめぐっては、伊藤忠商事が2月、子会社とイスラエルの軍事企業などが結んでいた協力関係の覚書を解消している。
その理由として、伊藤忠は直前の1月、国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに対しジェノサイド防止の暫定措置命令と、これに対して上川陽子外相が出した「誠実に履行されるべきものだ」との談話を踏まえた、という。若者を中心にネット署名で2万5000筆を集めるなど抗議も行われた。
◆「実証機」なぜイスラエル製品ばかり?
今回のドローン実証機の選定は1〜2月、こうした動きと同じタイミングで行われた。実証機に選ばれた場合、各メーカーは、飛行距離など防衛省の要求する性能について試験を実施、報告書を提出するという事業内容で、実証機は一般競争入札で決定した。本格導入する機体については、今後、報告書の内容などを踏まえて検討するという。
3月12日の参院外交防衛委員会で共産党の山添拓氏は「イスラエルの軍需産業を支援することになる」「伊藤忠はICJの暫定措置命令に応じた。日本政府もやめるべきだ」と求めた。だが、木原稔防衛相は「防衛装備品の取得はわが国の安全保障環境をふまえつつ、要求性能や経費、維持整備などさまざまな要素を勘案した上で総合的に検討する。現時点で特定の国の装備品の取得を予断するものではない」と答弁。現段階では実証段階であることを強調した。
実証機の大半がイスラエル製になった理由については、防衛装備庁の久沢洋・調達事業部長が「一般競争入札で最低価格で入札した企業と契約した」などと述べ、1円落札もあったと明らかにした。あくまで結果論との説明だ。
だが、「武器取引反対ネットワーク」の杉原浩司氏は「実証段階とはいえ、本格導入の候補機として、7機中5機もイスラエル製を選ぶという行為自体が、イスラエルのガザでのジェノサイドを容認するメッセージを国際社会に送るに等しい」と非難する。
◆日本政府の対応は世界の潮流に逆行しているのでは?
杉原氏によると、第2次安倍政権以降、日本はイスラエルと防衛協力の覚書を締結するなど、軍事的な結び付きを強めてきた。昨年3月に千葉で開かれた武器見本市には、イスラエルから前回の5倍近い14社が参加。日本の防衛費拡大をイスラエル側は商機とみており「今回の問題もその延長線上にある」と指摘する。
立命館大生存学研究所客員研究員の金城美幸氏(パレスチナ地域研究)は「国連の人権専門家は2月23日、イスラエルへの武器禁輸の必要性を強調する声明を出した。その中で、伊藤忠の覚書解消にも触れ、称賛している。イスラエルと武器取引を解消する動きは欧州を中心に各国に広がっており、武器供与を続ける米国とのギャップは広がっている」と解説。今回の防衛省の実証機選定については「国際的な流れに逆行している」と問題視している。
◆デスクメモ
イスラエルとハマスの戦闘開始から7日で半年たった。ガザでの死者は3万人を超えたという。イスラエルによる過剰な報復に世界的な批判が高まり、日本でも同日、各地でデモが実施された。政府や企業は抗議の声に耳をふさぎ、時が過ぎるのを待つのか。見識が問われている。(北)
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